2015/10/16 のログ
ご案内:「ハテグの主戦場」にオルレアさんが現れました。
オルレア > (しかし、こうも殺したくなるのは久々だと騎士崩れは思った。
 男と女の下品な嬌声の響く娼館前にて佇む一人の仮面姿が居た。)

「さっさと通りなさい。私に構わないでくださいませんか」

(女とあれば誰だって構わない連中は居る。
 女は不幸にも女であり、娼館の警備をそこそこの値段で請け負ったが運のつきだった。館へと入ろうとして何を勘違いしたのか商品かと思われて連れ込まれそうになること数度。
 尻を蹴飛ばし館にご案内すること数十階。
 仮面を被っているから大丈夫だと思っていたのは勘違いだったらしい。
 いい加減飽きてきた女は、同じように警備を任されている片割れの姿を見遣った。)

「忌々しい」

(酒をかっ食らって寝ていた。
 酒。
 特に嫌悪するものだ。
 腕を組むと、壁に寄りかかって時間が過ぎるのを待つ。仮面の奥の瞳は閉ざされたままだった)

オルレア > 「こんなことなら戦場へ突っ込みかき回したほうが有益でしょうね」

(言うなり背中の斧を意識する。
 戦場には魔族だっているだろう。ドサクサにまぎれて殺すことがいかに容易いことか。
 仮面を取ろうと手を伸ばしてきた不届きものの首をむんずと掴みあげる。顔を接近すると、額にごつんと仮面をぶつけてやった)

「高いですよ? あなたの生涯稼ぐ金を差し出したところで払えるとは思いませんが」

(兵がそそくさと退散する。
 ため息を吐くと館を見上げた。戦場の片隅にあるそれは、館というより木材とテントの残骸を合成して作り上げた代物で、およそ建築物と称するのが恥ずかしい異物だった。
 娼婦とは名を打っているがその辺の女を適当に捕まえてきて稼がせているに違いない。
 ――ふと、頭の奥底に自分が似たような痴態を晒していた頃の記憶がよみがえった。
 忌々しい。
 傍らでぐっすり眠るガードの男を足で蹴飛ばす。)

「もう。知りませんからね」

(深くため息を吐き、)

「ぶっ殺すぞ糞が!」

(頭を思い切り踏みにじりつつ言葉を吐きかける。
 何故か笑顔で踏まれ続けるガードだった。)

オルレア > 「………なんなんですか」

(笑顔で踏まれるガードを不気味に思ったのか女は足を引いた。
 踏まれて元気になれる人種らしい。踏まない方がいいだろう。)

「まだ時間はありますね……」

(時が過ぎるのを待つのみ。商売女扱いされてはたまらんと腕を組みついでに武器も握って壁に寄りかかっておく)

オルレア > (そうしてうとうとと眠ってしまったのが悪かったのか。
 ふと気がつくと仮面を取られていて、数人の兵士がこちらをまじまじと覗き込んで来ていた。
 顔に走った傷跡。閉ざされた瞳が開いても明らかにピントは合っておらず。
 音で兵士たちの姿を『視』て、鼻を鳴らして手を突き出す。
 一応は客である。切りかかるようなまねは出来ない。)

「返して。目も見えない。傷物の女にようはないでしょう」

オルレア > (仮面を奪い返し警備に戻る。
 日常の一幕はこうして過ぎていくのだった)

ご案内:「ハテグの主戦場」からオルレアさんが去りました。
ご案内:「ハテグの主戦場」にシドさんが現れました。
シド > 草原が輝いていた。緑の海原が光を発したのではない。その穏やかなる草原に自然には非ざる金属が陽光を照らし返していたからだ。
国境を分断するかに二つに分かれた軍勢は互いに睨みを効かせて牽制していた。時折、斥候の馬が数頭走るのに笑いながら弓兵が矢を仕掛けるくらいしか
戦闘と呼べるものは起きていない。穏やかな青空の下で血の流れぬ戦争状態が続いていた。

「――今日は向こうから仕掛けてこないでしょう。斥候の馬を見るに奴らあまり軍の練度を積んでいません。
 ――ええ。虚仮威しです。我らと戦う姿勢だけ作ったもの。仕掛けるならば今が好機かと。」

漆黒の鎧を纏う者が天蓋ある野営の中で司令官と交渉していた。が司令は決して首を縦に振らない。
それ以上言及はせずに大仰に腕を折り曲げ慇懃なる会釈をして立ち去る鎧から銀の髪波が揺れていた。
歩くだけでかしがましく金属すれる音を引き連れる足並みは魚鱗の形に並ぶマグメール軍勢の中でも比較的に先頭に位置する集まりまで。

「腰抜け司令官殿は戦う気が全くないらしい……嫌になるな。わざわざ兵役に従って来てやってるんだ。剣の一つも交えず帰るなんて馬鹿らしいぞ。」

黒兜の目庇を上にずらして葡萄色の眸が空を仰ぐ。日は中点を通り過ぎた。
あまり時間はない。

シド > 久しく着るその重み、蒸すような中の暑さに、鎧の中で幾多も汗を掻いても微動だに出来ない。率いてきたのは30名も見たない私兵のみ。
挑む相手は巨獣の如き大群ならば全軍で動かねば武勲も立てられない。大仰な動きこそしないが焦燥が明瞭に声に現れる。

「――そりゃ戦争が起きないほうが良い。だがそれは自国の基盤が確りしている場合だ。後継者争いでいつ国が2つか分からない今なら
 多少血を流したとて外敵を排除したほうが良いんだ。魔族だっていつ本格的に侵攻してくるか分からない。
 滅ぼす、とは言わないが、痛手を負わせ此方に有利な条件で同盟を結ばせれば良い。」

主の焦りに話しかけてくる従者、それに返すは自分の理論―― だが根拠には乏しい。決して胸の内を明かすのではなく武勲を立てる場が欲しいだけの
建前だけだ。それを聞いて大袈裟に畏まる私兵には目もくれずに、遠い敵を眺めていた。

「全く気を抜いているな。今ならただ突撃するだけで敗走させることも出来るだろうが……。」

そうすれば活躍の場が無く終わる。目庇をあげて爪を噛んでただただ佇み待っていた。
この無意味な時間の終わりか、それとも何かしらこの場に変化が訪れるのを。

シド > 日は東の山合に沈み始めて空を赤銅色に染めていく。夜が訪れれば大多数の合戦は出来ない。合戦の終了の合図だった。
草原を包み隠していた魚鱗が地を這うようにバテグの戦場より散っていく。自分の軍勢も等しく。
夕陽受けて鈍色に染まる甲冑の兜を外し、大きく息を吐いた。

「……帰るか。」

戦場から日々営む住処へと。帰路につく足は……然程重たくなかった。

「ま、これまでが上手く行き過ぎたんだ。言われた通り、目上の者達に顔を売っていこう……その内、大きな波が来るだろう。」

今一度振り返る。地平線の彼方へ消えゆく敵陣の背を瞬き忘れた葡萄色が凝視し。

「その時に敵討ちをさせてもらおう。」

誰に告げることなく囁くその青年の影も戦場の彼方へと消えていった。

ご案内:「ハテグの主戦場」からシドさんが去りました。