2020/05/15 のログ
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 首を傾げる少女に、ほお、と少し意外そうに目を見開く。

「溝鼠にしては賢しいな。それとも、生き残る為の機転が利くと言えば良いのかね」

図らずも己の内面を言い当てられた様な言葉。流石にこの状況下において、少女の言葉の真意を違う事は無い。
宮中の有象無象とも呼べる様な貴族よりも、己から見ればコソ泥以下の少女の方が、己を僅かながらにでも理解しているという事実。慢心しながらも切迫した状況である事は理解しながら、思わず苦笑いを零してしまうだろう。

「そうかね?少なくとも私は、手に入れた玩具は粗末にせぬよ。……それとも、愛玩用として弄ばれる方が好みだったか?
まあ、刃を向ける玩具というのは流石に考え物ではあるが…それはそれで、愉快な事だよ」

少女の喉元を掴む己の手と、向けられた刃を掴む少女の手。
交互にそれらを眺めながら、危機感の無い高慢な笑みを浮かべる。とはいえ、次の行動が起こし難い状況なのは己とて同じ事。
何方が先に動くのか。或いは、此の状況を打開する何かが起こるのか。手数の差で言えば、少女が此の状況を打破する筈、だったのだが――

「……そうか。魔法は使えずとも、対策を講じる事は出来る。良い経験を積んだな。次に活かすと良い。盗賊」

少女が次の一手を繰り出す前に発動した魔術は、どうやら予想以上の成果を上げたらしい。というよりも、単純に魔術に対する知識と防衛策が少女には無かったと見るべきだろうか。
兎も角、状況は動いた。それも、此方に十分優位な方向に。
即座に酸素への渇望が己の仕業である事を理解し、刃を突き立てようとした少女の状況判断能力には素直に賞賛の意を表するべきだろう。魔術による強化が無ければ、例え精神が蝕まれた状態でも、少女の刃は己に突き刺さっていただろう。
――だが、そうはならなかった。

「手癖が悪いなら、縫い付けてしまわねばな。それに、魔法が使えぬのなら、もっと良く味わってみたいだろう?
絶え間ない渇望に溺れる感覚を愉しめ、コソ泥」

押し込まれようとした刃を、軽く頭を傾ける事で容易に回避する。そのまま、伸ばされた少女の腕を掴み、己の両手で少女の両手を地面に押さえつけようとするだろう。
その間にも、魔法を知らぬと告げた少女に追い打ちをかける様に発動する魔術。己が最も得意とする渇望の果て。
即ち、肉欲。悦楽。快楽への果て無き渇望。昂っても昂っても、とめどなく湧き上がる様な情欲を少女に植え付けようと。
それは即ち、呼吸と快楽の双方への渇望。躰は酸素を求め、
脳が快楽を求めるという精神と肉体の双方を壊す餓え。

先程の様な不意打ちめいたものではなく、自身の異変が己の魔術によるものだと知った少女であれば、蝕む魔術に対抗する事も可能なのだが――

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ギュンター・ホーレルヴァッハ > 後日継続にて――
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