2021/09/08 のログ
■コルボ > 同様に、先に飲み物を、コーヒーを注文して。
「ヤルダバオートは治安がいいですからね。おかげでくつろげます」
頭を搔いて苦笑いをする、異端審問官に恐縮しているような振舞いを見せて。
端から見ればどこぞの貴族だかの小間使いが審問官の気まぐれに付き合わされている、程度に見えるだろうか。
同じような気まぐれに巻き込まれぬようにと、目を向ける者もその視線を反らしていくだろう。
「何か召し上がるのでしたら同じものを頼んでもいいですか。
昔司祭さんと一緒に仕事してから、こちらの方と同席する時は同じものを食べるようにしていて」
何も召し上がられないのでしたらこれだけ、で、と、運ばれてきた飲み物を手にして
「ひとまずこれ、お渡ししておきますね」
そういうと重厚な封書が差し出される。数枚程度の書類ではない。
何かしら、大量の情報がそこに詰め込まれていることは容易に想像できて
■ベルナデッタ > 「旅人としてはそうでしょうね」
ベルナデッタは男の演技に苦笑しながら言う。
表に中々出ないだけで、腐敗が深刻なのを異端審問官はよく分かっている。
「お好きな物を頼んでもよろしいのですよ?ここは肉も酒も出ますし」
多神教であるノーシス主教には信仰する神によって様々な戒律があり、それは食にも及ぶ。
その為相手に合わせるという男の選択は相手の気分を万が一にも害さない正しい選択だ。
しかし、ベルナデッタは別に世俗の人間が何を食べようと気にすることは無い。
「私は、そうですね、卵のサンドイッチを」
店員が品物を運んできて、向こうに去る。
そして男が封書を差し出してくる。
「…どうも、多いですね」
徐に手に取ると、封を切り、中身を少し、取り出して読んだ。
■コルボ > 「王都に比べれば格段に良いですよ。何せ、身内を庇うことはない」
先ほどの連行されていく光景。それはこの都市の、
主教の異端審問官という自浄作用が正常に機能している証で。
「ああいや、合わせてるのもあるんですが、戒めでもあるので」
そんなことを口にして、勧めてくれた貴女と同じサンドイッチを注文して。
「ああ、少し急ぎでして。あの人なら取り計らってくれるだろう、と思い出来るだけ持ってきました」
一部を抜粋すればそれは、ノーシス教の末端の司祭、僧侶の汚職の証拠についての調査結果。
そして人に紛れ、姿を惑わし潜伏する魔族の情報。
共に容疑者であり『シロ』である者の一覧も添えられており、
経歴から容疑の状況、そして身の潔白となる根拠まで明確に記されていて。
……何より、それは民間というよりも異端審問官の目線、裁判にかける上での視点からまとめられた情報だった。
魔族にしろ、司教にしろ、片手で数えられる数ではないものが収められていて。
「こっちも片手間なんで”本職”のあの人に比べればまだまだですがね。
ああ、生臭共のほうはおまけと思ってください。」
■ベルナデッタ > 「…あんな事になるのは余程何も考えずにやらかした人間だけです」
主教の内部も、王都の宮廷と変わらない、魑魅魍魎の蠢く巣窟。
尻尾を掴めるのも隙のある相手だけだ。
「なるほど、これほどまで…。この情報は責任を持って持ち帰らせていただきますね」
王国各地の教会の汚職、異端の情報、そして潜伏する魔族の居所。
さらには、疑われていた者の潔白の証明まで。
平静な様子で目を通していたベルナデッタであったが、その眼差しは真剣そのものであった。
「貴方の献身には神々もお喜びになるでしょう。
……ご心配せずとも現世で使える報酬も勿論お渡ししますよ。
おまけまでいただいては、それだけの対価を渡さねばいけませんね」
懐から紙を取り出すと、何かを書き込んで印を捺し、コルボに手渡す。
それには、報酬に相応しいだけの数字が描かれていた。
「これをいつも通り王都の三丁目の教会へ。望むものが手に入るでしょう」
■コルボ > 「ここまで各々の神に仕えて戒律が厳しい主教でそんな奴等いるんですね……。」
勉強しかしてなかったのか、つい足を踏み外してそのまま転がっていったのか。
まあ膿は絞り出されるに限る。
