2018/01/05 のログ
■ミリーディア > 『いえ、しかし、私達の勝手で軍隊を動かすのは…』
その指示に躊躇し食い下がる術者の一人、その言葉に少女は心底面倒そうな表情を浮かべた。
「どうせ戦うしか出来ない戦闘馬鹿共が、考え無しの阿呆の命令を受けてやってるだけだろう?
意味の無い戦いを続けるより、意味のある事にこの場を使うべきだ、そう思わないか?」
言葉ではそう伝えているが、内心では日を変えてもう一度来るなんて面倒だとの考えだ。
その考えは従っている術者達も何となく把握をしているのか、渋い表情をしている。
■ミリーディア > 「儂を納得させるような理由を並べられる奴なんて居ないだろうし、さっさと行け。
別に待たずにやっても良いんだ、こうして引くまで待ってやろうと言うだけマシではないか?」
急かす様に手を振る少女。
困り果てた様子を見せる術者達だが、渋々側に居るだろう指揮官の元へと向かっていった。
何としてでも説得をしなければ、少女は本気で両軍を巻き込んでも術を試す。
そう考えると、何とも気の重い事だろう。
ご案内:「ハテグの主戦場」にケラノスさんが現れました。
■ケラノス > 「……こりゃ早まったかもしれねぇなぁ」
王国正規軍の一角…というより最前線。数合わせや戦力補強の為の”寄せ集め部隊”として戦う傭兵連中の集団。
ちゃっかりその中に混じるのは”無職”の男。色違いの瞳でザッと戦場を確認しながら溜息を零す。
背中に背負った長刀は抜かれておらず、片手に持つのは敵から奪った何の変哲も無い長剣が一振り。
格好からして軽装であり、だからこそ傭兵部隊に混じっても目立つ事は無い…筈だ。
「……金目当てであれこれ飛び付くモンじゃね――…あン?」
不意に嫌な予感を感じて戦場、ではなく遠く離れた一角を凝視する。
それを好機と見たか襲い掛かってきた兵を無造作な一振りで三人纏めて切り捨てつつ。
(……何だ?ここに居るとマズい気がすんな…)
その予感は間違いでもないだろう。何せ今、男が居るのは両軍がぶつかり合う最前線。
下手をすれば退却も間に合わない面倒な位置だったからだ。
■ミリーディア > 少女の視線は再び戦場へと向けられていた。
見通しが良いが、戦場であるだけに見て楽しむ様な物が全く無い。
説得に行った術者達が戻って来るのを待ちながらも、目測で行おうとしている術の範囲を確認している。
戦場のど真ん中に居り、かなりの勘の鋭さならば、感じるのは嫌な予感で済むものではないだろう。
何せ少女が行おうとしている術、その発動後は目に映る場所には何一つ残す事無く消え去る程のものなのだ。
もっとも、説得には少々時間が掛かりそうなのだが…
結局のところは指揮官が折れて軍隊を一時引かせるのだが、その前に行動を起こすのは自由だろう。
ちなみに、少女達が佇むのは最前線から少し離れただけの丘の上、注意してみれば分かる位置だ。
ご案内:「ハテグの主戦場」にケラノスさんが現れました。
■ケラノス > 「…こりゃ、長居するとヤバそうだな…っと。」
何時までもよそ見してはイイ的だが、飛来した矢をヒョイッと交わし、敵兵の剣戟をいなしながら返す一刀で首をあっさり飛ばす。
グズグズしていると巻き添え程度では生温い事になりそうだが、周囲の連中は――…。
(……って、何で親しくもねぇ連中に気を使わないといけねぇんだっつーの。さっさと退くとするか)
そして迷わず敵前逃亡、と間違われてもおかしくない鮮やかさで反転して一気に駆け出す。
傭兵連中や正規兵が何やら怒鳴ってくるが無視だ。チラリ、と指揮官の方…そして小高い丘の上と交互に視線を向けて。
「……ったく、敵ごと潰されちゃ適わんってな。」
魔族の身体能力で一気に一足早く…指揮官が撤退の命令を出す前に一定距離まで離れるものの。
(……で、問題は”何処までとばっちりが来るか”なんだが…一応用意しとくか)
あまり使いたくないのだけども。右目の赤い瞳が虹色へと薄っすら輝く。
――増幅開始、補助制御始動。…ついでに観測開始、と。
ご案内:「ハテグの主戦場」にケラノスさんが現れました。
■ミリーディア > 戦場を眺めていた少女の眼が細められる。
戦うだけの連中に混じり、逆方向へと移動を始めた者が見えたからだ。
「なるほど、こんな場所にも少しは勘の働く賢い奴も混じってるのか」
それを見た少女の呟き、それに続く様に説得を終えた術者達が戻ってきた。
その後に王国軍へと一時撤退命令が響くのだが、少女は既に動き始めていた。
「戻って来たか、では始めるぞ?
