2016/11/21 のログ
ご案内:「ゾス村 /宿屋」にノアさんが現れました。
■ノア > 「 ............... 」
革製の巾着袋に最低限必要な分だけの金貨を入れ、毒針、黒革の鞭、其れだけを持った。残りは貸倉庫に全て預け王都を出ると、馬に跨がり男物の大きな黒いマントを靡かせ走り出す.. 勿論、いずれも盗品。
とにかく今は王都を離れた方が良い。大して人相などはバレていない内に、ほとぼりが冷めるまでの間は ── そう考えた女が向かったのは近隣の小さな村、ゾス村。村に着くなり最も質素な宿を選んで馬を繋ぎ、特に不要な言葉を交わす事もなく無愛想な店主に料金を渡す。
「 .....とりあえず、少しの辛抱.. ね。」
部屋に入ればまずは重たいマントを脱ぎ、武器は枕の下へ。気怠い身体をぽふんとベッドに倒しつつ、自分に言い聞かすよう呟いた。
■ノア > 王都では捕り逃した女盗賊を兵が捜し回っていて、宿屋にさえ寄れず一夜を寒空の下過ごした。決して上等なベッドではないものの、疲れきった今の身体には雲のように柔らかく..
「 お風呂..... 」
次に浮かんだ欲求を、ぽつりと漏らす。一晩入っていないだけでも女にとっては大問題、例え其れが追われる身であったとしても。
むくりと上体起こせば部屋の棚からタオルを持ち出し、共同風呂へ真っ直ぐ向かう。脱衣所で脱いだドレスの下に、下着やアクセサリーの類いを全て隠し籠に入れ、浴室へ ──
内装を楽しむ余裕なんてない。真っ先に湯をザバザバと全身に掛け、身体を清めた。
ご案内:「ゾス村 /宿屋」にハイドリアさんが現れました。
■ハイドリア > 王都から幾分か離れた村
そこに闇夜から生まれたかのように不意に一つの人影が現れる。
それはすっぽりと顔もはんば隠れるようなローブを纏っているが踏み出す足は裸足である。
けれど寒さを感じるような様子は見せずまるで白昼を歩くがごとく堂々と滑るように村の中を進んでいく。
彼女は退屈していた。
やはり荒野では娯楽が少ない。
たまには人里で獲物を物色するのも良いだろうと王都から離れたこの村へと足を向けたのだ。
周囲の気配を探りながらただのんびりと歩を進める。
こんな場所に来るものは地元住民か旅人や冒険者…いつどこで消えても不思議ではない存在。
特に急いでいたり逃げるように飛び込んできたものであれば猶更良いのだけれど…
そんな事を考え、ふと足を止める。
「みぃつけたぁ…」
汗と、恐怖と警戒の香り
人が無意識に発するそれらはまさに逃亡者の香り
場所が宿ともなれば高確率で長期逃亡者ではなく急遽逃げ出してきたのだろう。
ならば…
「すこぉし味見しても…いいわよねぇ?」
同じ宿にすうっと入り部屋をとる。
店主には必要以上の知識は与えない。魅了し部屋のカギを受け取る。
獲物は共同風呂場にいるようで…
「そうねぇ…ふふ」
月がもう少し傾くまで待ってみるとしよう。
それまでに出てくればそっと這いよるもよし
そうでなければ味見の場所を変えるもいいだろう。
借りた部屋に入り獲物の気配を探りながら鍵のついでにちょろまかした強い酒をグラスで転がし、
半妖はその存在にふさわしい笑みを浮かべた。
■ノア > 「 ............... 」
普段なら其の気持ち良さにうっとりと吐息を漏らす場面ではあるけれど、今日ばかりは淡々と、しっかりと全身を清める。備え付けの石鹸が無くなるくらいに ごしごし、ごしごし..
やがて髪から爪先まで隈無く洗い終えると、所持品の心配もあって早めに浴室を出た。水滴をタオルで拭うと其れを身体に巻き、籠の中の物を抱え脱衣所を出れば.. 部屋に戻るまでの僅かな距離で、他の利用者の服をちゃっかり盗んで。薄灰色の地味な男物のチュニックは、自分が着れば尻まで隠れる大きさ。寝間着ぐらいにはなるだろうと、この際デザインは気にせず部屋へと戻り ──
洗い立て素肌に、チュニックを着た。たった一枚の着替えを済まし、濡れた長い髪を拭う作業へ..
