2015/12/16 のログ
■触手のロータス > (まあ、海洋のボスモンスターな魔物なので、想像出来たりはするだろう。
そう……メジャー所だ。変化球ではない。
ロータス達魔王軍にとっても、演習を兼ねての祭りという面はある。
だが露骨にお祭り騒ぎ、という風でもない。
もちろん、人間の艦船との戦い方の演習にもなる。
濃い霧の中、海面より現れし恐ろしき“何か”を見た軍艦三隻は一目散に逃げ出す。
その時、辺りの海が少し揺れた)
『ロータス様ぁ、“あいつ”も暴れたがっているようですねぇ。
この海戦演習を楽しみにしていたようですよぉ』
「ふん。そのようだな。
今回は、特殊な防護結界の内部で演習が行われる。
防護魔力が尽きた者から、空間外にはじき出されるという仕組みだ。
故に、演習で死者が出る事はありえない。
“奴”も存分に暴れられるという事だ」
(そしてエレノア側冥軍は、残る二隻の戦艦に対し潜水艇による威嚇射撃を行っていた。
潜水艇により、水面下に哨戒線を引いているのだ。
なるほど、さすがに海魔の特性をよく理解している。
彼等海魔にとって、海底こそが最も力を発揮できる場所だ。
潜水艇より雷の魔法弾が発射されていく。
数発、見えない場所から威嚇射撃をする事で、残り二隻の軍艦は後退していった)
(掃除も済んだところで、エレノアにテレパシーを返す)
『ああ。楽しんでいこうではないか』
(そしてロータスは、息を大きく吸いこみ、魔術も使わずにこの周辺全体に聞こえる程の大声をだす)
「それではこれより、冥軍と魔王軍の海戦演習を開始する!!」
(ロータスは高々と、開始宣言を行った。
彼の周囲にいる海魔軍勢や島亀、ダゴンは耳を塞いでいた)
(さて、やはり海魔軍勢の専売特許、海底よりの奇襲がメインになる。
元魔王エレノアもそれは理解しているだろう。
海底を警戒されているが故に、いきなり冥軍の旗艦は狙えない。
冥軍のレーダーに映るは、海底に潜みし夥しいまでの海魔軍勢。
もはやレーザーがある事前提で、隠す気がないといった数にも思える。
むしろその数が何がなにやら、と言った感じで冥軍を混乱させようともしている。
なぜか、ロータスやダゴン、深海のボスモンスターにはレーザーの反応はない。まるでステルス機能が搭載されているかの如き。
レーザーは捉えるだろうか。
半漁人を中心とした海底を埋め尽くすまでの海魔軍勢は、まず潜水艇を狙っていた。
鋭い爪や強靭な槍などで、まるでミサイルの如く四方から冥軍の潜水艇に突撃する軍勢。
それにはまず、冥軍はどう対応するだろうか)
■エレノア > 「…ん。」
大きな声が海面に鳴り響いた。高角砲の上からOK、と言う具合に敬礼をして見せる。
彼ほど大きな声を出すのは…出来なくはないが何となく気恥ずかしく思う割とお上品なメイドさんであった。
「―――これは。」
それなりと聞いていたが。エレノアは無表情ながら、多数に映された点をじろりと眺めた。
レーダーの担当員は『数が―――多すぎるっ?!…ヒャッハァ!』って言ってた。多分彼なりにかなり混乱している。
小型反応が無数、対して大型反応は…なし。成程、彼等ロータスやダゴンは邪神クラスの魔物だ、
故に、彼等が魔導機械からの探知に何かしらの対策を持っていてもおかしくはなかろう。
奇襲すると言う癖にはまるで隠す気のなさそうな数は、恐らく攪乱作戦なんだろう。だが、その数はとても多い。
こちらとて、それなりの艦隊といって間違いないものは持って来たものの。
「大分と…数が…多いわね。随分気合入ってるじゃない?」
ロータスやダゴンにと音魔法で率直に詰まり気味に反応を漏らした。
