2020/05/14 のログ
ご案内:「◆ゾス村(イベント開催中)」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ご案内:「◆ゾス村(イベント開催中)」にティクスさんが現れました。
ティクス > 「そう思うんだったら尚更。遊び半分で、邪魔しないで欲しいんだけどね――」

そろそろ。言い分が愚痴っぽくなって来る。
諸々想定から外れた上、散々必死こかされているというのに。
この少年にとっては此処までしても、まだまだ遊び気分でいられるというのだから。
児戯のような気軽さで、こうも多様な魔術を使える相手…そう考えればぞっとしない。
だからこそ尚更に、逃亡を最優先としたのだが……

「あぁ、っ、くそ…!これだから、常識の範疇から掛け離れている連中って、始末に負えな――ぃ゛!?」

足に絡み付く木の根。動物さながらに蠢き続けているそれに、鳥肌が立つような感覚を覚えつつ。
兎にも角にも不完全だが、少年に煙幕の効果が出たのだから。
今の内に逃亡を再開するべく、小ぶりなナイフを引き抜いて、その根を切断しようとするのだが。
頑丈な繊維質を全て断ち切る事が出来無い内…ぐん、と。身体が引っ張られた。
手繰り寄せられる形で地面の上を引き摺られ。真っ直ぐに、咳き込む少年の方へと向かう軌道。

マズい。そう考えるのは当然だ。両者の間には未だ、少女の撒いた粉煙が蟠っており。
最短距離での連行は、少女自身もまた、その中を突っ切らされる事となるのだから。

「……っ、……っっ…!!っ、ぁ゛、つ…ぅ゛………!!」

分かっている分息を止め、頭を抱え込むようにして。せめて、吸い込む事だけは避けるものの。
それでも全ての被害を食い止めるには及ばない。力を入れて閉ざす瞼越しにすら、ひりつき焼けるような熱さを感じて、否応なく涙が零れてしまう。
より酷いのは。少年と違い、木々や枝葉で切ったり擦れたりした彼方此方の傷に。辛みの塊が滲みて堪らないという事だ。
傷という傷に熱湯を浴びせ掛けられるような痛みが走り、噛み締めても尚、抑えきれない声が漏れ。
悶えに悶えてしまう侭、残る距離を一気に、手繰り寄せられてしまい。

……そうして、到着する。彼方も未だ悶えているような、少年の足元へ。

「くぁ゛、っぁ…づ――な…何、す…する気…だか……ぁ゛…」

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 幸い、と言うべきか。或いは、完全に防ぎきれなかった己の未熟さを嘆くべきか。
兎も角、少女の放った一撃は正しく一矢報いたと言うに相応しい結果を生んでいた。
少女に取って、唯一の失点は、あと数歩分の距離が。粉塵が己に致命的な隙を与える距離が得られなかった事だけ。
しかしてそれは、致命的な失点であったのかもしれない。
痛みに悶え、呻きながらも、己の行動を止めるまでには至らなかったのだから。

「……何をする気か、だと?何もせぬよ。尋問も拷問も、私の趣味では無い。唯、溝鼠が噛み付いた相手が誰だったのか。それを貴様に教えてやるだけだ」

当然と言えば当然なのだが、己の元迄引き摺られた少女は、自らが放った粉塵に手酷くやられてしまったらしい。
その様を、未だ目元から零れる涙と時折鈍く咳き込む儘に呻く少女を見下ろすのだろう。

徐に、乱れる集中力を沈めながら魔術を発動する。
様々な武具を生成する魔術は、己の望み通りに細く長く、しなやかな"武具"を手元に齎すだろう。
何の変哲も無い、極々一般的な、革製の鞭。その鞭を軽くしならせ、無造作に少女へと振り下ろした。

