2023/05/27 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にエヴィータさんが現れました。
エヴィータ >  
「ようこそ、いらっしゃいました、子爵さま。
 ……先日と同じお部屋を、でございますね?
 それではどうぞ、あちらの扉へ」

恭しく頭を垂れ、可能な限り優雅に微笑んで応対するのにも、
ようやく慣れてきた―――――と、思う。
修道衣とは名ばかりの、どう考えても不埒な眼を楽しませるためにあるような格好で、
客を取れと言われないだけ、未だまし、なのかも知れないが。
それにしても、何とも胸糞の悪い場所には違いなかった。

「……出来る限り、出入りする奴らの顔と名前、チェックしてこいって言ってもさ。
 これ、キリがなくないか、ていうか、もう何人目だ?」

子爵様、とやらを呑み込んで閉ざされたばかりの扉を振り返り、
うんざり顔で独りごちる。
夜は未だ始まったばかりだというのに、既に両手の指でも足りない人数が、
あの扉の奥に吸い込まれているのだ。
そろそろ顔と名前を覚えきれなくなりそうだ、というのが、ひとつ。
もうひとつは、―――――こんな格好で、客に相対しているうち、
とばっちりを受けるのではないか、という、より差し迫った危惧があった。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にルヴィエラさんが現れました。
ルヴィエラ > (一人、また修道院の中へと姿を現す
前後して、同じ様に足を踏み入れた者達と混ざりながら
されど、何処か距離を置いて、其の一人は長椅子へと腰掛けた

祭壇の裏側へと、歩みを進める者達は皆、恙無く修道女に案内され
其の奥の扉へと消えて行く、と言う流れの中で
まるで祭壇の奥には、興味を持たぬかの様に。)

「――――……私は此処で構わぬよ。
……そう、数には限りも在るだろう?」

(暫くして奥から、修道士の男が一人、声を掛けに来る
態々出向くと言う事から見て、少なくとも関係者で在る事は知れよう
名乗る事は無くとも、シルクハットのつばに隠された人相くらいは、垣間見える

修道士は、祭壇の裏へと招こうとしているらしいが、丁重に断り続ける声が続く
招き入れたい側と、断る側と、押し問答めいた会話が暫し続く
其の内、燕尾服の側が、やれやれと一度、溜息をついた後に。)

「―――――なら、彼女で良いのならば。」

(――不意に、杖の持ち手部分を、案内役である筈の、一人の修道女に向けた
もし、彼女が本来、そう言った役割を与えられて居ないのであれば
それは、完全なとばっちりで在ろうが)。

エヴィータ >  
当初、その姿は特別、己の目を引くものではなかった。

身形の良さで言えば、今宵の客人はだいたい贅を尽くした装いであったし、
好色な顔を隠しもせず、いそいそとこちらへ進み出てくる男たちを捌くことに、
すっかり忙殺されていたせいもある。
こちらへ近づいてこない者に、わざわざ歩み寄って声をかけるのは、
あらゆる意味で、己の仕事ではない、とも思っていたので。

だから、その男の許へ修道士が近づいて行ったときも、
せいぜい、遠巻きに様子を窺いつつ、叶うなら何某かの情報を得ようという、
その程度の気持ちで聞き耳を立て始めたのだが。

余程の上客なのか、それとも無視出来ない額の出資者なのか。
何としてでも楽しんでもらおうという姿勢を示す修道士と、
お楽しみにはあまり熱心でないような素振りを見せる男。
珍しいタイプの客だなぁ、などと、完全な他人事感覚でいたところへ、
男の携えた杖が、つい、とこちらを向いた。
―――――次いで、大きく目を見開いた修道士の視線も、こちらへ。

「―――――――――― へ ? 」

ぽかんと口を開けて、小さく間抜けな声を洩らしてしまったが、
己は絶対、悪くないと思う。
きょとんと目を瞠り、小首を傾げ、―――――いったい、何の話だろう、と。
己が理解するより早く、修道士がやや慌てたように、

『あの者はつい先週、こちらへ参りましたばかりで、
 ……何も知らぬ不調法者です、恐らく、思うようにはお楽しみ頂けないかと』

地下で働く修道女たちとは違う、未だ諸々言い含められてもいない、ただの案内役、言ってみれば下働き。
男を悦ばせる手管も知らぬ、地方領主の娘なのだ、とかなんとか。
つらつらと言い訳を並べているが、それでも客である男が、是非に、と言えば、
修道士が己をあっさり引き渡すであろうことは、想像に難くなく。
やや遅れて事態を理解した己は、ちらちらと周囲を窺い始める。
見知らぬ男に叩き売られてしまう前に、薄闇に紛れて、逃げ出すことはできないだろうか、と。

ルヴィエラ > (彼女では、歓待するには不十分であると考えたのだろう
修道士が見合わぬ理由を並べ立てはしたものの、其の杖先が変わる事は無い
慌てた様な声を気にも留めずに、僅かに肩を竦めて見せた。)

「―――……構わぬよ、私が良いと言ったのだからね。
其れが叶わぬのなら、退散させて頂くだけだ。」

(既に用は済んで居るのだからね、と、一言添えて。
そうなれば、修道士の側に、否と言う事は最早出来ぬのだろう
軽く一礼を向けた後、速足で案内役たる修道女の元へと近付けば
話は聞こえて居ただろう、と、招き寄せるのは想像に難く無い

其の場から逃れる隙も暇も、生憎ながらに乏しかろうか
案内役が続いている以上、逃れようとすれば、覚悟を決めての脱兎以外にあるまい
修道院の出入り口に向かうか、或いはいっそ扉を潜り、在るか無いかの裏口から逃走するか
どれ程まで、この建物の構造を把握出来て居るかで、可能性は変動し得る

――されど、もし、其れを行動に移そうとしたとて、其の時には
彼女の背後より、其の身を逃すまいと、他の修道士達が歩み寄って来る
元よりこの場は、彼らの拠点とも言える場所の、ど真ん中
運悪く指名された時点で、逃げる目其の物が、薄いとも言えた。)

『―――――畏まりました。 では、此方へ…。』

(案内を受ける事でようやく、燕尾服が再び立ち上がる
祭壇の奥、扉の向こう側。 用意される部屋へと、生贄たる彼女を伴って。
彼女が抵抗するか、其れとも、大人しく従うかまでは推測できぬ事、だが
もし、何れの結果でも、其の扉の奥へと連れ込まれる事になるなら

きっと、案内役は、急遽駆り出された別の修道女が、代わりに努める事と為るのだろう)。