2018/10/16 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」に影時さんが現れました。
影時 > ――全く、金になるからと言ってひょいひょいと請け負うものではない。

戦働きについては過去にも何度も経験し、その手腕を振るったことがある。
しかし、立ち込める血の匂いとはどうだろうか。時に反吐を吐き戻すようなこの匂いは、どうか。
慣れるものは慣れる。酔えるものは酔える。
されども、だ。数字の差で押しつぶすような戦場に自分が好む愉悦が転がっているとは、限らない。

「……――やれやれ、だ。こ奴らも何が哀しくて押しつぶされにきたのやら、だな」

夕刻を過ぎ、既に血の色にむせ返る月が掛かる夜の戦場。
周辺国から略奪に侵入してくる手勢を押しつぶすため、正規軍ではなく傭兵や冒険者達にお呼びがかかった。
魔族の国からの対策のために兵を動かし難いという用件、並びに被害を受けた商人達の怒りがあった、ともきく。
そこは正直どうでもいい。関わる側にとっては、聞き流せる程度の筋書きである。

ようは、少なからず金になる。そして人同士の戦いである。その点を踏まえ、冒険者としてこの場に参戦する。
この場に集う者もそうだ。装備の格も風体も様々なれども、一旦戦場に立てばいずれも平等だ。
喰うか喰われるかである。生きるか死ぬかだ。

ひょうと刃を振るえば、その刃圏に居るものはことり、とその身を落とす。
それで死ねればよし。死ななければ、追い打ちにて更なる悲劇を見る。
己が刃を振るった後に倒れた者に殺到し、粗末な槍や剣を突き立てて俺が止めを刺した等、と騒ぐ風景を横目に、息を吐く。

ご案内:「ハテグの主戦場」にチヅルさんが現れました。
チヅル > 今回は余りに分が悪かった。
金欠に瀕していたとはいえ胡散臭いまでの高額報酬に目が眩んで受けてみれば、王都へ侵攻する部隊――最早戦線をなくし崩壊する部隊の隊長を護衛し生きて撤退させるという内容。
しかも肝心の男は早々に突撃をかまし行方知れず。
見捨てるわけにも行かず目の前の敵をいなし、無力化或いは始末しながら目立つ金の鎧を探す。

「あぁ、もう・・・・・・馬鹿の護衛は心臓に悪いなぁ・・・っ」

槍を手に突撃する騎兵。
跳躍し驚くその顔に膝をめり込ませては更に飛び上がり、手ごろな敵兵士の上へ落下、そのまま踏みつける。

まだ、見えない。
最早生死も不明だが、少なくとも確認取れるまでは仕事の最中と探す。

「あぁ、めんどくさ・・・・・・!?」

直後、懐かしいような――最近知った気配を感じた。

影時 > こうもなれば、趨勢は半ば決しているのも同然だろうか。
後は転がり落ちるように瓦解する、否、そうなる前に退く。兵法に詳しいものでなくとも、悟る頃合いであろう。
誰だって無駄死にはしたくないのだ。
それに兵の数という数字と、人品の云々は度外視したうえで寄せ集められた精兵が並ぶ場であると、加減が難しい。

――否、加減だと?

ふと、脳裏に浮かぶ句に嗤う。それを考えるのは戦場を俯瞰して見ることができる人間の仕事だ。
軍師の類やら戦慣れした腕利きであれば、周囲の者を掌握して手綱を取ることができるだろう。
しかし、侵入してきた軍勢には女も混じって見える。
例えば冒険者として生きるにしても、食い詰めたのか、それとも他のやむをえない事情か。推量は如何様にも出来る。
だが、好きにして放り捨てられるようなものを放っておかない荒くれものは何処にもいる。ここにも居る。

「……あーあ。ンなトコでおっ勃てたもの持て余す奴があるか。汚ェ尻見せやがって」

無用な追撃はするまい。面倒は願い下げだ。
そう思いつつ、立ち止まって警戒していれば地形の起伏の陰に哀れな犠牲者を連れ込む姿を見つける。
猛る男と哀れな女。それら二つが揃っていれば、どうなるかなぞ考えるまでもあるまい。
そして、そんな組み合わせが横合いから射かけられる矢や投槍で射貫かれ、無造作に転がるのもよくあることだ。