潜水艇は、そもそも結構早いが、複数の海魔と鬼ごっこをしたら負けるだろう。
泳ぐスピードは兎も角、水魔法を操る彼等に分がある。
水中でも通用する、先の雷撃魔法弾を撃って迎撃をするのはいいが、数で負けている。
爪で装甲をひんむかれるか、槍で突かれたらそれで終わりだ。
そもそも潜水艇の装甲は非常に脆い。水が入ってきて潜水艇は次々に沈んでいく。
潜水艇は、全方面が水に面している。つまり、一個でも穴が開いたらそこから浸水してしまうという大きすぎる弱点がある。
ともあれ、こちらの潜水艦警戒ラインが波のような多くの魔力反応で押し寄せられていることを捉えた。
「攻撃隊、第一射、警戒ラインに爆撃。」
水の中でどうしようもないなら、水上、或いは空で優位を取るしかない。
幸い警戒ラインが功を成して、エレノア自身が搭乗する旗艦の航空母艦には来ていない。
あの数、それも水の中であれば、やはり潜水戦力は放棄するしかあるまい。
だが、今なら―――。
「第一次攻撃、用意。攻撃隊、発艦。」
航空母艦の後ろ側から、二対の翼を持つ飛行物体が5機、甲板をマッハスピードで加速しながら、飛んだ。所謂無人航空機。大きさは、鳥の大型の魔物くらい。
航空母艦とはいえ、飛行機を積んでいるわけではない。まるで本物の鳥の魔物の様な動きを見せるそれは、所謂航空戦力という物だった。
ただし、スピードは先も述べた通りのスピード。このまま水に潜れたら言う事はないが、水に潜ったらやはりスピードで海魔に劣ってしまうだろうから、
敢えて水上で滑空させていた。
母艦から飛び立った銀色の怪鳥は、低空飛行して水面下の魚を狙う様にスレスレを飛行する。そして、警戒ラインへと颯爽と到達していく。
数が多いと言う事は、適当に広範囲攻撃すれば、何処かにヒットすると言う事でもある。
幸い、彼等は爪や槍での突撃と言う方法をしていることから、逆に自身の潜水艦隊の付近の何処かしらには居るだろうとレーダーを見続けなくても場所は絞れる。
後は、場所を逐一知らせなくとも、独りでに攻撃してくれるはず。
雷撃と爆撃、それら二つを複合した線形から球形に収束する魔法弾が、怪鳥の嘴から水面へ撃ち込まれる。
狙いは、とにかく、レーダー反応が多い地点へと。あの数だ、防護壁の外に出るのは海魔の方が多いと思われる。
これによって、潜水艇の数は漸減していってしまうだろうが、みすみすやられてしまうくらいならば、という苦肉の策でもあった。
一体何を海底に隠しているのか、それを調べる事も出来ないまま、警戒ラインが崩れていく。
「流石ね。…海で遊びに誘った私が愚かだったのかも?…うーん。」
サプライズなんて考えてはいたが、これではこの先思いやられてしまう。
流石誰も彼もやり手だと思うと共に、彼の側が用意したサプライズもやはり楽しみにするのは、後ろで騒ぐ連中と同じく享楽主義だからだ。
困ったように苦笑いを非常に薄く浮かべながら、あの数の小型反応をどうするか考え始めた。
馬鹿でかい砲を持った戦艦でも、その砲はそもそも水上の物を目掛けて攻撃するためのもの。
先ずは水上に誘うか、それとも先の様に大量に空爆からの水中への攻撃をするか、その二択。
だが、水の中でこそ脅威を発揮できる彼等が水上へ上がってくる事は考えにくい。
であれば、水中にて迎撃するほかないだろう。
■触手のロータス > (エレノアの音魔法に、まずはダゴンがテレパシーで返し、その後ロータスも同じくテレパシーでエレノアに伝える)
『うちには気合が入った配下が多いという事ですよぉ、エレノアさん。
なんだかんだで、お祭り騒ぎですからねぇ』
「なに……。そちらもそれなりの艦隊を用意してきたのだろう?
