2018/01/02 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にタピオカさんが現れました。
タピオカ > 王国側の傭兵として雇われた遊牧民。自陣で寄せ集めの5人パーティを組んで最前線に送られ、小競り合いとにらみ合いの続く広い平野部にて剣を交える事数時間――。

「はあっ、……、はあっ……。
はやく……味方の居る場所に戻らないと……」

パーティは散り散りになって、折れた剣や割れた盾ばかり積み上がる煙の嫌な匂いが漂う戦場にひとり取り残された。
服のあちこちを切り裂かれ、その隙間から薄く血を滲ませつつ。疲労と怪我で足を引きずるように野営地を目指す、そんな小さな人影が夕闇の中うごめいている。
こんな状態で襲われてはひとたまりもなく、荒い息使いに不安げな目で周囲を見回し。

ご案内:「ハテグの主戦場」にヴェルムさんが現れました。
ヴェルム > 主戦場の戦闘エリアからもっとも近い場所にあった十三師団の野営地。
元ティルヒア兵たちを使い潰す目的で設立されたこの師団には、安全な場所に野営地を設定する権利などなかった。
もちろん戦場から近いとはいっても目の前ではない、危険な場所ではないとは言い切れないが、武装した兵士が常に周囲を警戒している。
日も落ちかけ辺りが暗くなった夕刻に、目の良い見張りの一人が戦場でうごめく人影を見つけ、師団長に報告したのはつい先ほどのこと。
師団長であるヴェルムは部下を二人連れ、野営地に近づく人影を確かめるべく馬を走らせる。
しばらくすれば、タピオカの耳に馬の足音が聞こえてくるかもしれない。

タピオカ > 元ティルヒアや魔族の力までも蓄える1000人規模のその野営地へ、自分の姿を報告されたとは知らないまま。抜き身の曲刀を杖変わりにして何かを狙っているハゲタカやカラスの鳴き声の中をひたすら進んでいく。松明の明かり無しでぎりぎり人の判別がつく程度の、紫色した夕暮れの下に馬の蹄鉄の音が聞こえて身を硬くし。奥歯を噛むように力をこめて武器を両手で持ち直した。

「ん……っ、
味方だと……いいけど……」

徐々に近付く複数の馬蹄。その場で身構えるも、大きく肩を上下させたまま。余裕も無い様子。

ヴェルム > 彼女の視線の先、暗闇の中から現れたのは、王国軍の印のあるティルヒア騎士の鎧を纏った、馬に跨った男性。
その鎧を身につける人間は王国には数少ないが、少なくとも王国軍の印を持つ以上は味方であった。
彼の後ろには王国軍の正規鎧を着た、馬に跨った二人の兵士がいることも安心感を与えるか。

「そこで止まれ…所属を名乗ってもらおう」

見た目は傷つき、歩くのがやっとといった少女の姿。
恐らくは傭兵として戦っていたのだろうが、敵が放った間者の可能性もあったため、3名は武器こそ向けないが警戒した様子で距離を保ち彼女に問いかけた。

タピオカ > 薄暗がりの中に浮かぶ3つの大きな影。騎乗し武装した男性とその後ろに控える兵士の鎧に王国軍の印がある事を見て、両手の力が緩み。張っていた肩が目に見えて緩む。獲物を腰の鞘に戻して軽く両手を広げ。

「十三師団フレシェット隊所属のタピオカだよ。
……もしかしてヴェルム”カーム”司令官?」

穏やかな見た目と反して政治的軍事的手腕のあるしなやかな体つきの男性に向け、十三師団内でも外部から人手を集めている部隊の名前を告げる。ゆっくりと片手を胸元に寄せれば、所属隊の印である簡素なペンダントを取り出して見せ。
雇われ兵ゆえに直接面識はなかったけれど、師団内で揶揄と尊敬をこめられた”おだやかな”という二つ名を含んだ名前で彼の正体を確かめてみる。

ヴェルム > 「うん…?ああ…味方どころかこっちの身内だったか、警戒してすまない」

こちらの姿を捉えたあたりで、武器を収め安心した様子だったので敵ではないのだろうという気はあった。
彼女、タピオカがこちらの味方であり、さらには自師団の傭兵として雇っていた人物とすぐさま理解すれば、警戒して当たり前の状況にも関わらずそれを謝罪。
面識はなくとも、雇った人物の名前、少なくとも部隊の名前はきちんと記憶していた。

「カーム?司令官というのとはまた違うのような気がするけど…。
それと隊の他のメンバーは……まぁいい、まずは撤収だ、乗って!」

カームという言い方はよくわからなかったらしい、司令官という肩書きもちょっと違うような気がして苦笑いしつつツッコミを入れた。
彼女の隊は誰も戻っていないから、他のメンバーについて聞こうとするが、今はそれどころではない。
松明こそ焚いてはいないが、暗闇の戦場でいつまでも呑気にしているわけにもいかない。
まずは負傷した彼女を野営地で治療するのが先決として、彼女を引き連れて戻るため、タピオカの腕を自ら引き上げて自分の馬の背に乗せようとする。

