2019/01/13 のログ
ご案内:「ゾス村」にマードッグさんが現れました。
■マードッグ > 野良には野良の矜持がある。
けれども己は野良の前はろくな扱いではなかったが一応は飼われていた時期があったのだ。
魔族に寄生され、奇妙な共生関係にはあるがやはり冬空の下何もない茂みに紛れて眠るよりかは人家にて暖を取って眠りたくなるというもの。
一見すればただの野良犬――にしては毛並の状態が良いが――故に魔族を内包しているのを悟られる事なく村に何食わぬ顔で侵入しては、誰か物好きな、よければ雌の家にあがりこませて貰いたいものだと村を堂々と散策。
村の人々は常日頃自分達が置かれている環境故に野良犬一匹増えたところで気に留めはしまい。
決して豊かと言えない生活は、心さえも貧しくするのであろう。
村娘の許に近寄っては瞳を潤ませ、声を上ずらせてくぅん、と渾身の甘えた鳴き声をあげて尻尾をこれでもかと振って可愛い犬アピールをしてみるのだが邪険にされてあしらわれて一人目のチャレンジは失敗。
去る背へ甘えた顔は何処へやら眉間に皴を寄せ牙を剥き出しに顔を歪め、露骨に雌の癖に生意気なと言わんばかりの態度で低く唸ってから見送り。見送るだけでそこで終えるのは、まだ他にも雌がいるということと、事を荒立てて村人達に囲まれて叩かれたら堪ったものではないという打算からだ。
気持ちを切り替えればもっと簡単に取り入れそうな雌はいないものかと日が沈みきる前にと空を見上げ刻限を確かめながら野良魔犬は道行く人々を眼で追い品定めをして。
■マードッグ > 暫くすれば犬好きだったのか、或いはただの気まぐれだったのかは定かでないが、一人の女が家に連れ帰ってくれる事となった。
貧しい家、貧しい食事。
かつての暮らしを思えば犬小屋に劣るものだが野宿よりは遥かにマシであると割り切ることにしたが、連れ帰ってくれた女がただでさえ少ない食事を減らして自分に分けてくれたその心意気には感謝するより他は無い。
なので、お礼として――夜間、寝静まった時刻に彼女の寝室に忍び込み、己の、魔犬の子種を人の胎にたっぷりと注ぎ、孕ませてやることにした。
優れた雄の子孫を、みすぼらしい雌に産む栄誉を授ける。雌にとって十分な報酬だろうという獣の身勝手な考えによって。
数日後、魔犬の仔を身籠った女が子犬を産み落とし騒動となるが、その時には元凶の魔犬はとうに別の地へ気ままに放浪していて。
ご案内:「ゾス村」からマードッグさんが去りました。