「……俺のは献身でも信仰でもありませんよ。
それに、現世での見返りはもうあの人からもらってる。
……昔、首突っ込んだ厄介事にあの人が居合わせてなかったら、俺は死んでたんでね。
まー、それでもそろそろ受け取らないと俺が怒られそうだ。
だから、それは主教の孤児院にでも司祭さん名義で寄付してもらえますか。」
それに、と付け足しながら、コーヒーを口にして
「リストの魔族を全部始末してもらえればこっちにも得はある。
星の聖猫派とかいう暴徒共が王都で暴れてるんでね。
なんだっけか、チァベなんとかいう神様の名前叫んでるミレー族の。
ただでさえ王都はごたついてんのに、そんなのが暴れてる時だ、
魔族に付け入られたらたまったもんじゃないんですよ。
だから、主教の方々が魔族を牽制してくれれば、こっちも仕事がやりやすくなるんですよ」
恩義と利害、どちらも取ってここに来たのだと。
■ベルナデッタ > 「神の力、教会の力を己の力と勘違いする者はいつの世もいるものです。
なので貴方のような方にこうして仕事を頼むのですよ」
ベルナデッタはにい、と笑った。
「善行は貴方の名で行ってください。
勿論それ以外に使っていただいても構いませんよ。
報酬を確実に払うのは私の個人的な戒めです。
貴方が相手の聖職者と同じものを頼むようにね」
こちらもコーヒーに口をつけ、静かに飲み干した。
「星の聖猫派、あのミレーの異教徒どもですか。
彼らへの対処はこちらでも考えておりましたが…、
なるほど、ならば責任を持って魔族祓いに尽力しましょう」
■コルボ > 笑う貴女に苦笑して、頭をクシャクシャとかきむしる。
おそらくは本来の髪型、乱れながらもやや整えたものになり。
「……ったく、あのジジイといい審問官の奴等は周りからビビられてるくせに
いざ話してみると面白い奴ばっかだ。
分かったよ。」
また一呼吸おいて髪を整える。端から見れば弄ばれてそろそろ限界な小間使い、がなんとか持ち直した体か。
「それじゃあ、これは俺名義で寄付させてもらうよ。
つっても、そもそも親からもらった名前もないしコルボ(烏)からの贈り物になっちまうがな。」
紙を受け取ると、猫達の話となれば
「異教徒にしたってアレは面倒すぎる。
ミレー達が突然ゴブリン並の向う見ずになって突っ込んでくるんだからな……。
ああ、頼むよ。そちらが威光を示してくれたほうが魔族抑えるついでに
異教徒共もこれ以上外に広がらない可能性もある。」
一心地ついて、少し思案顔の末に
「……書類届けるついでに、爺さんに、もう片足ねえんだから無理すんなよってカラスが喚いてたって伝えてもらえるか。
こんだけ案件持ち込んだらまた無茶しそうだ。」
話の間にサンドイッチはきちんと完食しつつ。
■ベルナデッタ > 「親から貰った名も己で付けた名も名前には変わりませんよ。
神々は魂をこそ見ておいでです」
コルボに微笑みかける様は、苛烈な異端審問官とは思えない優し気なもので。
「道を踏み外した邪教の信徒とはそのようなものです…救いを自ら拒否したのですから。
これ以上罪を重ねぬよう早急にあの世に送るのが情けでしょう。
ですのでそちらも健闘を祈りますよ。彼らは教会にも手を出しています」
しかし次の男の言葉に、ベルナデッタは一瞬ぽかんとすると、小さく声を上げて笑い出した。
「信仰の危機の前に働くなとは、貴方もむごい事をおっしゃいますね。
心配は伝えておきますが、あの方の神への献身は誰にも止められませんよ」
合間合間に食していたのか、いつの間にかサンドイッチは完食していた。
■コルボ > 「ちゃんとそういうしっかりした目線を権力者共に配ってくれねえかな神様。
王都じゃわりといい奴から死んじまうからな……。」
つられて笑いながら、猫達についても頷いて。
「ああ。あいつらが何信じるかは勝手だが、とにかくやり過ぎた。
ここまでいろんな奴等敵に回したんだ。落しどころはつけてもらわないとな。」
少し引き締まったと思ったら、また笑い出す貴女に肩をすくめて。
「知ってるよ。魔神に足抉られても審問官集める為に信仰一つで山の頂上まで登り切って伝令の奇跡ぶっ放した化け物だぜ?
