2018/07/04 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にテイアさんが現れました。
テイア > ハテグの主戦場と呼ばれる丘陵地に、軍勢が展開し剣戟の音と怒号、魔法による閃光や土煙をあげながら二つの勢力がぶつかりあっている。
王国軍の一つの師団。
それも、対魔族戦に特化し魔族の国側の防衛を担っていた師団の一つが壊滅寸前となった余波は、人の争いにまで影響を及ぼしていた。
対魔族戦線への人員の補充、上層部の混乱といった国全体の動揺に付け入ろうと、諸外国の攻めは勢いを増して次から次へとこの丘陵地へとなだれ込んでくる。

「右翼、そのまま後退し崖のほうまで誘導を――」

主戦場の激戦の音が遠くに聞こえる鬱蒼と茂る森の中を、その足場の悪さをものともせずに二足歩行の鳥の集団がトップスピードで駆け抜けていく。
オルカモント――羽を退化させ、走ることに特化したその鳥に騎乗する騎士の集団の先頭で、耳にはめた魔導機械を通して別の集団へと指示を出す。
額あての面甲を下ろした奥には、異なる色の瞳が鋭い光を宿す。
耳の魔導機械から絶えず送られてくる観測兵からの情報を聞き取り、まるで見ているかのように戦況を把握して指示を出し、森の中を駆け抜ける。
――そして、視界が開ければ目の前には切り立った崖。

「そのまま進めぇっ――」

眼下には、撤退にみせかけた別部隊を負う敵軍の戦車隊がまさに、崖の真下に展開していた。
太く鋭い爪が岩肌に突き刺さり、垂直に近い絶壁を一気に駆け下りていけば戦車隊の背後から襲いかかる。
馬ではまず降りられないような崖からの襲撃に、敵軍は動揺し足並みが乱れれば、誘導するために後退していた別部隊も攻撃へと転じる。

ご案内:「ハテグの主戦場」にリューゼさんが現れました。
リューゼ > その後退を命じられた右翼の中に若い男が一人。
幾人かの騎士達に混じって殿を務めていた。
騎士特有の鎧や証などは持たず、傭兵の様子。

「…ふっ!」

油断なく下がりながらも、斬りかかって来た男の剣の腹を裏拳で叩く。
そのまま脚を払い、膂力を持って流れるように戦車の前に投げ落としてやる。
驚いた戦車は速度を鈍らせる。
こうして隙を見せず、また相手の動くを少しでも鈍らせつつ後退戦をこなしていく。
無手でそれをこなす姿はそれなりに目立つ。英雄の活躍とは言わずとも、戦場の混乱の中でも堅実に仕事をこなしていく。
相手側の兵士達も警戒してか次第に速度を落とし容易に接近をしなくなる。

…そこで奇襲が行われた。効果は絶大である。

「好機、か。」

青年も足を止め、逆に走り出した。混乱する敵の最中に恐れる事なく踏み込んでいく。
腹に、頭に、効果的に打突を加え、一人、また一人と叩き伏せていくだろう。

テイア > 西に位置するその国は、チャリオットによる戦いを得意とする国であった。
熟練した操縦技術と、チャリオットを引くために品種改良と調教された馬は、騎兵に劣らぬ機動性を生み、揺れる戦車の上でも安定したバランス感覚に富んだ兵士の繰り出す攻撃は、高速走行しながらも的確に相手の急所をついてきた。
さらには、防御を担当する術師が乗ることで防壁を展開して弓や魔法による遠距離射撃を防ぎ、近接戦での攻撃もある程度は弾いてしまう。
チャリオットの弱点を克服して、騎兵と対等以上に戦うことのできる強みをもったその国の戦闘スタイルに対して、こちらはそれ以上の機動性を活かした奇襲にて応戦する。
予測よりも、敵勢の足並みが乱れ速度が落ちていたため、崖から駆け下りた部隊はその勢いのままに、戦車隊を駆逐していく。
ありえない場所からの奇襲に浮き足立つ敵勢を、騎士たちは大剣、大斧を力強く振り上げて術師の作り出した防壁をかち割り、血しぶきをあげる。
テイアは騎獣の上で馬上槍を構え、すれ違い様に鋭い突きによって防壁を破り操縦者を突き落とす。
混乱する戦場の中で、無手で敵を叩き伏せていく青年とすれ違いざまに面甲の下で視線が合った。
敵味方どちらにしても、武器を携えて戦う者がほとんどである戦場で無手で戦っているとは、よほど腕に自信があるのだろう。
すれ違った戦士にたいして、そんな感想を抱きながら歩兵は彼らに任せ戦車を潰すために騎獣を駆けさせる。
奇襲により大打撃をうけた敵陣は後退を始め、追撃に追いかける形へと戦況は変化していく。

「――そこまでっ深追いするなっ」

ある程度追撃したところで、号令をかければ戦闘も一区切りといったところだろう。

リューゼ > 無手とはつまる所打撃である。
頑丈な鎧を身に着けた兵士に対して、フレイルやハンマーでの攻撃が有効なように、
青年の頑丈なガントレットで横殴りに頭部を殴打すれば簡単に脳震盪を引き起こせる。
また、そんな集団戦に慣れているのか、突っ込んできた兵士を今度は集団の中に投げ飛ばし、足並みを乱れさせていく。

そうこうしている内に、敵も引き際を見極めたのか陣を後退させていった。
青年はと言えば、号令が来る前に足を止めて下がっていく敵を見ているだろう。
戦場の興奮はある。しかし、それに支配されずある程度冷静に状況を見ている様子。

「………ふぅ。」

ようやく一息。
蒸し暑い戦場の事。顎に流れ落ちる汗をぐいっと腕でぬぐった。
周囲を見れば、血で染まり動かない兵士もいれば、苦し気に呻く兵士もいる。
残っているのは、後始末と言ったところだろう。
そういえば、さっき奇襲を仕掛けた騎乗兵の人と目が合ったような。
なんとなくその姿を探し、周囲を見回してみるが…。

テイア > 「観測兵は別働隊がないか警戒を厳に。被害状況の報告、負傷者の手当を最優先に。敵兵に対しては投降の意思があれば、殺さず捕虜とせよ。」

あちこちで、作戦の成功と勝利を喜ぶ歓声があがっている。
戦場の熱気の中で、涼やかに凛とした声が響くと騎士たちが速やかに従っていくのが見えるだろう。
青年が声のするほうに視線を投じれば、翡翠色の騎獣から降りて面甲をあげた女の顔が見えるはず。
凛とした声を響かせて、騎士たちに指示する様から上の立場にあることが知れるだろう。
エメラルドとアメジストのような異なる色をもつ双眸を少し動かせば、戦場で視線があったときのように青年と視線が合った。
騎士団の者ではない、今回参加した傭兵の内の一人だろうと青年の格好や戦い方などから予想しながら青年へと声をかける。

「戦闘ご苦労だった。負傷をしていれば、あちらに申し出れば必要な手当を受けられる。」

戦い方から、場馴れしているようだが初めて見る顔だったため、衛生兵の方を指さしながら青年へと告げる。