2017/05/27 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にオーベさんが現れました。
■オーベ > 王都の貧民地区に小さな店がある
商うものは様々だが、店を訪れるものは魔道の心得のある者だけだからつまりはそういう店である
そんな店の店主が実験の途上で作り出したものが逃げ出したんだか、持ち込まれた先が人目につく場所であったから、
この一件は、厄介事へとなり変わった
「…王国の法によればバレれば7度は死刑になるらしい…」
王国法の条項4つに抵触、魔術ギルドの定める所の禁止事項3つに抵触、さらに店主の所属する学会は実験の中止を
求めていたという事だからこれは確かに生きた心地のしないことであろうと思われる
そんな話を誰にするでもなく、1人呟いていれば月明かりに伸びた影の中から嘆息が聞こえる
「…でも、気持ちは判らないではないんだよな…
魔術師って、心理の探求やら好奇心の為になら平然と命を掛ける生き物だからなあ…」
王国軍と敵国の軍のぶつかる緩衝地帯
その周辺を月明かりを頼りに歩いている…なんやかんやあって謝礼はするから、と
言われ人目に付く前の店主の作った…作り出してしまったものを回収するのが依頼である
見当たらなくなったのは3日ほど前、ということだからもう色々と手遅れな気もするのだが…
店を訪ねた時に店主は存命であったから、まだ人目には付いていないことだろうと思われる
影に潜む白き獣は失せ物探しに特化した能力を持っていたから、その感覚に従い、戦場をフラフラと歩く
■オーベ > 王都を出て戦場にたどり着いたのは日も高い時刻
流石に、盛大に争っている所を我が物顔で歩く勇気は無かったから日が沈み、両軍、陣地に引き上げるのを待った
月が高く登った頃合いを見て、この辺りまでやってきたが、警戒線に掛かっているらしく歩哨に出くわしたりもした
慌てて認識阻害の魔術を使い事なきを得たが、伝令の騎兵がすぐ脇を駆け抜けていった時は正直、驚いた
「歩哨やら伝令が飛び交ってる所を見ると、これは今晩、一戦あるかもしれない…
……悪いんだけれど、急いでくれるか?こんな形だと、密偵か何かに間違えられて射殺されそうだ」
影の中の相棒にそんな話をすれば、文句が聞こえてきそうな気配であった
しばらく、黙った後で、なるべくでいいんで、と伝えれば再び歩き出す
月が綺麗で良い夜である…時折、何かを確認するように影の中から姿を表す白い牝鹿の姿が映える
まさしくそれは、絵画のような情景であった……――牝鹿が鼻先を寄せてスンスンしているのが、
甲冑から武器まで奪われたまるまると肥えた貴族の死体で無かったら
なんとも言えない呆れ顔でそんな情景を眺めつつ、少し先を行く
■オーベ > 日の高い時間に仮眠をしていたとはいえ少々眠くなってきた
欠伸を噛み殺し滲んだ涙を拭えば、背後で気配を探っていた牝鹿が近くまで歩み寄る
「…見つけたか…って、ああ…もう少し先を移動してるのか
それじゃあ、先行して足止めしておいて、ダメそうなら無理に追わなくて良い
それと―――決して、潰したりしてくれるな?」
判りきったことを、とでも言いたげな様子で白い牝鹿は自らの影に潜り、影のみの姿となって地を駆ける
その様子を見送れば、ごそごそ、と懐を漁り、鉱石で出来たケージを取り出した
店主曰く、これの内に入れてしまえば安全に運ぶことができるらしい
安っぽい鳥籠のようで少し眉唾に思いながら、小走りに駆けていった相棒の後を追いかけ始めた――
ご案内:「ハテグの主戦場」からオーベさんが去りました。