2020/08/09 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にカーリーンさんが現れました。
■カーリーン > 時間帯の所為か、それともいつの間にか随分街外れに来ているのか。
擦れ違う人もほぼ皆無となった通りの片隅で、ぶかついたシスター服姿の少女が一人、
途方に暮れた表情で立ち竦んでいた。
世話になっている孤児院の院長から頼まれ、乗合馬車で初めて訪れた街。
手にした紙片には簡単な地図も書き添えられており、そこが今日の目的地なのだが。
「………どうしよ、……全然、判んない………」
おのぼりさん、というべきか、単なる迷子というべきか。
いずれにしても、このままでは、頼まれたお使いを果たせないどころか、
王都へ再び帰り着くことも難しそうだった。
先刻、馬車から降りた場所へ戻るにはどう行けば良いか、すら、もう判らないのだから。
慣れない服装で、見知らぬ場所―――さすがに少し、表情にも疲れの色が覗いていた。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にルヴィエラさんが現れました。
■ルヴィエラ > (ふらりと、人気の失せた場所に、曲がり角から姿を現した影、ひとつ。
ローブを目深に纏った姿は、ゆっくりと、散策でもするかのような足取りで
路地を歩み、次第に少女の下へと近付いて来る
地元の人間、と言うには少々心許ない出で立ちかも知れぬが
其れでも、都市へやって来たばかりの人間と言った風でも無いだろう
放って置けば、其の儘傍をすれ違いそうな歩み
さて、声を掛けるのは目の前の少女が先か、それとも、己が先か
地図を眺めながら、いかにも迷子、と言った様子の娘に気付けば、
きっと視線は、暫し其方を見遣る。
彼女が声を掛けて来るならば立ち止まるだろうし
もし、声を掛けて来なくとも。 其の時は、此方から声が掛かる筈だ。)
「―――――ごきげんよう、迷ったのかな?」
■カーリーン > 初めに気づいたのは足音だったか、空気の流れだったか。
ふっと視線を向けた先に、こちらへ向かって歩いてくる人影が目についた。
「―――――あ、」
声を掛けようとして、一瞬だけ戸惑ったのは、その人物が怪しく見えたから、
―――ではなく、つい先日、迂闊に見知らぬ人物に声を掛けて失敗したからだ。
この少女には珍しく、弱気の虫に支配されて躊躇っている間に、
相手の方から声を掛けられる。
「ぁ、………あ、あの」
見開いた瞳をおどおどと揺らし、挙動不審気味に左右へ視線を巡らせてから、
意を決してぎゅっと拳を握り、一歩、その人物の方へ足を踏み出した。
ウィンブルを被った頭を、頷く仕草で上下に揺らし。
「は、はい、……あの、あたし、ここに行きたいんです。
ここ、……ご存知ですか?」
そう言って、握り締めてきた紙片を差し出す。
そこにはとある修道院の名前と、少女には解読不能であった地図があり。
――――もしも相手がこの街の『裏側』にも詳しい人物ならば、
その修道院に纏わる良からぬ噂のひとつふたつも、直ぐ思い浮かぶかも知れない。
■ルヴィエラ > (声を掛けた後の、挙動不審めいた仕草に
或いは人見知りであったのだろうかと覚える印象
其れでも、意を決した様に助けを求めて来るなら
片掌を伸ばし、彼女の差し出した紙片を受け取って目を通そう
手書きの地図では有るが、暫く読み込めば凡その察しは付いた
何より、修道院の名前自体には覚えが在る、が――
其処が目印では無く、目的地であると言うのなら
一寸、成程、と呟いてから、暫し黙した。
不思議では無い、修道女らしき娘が、修道院へ赴くのは当然の事だ
だが、この都市にて、其の修道院がどんな役割を担って居るのか
其れを知らぬ程、己は「お子様」では無い。)
「――――――……場所は判るが、どの様な用事かな?
