2018/10/04 のログ
■クレス・ローベルク > 「ん、そろそろか」
それから暫く経ち、再び彼等の剣に乱れが出てきた。
太刀筋が甘いのが二人、身体全体ではなく、腕だけで振っているのが三人。
見た目、先程教えた動きを正確になぞっているのは一人だが――
「やれやれ」
これだから子供に剣を教えるのは苦手なんだ、と心の中で毒づいて、最後の一人の少年の所まで行く。
少年は近づいたのにも気付いてないのか、一心不乱に剣を振っているが、
「よっと」
不意に、その太刀筋を掬い上げるように、自分の剣の鞘で彼の棒を叩いた。その棒は、少年の手から回転しながらすっぽぬけ、彼の顎を強かに叩いた。
『~~~~~!!!』
顎に衝撃が走り、悲鳴さえあげられず顎を抑えて悶絶する少年。
しかし、それに構わず男は少年に拳骨を食らわせる。上と下の痛みに、何やら踊りの様な悶絶の仕方をする少年だったが、それにすら構わず。
「あのね、いくら正確でも、叩かれたぐらいで取り落とすような握り方じゃ何の意味もないんだよ……」
呆れた様に言って、落ちた棒を拾い上げる。
そして、素振りを忘れて呆然と見ている彼等に対し、
「疲れたならちゃんと休憩すること。俺は君たちの休憩の時間まで、一々嘴挟んだりしないからね?――最低限、訓練になる程度には体力を維持すること」
そう言うと、少年たちはやはり顔を見合わせていたが、やがて一人二人、広場の隅で座り込み始め、やがて全員がそれに習った。
「(やれやれ。色んな意味で真面目なんだよなあ、この時期の子供達は)」
自分の将来が見え始め、それに努力することの意味を知る歳頃だ。
そりゃあんな風に色んな意味で真面目にもなるだろうが、加減を知ってほしい。
ともあれ、自分も休憩が必要だ。
今度は地面にではなく、広場を囲っている小さな柵にもたれかけ、身体を休める。
■クレス・ローベルク > 体内時計で大体三十分を超えた。
そろそろ、ある程度は疲労が抜けただろう。
「(そろそろ良いか)」
そう言うと、再び広場の中央に行って、手をたたく。
「それじゃあ、十分体力を回復できた子から、今度は打ち込み稽古を始めよう。二人一組で打ち込み側と受け側を決めてやるんだ。取り敢えず最初はゆっくりね。怪我をさせると、俺が村長さんに怒られちゃうから」
何人かの子供が笑ったが、しかしクレスにとっては笑い事ではない。
別に擦り傷や打撲ぐらいは戦士の勲章として笑えるし、単純骨折してもクレスの心が傷んだりはしない。子供達だって文句は言わないだろう。
しかし、腕が使えなくなったり脳に障害が残った日には、子供達が許しても、その親たちにリンチされて殺されてしまう。
「(とはいえ、強くなるためには避けて通れないからなあ)」
頼むから無事に終わってくれよーと想いつつ、合図を出す
「それじゃ、始め!」
■クレス・ローベルク > 「……」
棒と棒がぶつかる軽い音が響く。
見る限りにおいて、特に問題はない。
途中棒を受けそこねた者も居るが、こちらの注意をちゃんと聞いてくれたのだろう。怪我はしていないようで
「これなら大丈夫かな……ふぁ……何か安心したら眠くなってきた……」
監督役として、眠るわけにはいかない。
しかし、だからといってやる事もない。
誰か喋り相手になってくれないかなーと想いつつ、ぼんやり打ち込み稽古を見る。
■クレス・ローベルク > 「あー、ダメダメ。このままだと寝ちゃうわ」
頭を振って目を覚まし、少年たちの方に歩いていく。
「よっし、じゃあ次は本格的な実戦稽古に移ろう。全員で二組に分かれて、一回叩いたら脱落。先に全員脱落した組が負けって感じで――」
まだ日は高い。彼等の訓練はまだまだ終わらないのであった。
ご案内:「ゾス村」からクレス・ローベルクさんが去りました。