ならばこちらも、それなりの海魔軍勢を用意してきたまでだ」
(この海魔軍勢をそれなりで片づけるのだから、アスタルテ率いる魔王軍の人材の豊富さを表している。
武装に関しては、まず海魔軍勢が冥軍艦隊に敵うはずはないだろう。
あちらの武装は、もはや時代がいくつも進んでいるかのようだ。
異世界の技術を取り入れているのだから、それも無理はない。
普通の戦艦を相手にするのとは訳が違う。
だが海魔達は地上はともかくとして海でのスピードはずば抜けており、水魔術に関しては専門とも言える。
さらに、住みなれている海に関しても、海魔は詳しい)
(とは言っても、やはり先程の雷撃魔法弾が厄介な事には変わりない。
武装面で不利なのが、そういった形で出てくるのは想像に難くない。
だが潜水艇は、少しでも穴を開ければ撃沈する上、装甲もそう堅くはないだろう。
まあ、戦艦や潜水艇の知識に関しては、間違いなく冥軍側の方が詳しいはずだが、弱点を全く知らない海魔軍勢でもない)
(航空母艦から、飛行物体が5機発進される。
海底では魔王軍が有利だろうが、まあ……空は支配されてしまうだろう。海魔は海を支配できても、さすがに空はどうにもなるまい……。
冥軍の航空戦力による水面ぎりぎりからの爆撃や雷撃。
海魔の軍勢が固まっていたところに、範囲攻撃をされれば、たちまちその数は一気に減っていく。
やられた海魔は、結界の外にはじき出されていった)
『さすがに航空戦力や武装の面では、我々に勝ち目はありませんねぇ。
それにしても、すげぇ前衛的な武装ですねぇ、冥軍さん』
「ああ。なにせあれ等は、この世界の技術ではないからな。
だが、こちらの被害は決して少なくないとは言えあちらの潜水艇も漸減している」
(ロータスとダゴンによる戦況解説である。
ロータスの言葉通り、航空戦力により海魔は確実に多く減らさせれているが、潜水艇も同じように大量の海魔数の襲撃により数を減らしていた。
まあ、こちらの数が多くて、範囲攻撃を狙われたのだから、結界外にはじき出される者は海魔の方が多いが……。
それでも、冥軍側が海底に敷いた警戒ラインを崩していった)
「犠牲は出たが……第一段階、海底の制圧は完了しつつある。
それでは次はいよいよ、敵船を狙っていく」
(だがしかし……早めに航空戦力を投入するエレノアの判断も大したものだ。
そのお陰でこちらの数も減らされてしまった。そうは言っても、元々が多いだけにまだまだ海底を埋め尽くす程の数はいるが)
『冥軍さんも航空戦力を使ってきた事ですし、こちらもあの子を使いましょうよぉ、ロータス様』
「ふむ……そうだな。
それでは、《紅海の覇王》ビッグ・イソギンチャ君出動だ!」
(なんだかボスモンスターのような雰囲気を漂わせているビッグ・イソギンチャ君だが、別に大ボスモンスターではない。
用意している大ボスは他にいる。ビッグ・イソギンチャ君はしいて言えば、中ボスぐらいである。
レーザーには映っている事だろう。
百を超える無数の巨大な触手が海から現れると、それは護衛艦の一隻に巻きつく。
その触手から想像できるビッグ・イソギンチャ君の全長は精々30m~50mあたりだろうか。
触手の形から、イソギンチャク系の魔物と想像するのは容易だ。
それが、護衛艦の一隻を海底へと引き摺りこもうとしていた)
■エレノア > 「…えぇ。それなりの。あら、…ええと。何だかんだ、お祭り騒ぎはお互い様、と言う事かしら。ええと…ダゴン、さん?だったかしら。」
さて、何だかんだ、神性を持つ者としても、ロータスとそれなりに付き合いは長いのだが。ダゴンとはあんまり面識はなかった。
まして、そのテレパシーであれば、尚更だった。聞きなれぬし見慣れぬテレパシーの色合いに、少しだけ自信なさそうな色合いで、
その声に音魔法で答える。
「貴方そんなに勝ちたいタイプだったかしら。それとも…ああ、これ以上は野暮ね。」
彼の言うレベルのそれなりと、メイドさんの思うそれなりは、恐らく高い所で一致しているのだろう。
彼が用意してきたそれなりの海魔軍勢は、オーソドックスながら、数が多く、また戦闘にも向いているし、知識も高い。
正に王道的な海魔の戦力と言うべきだろう。
逆に、メイドさんが持ってきた艦隊も彼が言う様に、新鋭の装備と、お楽しみまで搭載した、遊び心がありながら、
ちゃんとそれなりの武装を持った艦艇だった。また、色々な遊び心の中に、サプライズと称してそれなり以上の物も持ってきているのは…
多少負けず嫌いだからかもしれない。
けれど、海底の警戒線は崩壊状態だ。これではマズい。流石に装甲が薄く脆い潜水艇の様に旗艦やその他はいかないが、
その戦力がなにも爪や槍だけの者でない事も知っている。
警戒ラインが崩壊したと言う事は、常に水面下の状況を把握しておかなければ、彼等に奇襲を許すことになる。
幸い旗艦の偵察術式は水面下に効いているが、しかし効いていたからといって、あの数で強行進軍されたら敵わない。
5機の航空戦力は、旗艦を護衛する護衛艦の周りをさらに護衛するように飛び、旗艦の防衛を高める。
海底を埋め尽くすほどの海魔、演習と言え、油断はならない。
「…んん。中型反応、かしらね。……やるじゃないの。」
真っ赤な巨体が海面に見えると共に、一際大きな反応が出てきた。
的確な判断だ。この護衛艦を原始的な槍や爪で沈めるのは難しいだろう。しかし、船そのものを水没させてしまったら?