見た所、この街の修道女、と言う訳では無さそうだが。」
(――敢えて、修道院の実態には触れる事なく、先んじて問う。
娘の修道服は、ヤルダバオートの文化とは異なる、王都側で良く見かける類の物だ
お使いでも頼まれたか、其れとも、派遣なのかなと、気軽に声を掛けた後
其の紙片の裏側に、何気なく目を通して見よう。
其処に、何も無ければ別に構わない。 だが或いは、修道院への、何かしらの「伝言」なぞが隠されては居ないか、と)。
■カーリーン > 生来、特に人見知りをするタイプではない。
だから一旦、声を掛ける、話をする、と決めてしまえば、
眼差しは真っ直ぐ相手を見つめ、紙片を差し出す仕草にも躊躇いはなく、
預けたそれを相手が裏返そうが、別段不審がったりもしない。
どころか、綺麗なひとだな、ぐらいの感想を抱く余裕もあった。
「え?……ああ、あたし、修道女じゃありません。
これは、えっと……よそ行きの服、ていうのが、なくてですね、
……と、取り敢えずこれなら失礼がないから、って」
行く先が修道院であり、一応は修道院に身を置く者、でもあり、
―――ただ、借り物であるために、どうにも服に着られている印象を抱かせるかも知れず。
とにかく、修道女などという大層な身分ではないのだ、と打ち明ける際、
気恥ずかしさに仄か、頬が赤らみもした。
「お使いなんです、王都の、サンジャック修道院から、
……ご寄付を頂いた方からの紹介で、あの、アルバイト、というか」
あたふたと言葉を繋ぐ間に、相手の目は紙片の裏に書きつけられた、
とある貴族の名を読み取るだろう。
その人物が、つまり、紹介者であるわけだが、―――裏での評判はきっと、色々お察しの人物なのだ。
■ルヴィエラ > 「おや、そうだったのか。
確かに、修道院に行くくらいだから、其の服の方が"都合は良い"のだろうがね。」
(修道女では無いと聞けば、成程、とまた納得した様に頷くけれど
ならば、それはそれで、より胡散臭くなって来ると言う物だ。
修道女でもないのに、修道服で無ければ為らない御仕事と言う時点で
察せられる物は少なくなかったが、地図の裏面に書かれた名前を認めれば
凡そ予感は、確信めいた物へと変化した。
――少しばかり、表情には出さぬ様に、考える。
紹介、という事は、この娘の周囲に少なからず影響力が在るのだろう
単純に、お使いが果たせませんでした、では、再び此処に送られるだけか
貴族の名前に覚えが在るとは言え、裏でヤルダバオートの宗教と繋がりが在るとは初耳だったが
宗教との繋がりを得る為に、供物を捧げる気なのかも知れぬし
――いや、寧ろ此れは。 今、其の修道院に貴族本人が待ち構えている可能性すら。)
「―――――……案内してあげよう、丁度私も用事が在ったのでね。
……所で、修道女では無い、という事は、何処かの施設かな?」
(――ふむ、と、僅かばかり頷いた後。
案内する事を伝えてから、娘の背に、そっとエスコートめいて、余りにも自然な動作で片掌を添えよう
幸いながら、今の場所から修道院までは、そう遠くない
確かに、当てど無く彷徨って居ては到着出来ぬだろうが
然程歩かずには済む筈だ)。
■カーリーン > 「え、あ、えぇと……す、すみません」
この格好を好都合、と考えるほどの計算高さとは無縁であったので、
他人からそう告げられてしまうと、申し訳無さそうに肩を竦ませてしまう。
返す言葉もやや小声になって、視線すら少し俯き加減に。
そんな状態であるから、相手が何事か思案していることになど、
欠片も気付く気配はない。
そもそも、このお使いは院長先生から頂いた大事なお役目であり、
少女からすれば、そこに疑念など、一片すら浮かぶ筈はないのだ。
―――善良な院長自身が、誰かに騙されている可能性についても、同様に。
「―――――え?
え、で、でも、良いんですか?」
案内してくれる、という言葉に、俯いていた頭をぴょこりと上げて、
迷子状態から脱せられることへの安堵と、見ず知らずの他人に面倒を掛けることへの躊躇いと、
そのふたつが綯い交ぜになった眼差しで相手を見やる。
けれども結局は、実にさり気なく背中へ宛がわれた掌に促されるよう、
連れ立って歩き始めてしまうのだが。
「あ、ごめんなさい、あたし、カーリーン、っていいます。
小さい頃から、サンジャック修道院の孤児院でお世話になってるんです」
親切な相手に対し、名乗ってもいなかったことを思い出して、
名乗りがてらに問われるまま、自身が孤児であることも伝える。
つまりは何かの生贄として捧げられても、どこかの貴族に首輪を着けられても、