タピオカ > 「ううん、スパイかもしれないって思うのは当然だから……。
他のメンバーは戦ってる途中にはぐれちゃって。
ありがと。ええと……、それじゃあどう呼べばいいかな……」

師団長が一介の傭兵に謝罪をする様子に目を丸めて、慌てて首を振って。自分の隊を構成していた巨漢の男、細身の男、男勝りの斧術使いの所在がわからない事だけを説明しておく。元貴族であり、独立部隊とはいえ身分の高い相手への呼び名を迷いながら。腕を引かれて彼の背中に収まる。

「迎えが来なかったら、日が暮れた戦場をこのまま夜通し歩き続けてた……。
想像するだけでぞっとするよ……」

張り詰めていた緊張が解けたのか、その広い背に少しもたれかかるようにして。王国軍の鎧ごしには体温が伝わる事は無いだろうけれど、疲労と怪我で消耗しきっている様子は伝えられる。

ヴェルム > 「普通に団長で構わないよ、今はね。とりあえず敬意のある呼び方をしてくれればいいから。
それと、他のメンバーのことは今は気にするな」

疲れきった彼女にはその余裕はないかもしれないが、寄せ集めのパーティだったとしても他人を気遣いすぎるタイプだった場合を考えて伝えておく。
呼び方については、職務中であれば団長呼びなど、普通に敬意のある呼び方にしてもらったほうがいい。
プライベートなら呼び捨てでも構わないということでもあった。

「最期まで諦めない姿勢はたいしたものだよ、よく頑張ったね」

鎧越しにわかる、安心しきり背にもたれかかる彼女に労いの言葉を掛け、全員で野営地へと馬を走らせる。
しばらくすれば野営地の灯火が見えてくるだろう。
師団の野営地としては、規模はそれほど大きくなく、人手不足のこともあり夕刻であっても皆忙しそうに働いていた。

タピオカ > 「わかったよ、団長。……十三師団を率いる男の人って、どんな荒っぽくて怖い人かなって思ったけど、意外と優しいんだね」

自陣へ近付く不審な人影も部下任せにしないで、雇った人物の名前を記憶して。危険分子を出来るだけすり減らして置きたい王国の意向もあっての事だけれど、兵力を使い潰す側の人間としては想像していた様子と違っていて。馬上で振り返らずとも、遊牧民が少し微笑んだ様子だけ背中ごしに伝わり。

「ありがと、団長……。
お給料の分だけしっかり働こうと思って。
……よかった、帰ってこれた……」

弱った声音であるが、ねぎらいの言葉に嬉しそうに返して。
友軍に保護された事でリラックスしたのか冗句めいた事を告げる。野営地の灯火を見て安堵の息を吐き。

ヴェルム > 「はは、頼りないってよく言われるから、そう言ってもらえると嬉しいね」

事実師団長を務めている者の中でもヴェルムは特に若かったため、甘く見られることも多い。
さらに言えばパッとしない見た目のこともあり、師団長と信じてもらえないこともままあった。
だからこそ、タピオカの言葉には素直に嬉しい気持ちになって小さく笑う。

「えーと、衛生兵は…」

野営地に戻ることができれば、馬を降りてタピオカの身体を支えつつ降ろしてやる。
傷だらけの彼女を治療すべく衛生兵を探して声を掛けたものの。
「忙しいのでご自分でどうぞっ!」
と、女性の衛生兵はにこやかに医療品の入ったバッグをヴェルムに渡して忙しそうに医療テントの中へと入っていってしまった。
別に彼女に敬意が無いとか、忙しすぎてピリピリしている雰囲気とかではなく、こんな感じで団員たちも気楽に応対できるのがヴェルムという人間だった。
まぁバッグを渡されてしまったヴェルムはポカンとしていたのだが。

「あー、すまないが私が治療するよ…とりあえずテントに」

頼りないかもしれないけどと苦笑いを浮かべながらタピオカの元に戻るヴェルム。
鎧を脱ぎたいのもあり、彼女を自分のテントに連れて行くことにしてみた。
彼のテントは師団長の個室テントとしては質素で小さいものの、一兵士から見れば十分な広さがあった。

タピオカ > 小さく笑う彼の広い背中を頼るように。くすっと肩を震わせて笑い合えば、とん、と額を硬い鎧にくっつけて。

「ぁ……、っと……」
馬から降りる時に姿勢が変わると傷が開いてしまう、と心配して息声を浮かせるけれど。相手の大きな手に支えられて痛みが走る事はなかった。どこかぞんざいで、それでいて彼を師団長ではなく家長のような扱いをする衛生兵の物言いに肩を再び震わせて楽しそうな忍び笑い。彼へなら、体長2mを越す恐ろしい魔族の兵でも「よう、団長」と親しさと尊敬をこめた笑顔で挨拶しそうだ。

「団長は皆に慕われてるんだね。
うん。お願いします。
わぁ……!団長のテントはこんな感じなんだ。広い……」

苦笑いの彼に皮肉ではなく褒め言葉を告げつつ笑って応じると頷き。お邪魔します、と言わんばかりに恐縮して団長のテントへ。一兵の雑魚寝テントとは違った個室の佇まいに物珍しそうに見回す。