ご案内:「ゾス村 /宿屋」にイルマさんが現れました。
■ハイドリア > 「あらあら…手が早いのねぇ…」
獲物の香りに別の香りが混じる。
これはおそらく男性の物…服でも盗んだのだろうか。
ますます期待が昂っていく。
獲物は間違いなくその手の行動の生業としている。
ならば部屋には武器も仕込んであるだろうし、警戒心もある程度はあるはず。
「そう…そうでなくちゃぁ…」
警戒も恐怖もしない獲物など面白くない。
どうせなら何もかもを楽しまなければ。
牙も爪もある獲物だからこそ対峙するのが楽しいのだから。
…まぁよほどの業物でなければ切り付けられたところで害はないのだけれど。
上機嫌に鼻歌交じりで衣装を整えていく。
こんな時間だもの。ゆったりとした紅のラインドレスに薄い白のケープを羽織り、宿にあった布製のスリッパを履き、髪もゆったりと結い上げる。
それをお気に入りの髪留めで留め、酒瓶とグラスを持ち
獲物の部屋を軽くノックする。
■ノア > 直ぐ近くに、此方の行動を読みつつ笑みを浮かべた半妖が居るなんて露知らず。勿論ただの人間である女には、其れを感知する能力も持ち合わせていなくて。
「 こんなの、もう嫌.. 」
未だ水気を含んだ長い髪、拭くのにも疲れてタオルを床へ落とす。ベッドの上に腰を下ろし、男物の地味なチュニックの中膝を抱えた其の時 ──
「 ─── っ、!? あぁ、何.. 誰 ? 」
静寂を破るノックに思いっきり身体が跳ねる、ビビりっぷり。ただのノックだと一呼吸置いてから、平静を装いドアの向こうの人物へ声を掛ける。鍵は..
「 ...............( あ、やば。)」
開けっ放しだった。
■イルマ > 表向き雑貨屋を営む身は時折、盗品や表には出せない諸々の品を取引することもある。
今日もその類に漏れず、先方が指定してきた宿で手早く売買を済ませたところだった。
慣れない場所での一仕事を済ませ、疲労を引きずりながら部屋を出る。
此処の共同風呂に浸かっていくのも良いかもしれない。そう考えた矢先のことだ。
「………ん?」
真紅のラインドレスに酒瓶を手にした女性が部屋の扉を――開けっ放しのそれを――ノックする様子が見える。
少し、その出で立ちに興味が惹かれた。均整のとれた体躯、その美貌。こんな宿に似つかわしくないような身なり。
金品を巧妙に隠し入れたローブを片手に、彼女へと近寄っていく。
もしかすると、話の流れ次第では、己が店のお得意様に出来るかもしれない。そんな淡い期待を胸に、口を開いた。
「……素敵なドレス。…お知り合いとのパーティか何か、ですか」
ご案内:「ゾス村 /宿屋」にノアさんが現れました。
■ハイドリア > 「はぁぃ?」
鈴を鳴らすような声で室内からの問いかけにこたえる。
どうやら警戒心が強いようだ。良い良い…実に良い。
「宿泊客に女性がいるとのことだからぁ…一人で飲むのも退屈だものぉ。すこぉしお話しないかしらぁ?」
のんびりと言葉を紡ぐ。
嘘は何も言っていない。
それと同時に話しかけられ、そちらに目を向ける。
こちらは…ああそうだ…先ほど別の人間と一緒にいる気配がした人間だろう。
複数の人間の香りが漂っていたから商人か何かだと思い気を払っていなかったが…
内心クスリとほほ笑む。ああ…この子からも
(罪人の香りがする)
ならば…
これは好機かもしれない。
「いーぇ?少し今日こちらに泊まることになったのだけれど一人で飲むのも味気ないでしょぅ?
どうせならぁ…だれか一緒に楽しみたいなぁ…と思ってぇ
尋ねるにはそれなりの服装って必要でしょぅしぃ
…ああ、そぅねぇ…あなたもお暇なら如何かしらぁ」
喋り方は生来のものだがこれはなかなか便利だ。
少し間延びしたような語尾は相手に油断や侮りを持たせやすいと経験からよく知っている。
この娘はどのような反応を見せてくれるだろう?
