2020/09/18 のログ
■エイガー・クロード > 「さっさと終わらせてさっさと帰って。そしていい宿を取っていい食事といいお風呂に入る。
いいオンナってのは、それだけでなれるものなのよ?
……そしていいオンナの条件は、強いことなのかもね」
口約束だろうと約束は約束。それを反故になどしないのがこの男だ。
それは短いが、確かな付き合いがある少女にはよくわかるだろう。
少女が影から呼び出した百足に、しかし警戒心はそこそこに彼もそれに合わせて駆け出す。
槍でオオカミモドキの魔物を薙ぎ払い、そして一突き。
そこに情や葛藤など一切なく、そして機械のように正確だった。
まるで吸い込まれるようにその魔物の脳を槍の先が貫き、その魔物の肉体を槍につけたまま持ち上げ、群れに向けて放り投げた。
彼の戦いは、少女のとは違い堅実に、そしてこの槍を思い切り振り回せる広い場所には打って付けだった。
もしここが洞窟の中だったらば別の武器を選択しなければならない、だがここでは……槍の選択は、正しい。
この魔物達はそこまで強くはなく、しかも知性もそこまでないのだろう
唯一の懸念は数だが……その数も、少女が呼び出すモノの数にも入らない
■フルーア > 「それが――ふふ。そうだね、それがきっと、ニンゲンらしい生き方だよ。
…もっと君に教えて欲しいな。遅れを取り戻していきたいんだ――」
(ヒトとして生きていく、その為に。
愉しい事だけではないだろうが、もう一つ、約束に約束を重ねておいて。
良いオンナの条件。彼の言ったそれには、あは、と笑って。全面的に同意した。
…それは少女自身の強さではないが。その力に方向性を与え、操っているのだから。一応、自力扱いでも良いだろう。
幸い魔物ではあるものの、極端に巨大という訳でもない、狼型のそれ等。
異界の蟲は躊躇う事なく絡み付いて骨を砕き。牙を突き立て食い千切る。
的確に点を突いて急所を穿つような、彼の槍捌きと比べれば。
それはもう乱暴に、別の魔物が暴れているのと大差無い。
とはいえ、互いのスタイルが違うという事は。それぞれの不得手を補い合えるという事でもある。
少女が広く雑に群をいなして、魔物達を分散させる傍から、騎士の槍が一匹、また一匹、貫いていく。
この調子なら確かに。数以外は問題無く、直に終わるのだろう。
…そう。最後までこの調子が続けば、だ)
■エイガー・クロード > 「人間らしさなんて……私なんかで教えられるのかしら。
私が教えられるのは美容の秘訣とスイーツが美味しいところぐらいよ?」
自身はヒトとは外れているかも。そう言外に告げる。
そして彼はオンナじゃないというツッコミは無粋だろう。
笑ってくれる彼女に、こちらも笑みを返した。
多数、そして一匹一匹、決して村へと近づけさせない。
互いに互いのスタイルはまったく違うというのに、その目的の為に動くとしたら、それは理にかなっているのかもしれない。
……いや、それはさすがにないか。
騎士は本当に騎士らしく、しかしその、見栄えではなく実戦向けの戦い方。
なにより、可能な限り即死をさせる戦い方。あまり王城の騎士らしくはない。
それは当然かもしれない。彼は対人でも対魔でも対応できるように様々な戦い方ができるが……本来は、『内側』に向けて振るうものだから。
あまり血が飛ばず、そして音も大きくはさせない槍の使い方。
……数はものの数分で減っていっている
だがまだ何かある、そう少女と騎士が二人して思った瞬間
―――森から、咆哮と、地鳴りが聞こえた
「……あらあら、大物なんて。これは長くなりそうかしら?」
■フルーア > 「それが良いんだよ、僕はそういうのを知りたい…ちゃんと、オンナノコらしく。愉しくやっていく事をね――?」