しっかりと身を守る術でも使っておいた方が良いだろう」
少女の唇が動き、詠唱が始まる。
それは多種多様の言語が混じった複合詠唱、その詠唱でさえ術者達が全てを理解する事は出来てはいない。
詠唱は続く、まだ戦場であった場所には何も変化が無い…見た目だけでは。
だがそれは魔術に関わる者ならば少しは分かる、この戦場を包むように何か結界の様なものが、先ずは張られた。
そして、中に集まってゆく魔力は徐々にその高まりを見せ始めている。
魔術に長けた者ならば、その魔力が様々な術を混ぜ合わせたものであるのが分かるかもしれない。
普通に人間が扱う魔力、ミレー族の、魔族の、魔王の…更には精霊の魔力やシェンヤンの扱う道術による魔力まで感じるだろう。
それらが際限なく結界の中に集められ、膨張している。
ご案内:「ハテグの主戦場」にケラノスさんが現れました。
■ケラノス > 「…クソ、これちゃんと後で金貰えんだろうな!?」
思わず悪態を零しつつ、右目を虹色に薄っすらと輝かせながら更に距離を取りつつ背後を振り返る。
(……おいおい、勘弁してくれよ)
その光景は何と言ったらいいのか。右目を通して見えるのは、まず戦場を包むように展開される”結界”じみたもの。
そこまではいい。問題はその後だ。…徐々に高まる魔力だがその”中身”がヤバすぎる。
「…人間、ミレー族、魔族に魔王…精霊にシェンヤンの術まであんのかよ。
どんだけこの術を使ってるヤツはぶっ飛んでんだチクショウめ」
それを正確に観測している男の右目も並大抵のものではない。
ただ観測しているだけでなく、その魔力の流れ、密度、膨張速度まで男の視界に映像として流れ込んでいる。
(…クソ、情報が多すぎて俺の頭が持たねぇぞこりゃ…!一部カットだカット!)
虹色の輝きが若干収まると同時に流れ込んでくる情報がある程度制限される。
それでもヤバいと一発で分かる程度にとんでもない術式なのは流石に周囲の連中も気付いているだろうか。
「……こりゃ、両軍全員無事に撤退は無理だな。」
即座に判断する。どう考えても先ほどの最前線の連中の一部が間に合わない。
が、それよりも念には念をだ。右目の効果で魔術を励起させて己の膨大な魔力と同調させる。
(…結界もあるとはいえ、まぁ万が一だ。俺に防げるかは別として)
■ミリーディア > (困ったものだ…こういう時に、指揮官の腕が問われると言うのだが…
結果さえ出せれば、部下は使い捨てか?)
