2018/07/05 のログ
リューゼ > なるほど、先ほどの騎士が現状の指揮官だったのか。
声に気づいて視線を向けた先では騎獣から降り、指示を飛ばす女性騎士の姿。
凛と響く声や、まさに戦乙女と言った容姿。
人気出るだろうなぁ、と傭兵らしい感想を抱く。
そう思っていれば、再び視線があった。

「ありがたく。まぁ、今回はそこまでの傷は負ってませんよ。」

高慢な騎士であれば傭兵ごときと侮る姿も見られたりする。
しかし、目の前の女性にそういう腹積もりは全く見られないようだった。
素直に感心し思わずと青年は微笑を浮かべる。

「…何か手伝える事があれば手伝いますが。」

身体は動くのでね、と申し出てみる。
青年も青年で、下心なくそういう事が言える人材ではあった。

テイア > 「そうか、それは何よりだ。このような乱戦の中で、己の拳のみを武器として大した負傷もしていないとは、中々の腕前だな。」

微笑を浮かべる青年に対して、女の表情はあまり動かずに冷たい印象を与えるかも知れない。
しかし、戦場での青年の動きを確りと見ていたというように、賛辞の言葉を贈る。
確かに拳での攻撃は、ハンマーなどを用いた打撃と同じく相手に対して有効な手ではあるだろう。
しかし、リーチや打撃を与えられる範囲、力を考えればより熟練した技術が求められる。
特にこういった乱戦の場ではなおさらだ。

「そうしてもらえると有難い。負傷者も多いのでね。死者もできる限り弔ってやりたい。」

やるべきことは山ほどある、とそういう傍から、あちこちから報告が入り対応していく。

「後処理が終われば、陣営のテントに戻って休むこともできるだろう。食事のときに酒でも振舞おう。」

今回の作戦の成功を祝って、と肩を竦めながら微かに笑みを浮かべ青年へと告げるが、周りにいた男達にもその声は確りと届いたのだろう。
おぉー、隊長のおごりだーと野太い歓声が伝播するように広がっていく。

ご案内:「ハテグの主戦場」にリューゼさんが現れました。
リューゼ > 「案外。乱戦の方がいい所もありますよ。
長柄の武器と違って味方への気遣いもあまりありませんし。」

魔物の相手よりは楽な所もあるかな、と続ける。
確かに青年は対集団に対して慣れている風でもあった。
傭兵とは言え、現状では相手は騎士隊長。
荒くれが多い中でも敬語を使い、和やかに応対する。
そういう意味でも青年は少し風変わりだったかもしれない。

「そりゃあ有難い。相伴させていただきますよ。
さて、じゃあ始めますかね。」

なんだか自分よりも周囲の兵士達の方が喜んでいるようにも見えるな。
そう思えば、分かち合う笑顔とも、苦笑いともとれる笑みを小さく浮かべる。

それから、一言呟いてゆっくりと青年は歩き出す。
負傷者に肩を貸す。死体を運ぶ。また、弔う為の穴を掘る。
力仕事を率先して引き受けていく。
それにもまたしばらくの時間が必要となるだろうか。

テイア > 「我々も訓練で格闘術は収めるが、武器を持つのが前提にあるからな。なかなかに新鮮だったよ。」

武器にすべて頼っている訳ではなく、白兵戦での格闘術なども収めているが、やはり基本は馬や騎獣に騎乗しての戦闘スタイルが主になるため、青年の戦い方は新鮮さがあったと告げる。
歩兵もいるが、無手で戦う者というのはやはり少数だった。

「ああ、よろしく頼む。」

荒くれ者の多い傭兵という職だが、和やかに対応する青年に女も穏やかに返していたが、周囲の男たちの野太い歓声があがると苦笑いともとれる笑みを浮かべる青年に対して、軽く肩をすくめて苦笑を漏らした。
そして、負傷者や死者の収容や弔いの穴を掘るなどの力仕事を率先して引き受ける姿を横目にみつつ、報告を受けては指示を出してと暫くは忙しく動き回っていた。

そして、負傷者と味方の遺体を収容し終え、敵軍の遺体の埋葬が終わると自陣へと引き上げていく。
その頃には、西へと日が沈む一番星が夜空に輝き始めていただろう。

「勇士たちよ。そなたらの勇敢な行いによって、この国に平穏が訪れた。高潔なる魂は、天上の館へと導かれるだろう。そなたたちの意志は、我らの胸の中に。輪廻の巡りによって再び見えることを願う。」

自陣へ戻ると、まずは戦死者の魂を弔うための儀式が執り行われた。
静かに黙祷を捧げるもの、戦友の死に涙を見せるもの。
この瞬間だけは、幾度繰り返しても慣れることはない。
朗々と詠うように、弔いの言葉を告げるとしばらく瞳を伏せて黙祷を捧げる。

