2017/07/31 のログ
ご案内:「セレネルの海」にエレイさんが現れました。
■エレイ > まだ日の高い時間。
海風を受けてさざ波を立て、陽光を照り返しきらめく穏やかな海面。
──そんな風情のある光景は、どーん、という突然の轟音と共に盛大に吹き上がった
真っ白な水柱によってブチ破られた。
そこから高く高く飛び出したのは大きな影。
上下逆さになった巨大なイカらしき生物と、その足の一本の先端を掴んでいる人影。
青空の下を天高く舞ったそれは、やがて砂浜に向かって降下し──
やはり轟音を立て、白い砂を巻き上げながら着地。
「…………」
砂煙が収まると、ぐったりした巨大イカの側で膝を曲げてかがんだ着地姿勢で佇んでいる男の姿も現れる。
その、銀色のジャケットを纏った金髪の男は、やがてゆっくりと顔を上げながら立ち上がった。
そして……
「……ペッペッ。ちくしょう少し口に入っちまったじゃねぇーか……」
──まずは、顰めっ面で体中に付いた砂を払い始めるのだった。
■エレイ > 「──フー……さて、どうやら無事に帰ってこれたようですなッ」
あらかた砂を払い落としてから、改めて周囲を見渡す。
見覚えのある砂浜、見覚えのある海、そして空気。
遠方には王都のある半島も見え、懐かしげに目を細めて。
深呼吸をしてから、両腕上げてぐーっと背筋を伸ばす。
「……やれやれずいぶん長い旅になってしまった感。ちゅーか……あれから時間どんだけ経ってんだろ。見た感じそこまで経ってない風に見えるが……」
頭を掻きながらどこか楽しげに呟く。
この男が海底の遺跡から奇妙な世界へ迷い込んだのは、こちらの時間で今月の頭頃のことだった。
そこで色々あり、装備も大分変化してしまったりもしたが、今ようやく帰還できた。
「──まああそれはともかく、どうすっかのぅ。とりあえずはさっさと王都戻って様子でも……む」
腕組みして、これからの予定を考えようとしたところで、ふと傍らの巨大イカのことを
今思い出したかのように目を向ける。
その足の一本をまた掴んで持ち上げると、むぅ、と唸り。
「……途中で絡んできたから思わず持ってきてしまったが……邪魔なのは明瞭に明白だな。回りに誰もいなくて幸いだったぜ……」
再び周囲を見渡しながら、眉寄せて呟く。言葉通り、今は他に人影は見当たらない。
もし海水浴客でもいようものなら大混乱になっていたことだろう。
■エレイ > 「……。今はイカって気分でもねぇーしな……しゃあねえ戻すか」
少し思案し、焼いて食ってやろうか、と考えたがどうにもそんな気にもなれず。
リリースする事に決めれば、しっかりとイカの足を両手で掴み直す。
ボ、と音を立てて男の左眼に小さな炎が灯り、肩に山吹色の蒸気めいた光が一瞬吹き上がって消える。
しかるのち、男はそのままその場でぐるんぐるんと回転し始めた。
掴まれているイカも大きく振り回され、砂嵐が周囲に巻き起こる。
このイカは今は気絶しているだけで、まだ死んではいない。
近くに放つと海にやってきた誰かの迷惑になりかねないので、できるだけ遠くへやらねばならない──。
「────そぉぉぉいッ!!」
気合の入った変な掛け声とともに、遠心力を乗せてイカははるか遠くまで遠投された。
着水音が聞こえないほど、遠くに。
男はそれを見届けると、いい仕事をした、とばかりにいい笑顔で額を拭う仕草をする。同時に左眼の炎もすぅっと消えた。
……この時と近い時刻、突然『飛来した』巨大イカが海賊船に直撃し大破、沈没したというニュースを男が耳にするのはもう少し後のことである。
■エレイ > その後暫く海辺で佇み、やがてふらりと場を後にした。
ご案内:「セレネルの海」からエレイさんが去りました。