詠唱を続けながら、少女は心の中でぼやく。
先ほどの者を除けば、思った通りの範囲で術を使ったら最前線の複数の者達が巻き込まれる撤収の遅さだ。
仕方なく、範囲を少々狭めて王国軍の撤収速度に合わせる。
結果、王国軍は範囲内から逃げ切ったが…図に乗った敵の軍隊は、愚かにも攻め入って来ていた。
(敵は敵で状況も見極められぬか…運命と思って諦めて貰おう)
苦笑を浮かべながらも、詠唱は唱え終わってしまう。
結界を狭めた事で、膨張する魔力が完全に抑え切れるかが疑問になったが。
そして、間をおいての凄まじい衝撃が辺りへと巻き起こった。
宛ら、爆弾を落としたかのような轟音に、突風と砂煙が吹き荒れる。
ギリギリ離れた連中を薙ぎ払うように吹き飛ばしてしまう…だが、重症とまではゆかぬ怪我程度のものだろう。
結界の外だけでこの惨状だ、結界の中はどうなったのか。
砂煙が消え見えるようになれば、戦場全体に広がる超巨大なクレーターが出来上がっていた。
そこにはもはや何も存在しない、まさに全てを消滅する威力、である。
ご案内:「ハテグの主戦場」にケラノスさんが現れました。
ご案内:「ハテグの主戦場」にケラノスさんが現れました。
■ケラノス > 「……雇われの身でどうこう言えたモンじゃねぇが…指揮官は判断が遅すぎだろ…脳みそまで筋肉なのか?ただの見栄か?」
奇しくも、丘の上から術を行使する少女と似たような事を口に出しつつ。
そもそも、指揮官クラスなら自分と同じ、までは行かずとももっと早く撤退命令を出せた筈だ。
(…王国の兵は無能ばかり…でもないだろうが、ここに居る連中はそんなモンか)
辛らつな評価だが間違いだとも思わない。その程度の見る目はあるつもりだ。
右手に持っていた長剣を放り捨てて背中に背負っていた赤黒い刀身の長刀を抜き放ち右手に携えて。
(……範囲が狭まった?…ああ、使い手がこっちの撤退速度にわざわざ合わせてんのか。情けなのかどうか知らんが)
右目からの情報で推測しつつ、長刀を構える。薄っすらと刀身が輝く光に覆われていく。
ここで使いたくも無いが、どうも”余波”が来る気配がするのだ。このくらいしないと防ぐのはしんどい。
――そして、次の瞬間、追撃してきた敵軍と共にソレが炸裂した。…案の定、というべきか。
周囲へと響く轟音、凄まじい衝撃に突風と砂煙が吹き荒れる。周囲の連中が薙ぎ飛ばされるがまぁ死にはすまい。
そして、男は無造作に長刀を振り抜く。瞬間、戦場の一角で、非常に僅かだが”滅びの光刃”が迸る。
衝撃も轟音も、突風も砂煙も全てを切り裂いてその閃光は遠くまで飛んでいくが、それも減衰してやがて消えるだろう。
「……こんなモンか。……で、こりゃまたひでぇな」
全てが終わった後、目の前に展開されるのは超巨大なクレーターだ。
男のそれとは違った”滅び”の力と言えなくも無いが、ケタが違うというか何と言うか。
(…別に競う気なんぞねぇが自信無くすぜこりゃ…まぁいいか)
長刀を一振りしてから、背中の鞘へと収めて周囲を見渡す。王国軍もまぁ、怪我人は多いが無駄に死人は出ては居ないようだ。
■ミリーディア > 「急な変化に対応し切れん、所詮はまだ未完成の術か…
まだまだ研究の余地はあるな、次はその点も踏まえて仕上げるとしよう」
その光景を眺めながら、不満そうに少女は呟く。
周りの被害よりも、満足のいく結果が残せなかったのが気に入らないのは見て取れるだろう。
そんな様子を見せながらも、少女は術者達へと戻るように指示をする。
自分はどうするのか?との質問もくるが、少し寄り道をするのだと伝えてさっさと帰した。
だが、そんな少女が次に姿を現わしたのは、離れてそうした様子を見せていた男の前だった。
男からすれば、周囲を見渡したら目の前に少女が居た、なんて感じだろう。
「なるほど、そういう事か。
そういった存在であるならば、あの行動にも合点がいくな」
いきなり向けられた言葉は、これである。
■ケラノス > 「……転移か何かか?そういった存在も何も大したモンでもねぇよ…。」
急に目の前に現れたのは、銀髪に青い瞳、黒のローブ姿の少女…実際に少女そのままかどうかは深く考えない。
既に虹色の輝きが消えて赤い瞳に戻った右目と共に色違いの瞳で少女を眺めて。
内心、気配も前兆も一切感じなかった出現に驚きが無い訳でもなかったが…。