期待に胸を焦がせながら笑みを浮かべ娘をじっと見つめる。
ご案内:「ゾス村 /宿屋」にノアさんが現れました。
■ノア > ベッドの上から駆け出して鍵を閉めるべきか、いや.. 不自然か。忙しなく足りない頭をフル回転している間に あっさり、其の扉は開かれてしまった。
「 ぇ..... あぁ、なんだ.. 」
( 酔っ払いか... )
真っ赤なドレス姿の女を呆然と見詰め.. 承諾も拒否も忘れベッドの上から、チュニックの中膝を抱え座っていると
「 .........って、まだ誰か居るわけ ? 」
空いた扉の向こう、赤いドレスの女の隣に違う誰かのローブが覗き。こんな村で、こんな宿屋で、よくもまぁこれだけ人が居るものだと感心し.. 警戒は、完全に解けかけていた。
■イルマ > 一緒にいた、別の人間は既に姿を消している。自身も裏取引の後始末は長けている身だ。
すなわちドレス姿の彼女に声をかけた時点で、すっかり油断していたというべきか。
「へぇ……確かに、一人よりは二人、三人で飲む方が良いよね。…なら、アタシもご一緒してもらおうかな」
何の疑いもなく誘いに乗る。
間延びした口調、そして容姿の美しさも効いた。快諾したところでノックしていた扉の向こうから響く声に…
「………その声は……ノア?」
知り合いによく似ている。もしやと思い、空いた扉の先を覗き込めば其処には友人の姿があった。
ローブを脱ぎ、驚いたように何度か瞬く。
ご案内:「ゾス村 /宿屋」からイルマさんが去りました。
ご案内:「ゾス村 /宿屋」にイルマさんが現れました。
■ハイドリア > 思っていたよりもあっさりと扉が開いたことに少し拍子抜けする。
押しに弱い…と脳内のメモに書き加えるが、背後から続いた言葉に得心する。
知り合いだったのなら簡単に扉を開くのも頷ける。
同じ宿に泊まっているのも納得できるというもの。
よく見ると声をかけてきた娘は気の強そうな顔立ちをしており、幾分かそそられるようなものを覚える。
ああ…知り合いかぁ…楽しくなってきた
内心噴きこぼれる黒い笑み
「でしょぅ?それに近頃は物騒だものぉ。
盗人や闇商人が横行しているっていう話だからぁ
一人でいるというのも不安じゃぁなぁぃ?
適当な憲兵に声をかけて見回りしてもらおうかしらぁ」
何気なく二人がドキリとするような言葉を紡ぎつつ室内に歩を進める。
少なくとも脛に傷を持つものとして憲兵を呼ばれると拠点を失うことになるが、今ここで出ていけば怪しいと自白するようなもの。
ならなんとかそれを阻止しようとすると期待しながら。
二人がかりで口封じにかかる事だって十分あり得るだろうし
酔いつぶそうとするかもしれない。
少なくともこの場から逃げるというのは難しくなったはずだと考えながら。
もちろん予想外の対応も少し期待している。
それに今のところ油断しきった金持ちの酔っぱらいに見えているはずだ。
うまく相手すれば彼女たちにとっては良いカモに代わるだろう。
どうなるかしら?ああどんな表情を見せてくれるかしら?
その思いが彼女に美しい笑みを浮かばさせる。
そしてテーブルに二つのグラスを置くと少しキョトンとする。
「ああ…グラスが二つしかないわねぇ…あふ…
ああ、私はこれでいいかぁ…」
ボトルに口をつけ一口呷る。ボトルの中の琥珀色の酒に
彼女の唾液が少しだけ混入する。
まさかここまでのんきに見える人物が豪勢に飲んでいる酒に
麻痺性の毒が混じっているなどこの二人は気が付くだろうか?
どちらでもいいけれど楽しみで仕方がない。
■ノア > 「 .........なに これ.. 」
酒瓶片手の美女に扉開けられ絡まれて、もう一人の女性と三人で晩酌 ── と、いうことは.. いつの間にやらすっかり其のペースに流されて、頭数に入っていた。
口も半開きのまま呆気に取られていたところ、驚く事がまた一つ..
「 ぇ..... イルマ !! 」
まさかの再会に此方も琥珀色の瞳をぱちくりとさせ、隣の部屋まで聞こえそうな声で友人の名を呼んだ。
こうなれば警戒解けかけていた女は友人の登場により、ほぼ無警戒に。素肌にチュニックを被っただけの、二人に比べ随分と粗末な格好は気になりもしたけれど.. あっさりと、友人ともう一人の入室を許し。
「 .....っ、そうね..