ティクス > 「ひぐ、っ、ぁ゛――そ……ぁぁ、そう言……呼ばれる、のもっ、久しぶり……」

鼠。その程度の扱いをされてきて、其処から名前を取られたのだ――など。少年には知る由も無いだろうし、知った所でどうでも良いのだろうが。
少女の方は久方ぶりに。以前を思い出してしまった。
その先此処最近は、比較的上手い事、生き長らえてきた気がするのだが。
案の定少女の、盗賊達の生き方は。痛手一つがたちまち致命傷となりかねない…綱渡り。
今こうして。圧倒的な力を持つのであろう少年に、囚われた事で。今後がどう転んでしまうのか。想像したくもないのだが…

「――――…!! っぎ、ぅ゛!?」

瞼がひりつくものの、近すぎる程に近い声で、少年の眼前に運ばれた事を察し。
薄ら目を開いた…ところで。細く鋭い影が振り落とされた。
ばしん!と乾いた音が爆ぜ。一瞬遅れて走り抜ける痛みに、思わず、背中を丸めてしまう。

――鞭。そんな道具で嬲られるのも、どれ程振りだろうか。
少なくとも、子供扱いされなくなって以来…かもしれない。
だが大人に近付いたからといって、到底、平気で居られるような苦痛でもなく。
まして露出した肌に、赤々と鞭の痕が走れば。其処もまた、付着した粉塵が染み渡り、本来以上の激痛に苛まれて。
撲たれながら焼かれるような痛みの強さに。…声も出ない、と言うべきか。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「ほう?では精々郷愁に浸ると良い。畜生の名で呼ばれた過去を懐かしみながら、呻いていれば良い」

溝鼠、と呼ばれる事が久し振りだと言う少女に、漸く真面な呼吸を取り戻した唇から高慢な言葉が零れる。
既に纏う空気に怒りは無い。しかし、甚振る事による喜悦や愉悦も無い。
少年にとって、正しく此れは躾の部類に入る行為でしかない。歯向かった相手を。虎の尾を踏んだ代償を。少女に教え込む為の、行為。或いは、折檻。

「…成程。貴様が私に浴びせようとした物は、随分と良い出来栄えだった様だな。軽く振るっただけで、其処迄痛みを覚えるとはな」

苦痛に呻く少女を見下ろし、再度鞭を一閃。しかし、その向かう先は少女の躰では無い。
少女の躰に触れる寸前で、軌道を変えた鞭の先端が大地を叩く。渇いた空気音と、大地を打つ革の音が二度、三度と少女の耳に届くだろうか。

決して、少女を痛めつけるものでは無い。しかし、少しでも身動きすれば。己の手元が狂えば。己の気が、変われば。
今しがた浴びたばかりの激痛が再度少女を襲う事を、明確に告げる様に数度鞭の振るう音が響くだろう。

ティクス > 「嬉しくは――…っぐ…ぅ゛……ないけどね。懐かしいだけで――」

此方は、少年とは違う。
当たり前でしかない事を、当たり前だからと言って、平気で受け止められはしないのだ。
鞭打たれ、傷痕に香辛料が降り掛かる。それはもう激痛としか呼べない物が、身体中其処彼処を痛め付けている。
…幸い、鞭打の痛みは一つだけに留まっているのだが。
二つ、三つ。幾度も振り落とされる鞭が、極至近の地面を叩く。
ほんの僅かに少年の手元がぶれるか…気分が変わるかしたのなら。鞭の先は直ぐにでも。少女の背を撲つ事だろう。
裂かれる空気の揺らぎすら、熱く傷を炙るのだろうか。地面に突っ伏す体勢、丸めた背中、それは依然変わりなく。

「…、っ、……っぐ…ぁ、…!っは、ぁ゛……まだまだ、色々…出来たら、披露したい所、だよ…?」

やがて。ようやく、煙が晴れていく。大凡は鞭の勢いで薙ぎ払われたと言うべきか。
傷が、疵の痛みだけを訴えるようになれば。少しは呼吸も、言葉も。戻って来るのだが。
その間も顔を上げる、身を起こす、といった素振りは見せなかった。