孤児院の院長以外、誰も心配してくれない身の上である、ということだが。
■ルヴィエラ > 「おや、何か謝る様な事でも言ったかな?」
(其れは言外に、気にする事では無いと告げる様な物
彼女自身の、始めこそ人見知りめいて居ても、素直な性格を垣間見れば
本当に「お使い」でしかないと考えて居ても不思議はないか
悪意に対しての備えをして居なければ、悪意を退ける事は難しい
其れは、大人も子供も無関係。 そして、常に貶める側が手綱を握るのだ。
もし、彼女が迷う事なく媚時に修道院へと辿り着いて居たなら、果たして如何なっただろう
――とは言え、今もって平穏の保証なぞされては居ないのだが。)
「そうか、私はルヴィエラと言う。 では宜しく、カーリーン。
サンジャック修道院は、名前だけは聞いた事が在るね。」
(だが、赴いた事は無い。 本当に信仰に厚い場所は今尚、魔を拒む。
つまり、彼の修道院自体は、今もなお、正しい在り方なのだろう
問題は、そういう場所に限って、狙う輩は沢山居ると言う事。
己も他人の事をとやかく言えるような存在では有るまい、所詮気紛れが服を着て歩いて居る様な物だ、が
――程無くして、修道院の建物が見えて来る
王都の修道院に比べ、文化的、様式的にも異なる外観は
娘の目には、物珍しく映るやも知れぬ
あれが目的地だと伝えながら、入口まで歩んで行けば
共に建物の中へと踏み入って行き、そして、彼女へと不意に声を掛ける。)
「――――では、私は此処で。」
(耳元に、酷く近い位置で、そんな声が囁かれた。
――と、同時に、彼女が振り返った瞬間には、既に己が姿は消え失せて居るだろう
先刻伝えた「用事」とやらに向かったのだと考えれば、それまでの事だが
――其の刹那、するりと。
ぶかぶかの修道服のポケットに、一匹の小さな黒蛇が入り込み、身を潜める
まるで使い魔めいて、彼女の行く先に――罠の下へと、同行せんとばかりに)。
■カーリーン > タイミング良く返された言葉に、少女が向けたのは複雑な表情。
未だ罪悪感の残滓を絡ませた、微妙な微笑と共に緩く首を傾がせる仕草。
それから、もっと小さな声で―――『ありがとうございます』と、たった一言。
院長諸共に騙され、陥れられる寸前であるやも知れぬ、など、思いもよらぬのだから、
見返りも求めない親切を向けてくれる相手に対する警戒心など、
当然、芽生える筈もない状況である。
すっかり親切に甘える形で歩きながら、もう一度、改めて相手の顔を振り仰ぎ、
「ルヴィエラ、さん、……お顔もですけど、お名前も綺麗なんですね」
多分、間違いなく、男性であるだろう相手に、綺麗、が褒め言葉になるかどうか。
勿論少女自身は、純然たる褒め言葉として使っている。
―――――相手がいわゆる『魔』に属する存在だなどと、思い至るわけがなかった。
少女にとって、悪いもの、とは未だ、判り易く恐ろしい形をしたものであったので。
幼い価値観は辿り着いた修道院の建物、その美しさも、ただ『美』としか捉えられず、
――――その美しさが何某かの犠牲の上に成り立っているなど、考えもしない。
「うわあ、……すごい、大きな建物、………それに、なんて綺麗、
――――――あ、ルヴィエラさ、……あ、れ?」
ひとしきり、辿り着いた目的地の美しさに見とれてから。
そうだ、と思い出して礼を言おうと振り返った時、既に相手の姿は無く。
暫く、きょろきょろと周囲を見回しながら、
「え、嘘、居なくなっ、……え、ええ、あたし、お礼も……、
――――――あ、はいっ、はい、あたしです!」
お礼を言うために追い駆けるべきか、迷っているうちに建物の扉が開き、
年の頃なら30前後と思しきシスターが現れた。
修道院の名を口にされ、貴方がお手伝い?などと問われて、慌ててそちらへ向き直る。
―――――ポケットに潜り込んだものが居ることなど気づかず、直ぐに意識は『お手伝い』の方へ集中し、
――――――ほんの、数分後。
迷子になったの、大変だったわね、などと告げられて、案内された応接間らしき部屋の中。
出されたお茶を素直に飲んだ少女は、ソファの上ですっかり眠り込んでいた。
慣れぬ遠出に疲れ果てた―――わけでは、もちろん、なく。
意識を失くした身体を運ばれる先が、貴族の待つ寝室であれ、怪しげな地下施設であれ、
とにかく少女が、何かの薬を盛られ、意識を摘み取られたことは明らかだった。
■ルヴィエラ > (――「魔」が「悪」で在ると。
そう定義したのは、果たして誰であったのだろう。
自らを害する者こそが悪であると言うのならば、其れは魔に留まらぬ
