2016/01/26 のログ
ご案内:「セレネルの海/浜辺」にヴァイルさんが現れました。
■ヴァイル > 冬、それも夜半の海に好んで訪れるものは少ない。
ヴァイル・グロットはその少ないうちの一人であった。
身にまとうものなどは何もなく、岩の間をひとしきり泳いでは休む、それの繰り返し。
殺戮や暴虐以外にヴァイルの持つ気晴らしの手段だった。
浅瀬に座する骨のように白い肌の少年を知らぬ誰かが目にすれば
彼こそが海に出る亡霊と勘違いしかねない。
■ヴァイル > 「ふう」
手足を広げて海面に裸体を浮かべ、海水に使った指を舐める。
海水は適切な処置を施せば聖水にはなるが、これはただの塩水に過ぎない。
《夜歩く者》は流れる水の上を渡れない、という言い伝えがある。
それはまったく真実ではないし、それどころかヴァイルはこの場所が好きですらあった。
しかし、人間がそれを信じてくれているというのなら、そのままであったほうが都合がいい。
他にも様々な弱点に纏わる伝承はあったが、その多くは的を外している。
■ヴァイル > このような代償行為では自身の暴力性を発散するにはひどく効率が悪い。
しかしヴァイルには大いなる目的があった。
本来ならば主人なくしては永く生きられない狂犬が、
野心を自らの鎖とすることで自己を律しているのだ。
また海に飛び込んでは闇雲に泳ぐ。
そのまま浮かび上がらずに、どこかへと消えていく。
ご案内:「セレネルの海/浜辺」からヴァイルさんが去りました。