2016/12/01 のログ
■フォーク > 「はは、そうかもしれないな」
男は笑った。
兵卒はよく死ぬ割に給金は少ない。
その代わり将校らと違って誇りや面子もないので、戦場に落ちているものを漁ることが許されている。
宝石や金は、死者には必要ないものだ。
女の影が立ち上がり、宝石に触れようとする。
少し驚いたが、女の佇まいは常人が出せるものではない。もしかしたら人ではないのかもしれない。
それがどうした、と男は考えた。
今、目の前にいるのはいい女だ。抱え込んだ精を放てる肉の穴を持った女だ。
「助ける価値か……。難しいことを言うんだな」
一つ言えることは、男はまだ生きようとしている。鍛え上げた肉体は懸命に生を求めていた。
男は戦槌を杖のように扱い、ゆっくりと立ち上がった。
そして、胸を反らす。
強烈に、勃起をしていた。ズボンの布を突き破らんばかりに猛っていた。
「物欲はないかもしれねえが、肉欲はどうだい。そんな体してるんだ、嫌いじゃねえだろ?」
これが男が女にできる全てだった。情欲全てを叩きつけることしかできなかった。
■ダイラ > 男の返答は少々意外だった。
血まみれのくせに屈託無く笑うせいだろうか、性に急くようには見えなかった。
しかし死に近づけば生を残したくなる生き物の本能は女も理解している。
「セックスの途中に死んだらその魂、わたくしに戴けません?
あぁ…でも、本当に鍛えていますのね。
寝首でも掻かないかぎり死なないかしら…残念。」
血の匂いが酷かったからか、出会ってすぐ彼が尻餅をついたからか、
すぐにでも肉体から魂が抜け出るのではと思ったのに意外とその繋がりが
まだ強いことを察して、駄々っ子のように眉尻下げる。
女も立ち上がれば長い黒髪が揺れて、あまりに軽装な肢体が晒される。
立てば下半身はパレオが覆い、時折風に揺れて見える脚以外、
足首から下しか見えない装備だが、上半身は違う。
やや張り詰めた形の胸の谷間も、臍も、外気に触れている。
「…でもその血、あまりわたくしの身体につけないで。」
男の足元で、また黒い手が蠢いた。
細い手だが、今度は子供のような小さなものではなく、手首の細い女たちの手だ。
男の足元を撫でて触って、掴もうとしてはするりと抜けて、
艶めかしく揺れる指が男を地の底に誘う。
■フォーク > 女が奇妙な提案をしてきた。
行為の最中に男が死んだら魂を寄越せ、と言う。
男は死後の世界を信じない。死ねばそのまま消えると思っている。だから魂も存在はしないと考えていた。
「ああ、構わんよ」
だからあっさりと了承する。
女も自分を受け入れてくれたらしい。
言われて気がついたが、たしかに男の体は考えている以上に血生臭い。
服を脱げば、少しは血臭も薄まるだろう、と服を脱いでいく。
分厚い胸板、恐ろしく堅そうな腹筋、女の腰ほどもある太腿が現れた。
隆々とした男根は、興奮しているからか太い肉茎に血管を強く走らせていた。毛だらけの肉袋も豊かに実っている。
「おお?」
男の足下に影が生まれた。なんだか影に飲み込まれていくような気分だ。
(こりゃ本当に地獄とやらに行っちまうのかもしれねえなあ)
なすがままにされながら、男はぼんやりと思った。
■ダイラ > 男のあっさりとした態度を、女は死ぬ気が無いからだと思った。
彼の衣服についた血のほとんどは返り血なのだろう。
本気で男の魂を目当てにしたわけではないものの、内心落胆している。
本当に死ぬか生きるかの性交が愉しそうだと思ってしまったせいだ。
「ここは戦場だって、わたくしに言ったわりには無防備な姿になってしまいますのね。
誰かに狙われれば一溜まりも無い……。」
クスクスと、控えめながら愉快そうに笑い、男の身体が露わとなるのを見ていた。
大柄な男だと思っていたが、鍛えられているせいで皮膚が露わになればなるほど
逞しい雄としての印象が強まる。
地から伸びる影は、男の膝辺りまでは届いてもそれ以上は這い上がれないらしい。
できれば血管浮き立つ男根に指の先でも届かせたいとでも言うように伸びるが、
限界になると名残惜しく指先を丸めたり動かしては、おとなしく泉下へと戻る。
そんな黄泉の住人を尻目に、魔族に堕ちようとも生身である女は
男へと歩み寄り、生を渇望する肉棒の反り返った角度に合わせて掌を添わせ、
包み込もうとする。まるでその質量を確かめるように。脈動を感じるように。
ご案内:「ハテグの主戦場」からダイラさんが去りました。
■フォーク > 「なあに、鎧も素っ裸もさして変わりは無いさ」
死ぬ時はあっさりと死ぬ。それが戦場だった。
その死の確率を少しでも減らすために兵士はよい鎧を揃え、体を鍛える。
男の鎧は旧式も旧式の皮鎧だ。今時こんな古い鎧をつけている奴もいないだろう。
「俺の鎧は、ちょいと強い武器で切られたらあっさりぶっ壊れるようなオンボロだ。
だけど愛着があってね」
だから他の鎧に替えるわけはいかない。その代わり、肉体を徹底的に虐め抜いた。
その副産物として、強靱な生命力と圧倒的な男根を手に入れたと言ってもいい。
「こいつはお前さんのお友達かい?」
ぞっとしねえな、と男は苦笑する。
影から生まれ出る手は、男に触れようとしていた。
女が、近づいてくる。漂ってくる色香に男根が熱くなった。
柔らかい掌の中で、男根は反発するように太く堅くなっていく。
戦場で起きた、一夜の夢のような出来事だった。
ご案内:「ハテグの主戦場」からフォークさんが去りました。