これだけ美人が集まった方が、かえって危なっかしい気もするけど ? 」
"憲兵" と口にした女の声に、顔には出さずとも動揺が走る。直ぐ様冗談を口にして巧く誤魔化せたつもりでいる、人間の女。なんてね♡ などと小さな笑みを溢しつつ、酒を煽る女を見詰めた。
■イルマ > 「………そうね。まぁこの国の憲兵が役に立つかどうかは、わからないけど」
心の内に走った動揺を顔に出さないように押しとどめる。何でもないように笑顔を見せて取り繕い、部屋に招き入れられたなら脱いだローブを適当なところに放った。
「まさかこんなところで会うなんてね……いったいどうしたの?」
などと友人に問いかけながら、座る先は彼女の隣。
そしてもう一人の女――真紅のドレスを羽織った美女へと視線が向く。
ボトルに直接口をつける豪勢な飲み方にぱち、と瞳を瞬かせて。
「あらら……まぁいいか。アタシたちは有難くグラス、使わせてもらおう」
■ハイドリア > 「意外と役に立つわよぉ?腐ってるものも多いけどぉ」
嘲笑を含ませる
この国の治安維持部隊はあまり機能しているとは言い難い。
心あるものは幾分か残っているものの悪徳が蔓延り過ぎていて、その処理に手いっぱいだ。
それに並みの憲兵3~4名なら彼女にとってはおやつ程度。相手にもならないのだから。
けれどそれで安心させるわけがない。さらに言葉を続ける。
「でもほらぁ…その分恩賞とかぁそういったものに正直でしょぉ?そういう意味ではお金は余ってるしねぇ?
ああ、そうそぅ。罪人が女性だと張り切る憲兵も多いらしいわぁ
罪な生き物よねぇ…本当にぃ
ああそう言えば王都で女盗人が出たらしいけど捕まってないって今持ちきりなのよぉ
従者たちもその話題ばかり。どんな子なのかしらねぇ?」
まさに貴族といった口調でのんきに笑みを浮かべ言葉を紡ぐ。
二人の表情にかすかに走る逡巡に気が付いた素振りなど微塵も見せる筈がない。
酒のつまみは悪口か噂話というのは昔からよくある作法なのだから、ただ単に噂として口に乗せていく。
「あらぁ…ごめんなさいねぇ?
私ばっかり飲んでしまってぇ」
ふとそれに気が付いたそぶりを見せグラスに酒を注ぎ二人へと微笑み勧めていく。
ついでにもう一口喇叭のみ。生来酒は嫌いではない。
■ノア > 幸い、友人も憲兵を呼ぶ案に賛同はせず。隣に腰掛け僅かにベッドが揺れると、数日ぶりの横顔に ほっと笑みが溢れた。とは云え、本当の事を話す訳にもいかなくて..
「 ん、ちょっと気晴らしに。たまには静かなとこで一人、ゆっくりするのも悪くないかなー なんて。」
適当な理由を口にした。イルマに続いてグラスを一つ、遠慮なく使わせて貰おうと頷いては、視線を赤いドレスの女へと移し.. 彼女が口にするフレーズの数々に、顔色を変えないよう必死に努め。
「 女盗人ねぇ..... ん、従者って.. お姉さん、もしかしてすごい家の人 ? 」
話題をすり替えようと試みた。このお気楽な美女が何か余計な事でもしようものなら、枕元に忍ばせた毒針で刺し塞いでしまえばいい。ただ.. そうなれば同時に、友人に素性を明かしてしまう事にもなり。最善なのは、何事もなくこの美女が酔い潰れるのを待つ事だった。
「 ありがと、じゃ.. 女だけの夜に乾杯♡ 」
何も知らず、疑わず、酒の注がれたグラスを二人の美女に向けて掲げる。
■イルマ > 「最近じゃあ、腐ってるものが大半に思えるけどね…」
此方も憲兵に対しては良い印象を持たない。裏稼業はもちろん、表稼業においてもだ。
時に店に踏み込んで土足でかき回していく彼らが腐っていないとはどう考えても言えない。
「へぇ……そうなんだ。ゆっくりするならアタシの店に来れば良いのに」
グラスを取り、酒を注いでもらいながら友人の現状に軽い誘いをかける。
赤いドレスの美女が口にするフレーズに耳を傾け、女盗賊について少しばかり思いを巡らせた。
追われるようなヘマを犯したのだろうか。うちに来れば足も着かない売買をしてやれるのに…等と考えて…
「……うーん、でも確かに。そのなりだとすごい家の人って言われても頷けるかな」
自分もドレス姿ではあるが、彼女とは質が違う気がする。
世辞ではなくそんな感想を口走りつつ、グラスを掲げた。
「ん。乾杯……♡」
なんの疑いもなくグラスに口をつけ、酒を飲む…
■ハイドリア > 「はぁぃーかーんぱぁぃ♡」
ボトルを掲げ盃を鳴らす二人に合わせる。
思ったよりもあっさりと口に含むのは油断しているのかそれとも毒を警戒する必要がないのか。
後者を前提に場を進めていく。
前者の場合でも少し遊んでもいいだろう。
自身もボトルを煽り、その際口の中を歯で軽く切り、血を混ぜたあと
「あらぁ、良い飲みっぷりじゃなぁぃ」
嬉しそうな表情で杯を空けた二人にさらに注いでいく。
そうしてしばらく盃を重ね、言葉を連ねる。
「私の素性?ふふぅ…ひーみつぅ…
女にとって秘密は大事なスパイスだわぁ?