悪を定義するのは何時だって、悪を定義したい者達なのだ
だが――そんな事を、この娘が考えうるはずもあるまい。
其れを思い至らぬ程には、きっと、優しく育てられて来たのだから。
――娘の言葉は、結局、最後まで確りと届いて居た。
ポケットの中で、丸まりながら静かに様子を伺う黒蛇の存在には
如何やら修道院の人間にも気付く者は居なかった様だ
僅かでも形ばかりの「お手伝い」を課されるのかとも思ったが
どうやら、そんな事は無かったらしい――然したる時間もかからぬ
お茶を飲んで居た筈の娘が、唐突に眠りに落ちたのを感じれば
矢張り、其ればかりが目的に遣わされたのだろう。
―――程無くして、部屋の扉が開かれる。
無防備な娘の身体を、抱えて行くのは果たして何者か
何れにしても、其の華奢な体躯を連れて行くのは容易
暫くして、浮遊感が失せ、降ろされたのは恐らく――ベッドの上。
傍には運んできたらしき者と、もう一人、男の気配。
幾つか言葉を交わし、そして、もう片方が部屋を出て行けば
部屋に残るは男が一人だけ――そして、其れが恐らくは、件の貴族、か。)
(――――――……成程、噂通りの男、と言う訳か。)
(ポケットの中から、ひょいと頭だけを出して周囲の様子を伺えば
男が傍のテーブルで、何かを用意して居る様子が見て取れた。
其の手元までは伺えないが、まぁ、碌な物で無いのは確かだろう
するりとポケットから這い出れば、気付かれぬ内に、娘の修道服、其の内側へと潜り
そして、其の太腿辺りまで這い上がっては、其の肌へと、不意に、かぷり――
突き立てる牙と共に、僅か流し込む気付けの中和毒で、眠りを薄れさせよう
――さて、彼女が目覚めるのと、貴族の男が、其の手に明らかに質の悪い薬瓶や玩具を携え、近付いて来るのと
果たして、どちらが早いだろうか)。
■カーリーン > 物質的な豊かさとは、いっそ悲しいほどに縁遠く。
けれども代わりに、充分な愛情を与えられて育った身。
孤児院育ちという境遇のわりには、価値観の在りようはいっそ単純で、
院長先生が説く性善説が、考え方の根幹に根差していた。
だから、抗えぬ眠気に意識を手放す瞬間にも、少女の心に疑念の種は無く、
誰かの腕に抱えられ、運ばれる姿は何処までも無防備で、
件の貴族が待つ寝所でも、稚くも健やかな寝顔を晒していたことだろう。
発育不良の矮躯でも、『そういう』用途で求められることはあると、
既に嫌というほど知ってはいたのだが――――。
だから、もしポケットの中に忍び入った蛇の存在が無ければ。
一夜の慰みものか、壊れるまで使い潰される玩具か、少女の運命は二つに一つ、であったろう。
しかし、――――――つきん、と。
肌を刺す小さくも鋭い歯牙の感触と、流し込まれた中和薬とが、
ベッドに沈む身体を微かに弾ませ、身動がせる。
鈍い瞬きを数度繰り返してから、目覚めた青灰色の双眸に映るのは、
見知らぬ部屋の天井、部屋の様子、ベッドに寝かされた自分の身体。
それから―――――
「――――――ぇ、……ぁ………?」
未だ目覚める筈の無い少女が、既に目覚めて身を起こしかけていたからか。
下卑た笑いを浮かべてこちらへ近づいて来た貴族の男は、ぎょっとして手の中のものを取り落とした。
卑猥な形の玩具、四肢の自由を奪う枷、中身を撒き散らして転がる薬瓶。
―――――刹那の沈黙、その直後。
悲鳴も上げず息を詰めて、少女はベッドから飛び起きる。
薬の効果が未だ抜け切れていないのか、眩暈と脱力感に襲われはしたけれど、
貴族の男が我に返って動き出す前に、この場から逃げ出そう、と。
どういうことなのかは少しも判らなかったが、ただ、本能が鳴らす警鐘に従って。
■ルヴィエラ > (――がしゃん、と音立てて床に転がった薬瓶から、零れる液体
直ぐに気化し始める其れは、密室で在る部屋の中へと次第に充満し始める
未だ成熟したとは言い難く見える娘を、淫蕩に堕とすが為の其れが
眠りに落とした薬とは別に、娘へと次第に迫り行く
飛び起きた娘の太腿から、振り落とされた黒蛇がシーツの上へと落下して
其の儘跳ね飛び、あーれー、と何処かに消えて行った。
両手が空になった貴族が、次の瞬間娘を追いかける
部屋に在る扉は二つ、だが、どちらが出口かを選んでいる暇はあるまい
誰か、ともし貴族が声を響かせれば、娘にとって万事休すだったのだろうが
反射的に誰かを呼ぶよりも、自分で捕まえる事を選んだ貴族が、追いかけ、手を伸ばして、其の片腕を捕らえんと迫る。
叶うならば、其の身体を寝台も何も関係なく、絨毯の上へと組み敷いて
覆い被さり、自由を奪おうとする筈だ