(その辺を彼なら。オンナよりもずっとしっかり、堪能させてくれると思う。
あの日の夜という前例が有るから、信じられるのだろう。
愉しげに。いっそ軽口をたたき合っているのではないか。そんな会話が飛び交いつつも。
狼型の魔物は一匹、また一匹。着実に減っていく。
彼がそうであるように。少女の戦い方も、一対一…どころか。まともにニンゲンと渡り合う事など、想定していない。
離れきらないように繋がれたバケモノ達を、謂わば首輪が届く範囲で、暴れさせているようなものであり。
使い様によっては。制御を外れたバケモノ達が、当たるを幸い大勢を巻き込んで被害を広げる可能性も有る。
けれどそれは仕方ないのだ。本来の少女は、ニンゲンらしさにこだわってみせる通り…最近まで、ヒトではなかった。
敵地に放り込まれて、死ぬまで、制御不能の災厄を撒き散らす…『兵器』として育てられたのだから。
そんな二人が。本来の力の振るい方ではなく。
手を組んで、何かを護って戦えているというのは。思った以上の奇跡なのかもしれないが。
どうやら幸いというのは、決して長続きする訳ではなく。禍福が常にセットで存在しているらしい。
――ずん。重く、地面が揺れた。生き残りの魔物達が、露骨に怯えて尾を丸め、駆け出し――きっともう此処には帰って来ないだろう。
未だ立ちはだかった人間達を恐れず、獲物を得る為、襲い掛かってくるモノが居るとすればそれは――)
「――――考え様だよ。朝までプチプチ、細かいお仕事続けるよりは。
頭を叩いて潰して、それでおしまいにした方が。…良いじゃない?」
(極近い木々がへし折られ、倒れる。小さく舌打ちすれば――百足達が掻き消えた。端から存在しなかったかのように。
そしてソレが顕れるのだ。
姿こそ先と変わらない、狼に近いのだが。
胴の高さはきっと、彼の乗ってきた馬の頭と同じ程も有る。
当然質量や重量は。馬数匹分にも及ぶのだろう。
ずしりと地面に重く足跡を踏み込みながら、唸り声を上げ――次の瞬間。
巨狼は真っ直ぐに、二人へと突っ込んでくる――!)
■エイガー・クロード > 「そう、ならちゃっちゃと済ませたいところね。そうね……オンナノコらしく、気になる男子とか聞いちゃおうかしら、ねっ!」
また一匹、魔物を屠ると同時に言う。
最早作業となりかけていたが、話しながらできる作業というのはなかなかに愉しい。
だがこの光景は相当な実力者でなければ冷や冷やものだろう。
戦いながら少女の方を観察して、そしてその在り方がなんとなくわかってきた。
思えば、『あんなもの』を王都で潰してきた邪教の中で見かけた気もする。
アレとは似て非なるものなのだろうが……でも
今こうして、互いに互いを、そして背後にある村を守るために力を振るう
どこかそれは清々しく、そして自身が望んでいたことの一つなのかもしれない。
そんな望みは、同時に面倒なものをもって来てくれたようで……
「えぇ、そうね。それに……アレの毛皮、いい毛布になりそうだしね?」
そんな風に、軽く笑う。
おそらく”親”であろうオオカミ型の魔物は、減り続ける”子”達にご立腹の様子。
そしてその”子”を減らす自分達が相当気に入らないようだ。
唸り声をあげ、突っ込んできた巨狼。
彼はそれに対して……
「さて……行きます、かっ!」
正面から突撃した。
無謀ともいえるその行動、そしてぶつかるその瞬間
槍を地面に突き刺して、その反動で宙へと非常に高く飛び上がる。
くるり、と空中で体制を立て直し、巨狼の背中へとその槍を突き刺した。
瞬間、噴き出る鮮血……だが意に介さず、その巨狼は一直線に村へと突撃している。
その先にいる少女に、目もくれずに……
■フルーア > 「それって。…一緒にお泊まりして、コイバナに花を咲かせる、という奴だよね…?