…そういえばストレートでよかったかしらぁ?
何か割るものがあればよかったのだけれどぉ…
そういった物がないか聞いてくるわねぇ?」
徐にそう告げてふらふらと立ち上がる。
麻痺毒が効き始めるのももう少し後だろう。そのように調整もしてある。
頭がはっきりしている間に二人で相談したいこともあるだろう。
絆が深ければ深いほど、事情が複雑であればあるほど後が面白い。
もちろん逃がすつもりはない。
それに例え逃げた所で楽しむ場所が室内か室外かの違いでしかないのだから。
一切警戒する様を見せず鼻歌を交えながらゆらゆらと部屋を出ていく。
もちろん室内の物音は委細把握している。その気になれば鼓動や血液の流れる音までとらえられるのだから。
■ノア > ( そうそう、もっと言って ! )
憲兵に対するイルマの言葉に内心で大きく頷き賛同する。各々の思惑なんて気付いていなくても、今はただ、ドレスの女の気を別の話題に逸らして欲しい。其れだけだった。
「 イルマの店.. それもありかも。」
平民地区に店を構える彼女に "次はそうするー" なんて笑い掛け、同時に.. 数日前其の店で起きた刺激的な時を思い出し、僅かに頬を染めたり。
先に酒瓶から直接口を付けた姿を見ていたからか、注がれた酒に何か盛られているなど微塵も疑ってはいなくて。二人の乾杯の声が聞こえたら、友人と同時にグラスを傾け..
「 .........っ、ん.. 美味しぃ... 」
不思議な味がする、気がした。彼女の身形も相まって、相当な上物なのだろうと勝手に決め付け。気前よく注がれた酒をまた、少しずつ着実に飲み込んでゆき。
「 ストレートでもいいけど..... あ、うん.. 行ってらっしゃ、い.. 」
ふらりと出て行った気儘な女の背中を、引き止めそびれ見送る。
「 .....なんか、不思議な人だね。金持ちってあんなもん ? 」
■イルマ > 友人の内心における賛同など気づかず、ただ憲兵への不満を散らしている。
どうせ此処ならば誰の耳に入ることもないと踏んだのだろう。目の前にいる二人の美女以外は。
「いつでも待ってるよ。あ、どうせお店に来るのならなんか買ってってね」
当然、宣伝も忘れない。頰を染める彼女の顔を見つめて柔らかく微笑んだ。
さて、グラスの酒を飲み干せば、どこか心地良い味がする。不思議、ともとれるかもしれない。
「……うん、美味しい。………あ、行ってらっしゃい……?」
ストレートでも別に構わないのだが、それを告げる暇はなく。ふらふらと外へ出て行った女の背を見送ってから、友人に視線を戻す。
「……さぁ? でも、金持ちには変な人が多い…のは確かかな」
「でも、久しぶりだね、ノア。元気だった? まぁ、前会った時からそんな経ってないんだけど……ね」
■ハイドリア > 階下に降り店主を呼び出す。
一瞬で魅了を叩き込み、同時に宿全体に発情を強く促す術式を密かに多重展開する。宿の内部はおおむね掌握できただろう。
彼女たちがいる部屋には意識を失わない程度、こらえ切れる程度の影響にとどめる。
自我を失ってしまっては意味がない。
ある意味一番の被害者でその爆心地に巻き込まれた宿の主人を操ってさっさと追い返し、必要なものを集めていく。
おそらく彼はこの夜狂ったように情交を繰り返すだろうがそんなことは彼女にとってどうでもいい。
彼女にとって今宵は遊戯。獲物(プレイヤー)以外は至極どうでもいいのだから。
麻痺毒に僅かに対抗できる程度の解毒薬を氷に混ぜ、
つまみの焼き菓子などを口にしながら室内の会話に意識を傾ける。
ああそうか…二人はそういう関係なのか。
てっきり二人とも同じ暗い領域に住まうものかと思っていたけれどなんと健気な友情だろう。
お互いに相手を表舞台の人間と信じ、自身の後ろ暗さと比較しながら羨み、尊ぶ。
その様はまさに美しき友情。
それを確信し彼女の口から隠し切れない悦楽の笑いが零れる。
「うふ…くふ…あぁ…素敵ぃ」
それが形を変えたときどんな表情を見せてくれるかしら?