大人の腕力に、唯の娘が適う筈も無い
多少の問題こそ起きたが、待ち受ける結末なぞ唯一つだけだと
――少なくとも、貴族の男は、そう考えて居ただろうが。)
「――――――……やれ、面倒に為らぬよう、こっそりと――とは、上手く行かぬものだ。」
(――声が響く。
決して大きな声では無い筈だと言うのに、部屋の中へと
はっきりと認識出来る声が、何処か溜息交じりに響き渡った刹那
貴族の動きが止まり、そして、其の瞳が何かに浮かされた様に焦点をぶれさせて
ゆっくりと彼女の拘束を解き、立ち上がって、部屋の奥に在る扉へと、ふらり、ふらり、歩いて行く、其の後ろから
代わりに姿を現したのは、先刻姿を消した筈の――ローブの、男か。)
「やれやれ、猫の様な反応をするね、カーリーン。
御蔭で、手を出すのが少し遅れて仕舞ったよ。」
■カーリーン > 窓も扉も閉ざされた室内に、妖しげな薬の香りが満ち始める。
けれど今は、少女も、貴族の男も、それどころではなかった。
何としても逃げ出さなければ、と足掻く者と、何としても逃がすものか、と襲いかかる者。
この場に真実、二人だけであったなら、勝敗は明らか、である筈だった。
喩え少女が、小柄な体躯ならではの敏捷性を充分発揮出来たとしても―――、
「やっ、………離し、てよ、やだ、あんた、誰……っ、」
声を上げるために息を吸えば、それだけ、気化した薬の影響を受けてしまうことなど、
知る由もなく抗う少女の腕の一本や二本、きっと折れても構わないぐらいの力で、
貴族の男が掴み寄せ、引き摺り降ろし、組み敷いて圧し掛かろうとする。
細い足をばたつかせて更に抗ってみても、結末はもう変わらない―――――筈、だったのだが。
不意に、押し潰さんばかりの重みが、戒められた腕の痛みが消えた。
わけも判らず見上げる視界から、夢遊病者のような表情と足取りで貴族の男が去って行き、
入れ違うように現れた人物の、顔。
目まぐるしく変わる状況を把握出来ないまま、忙しなく双眸を瞬かせ、肩で息をしながら、
「る、……ルヴィエ、ラ、さ……んっ………?
なん、………え、な、に……これ、一体、どう……い、う、こと、」
呼吸が、鼓動が、酷く乱れて一向に鎮まらない。
暴れたために靴は両方脱げ落ち、シスター服の裾を派手に乱したまま、
絨毯の上に仰向けに倒れ込んだ身体は、何故だかどんどん重く感じられるようになっていた。
なんで、どうして、何が起きているの――――尋ねる声も、微かに震えて。
■ルヴィエラ > (貴族の男にとって、親もない孤児の娘が一人壊れたとて
そんな物は意にも解さぬ程度の存在で在ったろう
暴れれば暴れるだけ、部屋に充満し行く薬を吸い込み、娘の身体は染まって行く
其れも、恐らくは、本来直接飲ませる為のモノで
そうなれば強過ぎる薬効が、娘の理性を壊しかねなかった程の代物
一度眠りに落とされた娘にとっては、修道院へと足を踏み入れてから今までの事は
まるで、一瞬の出来事で在ったろうか
貴族の男は奥の部屋に消え、閉じられた扉から出て来る気配は無く
代わりに現れた己が、娘の傍へと屈み込んで、其の身体をゆっくりと抱え上げる
乱れた衣服は其の儘に――寝台の上へ腰掛け、己が膝上へと、娘を抱いて。)
「――――――……さて、何処から説明したものかな。
ざっくりと言えば、君達は騙されて居た…と言った所だ。
地図の裏に名前が在っただろう? ……アレが、あの男さ。
昔から趣味が悪いと評判でね、裏では随分と"遊んで"居た様だが…。」
(相変わらずだったようだね、と、言葉を掛けつつ
他に誰も居なくなった部屋の中で、組み敷かれた際、随分と乱れた其の髪糸を
指先で柔く梳き、整えて行こうか。
――されど、其の折、もし指が頬や、或いは耳に触れるなら
其れだけで今の娘には、余りにも過敏な感触やも知れぬ
未熟な肉体が、発情させられる感覚と言う物は――果たして、娘自身に、覚えが在るだろうか)。
■カーリーン > 一体どんな危機が、我が身に降り掛かろうとしていたのか。
ただの『お使い』が、どこからどうしてこんな事態に帰結したのか。
消え失せた時同様、再び、突然に現れたその人物が、答えを知っているのだと、
―――何故、思ってしまったのかは判らない。
けれど、差し迫った危機であった男は自ら姿を消し、部屋には甘い香りが満ちて、
相変わらず呼吸は苦しく、鼓動は煩く、身体は泥の中にずぶずぶと沈み込むように、重く、熱い。
近づいてきた男の腕が、優しく抱き上げてくれた瞬間にさえ、
びくん、と四肢が硬直してしまうほどに。
「っ、―――――…っ、だま、され、て………?