当然と言えば当然だろう。先程のナイフを含め。まだ、手の中に幾つかの”手段”が残っている。
未だ、何かが出来るというのなら。…もう少しの間は。諦めずに済むかもしれないのだから。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「おや、そうかね。懐かしむべき過去があるというのは良い事だとは思うが。例えそれが泥水を啜る様なものであれな。思い出せる過去があるのは生者の特権。もう少し、慮ってやりたまえよ」

痛みを堪える様な口調ではありながらも、此方の言葉に噛み付く様な少女の言葉に愉快そうに笑みを浮かべる。
笑った拍子に再び喉に鋭い痛みが走り、顔を顰める事にはなるのだが。
それでも、傍から見ても少年の機嫌は若干上昇傾向にあるとみて良いだろう。それは、嗜虐の悦びでは無く、未だ己の手中で足掻く少女の姿そのものを愉しんでいる様な――

「…ほう?どうやら、鞭打ち程度では躾にはならぬらしいな。その心、是非とも手折りたいものだ。雑草の根は深いというが、それを引き抜くのも一興やも知れぬしな」

薙ぎ払われた粉塵。それは、己が少女に近付く事が容易になったという事でもある。
背中を丸め、顔を隠した少女に歩み寄れば、倒れ伏す少女を組み伏せる様に圧し掛かろうとするだろうか。
未だ少女の躰に残る粉塵が己の身に纏わりつく事も厭わずに。
それが叶えば、魔術によって強化された筋力によって、半ば強引に少女の顔を此方に向けようと。腕を伸ばすだろう。

とはいえ、それは少女に反撃の機会を与える事にもなる。
未だカードを残している少女にとって、強化されたとはいえ体術も何も知らぬ少年に一手打つ事はそう難しい事では無いだろう。

ティクス > 「少しは。……その含蓄に、賛成しようと。…思わないでもない、かもね――」

(確かに。過去が無ければ、その先の現在は有り得ない。どんな物であれ、無かった方が良いとは言えない筈。
勿論、散々な目に遭わせてくれた少年の発言に対して。素直に同意してみせる筈もなく。
当然其処には含む物が有るのだが――

「はぐ…っ、は――ぁ゛…出来…る、………ものなら。」

やがて少年自身の影が落ち掛かり。覆い被さられてしまったかと思えば…ぐぃと。想像を超えた力強さで、頭を持ち上げさせられた。
掴まれた頭と喉に走る痛みに、思うさま表情を顰めつつではあるものの。顔と顔、互いのそれが一気に近付いた所で――
それぞれの隙間に滑り込ませるのは。先程根を断とうとしていたナイフ、その切っ先。
持ち上げられる頭を追い掛け、俯せて胸元に抱き込み隠していた刃物が持ち上げられれば…ぴたりと。
刃の尖端を、赤く腫れているのだろう少年の瞳。その寸前に突き付けてみせようかと。

…強い。硬い。それが分かっている為に。皮膚とは違う所、柔らかそうな所となると。必然、狙いは限られたのだが。
相手の方から距離を詰めてくれたのが。この場合好都合だった。

「そう、こんな時にどうすれば……良いのか、とか?
色々と過去に体験してきた事を、思い出すと。役に立つ――ものだし、さ」

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「素直に賛意を見せていれば良い物を。生き残る為には、媚を売る事も大事だとは思うがな」

尤も、そうやって媚を売られれば、己に取っては愉しむ理由も無い。健気に噛み付いて来る様が己に取っての愉悦。その爪が、牙が、少女が諦めない限りは此方へ届き得るかも知れないという状況そのものを俯瞰する様に愉しんでいた。
己の身が危険に晒されても尚、その愉悦は甘美な嗜虐心と共に己を縛り付けるのだろう。

「…その不遜な態度も、私への狼藉も、今は構わぬ。抵抗すればするだけ。足掻けば足掻いただけ。貴様の心を手折った時の愉しみが増すというものだ」

慢心と高慢の笑み。そうして少女に投げかけられた言葉の応えは、己の瞳に向けられた切っ先。
己に似た赤い瞳が、迷う事無く刃の先端を己へと突きつける。ソレを一瞬きょとんとした様な瞳で見つめた後、深紅の瞳は愉悦と闘争心に歪む。