潜水艇とは違って、この護衛艦は水中では浮かない。
護衛艦、触手に対して魔導砲をぶっ放すが、きっと主砲4基8門で百数、下手したら数百の触手に叶うはずなどなかった。
その威力は申し分ない。だが、数で大きく劣っている。一本二本退けられたとして、イソギンチャ君にとっては痛くも痒くもないだろう。
魔導機銃―――ひいては、砲よりも幾分かで触手をぶち抜こうとするが、それでもその巨体から伸びた触手を、貫くことが出来たとして、撃ち抜く事など出来るまい。
また、前述の通り、海魔に水場で速さで敵うわけもない。故に、護衛艦は逃げながら砲撃と射撃をするのだが、間もなく水面下へと引きずり込まれるだろう。
散り際に、出来るだけ属性のない魔法弾を撃ち付けるが―――?
「だけれど、これは僥倖。―――装甲戦艦、艦砲、葡萄弾、水平砲撃!」
場所は変わり、一際ゴツい装甲を持つ、恐らくこんな酔狂な船は作られないだろうとも思われよう低速の戦艦。
大空へと突きだす2基6門の主砲。その一門が開き、ビッグ・イソギンチャ君の触手に狙いを定めていく。
その戦艦の位置は―――何よりそのアホみたいに重たい装甲板のせいで遅い為に―――かなり後ろの方だった。
その癖に、砲撃をしようとしているのだ。あんな位置から?と、思われるような場所で。前衛の護衛艦に巻き付くイソギンチャ君の数多の触手に、ゆっくりと、密かに狙いを定める。
収束する魔力。水上に出てきてしまったなら、手痛い一撃をこちらからも浴びせられるのだ。
この時代、おそらく海魔を統べるロータス達なら飽きる程見ただろう人間たちの魔導砲。それらと全く同じに思わせる砲弾
でありながら、射程と精度も段違いで、途中で炸裂して沢山狙いを付けられる砲撃。更に重力魔法で持ち上げ自身の持ち場…
つまり、水上にまで誘い出そうとする術式を含んだ高密度も高密度な魔法弾。
そう、既にこの技術は異界の物。魔導機械も数世代は先に進んでいるだろうと思われる。
爆轟が鳴り響き、赤熱した炎の魔法を思わせる球体が飛んでいく。
出来ることならば、その多数の触手を出来るだけ巻き込んでやれないか、それによって水上に誘き出せるなら、
残り5門の砲を撃ち放つ算段だった。
ただ、イソギンチャ君が気付いてしまったら、また、水に潜ってしまったら。この砲弾は文字通り水の泡になるだろう。
「潜水戦力への警戒を怠らないで。」
だが、あれが全部ではないはずだ。少なくとも30m…下手したらもっとあるだろうと思われる大きな触手。
やはりロータスが従えている魔物に違いないと思うと同時、つまり水の下から予想外の位置から触手が出てくるかもしれない事を危惧する。
流石にこの大型航空母艦を巻き付いて沈める事は出来ないだろうが、護衛艦など、さっき沈められてしまった通り、
警戒しなければ簡単に沈められてしまうのだ。
メイドさんはレーダーに映るだろうイソギンチャ君の触手の動向を調べると同時。
「旗艦、後退。第二次攻撃の用意を急ぎなさい。空は取れてる、航空部隊の陣形は気にしなくて良いわ。」
甲板の上に新たに航空戦力と見える魔物の様な作りの機械が、艦艇の後方に登り出てくる。
数は、先程と打って変わって50程度と言う数だ。その代わり、大きさは先程よりはかなり小さく、目視しにくい。
普通の軽い航空母艦がやっと搭載できるだろう数を、その大きさでゴリ押しするように搭載している。
まだ準備が整っていない様で、それぞれが発射するための滑走路と思しきとこに並べられていく段階だった。
戦力の分は、水上と水底と、完全に分かれてしまった。
この小型機は、イソギンチャ君を防護壁の外へ出せなかったら。その時の保険。それから、今でも尚船底を狙っているだろう、
小型の海魔達への新たな空からの防衛と警戒ラインを作るために。見た目で分かる通り、あまり大きなものとの戦いには向かない。
それに水中では、彼等に敵う事はない。その気になれば、警戒ラインが崩壊とは言わず、壊滅的な被害を出させることも出来るだろう。
ご案内:「セレネルの海」からエレノアさんが去りました。
■触手のロータス > (エレノアの音魔法に対して、ロータスとダゴンもテレパシーで返す)
『ダゴンです!