あたし、……でも、あた、し、………先生、も、………だって、そん、な、」
身体が芯から茹で上げられていくような状態なら、頭はぐらぐらと煮え滾り、
思考を纏めるどころか、告げられる言葉を認識するだけでも精いっぱい。
ウィンブルもいつの間にかも外れていたらしく、解れた髪を梳き撫でる指先は、
それはそれは優しく、耳朶を、頬を、掠めるばかりだったのだが。
長い指先が幾度目かに、赤らんだ頬に触れた、その途端。
ぐったりと相手の腕の中におさまっていた身体が、引き攣れたように跳ね躍って。
「あ、アぁ、ん、っ――――――……きゃあ、あ、だめ、ダメぇ、っ……!!」
甲高い声を放ち、零れ落ちそうに見開いた瞳から涙の粒すら散らして、
びくん、びくん、立て続けに何度も跳ねる。
―――――そうして、生温かく濡れた感触が少しずつ、シスター服のお尻の辺りへ広がり始めた。
失禁したかと思われそうに、しとどに溢れ滲み出したそれは、少女の見た目にはあまりにもそぐわない、
濃厚な雌の香りを放っていた、だろう。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からカーリーンさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からルヴィエラさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にルヴィエラさんが現れました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にカーリーンさんが現れました。
■ルヴィエラ > 「―――――君の修道院に、変な噂は聞かぬよ。
恐らくは…あくまで素直に、おつかい、の心算で送り出したのでは無いかな?」
(彼女も、そして、彼女が信頼する者も。
悪意に晒された時、其れを疑う人間が居ないという事がいかに危険か
この国では、こんな事が起こり得るのだと言う事を、彼女自身は理解出来るだろうか
或いは、其れほどの余裕は今もなお、与えられて居ないのやも知れぬ
ただ触れて居るだけでも、身体が跳ねる程の変化と熱を伝える体躯
反して、其の中でも平然とした面持ちで彼女を見守る瞳が、きっと
声を上ずらせ、弾けた娘を、腕の中へと閉じ込めるのだろう。
戦慄く身体を引き寄せ、確りと自らの胸板に抱き締めて遣りながら
其の鼻腔に、其の肌に、確かな他者の香りを、体温を、感触を教え。)
「――――……随分強い薬の様だ。 触れただけで此れとはね。
少し、深呼吸をしなさい。 ――待って居てあげるから、ね。」
(――次第に、彼女が腰を置く己が太腿が、濡れて行くのも構わず
穏やかに、ゆったりとした声音で其の耳元に囁けば、其の反応が緩まるのを待ち
そして、其の戦慄きが落ち着き始めた所で、片掌が、其の胸元に触れる
胸の鼓動の真上を、命の脈動を確かめる様に修道服の上から重ね
ゆっくりと、下に、下に、滑らせて行く
乳房を掠め、臍を通り、下肢へと落ちて行く寸前で引き返す指先が
改めて留まり、掌の熱を染み込ませて行くのは、其の下腹
最も熱に浮かされ、最も毒に苛まれつつある其の場所を――優しく、あやす様に)。
■カーリーン > 「せん、せい……は、………ぅん、んん、っ………」
少女にとって、一番信頼している大人が、この事態に加担しているのだとは考えたくない。
だから、相手がそれを肯定してくれるのへ、ぎこちなく頭を上下させて頷いた。
自らの意志では制御出来ない、激しい痙攣を繰り返すばかりの矮躯は、
抱き込まれれば無意識に、見ず知らずの、と言っても良い相手にしがみつこうとしてしまう。
両腕を必死に伸ばし、ローブを手繰り寄せるように相手の背に取り縋りながら、
汗ばむ額を、鼻先を、相手の胸板へ、肩口へと擦り寄せてしゃくり上げ。
「く、………くす、り、……薬、なの、これ………?