「良い経験を積んだ様だな。見事なものだ。貴様の刃が私を貫くのが先か。私が此の侭貴様の喉を握り潰すのが先か。
――だが私は、そういう乱暴なせめぎ合いは好まぬのだ」

此の状況では、控えていたドリアードも役立たず。後は文字通り、何方の手が早いか、といったところだろうか。
だから、此処迄温存し、少女に向ける事の無かった己の魔術を発動する。渇望を、餓えを、満たされぬ欲求を植え付ける魔術。少女の喉元を掴んだ掌から、流し込まれる様に注がれた魔術が訴えるのは――

「…先ずは落ち着いて深呼吸でもしたらどうだ?」

それは、生物が生き永らえる為の大前提。即ち、呼吸。酸素への渇望。少女の精神を蝕もうとする魔術は、常に水中に沈む様な息苦しさを少女に植え付けようとするだろう。
尤も、あくまで精神魔術であり、レジストそのものは特段難しいものでもない。
少女の動きを少しでも阻害できれば、と思惑での魔術ではあるが――

ティクス > 「全く以て賛成だけど――そういうのって。相手を選ぶべきだと思う。…違う?」

殊更に首を傾げてみせながら問い掛ける。
ただ今回の場合。少年の事を”媚びを売るまでもない相手”だと、舐めて掛かっている訳ではない。
寧ろ逆に”媚びる程度でどうにかなる相手ではない”と。明確に警戒と危惧を続けている為だった。
相手の心根など知る由もなく。そもそも少女の側には余裕など無く。
だからこそ、眼球へと刃を滑らせる事ですら。まるで躊躇わなかったのだが。

「玩具になるつもりは無いんだけど…色んな意味で。
もう一回言うけれど…どんな玩具も。扱い方を間違えたら、怪我するよ?」

良く言うではないか。尖った部分を人に向けてはいけません、と。
流石に玩具の方から直に、鋭利な切っ先を持ち手へと向けてくる…というのは。回避しようのない不測の事態かもしれないが。
何れにせよ。互いに王手を掛け合っているかのような拮抗状態まで。どうにか持って行く事が出来た。
幸い、順番は交代制に限られず。後はどちらが先に動くか、か……千日手を嫌うなら、仕切り直しを選ぶか、だと。
少なくとも少女の方は考えていたのだが。

「残念だけど。こっちは魔法も使えない、無作法な遣り口しか知らない。
盗賊風情に夢見るものでも、期待するものでもないよ。…後はそうだね、出せるとすれば――」

後幾つ、仕込みが残っていたろうか。頭の中ではそれを考え続けていた。
至近距離どころか密着位置。この状況では、先程のような煙幕や爆発物は使えない。
自爆覚悟でない限り、必然、近接用の物に限られる。…後はせいぜい零距離射撃くらい。
如何にして、喉にかけられた手を退かせるか。互いに距離を取り戻すか。それ等を考え、目まぐるしく動き続ける頭の中から。

「――か…、っは…!?」

脳の巡りに必須の酸素が、急激に不足する。そんな錯覚に囚われた。
寧ろ実際は錯覚にすぎないのだと。精神が思い込まされているに過ぎないのだと。気付く事は出来ないだろう。
自ら言ってみせた通り…少女には、魔術的な素養も知識も。欠片も存在しないのだから。
力の籠められていない手首に、喉を締め上げられているかのような。息が出来ない、という感覚。
びくんと大きく震えつつも。最低限、それが目の前の少年によるものなのだという、最も重要な事だけは即座に理解して。
躊躇う事なく、目元へ突き付けた刃を、押し込もうとする。

――但し、どうあっても一拍。或いは二拍。遅ればせの行動になってしまうのだが――。