わぁ――どうしよう。そうなったら、早い所、気になる男子を見付けとかなきゃ――!」
(ネタの為に、男子に唾を付けるというのは。なかなかに本末転倒な気がするものの。
夜の内緒話は愉しそうだ、そう思ってしまったのだから仕方ない。
これで、就寝しているか否かを見回りに来る教師でも居れば、シチュエーションとしては完璧だ。
…残念ながら。教師にモノを教わった事など無いのだが。
もし、第三者が居たのなら。寧ろ先生よりも遙かに怖い、魔物の群を相手取りつつも。
気の抜けた会話を続ける二人に、呆れたか、驚いたか。
もっとも少女の場合。下手にギャラリーの増えない方が幸いではある。
彼のように、何らかの心当たりを思い付いてしまう者が居て。それが、邪教の取り締まりに関わってなど居たら。
折角自由になれたというのに、また追い回される事になるかもしれないのだから)
「毛布だけでも、そうだね、何人分になるのかな――?コートにして売ったりしたら、きっと、小金持ちになれそうだよ…?」
(少しばかり貧乏くさい発想が出て来てしまった。
生活臭が抜けきらないのも。死線に有るにも関わらず、我を失っていない証拠…と。言って良いのかどうか。
さて――真っ直ぐに突っ込んで来る巨狼は。雄牛の突進よりも破壊力が有りそうだが。
意にも介さず突っ込む騎士の突撃に、少しばかり、ぎょ、と目を見開いてしまう。
とはいえ流石に正面衝突する訳ではなく。上を取り、その背を狙った様子。
普通ならそれで終わるのだろうが。取らぬ侭に皮算用してしまったその獣皮が、体躯に相応しい分厚さで。槍傷を浅く留めてしまったらしい。
苛立つように唸りを上げ、ちらちらと頭上を睨めつつに、巨狼は少女へ突っ込んでくる。
流石にこちらはぶつかりたくない。とんとんと側面へ、飛び跳ねて逃げ出した。
先程のように影からバケモノを呼びはせず――というより。影が、動いていない。少女がその場を離れた筈なのに)
「やれやれ。…君は牛なの? ――足元注意だよ?」
直ぐ傍らを、嵐のように駆け抜け…るかと思った巨狼が。けたたましい物音を立て、地に嵌り込んだ。
のっぺりと拡がった影は生き物のように。黒く薄っぺらな姿を晒して地面に被さり――魔物達の目から隠していたのである。
夕刻、兵士や村人達と協力して設置した罠。その中の一つ、人の背丈ほど迄ある落とし穴を)
■エイガー・クロード > 「そうそう!まぁ私は気になる男子や女子なんていたこともないんだけどね」
そうして愉しそうに笑い合い、その周囲に魔物の遺体が散らばっていく。
こんなところを見回りに来るのはいないだろう。
少なくとも事が終わるまでは……。
幸いというか、前線に立つのが自分と彼女でよかった。
そして周囲に人がいないのは本当に良かった。
あまり自分の戦い方を他人に知られずに済むし、見世物でもない。
なにより、自分の手の内を可能な限り明かさないのは、『普段の仕事』として常識だ。
「あはは、確かにそうね。仕留めたらこれ全部あなたに上げるわ」
没落寸前とはいえそこまで自分の家は落ちぶれていない。というよりは……
金で解決できないのだから当然だ。
そうして背に乗り、巨狼の上に座る、その突進力は当然風圧が強い
だが、気をこちらに取られているなら好都合。
「そら、今まで食い物にしてた者たちからのお礼、よっ!」
地へと嵌りこんだ瞬間に跳躍……月光を背に、その巨狼の眼球を、槍が貫いた。
同時に、落とし穴は相当に深く、その奥底には……先の尖った木が多数埋め込まれていた。
例えその体が硬くとも、その体重を持って串に堕ちれば……答えは一つ。
けたたましい悲鳴を上げ、巨狼は暴れる。
「とっとと。……あんまり痛めつけたり、傷が多いと売れなさそうだし、そろそろやる?」
そう聞きながら暴れる巨狼から飛んで、少女の隣へと音もなく着地する。
■フルーア > 「うそ、意外、何ていうのかな――君って、モテそうなのに。
こんなに気遣い出来る紳士淑女、そうそう居ないよ…?」
(本当に、心底、意外だと言いたがる声になった。
ひょっとすると彼の身の回りのニンゲンは。第一印象ばかりで判断しているのではないだろうか。
おまけに、内面や実情を知れば知る程。探りを入れられる事を恐れて、距離を置く者達も居るらしいから。なかなかに大変そうだ。
いっそ少女のように、王家や貴族の周りとは、縁もゆかりもないような者の方が。彼とは親しくできるという事なのかもしれない。