手にする太刀に纏わり付く血を払い、腰の鞘に納めては苦笑を刻む中で。

「……ふむ」

ふと、感じる気配に表情を引き締める。その場に跪き、血に濡れる大地に手を当ててて一瞬瞑目する。
気配を探る。今度はより強く、確かなものとして。こっちかと思えば、顔を向けて立ち上がり、足を向けよう。
特に気配は隠さない。知るものは分かる。黒外套を纏い、右手に太刀を引っ提げた長身が何者であるか、を。

チヅル > 視界の隅に友軍と思わしき被虐者と、それを組み敷く男が見えた。
戦場の常ともいえる光景だが、一応は味方である以上見捨てるにしても後味が悪く。

「あぁ、もう――めんどくさいなぁ・・・!」

右手を一閃。
音もなく飛来する鉄針が深々と男の米神に刺さり、横倒しになる姿を一瞥してその場を動く。

近い、確信する。
強者の気配。気の抜けない、しかし気も乗らない――やりにくい相手。
その姿が見える前に。

「あのレンジには入りたくないな・・・・・・先手は貰うよ・・・・・・ッ!」

人ごみの中、やがて見えると確信した方向へ苦無を投げる。
続けざまに鉄針を数本、ディレイも織り交ぜつつ。
これで手傷を負って撤退でもしてくれれば儲けものだけど、などと甘い気持ちは捨て、そのどれもが致命傷足りうるように。

影時 > この場に赴くもので知った気配となると、良くも悪くも心当たりはそう多くない。
だが、この場で感じた気配とは極々最近知ったものである。
想定される生業として互いに了解できるものであれば、そうであろうとも理解と納得は出来る。

故にこそ――、息は抜かない。戦場の習いとして、より一層に感覚を研ぎ澄ませる。
ここは死地である。彼岸に近い領域となれば、己が過ちが即座に死を招きかねない。

「お、ッ」

風を切る気配、大気を貫く飛来物の感覚を得る。この手の品物には何よりも覚えがある。
己も身の各所に忍ばせ、従来から使い馴染んだものである。
咄嗟にその身をずらし、飛来物――苦無の射線から外れつつ、重ねて投じられる鉄針を太刀を振るって払う。
その手並みは侍のそれにも劣らない。ただ刀術の型を齧っただけではなく、少なからず鍛錬を積んだもののそれだ。

「今度は俺の手番か。……――躱せるか?」

致命を払い、太刀を右肩に振りかぶる。左手を添えて八双に近い構えを作れば、地を蹴って前に進もう。
投じられた刃の射線を辿り、地形の起伏を物ともすることなく肉薄する。
射かけてきた姿を認めることが出来れば、痩躯の右肩から左腰まで切り下ろす袈裟懸けの氣が乗った刃を繰り出す。
殺意は、ない。斬意をも刃金のうちに押し秘めた静謐なる一閃を如何に捌くか。その手並みを窺うために。

チヅル > 「避けた・・・・・・まぁ、避けるよね・・・・・・」

目標には届かなかったか、聞こえる悲鳴は別人のもの。
ならば次の獲物は自分ということになる。
――来る。

白銀と漆黒が一息の間に間合いを詰める。
殺意すらも刃に封じたか、その剣閃派あまりに静かで故に神速。

「ッ――!」

身を反らし、右膝を折る。斜めに引っ張り落とされるようにその切っ先をかわして受身、素早く起き上がれば背後。
しかし、まだ敵の間合い。
戦うならばより近くかより遠く。中途半端な間合いは一番危険な位置取り。

「(まったく恐ろしい男だよ影時・・・!)」

苦無を左の逆手に、一気に間合いを殺す。
その勢いを乗せて掌を腰椎へ、初撃の行く末を見ることなく続く左の刃を首筋へ連続して放つ。
緊張をそのままに、仮面の下では唇が愉しげに歪められているのは自分ですら知りえないこと――