せっかくのお祭りですからぁ、楽しまなくちゃ損ですよねぇ。
ボクも楽しんでます』
「祭りだ。ある程度は派手にいかぬと、盛り上がりにも欠けるだろう」
(エレノアの脳内にとどくダゴンの声はどこか陽気だ。
クールなエレノアとロータスに対して、ダゴンは明るかった。
負けず嫌いなのは、お互い変わらないという事だ。
最も、祭りとして盛り上げようとしているのもまた嘘ではない。
海底を支配したからといって、いきなり旗艦は狙えない。
当然のように、海底の警戒戦が崩壊したエレノア側は、旗艦の防衛を固める。
チェスにおいても、いきなりチェックを狙うのではなく相手の駒を減らしていくところから始まる)
『ところでロータス様。
ビッグ・イソギンチャ君ってどうして《紅海の覇王》なんて呼ばれてるんでしたっけぇ』
「貴様……そんな事も知らんのか。
ど忘れだと信じておこう……。
奴の触手から放つ毒素は、あらゆる生命から血液を噴出させ、もがきながら死んでゆく。
最も、この演習においてはさすがにそんな危険な毒素を使う事はないだろうがな。
そして、あの巨大な触手により船が海に引き摺りこむ様子はまさしく海の王を連想する。
ビッグ・イソギンチャ君が船を沈めた後、海面に浮かびあがってくるのは、紅の血だ。
故に奴は《紅海の覇王》と呼ばれている。
それぐらい覚えておけ、ダゴン」
『そ、そうでしたねぇ。
今思い出しましたよぉ、ロータス様』
(ビッグ・イソギンチャ君の百を超える触手が護衛艦の一隻に巻きつく。
護衛艦も無抵抗ではない。魔導砲にて次々に触手を退かせていく。
だが、多少ビッグ・イソギンチャ君の触手が減ろうが、さすがに数が多い。
魔導機銃でも、触手の数は着実に減らせている。減らせているが、やはり触手の数が多すぎる。
そのまま冥軍の護衛艦の一隻は、海に沈んだ。
しかし最後の抵抗とばかりに護衛艦が撃ち放った無属性の魔法弾。
それは見事、ビッグ・イソギンチャ君に命中。
巨大な魔物の悲鳴が、海上にも聞こえているような気がした)
(その時、爆轟が鳴り響くと共に、冥軍艦隊の後方より飛んでくる高密度すぎる魔法弾があった。
そこにゴツすぎる戦艦がある事は、海魔軍勢も把握している事だった。
だが、あれだけ遠い所にいる段階でまさか動き出すと思った海魔はどれ程だろう。
ビッグ・イソギンチャ君の触手は、炎系統の魔法弾により多数の触手が巻き込まれた
すると、さっきよりも大きな悲鳴が聞こえるだろうか。
そして、ビッグ・イソギンチャ君はその姿を現す。
だが当然、ビッグ・イソギンチャ君のテリトリーは海底である。すぐに、海底に帰っていこうとする。
しかし、残り五門を撃ちこむだけの隙はぎりぎりあるかないかといったところ)
『これは……ビッグ・イソギンチャ君も大きな痛手ですねぇ。
艦隊側も新たな戦力を用意しているようですし、
ひとまず、海底の完全制圧を勧めましょうかぁ、ロータス様。
そうすれば、ビッグ・イソギンチャ君の援護もしやすくなりますよぉ』
「そうだな。
半漁人共、そのまま相手の海底の警戒ラインを壊滅させろ」
(海底の半漁人の軍勢は引き続き、残った潜水艇を四方からミサイルの如く突撃する。
空は不利でも、水底ならばこちらが優位。
その気になった海魔達の攻撃により、冥軍の警戒ラインは壊滅するだろう)
「そのまま、他の護衛艦も狙っていけ」
(半漁人の大軍勢が、冥軍の護衛艦三隻の真下を陣取る。
船というのは、船底を貫かれたら沈む脆い一面がある。無論、エレノアもそれは承知している事だろう。
そして海底に住む半漁人は、船底の攻撃には手慣れている。
装甲が硬くとも、強力な爪や槍を持つ海魔が大勢で突撃すれば護衛艦の船底に大きな穴は空けられるだろうか。
もちろん、海魔達にとって船底を狙わない手はない。
海魔の大軍勢は、護衛艦三隻の船底に一斉に突撃していく)
ご案内:「セレネルの海」から触手のロータスさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」に触手のロータスさんが現れました。
■触手のロータス > 【続く】
ご案内:「セレネルの海」から触手のロータスさんが去りました。