ぁ………あた、し……あたし、………また、ダメに、なっ……ちゃ、った、わけじゃ、
――――――…ァ、ぁん、っ………はぁ、……っ、っ、ルヴィ、エラ……さ、」
未だ、女としての発育すら遂げていない胎が、酷く疼いているのが判る。
恐ろしいのに、壊れたくなどないのに―――めちゃくちゃに突いて欲しいと、
熱い白濁を思うさま浴びせて欲しいと、浅ましく悶え続けている。
しとどに洩らした蜜が借り物の服どころか、相手の下肢まで濡らしていることにさえ気付けず、
喘ぐように息を吐いて、切なげに身をくねらせて啜り泣きながら、
―――ろくに膨らんでもいないくせに、胸元を掌が掠めるだけで、また、腰を跳ねさせて高い声を上げる。
身体の前面、中央を滑り降りた相手の掌が、疼く下腹を正確に捉えるや、
その声はもう、幼げな少女の声帯が発しているとは思えぬほど淫らに蕩けて。
「そ、こ、そこッ、だめ、ルヴィエラ、さ、ダメぇ、っ……!
あた、し、ダメなの、そこ、……そ、こ、感じ、ちゃうの………、
あたし、あたし、――――――ぁ、ァ、ひぁあん、っ………!!」
たとえ無垢な処女でも、淫蕩な雌にしてしまう。
そんな触れ込みで遣り取りされているらしい薬を吸って、
無垢でも、処女でもない少女が耐えられる筈は無かった。
ダメだと言いながら、せっかく整えて貰った髪を振り乱して泣き叫びながら、
けれども無意識のままに腰が揺れ動き、相手の掌へ胎を、子宮を、押し付けてしまう。
もっと強く圧迫されたくて、――――捏ね回されたくて、もっと、感じさせて欲しくて。
落ち着かせてくれようとしている相手に、まるで、恩を仇で返す様な行為ではあろうけれど。
■ルヴィエラ > (もし知って居たのならば、全力で止めたのであろう
後で知る事となったならば、心の底から悔やむのだろう
だが、其れでも修道院が、孤児院が、誰かの"善意"が無ければ成り立たぬのは
変えようも無い現実として、存在するのだけれど
必死に、決して、必ずしも信頼出来るとは限らぬ筈の己にしがみ付きながら
自らの身体に起きた異常を、薬のせいだと認識して、何処か安心した様に呟いた娘に
そうだ、と、肯定する声音が優しく降り注ぎ、免罪符の如くに彼女の罪悪感を薄れさせる
快楽への耐性が、未成熟故に欠片も無い儘の娘を、其れでも守る様に抱き支えながら
不意に、其の額へと、唇を触れさせて。)
「――――……其処まで染まっては、堪えた所で如何にかなる物でも在るまい。
掌にも伝わる位、奥が跳ねているよ、カーリーン。 ……此の儘では、辛いだろう?」
(大丈夫だと、穏やかな声音が、其の鼓膜を擽った後。
掌が、ゆっくりと其の下腹へ圧を掛け――奥を、揺する
揺れ動いて仕舞う娘自身の腰を、己へと、全て委ねる様に押し留めてやりながら
其の薄い下腹の奥で、雌としてばかり目覚めさせられた未熟な子宮を
余りにも手馴れた様に愛で始めれば、切迫した強烈な疼きは、其の儘熱として胎に積もり行くだろう
直に触れて居る訳でも無い、けれど確実に発情を深めさせられて行く身体が
雄に与えられる快楽の記憶を、容易く呼び覚まさせながら。)
「奥で達する事を、覚えて仕舞って居るのだね。
此処は、きりが無くて大変だろう? 何度達しても、甘く重い悦が、ずっと漂い続けて。
……声を上げても構わないよ。 きっと、誰も見には来ないから。」
(揺すり立てる動きは、次第に変化を見せて
子宮の収縮と弛緩にすら、其の圧と刺激の間隔を合わせて行く。
収縮に合わせて僅か強く押さえつければ、弛緩出来ぬ子宮が収縮した儘
ぎゅう、と胎の奥で快楽を溜め込み――解放の瞬間に、弾ける
絶頂のタイミングすらも掌握した様に、彼女の悦を翻弄しようか)。
■カーリーン > たとえ、どれほど巨額の『善意』と引き換えであったとしても、
もしも対価を正しく認識していたなら、決して院長先生は首を縦に振ったりしない。
それだけはずっと信じているし、信じていたいと願っているし、
―――だからこんな形になってしまって、もうひとつ、気になり始めたのは。
「でも、でも、あた、し………それ、じゃ、あたし、いけない、こと、して……っ、
ぁふ、ぁ、ア、苦し、いの………止まって、くれないの、
あたし、このまま、じゃ、この、ままじゃ、あ、あ、」