目の前の少女はそれを平然と出来る相手だというのは既に男なりに察していた。
「…コレ、やったのアンタだよな?…凄まじいモンだが……まだ”完成”してねぇんだろ?」
ちらり、と背後のクレーターを親指でクイッと示しつつ。半分は勘だが半分は確信している。
これでもまだ未完成の術式なのだろう、と。完成した状態は…考えるだけ無駄だと思っておく。
少なくとも、目の前の相手は自分なぞ遥かに超越した魔術に精通した者なのだから。そもそも比べるのも馬鹿らしいものだが。
■ミリーディア > 「ご名答、この距離程度なら疲れもしないからね。
だが、少なくとも周りの連中よりは君の方が…だろう?見ていたよ、偶々だが」
こちらに意識を向けていたんだ、急に距離を詰められれば簡単に何をしたのかは予想出来るだろう。
そして、自分も同じように意識を少しは向けていたのだ、何をしていたのかも分かっている。
別に隠す理由も無かったのでそう答えておく。
「そうか、そこまで理解しているのだね、君は。
その瞳の力って感じかな?少なくとも、君自身での芸当とは思えないから…なのだが、違うかい?」
未完成の術、それを切り出した男に対し、それを見極めたであろう力を指摘してみる。
少しばかり不満が残っている原因を突かれたお返し、みたいな感じだと、多分分かるだろう。
別に怒っている訳ではなく、悪戯半分みたいなものだ。
■ケラノス > 「……便利なモンだな。正直羨ましいわ……。…ま、今回の王国軍…いや、敵軍もだがどっちも駄目だなこりゃ」
転移そのものは見るのは初めてではない。ただ前兆も気配も一切感じさせない”鮮やかさ”は今回が初めてだ。
男としては、まぁ見られてもそれはそれで面倒だと思うくらいで困る事は…ちょっぴりあるが許容範囲内だ。
「…らしいな。古代王国の産物とか色々と言われてるが俺も詳細な出所は知らん。普段はただの義眼だしな」
右目の赤い瞳を軽く示して肩を竦める。出自よりもその機能の方が男にとっては重要なのだ。
それに、彼女の指摘どおり男は単体では魔力量だけはケタ外れでもそれ以外はからっきしだ。
そもそも、単体で魔術を行使できないという致命的な欠陥が彼にはある。義眼や刀の補助が無いと初歩の魔術すら使えない。
「……ま、これも戦場か何かの縁ってヤツか。アンタの名前も聞いても?…俺はケラノス…まぁ、今回臨時で雇われた傭兵だ。…実際はただの無職なんだけどな」
自分の恥部を特に隠しもせずそう名乗る。正確には旅人だが、正規の軍人でも傭兵でも冒険者でもないのは事実だ。
■ミリーディア > 「普通の転移魔術であっても、使い手次第、ってものだろう?
それに関しては、こんな目的も無い戦場で戦う連中に期待をするだけ無駄ってものさ。
稀に君のようなのも居るがね」
どんな魔法であろうと、素質や腕前によって全く別物に見える場合もある。
細かい説明は省くが、言葉少なくとも理解は出来るだろうと。
そして、どちらの兵にも当て嵌まる言葉には、思う事をそのまま返した。
「昔、似た様な物を見た気はするが…流石に詳しくは思い出せないみたいだ。
渡り渡って今は君が所持者か、気が向いたら調べさせて貰いたいものだね、非常に興味深い物とだけは記憶している」
とは言っているが、物が物なのだから期待半分に聞いてはみた、そんな感じだ。
ただ、少なくとも男にとっては必要不可欠な物であろう事だけは理解している。
「ケラノス…そうか、聞き覚えだけはあるが、君がか。
儂はミリーディアだ、今は人間の側で研究やらをさせて貰っている。
傭兵をしているなら機会があったら雇わせて貰うのもありだろうな、君なら期待が出来る」
思い出すような仕草を取りながら、男を見遣り、言葉を返しておいた。
ご案内:「ハテグの主戦場」にケラノスさんが現れました。
■ケラノス > 「使い手次第、ねぇ…確かに。仮に俺が使えるようになったとして、アンタみたいに鮮やかにこなせる気はしねーし。
…だよなぁ。まぁ、俺も小遣い稼ぎで参加したみてーなモンだし、質に期待はしてなかったけどよ…。」
周囲に聞こえないのを良い事に暗に軍を扱き下ろしているが、間違いだとは思っていない。
それに、別に王国軍の全てが駄目だとも思っていない。目の前に例外も居る事だし。