事実今も。多分、見る者が見れば、良いコンビネーションだと評価してくれる筈。
確実に相手の数を減らし、頭を引っ張り出し…その上で優勢だ。
もちろん、本当の所、あまり見られたくないのは同じなので。褒めてくれる者達が居ないのが、残念だが…仕方ない)
「良いの?貰っちゃうよ?――――…ふふふ…?それじゃぁ、王都のスイーツ喰い尽くしは。今度は僕が驕って上げるよ――」
(戦闘中でなかったら。きらきらと瞳を輝かせていただろう。
うっかりすると、そこかしこに散らばった魔物達の亡骸が、視界の中で金貨に変換されかねないレベル。
だが。矢張りそれも、まだまだ皮算用にしかならないだろう。最後の一匹。大物を仕留め終えない限りは、決して安心出来ないのだから。
背を穿たれ、片眼を奪われ、怒りと流血で視界の欠けた巨狼は。薄膜で隠された落とし穴に気付ける筈もなく、まんまと落ちた。
村人達の恨み骨髄、幾本も立てられた、尖った杭が。槍ほどの鋭さはないものの、巨狼自身の体重によって、深々と突き刺さっていく。
其処へ。落とし穴の縁まで歩み寄った少女の背中から…何も無い背後の空間から。これまた成人一人分程も在ろう、青黒い腕が一本伸びる。
少女の胴なら握り潰せそうな程に大きな掌が、わしり、と上から巨狼の首根っこを掴み。更に下へと押し込んで。
更に杭の刺さりが深くなり、その場から動く事もままならない巨狼の咆哮に。片方の耳を塞ぎつつ。
――親指を下に向け。喉をかっきる仕草で。彼の問い掛けに答えてみせた)
■エイガー・クロード > 「あら、モテるわけないじゃない。この口調と化粧、子供の頃からよ?」
そう意外な声を出すのは、こちらも同じ。
少女のようにこうして話し合えるものは、王城にはいない。
たまにいるにはいるが、それでもここまで長くは続いたことはない。
こうしてともに戦うものも、勿論今までいなかった
だから嬉しい。そして……こうして共に話し合えることができたこと
それこそが、一番の望みだったのだから。
「全然いいわよ?ふふ……あら、それじゃあたくさん教えてあげなくちゃね?」
そうして笑い合い、そして目の前にいる巨狼へと目を向ける。
その目はもう、ただの獲物を見る目でしかなかった。
「首を落とす感じでいいのかしらね?これは」
■フルーア > 「そう?――まぁ…オトコ、オンナ、線引きにこだわるヒトだと。そうなのかもしれないね…?」
(ますます意外そうだった。大事なのは性別ではなく、個人の人格だろうにと。
…そういう言い方をしたのなら、大分良い話になるのだが。
ひょっとすれば少女の場合。相手の性別を問わない、いわゆる両刀だから――かもしれない。
好いた惚れた、気になる云々。話題にしているのだから。
もっとも今は。恋だの愛だの、では収まらず。もっとフランクに、範囲の広い付き合い方。
共に死線を潜るなど。関係の深め方としては、これ以上のものは無いのではなかろうか)
「愉しみ。とっても、愉しみだよ。…さぁて。差し当たって今日は、終わろう。
美味しい物に響かないように。…シャワーでも浴びないと、お互い酷い有り様だよ――」
(あれだけ暴れ回ったのだから。お互いきっと、返り血にまみれている事だろう。
濃い、血と獣の臭いが染み着いて離れない。
実に不快だ、そういう様に。うぇー、と情けない声を上げてから。首を落とす。そんな彼の言葉に頷いてみせる)
「――月に逸る、夜に生きる、魔物の殺し方は。大概決まっているんだよ。
心臓を刺し貫くか。それか、首を落とすかだ――」
(ぞろ。鬼の腕がもう片方。夜闇の奥から伸びてくる。
二本の手が、がっしりと。穴で藻掻く巨狼の頭と、胴とを押さえ付けた。
ただし少女の力に、文明的な刃物やその他、武器や道具は存在しないから。
切り落とす、という最後の一撃に関しては。騎士である彼に任せる、と)
■エイガー・クロード > 「特に中央に行くほどそうなるのよねぇ。残念なことに。
というわけで私、男性とも女性ともお付き合いしたことないわ、あー悲しい。どっかに私みたいな人受け入れてくれる女性いないかなー」
そうぼやきながら、槍先で這い上がろうとしてくる巨狼の頭を抑える。
片手で、しかしそんな巨狼の膂力に対して確かに対抗していた。
自身は別に両刀ではない、普通に女性が好きだし、男性とそういう関係になるのはさすがに無理だ。
……まぁ、本当に受け入れてくれる男性なら話は別かもしれないが。