先刻の貴族の好きなように、玩ばれなければならなかったのでは、と。
これでは取引は不成立になって、院長先生が何らかの責めを負うのでは、と。
―――そう訴えたかったが、言葉が、思考が続かなかった。
額に柔らかく触れた唇の、甘い囁きに目を伏せてしまえば、意識はますます胎の奥に、
蹂躙され、快楽に溺れた記憶をすっかり思い出してしまった場所へと引き摺られて。
素肌に触れられているわけでもない、服の上から蠢く指先に、掌に、
歪な『成熟』を遂げつつある、少女の子宮は玩弄されていた。
未熟な雌の身には持て余すほどの熱を煽られ、操られ、自覚させられてしまう。
薬の影響ではあるけれど、この身体が確かに、雄を求めて発情しているのだということを。
揺り起こされて、玩ばれて、悦んでいるのだということ、を。
「ァぐ、ぁ、ぁ、ダメ、なの、ぉ………あ、たし、汚れて、るの、
嫌だっ、たのに、怖かった、のに、………どんどん、ダメに、なるの、
感じちゃ、うの、もっと、もっとって、思っちゃ、う、の、
―――――ぁ゛、あッ、あ、また、おかしく、ぅ、………んッ、ん、んんぅ……!!」
恥ずかしい、怖い、こんなのは普通じゃない、いけないことだと思う。
けれどどうしても抗えずに、しなやかな手指に翻弄されるまま、
はしたなく腰をくねらせ、しどけなく開きかけた脚を突っ張らせ、
熱く疼く洞であると認識してしまった子宮を、そこにある筈の無い『雄』を締め上げるように引き絞り、
幼子のように相手の背に縋りつきながら、上体を仰け反らせて絶頂に堕ちる。
相手の掌に、指先に、激しい痙攣を、収縮を伝え―――――下着の中でまた、くぐもった水音が響いた。
■ルヴィエラ > 「―――――そう、だから私は、初めに君を引き留めなかった。
例えあの場で君が逃げ出したとて、彼は君で愉しむまでは、圧力をかけただろうからね。
……だから、少なくとも本当に罠だったなら、彼には会わなければならなかった。」
(――――でなければ、対処も出来ぬからね、と。
彼女の目の前で、ふと片眼を瞑って見せたのは、一応お茶目の心算
そうして、再び其の額に唇を触れさせ、其の柔らかな感触を、娘の瞼に滑らせれば
掌の内で翻弄し、再びの激しい絶頂へと至った娘を支え
そして今度は――其の絶頂感を、長く、長く、尾を引く様に長引かせて
跳ね上がった子宮を追い打ちめいて圧し、揺さぶり、重ねて次の絶頂へ、と
快楽を目覚めさせられ、心が受け止められぬ儘に身体ばかりを歪に成熟させられ行く事を
娘自身、恐れる様な声音が、けれど一瞬で快楽に蕩けて堕ちて行く
性的な知識なぞ無かったとて、雌として、本能が理解して居るかの如くに
絶頂する時の貪り方を、もう、すっかりと行って居るのを眺めれば
双眸を細め、散々に愛でた下腹から漸く、ゆっくりと指先を離して。)
「――――……嫌だった想いと、恐怖と。 それと君の身体が覚える快楽とは、別の問題だよ、カーリーン。
快楽を否定した所で、何かが変わる訳でもない。 人は、そうして営みを繰り返し、歴史を紡いで来たのだからね。
だが…嫌がる権利は有る。 相手を拒む権利は、君自身の物だ。
其れは快楽と相反する物では無く、快楽は決して罪では無い。 ……好きな相手と繋がれた時、気持ち良くなくても困るだろう?」
(まるで、幼子に言い聞かせる様な――否、実際その通り、か
穏やかな声音で、快楽に堕ちて行く事自体が罪なのではないと、そう囁くのは
在る意味で、王都の宗教的教義とは相反した考え方やも知れぬ
されど、ヤルダバオートの如くに姦淫こそを至上とする考えとも異なる
そうして――するりと、滑る指先が娘の衣服を摘まむ
着慣れていない、ぶかぶかの修道服を、ゆっくりと裾から捲り上げるようにして脱がせて仕舞えば
其の裸身を晒させ、其れまでの姫抱きめいた抱え方から、正面から、己を跨る様な形に抱き着かせて。)
「――――――………知らぬ事を知るのは、怖い物だ。
だから、私はせめて教えよう。 出来る限り、怖くない様に。
それとも…、……嫌かな?」
(僅か、首を傾けながら――問う。
そして、叶うならば彼女に、自らのローブの裾を掴ませよう
纏って居る其の布地を、解いて、脱がせて仕舞うのも
或いは、拒み、押し退けるのも。 ―――彼女が選んでいいのだ、と)。