2018/09/09 のログ
ご案内:「ゾス村」にムウィンダジさんが現れました。
ムウィンダジ > (故郷を失い、森を出て、国を越え。己に帰るべき場所は無く、だが、それでも己の在り方は変わらず、この地に留まる目的も忘れはしない。不思議な事にこの大陸へ訪れるまでは確信できた匂いであったが、王国のみならず魔王国、帝国といった国からも感じ取れ、どれが本物か定かでなくなっていた。原因は不明。しかし諦める訳にはいかず、道中己が見た事が無い鉄塊の巨人と人々が闘う場も見たがどちらの味方でも無い己にとっては己が闘う理由が無い限り闘う力を持つ者同士の理由も分からぬ争いへ介入する気もなく、平原を離れ遠くの郊外に足を運びこの日の寝床を探し求めてきたのであった。ゾス村と呼ばれる近郊。戦争の影響が及び、被害を受けて心の豊かさこそを忘れてしまった人々が住まう村。そして、病に伏せた親の為に、村はずれの薬草を求めて村を出たまだ小さな姉弟の二人が、獲物の匂いを嗅ぎつけた三人組の小悪党たる野盗に囲まれていた。この国では珍しくないこと。弱者が強者に嬲られるのは、別にこの国に限らず森でもあった。人間の視力とは比べ物にならぬ遠方よりその光景を観察し、獣は吼えた。人間の言う正義感は持ち合わせない。ただ、脳裏にあの日、多勢に無勢で多くを殺してもそれ以上の大勢を抑えきれず、まだ狩りも出きぬ我が子が殺され、焼かれた記憶が甦って――その日、小悪党は知る。生物としての強者とは何たるかを。群れずとも力持つ者は我を通せるのだと。そして、子供達相手には強者として振る舞った自分達がどうしようもなく不運な弱者の側であったのだと。一方的な蹂躙であった。生物の根源的恐怖、生存本能を喚起させ萎縮させる咆哮が四方万里に轟いたや否や、三人組が何事かと身を竦ませながらこれみよがしに手にした武器を翳し警戒していたが、遅い。彼らにとっては遥か遠く、己にとっては零に等しい彼我の距離を強靭な下半身の発条を活かした大地が爆ぜる駆けだす一歩から剛腕が大地を殴り疾駆。跳躍。闇夜にも燃える焔の如き巨影を空から隕石さながら失墜させ、三人組と子供達の間へ着地しては、彼らが慌てて事態が呑みこめずとも、言葉が通じずとも分かる明確な敵意と獣性に各々の刀剣、銃、長棒を振り翳すがそれを躱す事無く巨腕一つで事もなげに受け止めて。冗談のような光景。鎧でも何でもない剛毛と皮膚と筋肉、それらの前では人の利器が通じぬとでも言うように、刃が欠け、弾丸は毛で止まり地面に落ち、棒はへし折れて。避けなかったのはひとえに子供達に当たる可能性があった為。怒りに燃える深緑の双眸で三人組を睨めば、手近にいた剣が欠け呆けていた剣士崩れの胴体を手だけで鷲掴み。悲鳴をあげるそれの骨を、内臓を、殺す迄はいかずとも握力だけでその気になれば握り潰せる力を三人に見せつける形でめりめりと握りしめ。助けようとした棒使いの腹を、極力加減し長く太い後ろ足の爪先で邪魔だと追い払えば棒切れ諸共軽々宙を舞い遠くへ墜落。逃げ出そうとした銃使いへと、剣士を砲弾代わりに握ったままぶぅん、と風が切り潰れる音を立てて腕を振っては逃げ出す背中へ剣士を投げつけ一塊に吹き飛ばし。完全に気絶した三人組を殺す気はない。これは所詮、八つ当たりなのだ。かつて叶わなかった仔を助けるという行為の慰めだ。怯える子供達へ振り向こうとして、軽い衝撃。子供達にとっては己はただの魔物、魔獣、化け物だったのであろう。気休めにもならない小振りなナイフを手に、震えながら弟を守る為ナイフで刺そうと体当たりし、呆気なくナイフがぐにゃりと曲がり、硬い感触に弾かれ尻餅を着きながら泣きそうになり。しかし弟を守る為、弟を食べるな、私を食べろと自分も怖いであろうに叫ばれて。人を食えない訳でないが、故郷で人と交流があった為人を食物にする気が無いが、そうと知らぬ己へ弱くても守る為に挑んだ子供を見下し、その頭へ手を伸ばし、ぽんぽんと不器用に叩く。てっきり潰されるかと思ったのか、きょとんとする仔の顔が滑稽で、ふん、と鼻息を立てて。それから子供達の目的は知らぬが、脅かさぬよう子供達から離れ、三人組が起きて何かしないようにいつでも動ける位置に陣取り寝そべって監視。それは子供達が他の害からも襲われぬようにとの意味だが、もしこの場を見られたら子供達を襲撃する側と思われても仕方ないか。)
ムウィンダジ > (敵意はない、という意思表示で寝そべっていたが子供達がどう受け止めたかは定かではない。ただ、急いで目当ての薬草を探し、時折何度も此方へ警戒して振り向いていた。やがて目当ての物を見付けたのか、なるべく距離を空けて一目散に子供達が去れば、のそりと身体を起こして大きく伸びをし大欠伸。三人組はまだ気絶しているが放置しても構うまい。身体を起こせば、手頃な寝床を求め再び歩き出し。)
ご案内:「ゾス村」からムウィンダジさんが去りました。