2016/03/16 のログ
ご案内:「セレネルの海」にグールドさんが現れました。
グールド > (砂を波が削っては寄せて。靴の踵でほじくり返すと下に白い骨が見えた。体の一部らしく骨そのものも欠けているが上半身を折って伸ばす腕で軽くスポンジ状の珊瑚のようになった骨を拾い。両の指の中を互いに行き来させ爪で一直線に薄く引っ掻いてみ。屈んだと同時に砂粒が上着の裾に模様を作ったのが風で飛ばされてまた地表かどこかへ戻るのか戻らぬのか。)
グールド > (紅い爪痕を引いたのが目視出来たように思うが正確かどうか、今は暗いためわからない。細い死骸の骨を鼻と口に近付けたが止め。)犬でなし。(外に出しかけた舌を前歯で遮蔽して、また爪で引っ掻くとピアノの伴奏みたいにそれが鳴いたため、小さく出来た傷を指先の柔らかいはらの部分で細かな削り滓を抉り去るかに何度か撫でて、眼をもっとよく見ようと開けて珊瑚穴の中をも覗き込んで。足首より下が少し風吹いて寒いかもしれないが、地にずっと着いたままで。)
グールド > 眼球の、節穴は瞳孔を開いて見る部分だが。それへミノを突き立てて抉り出す。その人がコレクションした眼球は何色をしているんだろう。ひとつひとつに名前はあるのか。(瞬きをして空を澄んだ感情を湛えた眼で見上げて口をいったん瞑り。手の中の骨は細く縦長の形状をしており、ちょうどこの中を人の道具で抉られた形跡はなかったが、抉られた形跡がないのは骨の外見だけかもしれない。海の匂いのする骨を掌から風力に任せ投げ落として砂の浜を波が打ち続ける方向と垂直に、地表である側を進み。)
グールド > (ミノで抉り出す眼球とは石を削った礫であり、それに原石以外の色がついているという夢想である。光線や空気密度やその人の見様によって変化するものであろう。丈長上着のポケットに両手を突っ込んで煽る風に負けじと波打ち際のこちら側を歩み続け。空の月面が荒波を照らす光が頬にも反射して存在するのがよくわかり。月光を荒くれた風がこの空間から剥ぎ取って行かんとするのか。上着もシャツの襟もズボンの裾も、波の表面より漣立って髪はとうの前にばらついて、息を確保せんと顎を引き。)―――か、…は。
グールド > 撃てと言い放つ声が猟銃をあの月の中から降らして来たとしたら。猛獣が風と同じ速度で背後から飛び入るのを何人が予測できるだろうか。(声は暴風よりずっと優雅で、悲鳴に近い残酷な響きを宿しているそれで歌うように低く声を気道から響かせている。自分もただ銃を拾うだけかもしれない。靴の舳先で三角二つと円を合わせた魔方陣を描きかけては端からかき消して行き、円は大きくなっていくが必ずどの単純形状も完成させることがない。未完成はあくまで注意を払ったもの。靴の先で描く遊びのような。)
グールド > (円は順に少しずつずらして行くため、砂を払った跡の形も完成を描くことがない。そのような計算は頭の中にある。繰り返すだけならば、身の程を弁えぬ幼い行動であろう。繰り返すだけならば。波が砂を少しずつ洗って清めて行くかに見える)
グールド > (靴でつけた砂上の痕跡は波が引いた後にまで残っていたとしたら奇跡であろうか。)何か召還されたとて。(己は今からここを去るのみである。幼少期に立ち戻って悪戯をした子のような心持ち地面を走る足がなんだかとても軽快なステップを刻みたくなるがワルツは下手である。さあ帰ろう、吾が道を。この先へ続く場所へと帰る。)
ご案内:「セレネルの海」からグールドさんが去りました。