2021/08/27 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にラチェルさんが現れました。
ラチェル > 数週間に一度、母や侍女に伴われ、必ず訪れる場所がある。
お祈りの時間、お茶の時間、その後にいつも訪れる記憶の空白。
とっぷり日が暮れてから目覚め、その日は修道院の一室を与えられて一泊する、
今日もいつも通り、そんなおきまりの時間を過ごしたけれど、何故か今夜に限って、
目がさえて、やけに肌がざわついて。

侍女に無理を言い、カンテラを借りて、ひとり、ささやかな散策に出かける。
散策と言っても、所詮、修道院の敷地内だけのこと。
今の時間なら誰も居ないはずの、聖堂を訪れるだけだ。

ギィ――――――

軋みながら開く扉の隙間から、そっと中を覗き込む。
昼間の聖堂なら見慣れているけれど、夜はなんだか、とても―――――

「………少し、恐ろしい気がするわ」

白い壁、天井、ところどころで揺らめく灯火。
なんだか別世界に迷い込んでしまったような、不思議な感覚が背筋を粟立たせていた。
そっと踏み込んだ先に、ひとの姿は見当たらない。
長椅子の陰、祭壇の向こう側、隠れ場所には事欠かない場所だから、
絶対に無人、とは限らないけれど。

ラチェル > しんと静まり返った空間は、ともすれば心細さを募らせるものだが、
今夜に限っては、それがひどく心地良かった。

絨毯の敷かれた通路を辿り、ぼんやりと高い天井を彩る絵画を眺め、
――――――そうして、数刻の後。

いつまでたっても戻らない姫を心配して、侍女が連れ戻しに来るまで。
娘はしばし、穏やかな静謐を楽しんだ――――――――。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からラチェルさんが去りました。