2023/02/10 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にシスター・パッサーさんが現れました。
■シスター・パッサー > 海風が冷たく撫でる 磯交じりの潮の匂いも冷気で落ち込んでいるようで
海に慣れていない者が感じるような鼻先に来る独特なそれも感じづらいかのよう。
うっすらと雪が積もっている道を歩くのはシスター。
修道服姿はこの街では珍しくもなく 況してや破戒僧と呼ぶべきか裏道地下階段
そこを通ればまだ娼婦の方が真面な暮らしができたかもしれない
しかし神と教えで縛られて侵される者らが多い。
そう、この街で修道女を見かけても、その視線は多種多様に混ざり合う。
しかしシスターの場合、濁らないピンクアイは端が鋭くなった視線のまま
周囲に胸元にゴルドを押し込まれて連れ込まれていくような真似もなければ
強姦対象に見られることもない、稀な一部。
この街ではあまり見かけないだろう酒場の一つに足を運ぶ雪の足跡。
ギュッギュッと伝わる粉を踏み固めるようなそれの痕で、白い吐息を零しながら入店した。
店内は懐に余裕のある者だけが、酒精を楽しみ
そして宗教関連者は少ないだろう。
いや、一部無精ひげの目立つ不真面目な形だけの神父などが飲んだくれているか。
シスターは手慣れたもので、カウンターの端から3番目に腰を下ろすと
修道服のまま堂々と、コークもミルクも頼むことなく、一言。
「こんばんは いつものを。」
そう言って葉を紙巻代わりにされた煙草を一本咥え、修道女には不釣り合いな
金無垢に彫刻された蓋をキンッと弾き開け、回す歯車で粉となって着火された火
先端をジリジリと燃やしながら、フゥッと息を紫煙に変えた。
■シスター・パッサー > マスターが、一つの酒を空け注ぐ。
小さな壺からは黄金色の蜂蜜。
それを後から落とし、ざっくりと混ぜるだけで手渡した。
シスターは片手に煙草を携えたまま、底にまだ大きく塊が沈んでいるだろう蜂蜜混ざりの琥珀を呑みこみ
冷えた体を内側から先に温めるだろうか 店の暖気よりも、確実に。
白い吐息は冷気から紫煙に 冷えた体は酒精で火照り始め、しかし酔えるほどではない。
外に出ればあっという間に頭をまた冷たくするだろう。
『景気が悪そうな面だな、シスター。』
その顔付きを酌み取ったのか、マスターは次の酒をもう用意している。
シスターの懐具合 そして外の具合と酒の進み具合から読み取って
シスターが返事を返す前に酒を空け、交換するようにして口の中の濃い蜂蜜と喉を焼くそれ
交互に来るのを洗い流すように、また琥珀がおおよそを占めるざっくりと蜂蜜が漂うもの
上澄みのようになるそれを呑み、肯定した。
「雪掻きほど無償で皆がするものもありませんからね。ボランティアと変わらない。」
本来なら専売特許なはずの言葉も、指に摘まむ者を全て金から考えるシスターらしい言いぐさ。
道々を皆がやる中で、教会者もそれは変わらない。
お布施で修道女を抱かせる者ら比べ、シスターの宗派は、なんにも得る者がなかった者
それには有りだと示すものの、ほかの実入りは時ど場合によるのだろう。
指先に感じるバニラ香の細い煙草を、フゥッと紫煙で漂わせるまま
煙が羊毛色の髪と交じり合う景色をマスターは眺め、この季節では
お布施 仕事 請け負う案件など 現実と向き合うと実に寒々しい。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からシスター・パッサーさんが去りました。