「ん?ああ、むしろ調べてくれるなら是非お願いしたいね。義眼だから取り外しは一応出来るし。
アンタの知的好奇心?を満たせるブツかどうかは流石に保証は出来んが。」
彼女の言葉に至極あっさりと頷く。ある意味で非常に潔いくらいに。そこに思惑は特に無い。
実際、素性は兎も角まだ隠された機能があったり、今より効率の良い使い方があれば実践したいというのもある。
「……俺、そんな有名人じゃねぇんだが…ま、ただの死に損なった魔族…『剣』の最後の一振りってだけだよ俺は」
隠すほどの素性でもない。結局ただのとある高位魔族…『剣』の一族の最後の生き残りというだけなのだから。
彼女の名前に反復するようにミリーディア、と一度呟いてから緩く頷いて。
「ん、むしろ遠慮なく雇ってくれ。正直金欠でな。個人的にはアンタに魔術のあれこれを聞いてみたい気もするが」
とはいえ、彼女はどう考えても王国の重鎮…少なくとも師団長クラスと見た。
たかが根無し草の男がそう気軽に会えるような相手でもないだろうが。
ご案内:「ハテグの主戦場」にケラノスさんが現れました。
■ミリーディア > 「それに、魔法を使うにしても得手不得手はあるものさ。
…そういったものは儂には無いがね。
だが、こうした出会いがあっただけ良しとしようじゃないか。
術を試して終わり、だけだったのだが、少しはマシになった」
戦場がクレーターとなった上に相手が消滅した為か、帰還命令が渡ってゆくのを眺めながら、男へと言葉を続ける。
勿論の事だが、こちらの言葉にも容赦が無い。
そもそも本人達を目の前にしようと言葉を止める性格でもないが。
「貴重な物だけに期待はしてなかったんだが…そういう事なら、こちらとしても是非調べさせて貰おう。
知らぬ事を知る事に意義が在る、その内容が問題ではないのさ」
予想外な程に潔い回答に、意外そうな表情を一瞬浮かべるが、すぐに戻る。
そう、それを知ったから自分でどうこうしようなんて考えはしない。
今の自分に十分満足をしているからだ。
男が望むならば、知る事が出来た機能次第で手解き程度はしてやろうと。
「どこか飛び抜けたものを持っている者というのはね、案外覚えられているものなのだよ。
それを自慢にしようとしまいと、そんなものだ」
つまりは、自分は魔族にも関わりを持っているのだと、そう言っているようなものだ。
人間の側に居ようと差別はしないのだと、余りに立場に影響を与える行動をされては困るだろうが。
「そうか、こちらも必要としている材料集めが色々と難航していてね。
腕に信用が出来る者ってのはありがたいものなのさ、遠慮なく雇うなり依頼をするなりさせて貰うよ」
実際にどんな立場かと聞かれれば、立場だけで言えば研究所の室長と答える程度だろう。
周りに聞き回れば、それ以上の存在だろう事を知る事が出来るだろうが。
良い意味でも悪い意味でも、少女に関する噂は少なくないのだ。
ご案内:「ハテグの主戦場」にケラノスさんが現れました。
ご案内:「ハテグの主戦場」にケラノスさんが現れました。
■ケラノス > 「…万能の天才ってヤツか?まぁ、天才なんて軽い言葉で済ませるモンでもねーとは思うがよ…。
そうだな。まぁ俺としても魔術に精通している知り合いが出来たのは有難い。今回の戦場に参加した意義はあったってもんだ」
逆に言えば、小遣いも含めてそれ以外は全く得るものが無かったようなものだが。
そして、男も男で例え聞かれていようが構いはしないのだけれど。
結局、歯に衣を着せない物言いとなるかもしれないが、自分達はただ事実を述べているだけなのだから。
「未知のモノを知る…って事か。それはまぁ、意味合いは違うかもしれんが分からないでもねーな」
頷く。一瞬意外そうな表情をされたが駆け引きとかそういうのは元々苦手だ。
ならば、こちらとしてはさっさと調べて貰って有意義な情報を齎してくれれば充分とも言える。
勿論、機能次第で魔術への展望が開ければ手解きは遠慮なく頼むだろう。そこらは遠慮しない性分だ。
「……あぁ…成る程。…まぁ、目立ちたくはねーが、全ての情報を遮断出来る訳でもねーしな」
頭を掻いて苦笑気味に。思い当たるフシは幾つかある。情報隠蔽を特にしていないのもあるし。
それに、知られたからといって、別に周囲に面倒や害が及ぶとも思えない。