楽しみで仕方がない。
■ノア > 「 ちゃっかりしてる、流石商売人ー 」
宣伝にはジトりと冗談めかした返しを見せるも、趣味の良い彼女の店、行けばどうせまた衝動買いもしてしまう筈で。
初対面の女が退室し気が緩んだか、不思議な味の酒のせいか、はたまた.. 徐々に宿屋を満たす、空気のせいか ── チュニックから出した脚をベッドの上に真っ直ぐ伸ばした。下着を身に付けていないから、勿論裾には気を遣いつつ。
「 ね、やたら高そうなドレス着て.. こんな村で何してんだろ。金持ちの考える事ってわかんないね、ほんと。」
「 うん、元気.. かな。てゆーか、こんなとこで逢えるなんて思ってなかったから...... びっくり、したぁ.. 」
友人と二人きり、他愛もない会話を交わす最中 ── 自覚できない程ほんの少しずつ、身体に変化が表れ始める。まず始めに身体がほんのり火照り始め、続いて口調も.. 酒に酔ったような、甘ったるいものへと。
「 イル マ.. 今日も きれい♡ 」
■イルマ > 「それはもう!誰が相手でも商売はさせてもらうからねー」
それがたとえ王族であれ魔族であれ、何か買ってくれるのなら等しくお客様だ。
不思議な味の酒、そして宿屋を満たす空気――全てが調和して二人の様子に変調をきたしていく。
ベッドの上に伸ばされた脚を見つめる瞳に変化が生じた。
「あんな高そうなドレス、一度でいいから着てみたいけどなぁ。金持ちは商売で相手するに限るね」
「……ね、アタシも。こんなところで逢えると思ってなかったや。ちょっとした取引で来ただけなのに…」
他愛ない会話も、次第にそうではないものへと。火照ってくる身体を微かに友人に寄せるよう座り直して、お互いに甘ったるく緩んでいく口調…
「……ノア、だって…きれい、じゃん…♡」
■ハイドリア > 「…んふふ」
あの子たちは今自身が置かれつつある状況を夢にも思っていないだろう。
いや、元々毒蛇のとぐろの中に巻き込まれていたのだけれど
それでも張り巡らせた網を少しずつ絞り、逃げ道を塞いでいく。
魔術や洗脳をいきなり叩きつけてしまえばそれこそ思うがままに動かせるけれど、この網を絞っていく時間が彼女はとても好きだった。
支配だけなど面白くも美しくもない。
大事な物を自身で汚す様こそ美しいのだから。
「ようこそ私の手中へ、可愛い獲物さん達」
極上の笑顔でつぶやく。
そろそろ麻痺毒の効いてくる頃だ。
体の火照りで血行も良くなり、麻痺毒は確実に回っていく。
「うふふー…戻ったわぁ?
あらあら…お二人さんどうしたのかしらぁ?」
二人がマヒを自覚することなくお互いに手を伸ばす寸前を見計らって何も知らないような表情で部屋へと戻り、酒や氷をテーブルへ並べていく。
二人の上気した顔を見比べて妖艶にほほ笑む。
麻痺毒の周りが順調ならそろそろ気が付くころだろう。
体に宿る抑えがたい熱量と反して相手に手を伸ばすこともできないことに。
■ノア > 商売人らしい言葉に無邪気な笑みを溢しつつも、再会を喜びまた一口、また一口と酒を煽り.. 彼女と二人きり会話を楽しんでいたのだけれど、
「 ............ 」
次第に蕩け始めた思考。今、何の話をしていたっけ.. なんて、考えるのも面倒な程に。酒と毒と、辺りに充満する妖しげな空気とが、視線を真横のイルマに縛り付けた。
「 おねぇさん、戻っ てくる.. 前、に..... ─── っ、あれ.. なん で......... 」
一度だけ、あの日みたいに唇を重ねたくて強請るも ── 身体が上手く動かない。ベッドの上に脚を放り出すみたいに伸ばし、片手は脚の間に付いて、もう片方はグラスを持ったまま
「 .....っ、ん.. 」
ドレスの女が妖しげな笑みと共に扉を開ける頃には.. 其のグラスも手から滑り落ち、ベッドを濡らした。
■イルマ > 蕩ける思考回路は、ともすればこの酒を持ってきた女の存在すら忘れそうになる程。
酒、毒、そして宿を取り巻く妖気にすっかり支配されてしまったのか。視線はノアに絡みついて離れない。
「………っ、うん………いいよ、……――あっ、……れ」
上手く動かない身体。友人と隣合わせになって脚を前方へ放り出したままの姿勢。
ほぼ空だったグラスはベッドこそ濡らさなかったものの、ころころと転がって床に落ちた。
ドレスの女が戻ってくる頃には、麻痺毒は最大限にまで効いているだろうか。