「さあ、涙は魂をこの世に引き止める。笑って見送ってやろうではないか。」

そして、瞳を開けば振り返り、騎士や兵士たちへとよく通る声で告げる。
笑って、安心して天上の楽園へと旅立つ彼らを送り出してやるのだと、弔いのあとは皆笑うのだ。
ワインの入った樽が運び込まれ、料理人が腕を振るった料理の数々が並べられていく。

リューゼ > 負傷者を運び、衛生兵に混じって簡単な手当を行う。
棺桶代わりに掘った穴に命を落としたものを埋め、墓標代わりに剣を立てる。
あくせくと働いていけば時間なぞあっと言う間。
その間に見られていた事にはさほど気づかず、それだけ夢中でこなしたともいえる。
何にせよ、ひと段落という所だろう。
簡単にしかできないが両手を洗浄した上で、炊き出しなども手伝っていた様子。
儀式に顔を出すときには、簡易調理場から出てくる所であった。

女性騎士の弔いの言葉がささげられる。
厳かな雰囲気の中、受け取ったワインを小さく掲げる。
天へと昇っていく魂を見送るかのように。

笑って見送れない者もいるだろう。今回、青年は知った顔の参加はなかった。
それを幸運と言って良いかはわからなかったが、言葉通り小さく笑って見送る事にする。

「勇敢な戦士達に。」

小さく呟いてから、くいっとワインを飲み干す。
美味いワインだ、と思ったが騒ぎ立てるような場でもない。
青年は一人静かに料理に舌鼓を打ち、またワインをゆっくりと飲み干しているだろう。

テイア > よく働く青年だ。
戦場から戦場へと、一つの組織に縛られることなく己の腕一本で報酬を得る傭兵。
彼らにとって、今回の戦死者の中に顔なじみはいないだろう。
現に、戦闘の後始末に参加はしているもののやる気の見られない傭兵が大半だというのに、青年はあちらこちらと動き回っている。
自陣に戻ったあとも、動き回っていたようで弔いの儀式が執り行われる際には、調理場から出てくる姿が目に入った。
弔いの言葉が静かに響いて、それの重なるように嗚咽がきこえてくる。
厳しい訓練、激しい戦闘、酒を酌み交わし、馬鹿な事を言って笑い合う。
苦楽を共にしてきた戦友が、逝ってしまう。
もう笑わない、声を聞けない。
大きな男が、肩を震わせ嗚咽を漏らす。

暫くの間、重い空気が流れていたが、ワインの樽が運び込まれ料理が広げられれば、自然と笑い声が響いていくようになるのを青年は感じただろう。
もとより、傭兵たちは、死者に思い入れはなく美味いワインと料理と勝利の高揚に沸き立っていく。
それでも、最初は戦友を亡くした者に多少遠慮もあっただろうが、涙を零していた男たちも、笑い声を上げれば遠慮もなくなるというものだ。

「飲んでいるか?中々に美味いワインだろう?料理もコックたちが腕を振るってくれているからな、遠慮なく食べてくれ。」

静かに料理を食べる青年のとなりへと、グラスとワインの入ったボトルを持って腰掛けると声をかけていく。
青年から見れば、弔いの儀式で涙を流したばかりでこのようにバカ騒ぎするのを不謹慎に見えただろうか。

「…これが、我らの弔いだ。残された戦友が、悲しみに囚われて戦えなくなったのでは、死者たちが安らかに眠れない。悲しみをもって弔うのは、死者たちの家族や恋人、親しい者たちがいれば十分だ。だから、我らは笑って見送る。彼らが守ったこの地を、これからも十分に守っていけるのだと示すために。」

青年のグラスへとワインを注ぎながら、無理矢理にでも笑う騎士たちを示して告げる。

リューゼ > 厳かな雰囲気も、酒と料理を持てばそれが和らいでいく。
湿っぽいのが苦手、というわけではないし、泣きたい者達もいるだろう。だから青年は静かに見送る腹積もりではあったのだが。
次第に広がる笑顔に、少し、肩の力を抜いていった。

一人静かに飲んでいれば、自分が殿を務めた部隊の兵士や、先ほど手伝ったコックたちが声をかけてくる。
それに応えて短く会話を交わし、一人、また一人と移り変わっていく。
そうしていれば、次は隊長殿がお目見えした。

「えぇ、いただいていますよ。
疲れを癒すには良いワインと料理、定番ですね。」

その言葉にそつなく微笑を浮かべて答えると、小さく掲げたグラスを干す。
グラスが空になれば、自ら手酌で注いでくれるというので遠慮なく受け取った。
焼いた肉をちまちまと齧りながら、酒をまた飲んでいく。

「わかりますよ。俺も傭兵をする事はある。
武の礼節くらいは弁えてるつもりです。亡くなった奴にまで心配かける事もない…とね。
あとは、酒と時間が癒してくれるでしょう。」

