2017/06/29 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にマティアスさんが現れました。
■マティアス > ……――偶にあるのだ。魔族の領地からはるばる、餌を求めて飛来するものが。
知性の少ない有翼の魔族や魔獣程度ならば、まだいい。寧ろ珍しいという形容は適切ではない。
巨躯を誇る飽食しきった竜が、珍味でも摘まみにきたつもりか、この辺りまでやってくるという事態が稀に、ある。
それはそうだろう。他国との戦争の場となりうる領域だ。
餌に溢れている。死に溢れている。無念となった死霊でも啜るには、困らない領域である。
斯様な事態が起こるなら、本来であれば王都を守る騎士団等が動くべき事案であろう。
しかし、それよりも前に動くモノ達がいる。誰でもない。冒険者や傭兵たちである。
討伐の依頼を掲げるものがあれば、時に高額で取引される竜の部位を求めて、動く。或いは名誉欲に駆られて。
幾つもの人の動きを統合して、まず起こるのは高空を舞う竜を地に引き付ける、あるいは叩き落すという動きである。
弓も届かぬ高い空を穿つ力を求めるなら、それは魔法だ。
ただ一人では為しえ難いものを、腕に覚えのある術師たちが協働すれば、けっして不可能な工程ではない。
故に――。
『――――――!!!』
――竜は、咆声と共に地に落ちるのだ。
丘陵地帯の一角、地に描いた魔法陣を取り囲むように発動させた魔法の成果を見届けて、汗を拭う姿がある。
黒いローブをフードも込みで目深に被った姿だ。
他に同じような姿や肌も露な女性など、同じ術師と思しいものも疲労困憊の様相で表情に緊張を湛える。
見遣るのは陣取る丘の下の平原、其処に墜落した姿である。
響く怨嗟の咆哮の主は、黒い鱗を纏う。全長は50メートルはあろうかという程の翼持つ大きな竜。
その姿に向かって走る姿を眺め遣る。傭兵団や思い思いの装備を纏った、冒険者たち。
ご案内:「ハテグの主戦場」にエアルナさんが現れました。
■マティアス > 「……あー、うん。ちょっとまずいかな、あれ」
各々が不ぞろいの装備でも、叫びを響かせて吶喊する姿は勇壮では、ある。
しかし、其れを眺めるローブ姿の表情はやや暗い。フードを下ろし、眼鏡の下の眉を潜めて思う。
正直に突っ込み過ぎである。態勢を立て直すまでの間を突くにしても、もう少し手管はあっただろうに。
だから、竜は素直にその身を動かす。
長くくねる尾をそれこそ、特大の鞭として振るえば、そのインパクトを連なる悲鳴で体現する。
あちゃあと顔を手で覆う。周囲の同業者たちも焦りや恐慌を浮かべる中、さらに。
「ッ……。ん、そうだね。そりゃあ良い気分で飛んでいたところを叩き落されれば、怒るよねえ」
怒りの色濃い咆哮が、響く。竜の声には恐慌をもたらす魔力が籠るという。
否、魔力がなくともこのような叫びとは、人の始原的な恐怖心を掻き立てるだろう。
慣れていても、身体の芯が震える。だが、自然と口の端に浮かぶ笑みを隠さずにはいられない。
腕に覚えのある古参の冒険者や、傭兵たちが声を上げる。自分達の指示に従え、と。このように動け、と。
其れに沿って動き出す流れに、己も混じろう。腰の剣を抜きながら手に符を掴みだし、魔力を巡らせる。
丘の上に待ち受けるのではなく、前衛の一角として前に出る。遠く、遠く、松明の如く輝く竜の眼を目指して。
■エアルナ > 「50m…は、ありますね。この辺までわざわざ来るとは、珍しいですがーー
まずいですね、あれは」
竜と。素直に突っ込みすぎた一団が反撃されるのを見て、ぽつりとこぼすと。
娘は真剣な表情のまま、傍らの白オオカミのほうを見た。
竜の咆哮が響き渡れば、ぶるっと震えは走るけれど、それは決して恐怖ではない。
だから。そのまま一回り大きく、馬のような大きさとなる白狼の
背にひらりとまたがると。
動き出す流れに沿うように、自分も竜との距離を詰める…前衛の加勢と魔法の援護が利くように。
位置的には、丘と前衛の中間あたりをひとまず目指して…動きは狼に任せよう)
■マティアス > 「まれにあるけど、こういうことは皆無じゃあないよ。
――故にあんな風に出てきた酔狂者を狩り立てようとする動きも早い。けど、ね」
陣形を立て直す。盾を構えるものは構え、竜の強靭な鱗を貫けそうな武器を持つ者は力を溜める。
斯様な戦場では常日頃考える小細工は使い難い。
下手に足場をいじくりまわせば、敵は兎も角周囲の味方の邪魔になり得る。
魔法の有無に関係なく、当たれば確実に痛打を与える武器というのは、大体が大型武器である。
高所からの落下による慣性に頼らない、否、頼みようもないなら、地を踏みしめて叩き付けることで真価を発するのである。
「だからと言って。功に逸ると、大体の連中はまるでゴミの様に死んでしまうの……さッ!」
ほら、無茶をするものがいる。
煌びやかな見た目だけは豪華な装備を纏ったものが、剣を翳して穏やかならざる表情で駆ける。
それを、まさにゴミを払うような仕草で黒い竜が前足の爪を振るう。
如何に援護の魔法による加護があっても、あっさりと薙ぎ払われるものを己が投じる符が発する光を、重ね掛けすることで防ぐ。
光が作るのは、一点集中による堅固な盾である。
突出した愚か者を叱咤する叫びが響き、前衛を張る者たちが動く。
盾の合間より弓を放ち、馬や自前の俊足等、機動力に優れた者たちが横を穿とうと回り込む。
そんな姿を援護するものとして、後方にて己は術を繰る。
ステップを踏み、舞うような動きで剣を振るって周囲に魔力の光を浮かべる。
■エアルナ > 「今回は、迎撃も大勢集まったほう…ですし、ね」
前衛の動きを見ながら、さて、どう援護すべきかと思考を巡らせる。
そう、素直に正面から攻めるのではなく、散開するのは悪くない。
だが、彼らの動きを阻害しないようにするには…大地を揺るがす魔法は避けないといけない。
「がレム、には不向きな展開ですしーーなら。
【召喚】豪快なるハヤブサ、ロブロス、わがもとに来れ!」
左腕のブレスレットが光り、頭上の空間を突き破るようにして…ハヤブサが顕現する。
ただし、その大きさは並みの鳥ではない。
乗ろうと思えば大人数人は背に乗れるほどの、小型の飛竜並み。
炎を吐く、召喚獣の一柱だ。
「ロブロス!あの竜に、炎を!なるべく空中に注意をひいてっ」
キュイー!