「………な、に……これ…っ、―――」
■ハイドリア > 「あらあらぁ…お邪魔だったかしらぁ?」
その様子を彼女はただ無邪気に微笑む。
表情は女神のような様を浮かべ、けれどその目は捕食者の冷たい光と面白げな光の両方を湛え二人をただ眺めている。
「酔っているのかしらぁ?こんなに出来上がってしまって。
あらあら…ベッドが濡れてしまっているわぁ?」
くすくすとわずかにしか体を動かせない相手を淡々とただ言葉で嬲っていく。
どれだけその熱を沈めたくとも動けなくてはどうしようもない。
ただ僅かに身を捩り、言葉を発する程度しかできないよう調整は完璧だ。
勿論自身を慰めさせなどさせる訳もない。
「知らない人の前でそんなに体を熱くさせてぇ…恥ずかしくないのぉ?ねぇ?」
明らかに互いの目にわかるほどその抱えた熱量を自覚させ、意識させる。
仕組まれた感情を自身の願いと勘違いし受け入れてしまうように。
人には最大の防御機能として慣れというものがある。
それは言い換えれば時間さえかければ種としての限界領域まで負荷をかけ続けられるとも言える。
だからこそ彼女は耐えられるギリギリの喫水線に迫り、相手に慣れさせ更に負荷をかけていく。
普段なら到底耐えられない色欲を二人の内部に満ち満ちさせていく。
「いやらしい子達なんだからぁ…まったくもぉ」
それを刷り込み、自覚させていく。
最後の喫水線は自身で超えさせなければ意味がないのだから。
その過程を愉悦の表情を浮かべグラスを傾けながら眺め続ける。
毒を飲んだ過程すらわからない相手にしてみればこれほど不気味な事は無いだろうが、そんなことに気が付けるほどの余裕が眼前の二人にあるのだろうか?
彼女はその片鱗を少しずつ露にしながら二人をただ眺め続ける。
そして悪魔の微笑みで囁く。
「ねぇ…イマ、何がシたいのぉ?」
■ノア > 「 .........っ、」
酒に酔っただけ、じゃない.. 自分も友人も、明らかに何かおかしい。しかしそう気付いた時には既に、何もかもが遅かった。いつ、誰が、何の為にだなんて、色欲だけが込み上げる今の自分では考えるのも難しく..
「 違っ.. そんなん じゃ、な.. い ── 」
ドレスの女の声が、言葉一つ一つが、直接身体の芯に響くような感覚。其れに抗うのは、残酷にも意図して残された理性。見知らぬ女の前で、まして友人を巻き込んでまで恥態を晒す訳にはいかないという、理性。
「 ちょっ と.. よった、だけ... だか ら、」
熱っぽい吐息混じりに、精度の低い言い訳を口にする。けれど.. 息をする度素肌に擦れるチュニックの微かな刺激すら、過敏になった胸の先をぷくりと容易に起き上がらせ。下着も身に付けていない割れ目は外気に晒されているだけで、厭らしく、だらしなく蜜を滲ませた。
其れを悟られないよう、呼吸を整える事に集中する。── 勿論、そんな事不可能。
■イルマ > 身体の奥深くにまで満ち満ちていく色欲の波。
溶かされるように蕩けていく思考と、未だ微かに残っている理性。
それがドレスの女に言葉で嬲られる度消し去られていくようで、大きく息を吐き、吸って気持ちを落ち着かせんと試みる。――結果は言わずとも。
「――…そ、んなん……じゃ、……っ、酔ってる……だけ、ッ」
友人と同じような口上、ながらその身体を見ればどう感じているかなど見え見えだろう。
ドレスの細やかな絹が肌に擦れ、ますます敏感になっていく。
起き上がった胸の先端が布を押し上げて、ドレスに隠れている割れ目はどうなっているか容易に想像できるものと。
友人の声、吐息。そして悪魔の囁きのような女の問いかけを受け、牙城が崩れた。
「―――…っ、ノア……アタシ、っ……!!」
切羽詰まったような声を零す。身体を動かせないもどかしさをこうまで感じたことはなかった。
■ハイドリア > いじらしく胡麻化そうとする様に彼女は目を細める。
そう、そうでなければならない。
あえてぎりぎりで抵抗できる、我慢できる範囲にとどめる事こそが大事。
圧倒的というのは時としてつまらない。
だからこそ敢えて回りくどい方法をとり、相手と同じ盤上に立つのだ。
彼女は人が好きだ、恥じらう様が好きだ、恐怖に怯える様が好きだ。壊れていくその瞬間こそが好きだ。
それこそが退屈を癒す唯一の甘露。
だからこそ…
「ちゃんと言わなくちゃダメよぉ…?
