2017/01/22 のログ
■シーゲイザー > ――ボロボロの床が軋む
ベッドに誰かが腰を掛けるとギシッと軋み、床と同じ音を響かせて、耳障りな音が狭い廃屋に響き木霊する。
ベッドを軋ませた主の声が続きハッキリと室内に響くとヒトデ型の形状をした肉塊のモンスター達は鋭敏な聴覚でそれを捕らえ、一斉に色めき立つ。
しかし、食欲を満たす為の行動の最中に繁殖欲に意識を切り替えられる個体は少なく、代わりに誰か侵入者がいると言うのに再び食事を始め、直ぐにそれを終えて次なる行動に入ろうとなりふり構わぬ様子を見せる。
それは女冒険者の声を引き金にして一瞬の変化。
ただのボロボロ家具の散らかる廃屋に響きだしたのはガリガリ、ボリボリと硬い何かを何かが限り咀嚼する音。
それ以外にも何かが物を引き摺り、何処かに引きずり込む音さえ聞こえ始め、魔物達の食事の音が灰屋内に木霊していく。
ぬれた水音、噛み砕く音、咀嚼する音、先程まで無音に近しい状況だった廃屋が無数の耳障りな音に支配され始めていくと、幸か不幸か、魔物にとっては幸運で廃屋に一夜の宿にときた女冒険者には不幸で、1匹の肥大化した個体がベッドの下より這いずりだし、そのベッドに腰掛ける女冒険者の背後に姿を見せると大きく身体を広げて、今まさにその身体を利用して女冒険者を包み込もうとする。
――不意打ちの心算ではある、心算ではあるが窓から差し込む月明かりが魔物が身体を大きく広げている姿を照らし、廃屋に巨大な影を生み出して、女冒険者に危機を伝えてしまう事にと……。
■レナ=ミリイ > 「っ!」
一日カリで森を平原を走り回った夜のこと。
落ち着く場所を得ればそのまま休みたい衝動に駆られるもまずは武器の手入れをしなければと脇に置いていたボウガンを手に取った瞬間に響きわたる音。
その音に驚いたように立ち上がればボウガンを構え部屋を見渡すと先ほどまでは見なかった謎の物体が部屋の家具などを食しているのが目に入り。
「なに、あれ……!」
見たことのない生物に警戒しながら暗闇に目を凝らして様子を伺い。
そのとき、視線の端に大きな影が見えれば咄嗟に飛びのこうとするも足元にいた小さな個体を踏んでバランスを崩しそのまま片膝を付く形になってしまい。
■シーゲイザー > 踏みつけられた小さな個体はグジュと音を立てて粘液を撒き散らし、慌てた素振りを見せながら小さな金属のフォークなどを抱えて物陰に隠れてしまう。
が、それは大した問題ではなく、小さな個体がどうなろうと群れ全体に大した影響が無ければ群れは群れとして動く事はしない。
だが今まさに襲いかかろうとした個体は別で、女冒険者が立ち上がり飛び退こうとして距離が開いた分だけ包み込もうとした動きは阻害され、その身体は何も挟み込み包み込む事は出来なかったが、そのままバランスを崩す姿が見えれば、興奮した様子で唾液をベッドのあちらこちらに巻き知らし、威嚇の真似かベッドの上に鎮座したまま身体を起こして、ガラスを引っ掻くのに良く似た耳障りな音で泣き喚く。
――だがそれは別に周囲の個体を動かす合図でもなければ、威嚇でもない、群れは小さな個体を含め肥大化した個体の鳴き声を聴覚で聞き捉えると、先程の金属を抱えて隠れた個体と同じく、一斉に家具や廃屋の外へと逃げ出していく。
女冒険者は確かに上質な獲物ではあったが、今はそれを捕らえて貪れるほど力が無く、巣をあらされて仲間を呼ばれることを重要視した結果の撤退行動。
小さな村の廃屋の一つに巣食った魔物は今宵は一先ず村の近くの森の奥へと消えていく。
ただ不気味な事に廃屋にはタップリと匂いを残し、その這いずった後は隠しもせず森へと続いていて、まるで外へと誰か何かを誘うような錯覚すら感じるもので……。
ご案内:「ゾス村」からシーゲイザーさんが去りました。
■レナ=ミリイ > バランスを崩したものの咄嗟にボウガンを構えないして振り返れば巨大な影が窓から外に出ていくのが見え。
まるでそれに呼応するようにあたりにいた生物が部屋からいなくなるのを確認し。
「なんだったの……今の」
どうも自分を襲おうとして失敗したから逃げたように見えるが魔物の真意など測れるはずもなく。
部屋からいなくなったからと言って安心できるわけもなく。
武器を抱くようにして部屋の隅で夜が明けるのを待つことにした。
ご案内:「ゾス村」からレナ=ミリイさんが去りました。