絶対止まらねえよ。つか絶対あのジジイ普段歩けないふりして動けるように特注の義足作ってる。絶対だ。
でもさ、それでも言いたくなるんだよ。
わりいな、さっき嘘言った。俺多分信仰心あるわ。
神様は拝んでないけど、あの爺さんだけはずっと拝んでるからな。」
拝むだけの司教など必要ない。信仰の為に、信じたものの為に己をすり減らして役目を果たした仰ぐべき司祭を、
悪態を吐く非信心者は身を案じていて。
「……さて。用も済んだしそろそろお暇するよ。
あんたも、仕事すんなら五体満足で帰って来いよ。
次は俺が飯おごるわ。」
左耳の装飾を示すジェスチャーを、前線で悪魔を打ち払う聖騎士の彼なりの敬意をこめて。
後貴女の「悪魔祓い」を知ったら多分こっそり覗きに行く。
そういうやつ。
■ベルナデッタ > 「人の世は人が良くすべきなのですよ。神々の裁きは死後に下されるものなので。
なので、世を乱す者たちは人の手で神々のもとへと送らねばなりません」
勿論信じる者には快く助力をするだろう。
しかし、現世は人が何とかしなければならないのだ。
「ふふ、どうやら愚問だったようで。
その自然な、心配の気持ちは否定しませんよ。そういう気持ちがあってこそ人間です。
あの方も分かってくださるでしょう…でもご安心を。
あれでも意外と勝算の無い賭けはしないタイプなのですよ」
彼女も彼女なりに見てきたあの司祭の姿を話す。
尊敬すべき異端審問官の姿を。
「ご心配なく。これだけ情報が揃えば抜かりもありませんよ。
精々王都の人間の耳に入るぐらい派手に暴れてみせましょう」
そう言い男に手を振り見送ると、彼女は再度彼の渡した情報を手に、己の仕事のことを考え始める。
王都を蝕む淫魔達の情報を見て、まずどれを仕留めるか思案し始める。
後日、王国各地で背教者や魔族の討伐報告が次々飛び交った。
そのうち彼女と淫魔との戦いを彼が見ていれば、その日は眠れなくなったかもしれない。
■コルボ > 「だな。やっぱ現場出てるだけあって、何やっても神様のおかげって棚上げする生臭とは違うなあんたは。」
信仰とは祈ることではなく何をしてきたか神に見せるものなのだと、
そう思っていた。
腐敗した政治に連なる司祭も少なからずおり、食い物にされるものもいる。
だが目の前にいる聖騎士は、違う。
神の教えを自分の中に取り入れ、自分の意志で歩む者だ。
「まじかよ……。まーでも一緒に行動した時は想定外の修羅場だったからなお互い。
あれで冷静に頭回るのかよ、手に負えねえな……。」
言いつつ、そんな直情型にこれだけの書類を用意するのかと言えば否。
会わずとも、遠くからその”威光”を耳にしていて。
そしてそれからしばらくして。
彼女の”成果”が耳に届く。
そして鉄火場の中で聖騎士の掃討に遭遇し、彼女の”戦い”を目にした彼が思ったことは
『……ぅありがとうございました!』
だったとか
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からベルナデッタさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からコルボさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にロイスさんが現れました。
■ロイス > 「うっわ……これはまた、富裕地区とは別の意味で別世界だな……」
と、呆気に取られた様に目を瞬かせる男。
仕事の為に此処に来たのだが、整然とした雰囲気のある建物の並びに、圧されている。
静謐、というべきか、荘厳と言うべきか。
王都の平民地区でさえ、娼館やカジノといった雑味があるのに、此処にはそれがない。
宗教をとりわけ信じていない男でも、背筋を伸ばさせるだけのオーラが此処にはある。
「うーん、どこかお祈りとかするべきかな……?
いや、逆にそんな旅行気分でお祈りとかしたら失礼かな……?」
仕事は明後日なので、今日明日は一日暇だ。
観光ぐらいはしてもいいのかな、と思い、きょろきょろと辺りを見渡す。