いや、やっぱり駄目だ。
「そうねぇ。……においもひどいし、早く水を浴びたいわ。とっても熱い奴」
自身らの姿を確認して、そしてため息をつく。
鎧もマントもすっかり血で汚れている。腕のいい職人に頼んで洗ってもらわないと行けないだろう。
「なるほどね。じゃあ……」
すっ、と槍を向ける。すると不思議なことに、槍の先の形が彼の意志に反応してカタチが変わっていく。
だんだんと槍先が、尖った鋭いものから、斧のようになっていった。
それをふりかぶり、呟く。
「夜は終わり、そして人の世に安寧を。
どうか我らの魂にやすらぎを与えたまえ」
穏やかに、言い終わると同時に、巨狼の首と胴が、いとも簡単に別れた。
■フルーア > 「面倒臭い事の多いヒトは、大変だろうね。…もう少し気楽に考えて、生きていけば良いのにって。思っているよ――」
(それが出来無いからこそ。石のように、一つ所に強張って。先日少女が揶揄したような、古びた化石と化すのだろうけど。
そんな者達と同じにはなりたくないし…折角知り合った彼にも、同じになって欲しくはない。
聴かされて、それはもう。露骨な溜息をついてみせ)
「いっしょに行っても良いんだよ?どうせだったらその方が。使うお湯も少なくて済む、村のヒトは助かるだろうし?」
(そうした場合、男性である彼に、どう見られるのか。気にしていない…というより、深くは考えていない為に。軽口も出て来てしまう。
騎士という立場も在り、それ以上にここまでで知ってきた彼の人格も有り。余程の事が無ければ、身の危険は無いと。
それだけは確信出来ているのだろうし、それで充分なのだろう。
なかなか落ちない獣臭の方が、少女にとってはよっぽどの問題だ。
臭いの源泉。彼の腕、鬼の腕、それぞれで押さえ込まれて尚藻掻こうとする巨狼。
だが、藻掻けば藻掻く程その身は沈み、杭が深く突き刺さっていく。自滅に繋がる身悶えと、諦めて命を差し出すのと。
どちらがマシなのかなど、ケモノの頭では考えられる筈もなく。唯咆え、藻掻き、生き足掻き続ける狼目掛け――
如何なる奇跡か。首を落とすに相応しい、断罪の斧めいた形となった彼の槍が振り落とされた。
――それで。夜に、静けさが戻って来る。二人のニンゲンを除き、その場に生きた者は居なくなったから)
「これでお終い。……疲れたね? 早くシャワー、そして、ご飯。…村のヒトが、たくさん作ってくれるから――」
(死ねばお終いだ。そう思っている。以前は彼のように、死出の旅路に際して、祈りの文言が一つか二つは出て来たのだが。
如何に神を信仰しようと、殺される時は殺される。死ぬ時は死ぬ。それを、元居た所の壊滅で思い知ったから。
踵を返して歩き出す少女もまた。全身に血を浴びて、さながら深紅のドレスへと着替えたように。
残念ながら血の紅は直に濁る。獣の臭いはどれだけ洗っても、繊維からは落ちないだろう。
着替えもどうしようかなぁ、などと。実に現実的な――ニンゲン生活に根ざした会話を再開しつつ。後始末は兵達にでも任せる事として、二人は村へと戻っていく。
宿で落ち着く事が出来たなら。さて、共に過ごす二度目の夜は。どんな、愉しい物になったのだろうか)
ご案内:「◆ゾス村(イベント開催中)」からフルーアさんが去りました。
■エイガー・クロード > 「えぇ、そうねぇ。気楽に行ければ、それが一番いいんでしょうけど」
自身は彼らのようにはならない。そう確信はあった。
むしろ、彼らよりもずっとおぞましい存在になり果てることが、怖い。
自分の存在が、もし、目の前の少女にすら傷つける存在になり果てないか……。
「あら、いいの?そっちが構わないなら私も別に」
まさか自身が彼女に欲情するはずもないだろう。
そう自分自身で確信していた、勿論『見ようと思えば』見ることはできる。
だが今は、自身や、彼女の美容の方が大切だ。
そうして……ついにこの獣狩りの夜は終わった。
「……えぇ、お疲れ様。今夜は、そうね。疲れちゃったし……いっぱい食べましょっか」
二人して戻った村は、意外にも最初は静かで、
そしてようやくことが終わったことを知った村は、大歓声に包まれるのであった。
こういった歓声を浴びたことはなく、だからこそ、少し……報われた気がした。
今夜のその後も、きっと……とても、そうとても……
愉しいものになったに違いない。
ご案内:「◆ゾス村(イベント開催中)」からエイガー・クロードさんが去りました。