誰と、どんなコトがしたいのぉ?」
くすくすと小首を傾げ、足元に転がってくる盃を拾い上げ杯を重ねる。
舐めるように酒をあおるさまはまるで、少し前までそれを使っていた相手が目前でそうして居るかのように錯覚を起こさせる。
彼女らとて、熱を抑える術を知らない年頃ではないはず。
だからこそ具体的なものを望めるけれど、それは与えられない現状をさらに際立たせる。
それが欲しいと言うまでは今はひたすらお預けのまま。
「何が欲しいのかは自分でちゃぁんと選ばなきゃだめよぉ」
決して此方からは正解を提示しない。
自身で選ぶという現実は時として強力な呪縛以上の力を持つ。
その選択を与えることにこそ彼女の愉悦がある。
そこに救いなど与えない。
従わされたから、理性を失っていたから…そんな救いを与えるはずがない。
直接手を下さなくとも人は勝手に狂い、壊れていけるのだから。
■ノア > 触れたくて、触れられたくて.. それだけじゃ収まらなくて。羞恥も理性も捨て去って、とろとろになるまで.. もう何も考えられないくらい、ぐちゃぐちゃにして欲しい ───
── なんて、言えない。羞恥も理性も、捨てる事を許されていないから。かといって、ドレスの女へ疑いを向ける程のまともな思考は残ってもいなくて.. 今はただ、気が狂いそうな程欲情し、其れを抑え付ける苦しさに呼吸を乱し。
「 もう、や だぁ..... っ、から だ.. あつく て、おかし く... なり、そ ぅ.. っ。やだっ.. も、や だぁ..... っ 」
そう弱音を吐いたのは友人より先か、後か。其の弱々しい声色は、今にも泣き出しそうな子供のよう.. 途切れ途切れ、熱っぽい吐息混じりに口から漏れた。そして.. 其の問いが再び投げ掛けられる。「 何が欲しいのか 」──
「 ─── イ ルマ..... が..
イルマ がほし ぃ、っ.. 見られて、る.. のに、えっ ちな コトし て..... っ、きもち よく なり たぃ.. っ 」
抑えて隠して堪えていたものが全て崩れ、色付いた唇から欲求が溢れた。
■イルマ > 気が狂ってしまいそうな程の色欲に揺さぶられ、崩れることを許さない理性が熱に浮かされる。
ドレスの女には微塵も疑いを向けていない、向けられない。
欲情を抑え付けている苦しさに身悶えしたいが、それも許されない。
「っ、くぅ……、…あ、やっ、…からだ、あつい…っ、も……あ、ぁっ…」
対して此方は弱音というより、耐えきれないそれを言葉にして吐き出していた。それで楽になる筈もないのだが。そして問いかけられる言葉と、友人が吐き出す欲求に――
「ア、タシもっ……ノアが、…っ、ノアが、ほしいっ……えっち、して、っ……気持ちよくなりた、い、っ」
引き絞るような声で、欲情を迸らせた。
■ハイドリア > 「よぅく出来ましたぁ」
歌うように彼女は笑みを零す。
そうしてアイスペールから氷を取り、瞳を潤ませ、息を荒げる娘の口元へと運ぶ。
そしてゆびごと口に運び、口内をゆっくりと愛撫に似た動きでほぐしていく。
もちろん酔いと同じく解毒が直ぐに効くわけではない。
下手をすれば本気で二人とも酔っただけと思っているかもしれない。
だから二人に酔いが覚めるという逃げ道を与えながら指先で魔術を紡ぐ。
つむぐものは二つ。
体の隅々の感覚を鋭敏にさせ何倍にも快感を高め、継続させる魔術。
そしてもう一つは…勿論絶頂する事を禁じるもの。
彼女たちがどんな選択をしようと快楽から逃げる術はないに等しい。
それはゆっくりと溶けた水と同じように
体がわずかに動くようになるまでの短いけれど気が狂いそうなほど長い長い”待て”の時間を利用して染み渡っていく。
「良いわよぉ?好きに動けるようにしてあげるぅ」
毒を盛った本人だとわからなければ彼女はまるで強い酒に当てられた二人の酔いを醒ましてあげる親切な女性にすら見えるだろう。
そんな笑みと喉の奥から愉悦の響きを漏らしながらそっと口内から指を引き抜いた。
■ノア > [ to be continued.. ]
ご案内:「ゾス村 /宿屋」からノアさんが去りました。
ご案内:「ゾス村 /宿屋」からイルマさんが去りました。
ご案内:「ゾス村 /宿屋」からハイドリアさんが去りました。
ご案内:「ゾス村」にアンブロシアさんが現れました。
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