それに、少女の口ぶりから差別意識も無ければ魔族との関わりもそれなりにある、という感じを受けて。
(……そういう点では普通に信用できそうではあるしな)
「そうか。俺はまぁ当然ながら単独行動が主だからフットワークは軽いしそういう依頼が多くても文句ねーぜ。
…そうだな。平民地区の…あー書いた方がいいか。ここに使いなり手紙寄越してくれりゃ直ぐ動くぜ」
と、懐から羊皮紙と羽ペンを取り出してメモをサラサラと。自信が滞在する安宿の名前と大まかな場所だ。
それをミリーディアと名乗った少女へと手渡そうとしつつ。連絡先は教えておいて損はあるまい。
ちなみに、彼女の立場についても聞いてみたが…研究所の室長、と聞けば納得したように頷いているだろう。
軍の要職より自分の整えた環境で研究に没頭するようなタイプと感じた、というのもある。
「…ああ、思い出した。アンタの名前、何かちらほら聞いた事あったわ街中とかで。
…ま、噂よりも本人と話すのがやっぱ一番だわな。」
そう言って笑う。噂の真偽は正直どうでもいい。実際の対話こそ遥かに価値がある。
■ミリーディア > 「天性の才能か…確かにそれだけで済ませられるものでもない。
だが説明をするのも難しいものでね、その辺りは気にしないでくれると助かる。
お互いに有意義であったのならば、良しとしておこう」
ここまで来るのも面倒だった、術を試す準備も面倒だった。
面倒ばかりであったが、たった一つでもそうでないものがあったならば…そんな感じだろう。
今回のこの戦場については、このまま話し続けても構わないが、それを話す事さえも面倒になったので止めておいた。
「そう、研究者と云うのはそういうものなのだよ」
常に探究心を、ある意味それが今の自分を作り上げたようなものだ。
逆にそれが向かないものには一切の興味も持たないが…それはそれとしておこう。
「さて…ん…?」
会話を続けようとしている最中、何かを感じたのか言葉が止まる。
研究所の方で何かがあったのか、念話が飛ばされて来たのだ。
久々に実のある会話をしているのに…そう思いながらも、何かあった後では遅いと、仕方なく切り上げる事とした。
「すまない、何か研究所であったらしい。
君とはもう少し話してみたかったが、それは今度の機会としよう。
君の住所は受け取った、儂の方は…王城にある研究所を聞けばすぐに会えるだろう。
誰でも通すように伝えてあるからね」
男からメモを受け取りながら、自分からもそれを伝えておく。
いずれこちらから誰かを送るかもしれないし、男からこちらへとやってくるかもしれない。
兎に角今は戻らねばならないと、別れの挨拶代わりに手を振っておこう。
男がそれを返すのを確かめてから、少し疲れるが転移をして戻るつもりだ。
次の瞬間には少女の姿は消えているだろう。
ご案内:「ハテグの主戦場」にケラノスさんが現れました。
■ケラノス > 「ああ、あれこれ考えすぎても煮詰まるだけだしな。互いに有意義だっていう結果がありゃそれでいいさ」
別に考え無し、という訳ではなく。考えすぎても煮詰まるだけなら結果だけを今は受け止めれば良い。
満足できるモノが一つだけでもあったならば、まぁ少なくとも骨折り損にはならないのだから。
「研究者には俺は向いてねーな…知的好奇心はそれなりにはあるんだがよ」
魔術だって、自由に使えない身の上だから今は素人知識だが、解決策があればそこから幅を広げていきたいとも思っているし。
と、彼女の言葉が止まる。魔術での念話か何かだろうか?何かあったらしい。
「ああ、分かった。依頼を待つだけってのも面白みがねぇし折を見て一度顔を出させてくれ。
魔術に関してもミリーディアの話はやっぱ色々と聞いてみたいしな」
その際にこの義眼を預けるのもいいかもしれない。急ぎの用件が出来た彼女をこれ以上引き止めるのも忍びないし。
依頼が来るか、こちらが出向くか。どちらにしろ繋がりが出来たのは悪くないと思う。
こちらも、挨拶代わりに彼女に軽く手を振り替えしてから転移して姿を消す少女を見送る。
「さぁて、俺も引き上げるとしますかね」
うん、今回は良い出会いがあったと。改めて思いつつ小さく笑いながらこの戦場を後にしよう。
ご案内:「ハテグの主戦場」からミリーディアさんが去りました。
ご案内:「ハテグの主戦場」からケラノスさんが去りました。