承知した、とでもいうように一声なくと、ハヤブサは飛ぶ。竜の頭上を旋回しながら、そのすきを見て…高熱の炎を吹きかけようと。
■マティアス > 「……この際だ。君もよく見ておくといいよ。集団戦とは僕らだけで戦うよりもずっと難しいものだ、と」
そうだね、と。大所帯と言いうる布陣を前方に眺め遣ろう。
戦術の組み立て方としては、適切だろう。
竜の持つ能力のうち、最たるものとしてはなんと言ってもその吐息である。
直撃を避けるなら、真正面から攻め込む愚は勿論避けるべきであろう。
この場に突出した能力の英雄が居れば、逆にこの足並みを崩し、周囲に損害を与えかねない。
だから、よく考えてその能力を振るうべきである。
小細工を使いづらいならば、選択すべきは真正面同士のぶつかりあいである。
地に敷く魔法陣を以て、踏みしめる大地の地脈の一部を経由し、紡ぎあげる術式を送り込む。
身体強化、防御力向上、武器強化―――。
「定め、纏い、統べる。――我らが敵を打ち倒すがための破邪の威を宿せ」
弟子同然とも言いうる少女が召喚するモノの姿を見遣りつつ、前線に対して魔力の加護を重ねて送る。
地に突き立てる剣の先を起点に、複数の魔法陣が光で描かれては回る。
重なる勢いに、竜が攻め立てられる。
必殺のブレスを吐き出すタイミングを頭上を飛び回るハヤブサの火焔を受け、鬱陶しげに顔を歪めて、翼をはためかせる。
それだけで沸き起こる風に、不可思議な言語で紡がれた唱が重なる。
竜の言語による魔法である。轟!と増幅された猛風が、爆風の如き勢いで広がる。
その風圧に咄嗟に片膝をついて、凌ごう。前線でなくてもこの強さだ。
あっさりと盾を構えていたものが吹き飛ばされ、地に転がる。
あらぬ方向に曲がった首に嵌る死んだ目が移すのは、吹き飛ばれた仲間が構えた槍にあえなく刺さった馬の姿だ。
竜は、ただあるだけで猛威を振るう。その一幕がこれだ。
■エアルナ > 「…ですね。特になじみのない間柄がほとんどとなるとーー」
普段どう動くか、戦術を心得ているか。
そんな基本的なことも知らない同士、阿吽の呼吸はのぞむべくもない。
となれば、基本重視。補助魔法を送る青年の手腕を見据えれば、
竜も負けてはいない。
「…っ!」
離れていても、すごい風圧だ。脚を踏ん張る狼の背に、半ば伏せるようにして爆風をしのぐ。
その風だけでも、また、何名か倒れた様子に…奥歯をかみしめる。
残念だが。全員は助けられない、まず、この戦いを生き抜くことが前提だ。
■マティアス > 「寧ろ、僕達の方こそが異端と思うべきだよ。……突出し過ぎると、足並みを乱しかねないからね」
戦術と言っても、其処まで複雑なものではない。
奇手を凝らしても強引にぶち破られるような、普通ならば到底太刀打ちし難いものが相手なのだ。
だから、数を揃えた上で適宜、周囲に魔法の支援を行うことをまず欠かさない。
敵に対する弱体化の魔法もけして、効かないわけではないのだ。
ただし、竜を相手取る時には注意すべきことがある。敵も魔法を使うのだ。
半端な魔法は寧ろ、鎧の如き鱗を傷つけるどころか、かき消されてしまいかねない。
故にこそ優先度は、味方の支援。次に敵の動きを見つつ、適宜最適解を模索する。
「……――と、ッ、まずい!」
たとえば、今だ。倒れ伏せた周囲の敵を一掃しようと、黒竜が口腔に炎の光を宿す。
あと数秒すれば、この場が火の海になりうる。
そこを手にした符の消費を引き換えに、発動させる魔法の一撃を以て阻止する。
符に封じた魔術の一つは、十数個の思念で誘導可能な魔力弾の同時射出。
顎下から徹底的に打ち上げて口をふさぎつつ、隙間を縫って口腔に飛び込ませる魔力弾の炸裂を以て、阻害する。
同時に、機とばかりに突撃する槍や斧の使い手達ががら空きになる胴や、前足に思い思いの打撃を与えてゆく。
事、此処に至っての反撃の一手、である。