そしてワインボトルを要求する。
素直に渡してくれれば、お返し、という事で女性騎士のグラスにワインを注ごうとするだろう。

テイア > 人の感情というものは、それが最善だと思っていても上手くはいかないもの。
だから、こうやって馬鹿騒ぎしたあとに無性に悲しくなって、涙を流し何故死んだと、死者に問いかけを投げずにはいられなくなることもあるだろう。
けれど、此処は戦場なのだ。
明日にでもまた敵軍が攻めてくるかもしれない。
夜に奇襲をかけてくることがあるかもしれない。
死者の誇りを守りたいなら、彼らの意志を受け継ぐならば切り替えなければならない。
だから、皆無理矢理にでも笑って、馬鹿騒ぎに興じる。
傭兵や兵士、騎士たちに声をかけワインをついでは席を回っていくと、青年のところへとたどり着く。

「そうか。ならば結構。毎日こうはいかないが、戦に勝利した時くらいは美味しい酒と料理を食べても文句は言われないだろう。」

トクトクとボトルからワインがグラスへと注がれる。
対魔族戦線の混乱の影響によって、国境の警戒を強化しなければならない。
野営地での生活は、決して快適とはいえないからこそこういった刺激は必要だろうと、思う。
とはいえ、ただでさえ軍縮を訴える貴族などの声もあるせいで限られた予算では限界があるため、こうやって私費を投じているわけだが。

「若いのに、よくわかっているのだな。傭兵になって長いのか?」

見たところ、20代前半といったところに見えるが、場数をこなしているのだろう。
要求されるままに、ワインボトルを手渡すとグラスを傾けていく。
お返しというように注がれるワインを眺め、問いかけとともに青年へと視線を戻す。

リューゼ > 勝った日くらいはバカ騒ぎするのも悪くない。
それで死者が弔えるというのなら願ったり、という事でもあるだろう。
青年とて、すぐに帰還という事にもなるまい。
ある程度この場が落ち着くまでは駆り出されるはずだ。
解っているからこそ、今日のこの糧を明日へとつなげなくてはならない。

「労いってやつも必要でしょうしね。
働いた褒美もないというなら、士気も落ちてしまうでしょう。」

冗談めかしてそう言う青年は、あまり湿っぽくならないように気を使ったのかもしれない。
そんな快適でない生活にも、青年は応えていない様子だった。
やはり慣れている雰囲気が漂っているだろう。
酒を酌み交わしながらも、落ち着いた様子である。

「めちゃくちゃ長い…ってわけじゃないですが。
それがわかるくらいには。ただまぁ…傭兵にしろ、別の職…例えば商人所帯なんかでもこういう事はあります。
特にキャラバンの連中とか。塞ぎ込んでいてもしょうがないって事なんでしょうね。」

護衛をしたりするんですよ、と語る。
傭兵稼業だけでなく、そういう付き合いもこなしている、と。
傭兵や、ギルドの依頼など、それなりに幅広く活動はしている様子で。

テイア > 「馬の前にぶらさげる人参、ではないが。行ったことが報われないことほど、士気を落とすことはないからな。」

冗談めかした言葉に気遣いを感じて、女もまた冗談めかして応える。

「ああ、用心棒などもすることがあるのか。そうだな、行商の者たちも悲しみに暮れて立ち止まっていては、その日の糧さえ得られないからな。」

傭兵だけでなく、用心棒など幅広く動いているらしい言葉に、落ち着き加減にも少し納得がいく。
様々な経験、場数をこなせば年相応以上の落ち着きが身につくものなのだろう。
もちろん、青年の生来の気質というものもあるのだろうが。

「さて、今日の戦果の報告書を書かなくてはならないので、私はそろそろ失礼するよ。遠慮なく宴を楽しんでいってくれ。ああ、そうだ。まだ名乗っていなかったな。テイア・ルア・ルミナスだ。王国聖騎士団、辺境守護部隊の隊長を務めている。もう暫くは、同じ部隊に編成となるだろう。よろしく頼む。」

懐中時計を取り出すと、時間を確認して席を立つ。
そこでふと、まだ名乗っていなかったことを思い至れば名乗り、すっと右手を青年へと差し出していく。
軽く握手を交わすと、宴の席をたち自身のテントへと戻っていった。

ご案内:「ハテグの主戦場」からテイアさんが去りました。
リューゼ > 初めて見た時には堅物という印象があった。
けれど、話してみれば案外フランクというか気さくな人物だった様子。
それは青年にとってもおおいに歓迎できる事だろう。
考えてみれば、そういう人物だからこそ傭兵達もバカ騒ぎするのだろう。

「そうですね、ゆっくり英気を養おうと思います。
俺はリューゼ。えぇ、こちらこそ。よろしくお願いします。」

差し出された手をとって握手を交わす。
利き手、どっちだったかな。戦場での事を思い返しながら、ワインを一口。
去り行く背中を見ながら、騒ぎの輪の端に入っていく。
その賑やかな騒ぎは夜半まで続いたとか。

ご案内:「ハテグの主戦場」からリューゼさんが去りました。