2020/06/24 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にアントワーヌさんが現れました。
アントワーヌ > 表向きの理由は、亡父が生前良く訪れていた教会へ赴き、彼を偲ぶ為。
其の夜、神聖都市の一角、瀟洒な白亜の聖堂の中に、己の姿は在った。

蝋燭の灯火がゆらゆらと照らす祭壇を前に、緋色の絨毯に膝をつき、
緩く頭を垂れて胸元に掌を宛がい、そっと瞼を閉じてしまえば、
少なくとも熱心に祈りを捧げている、或いは死者との対話に意識を傾けている、
そんな体裁は整えられているのに違いない。
唇は低く掠れた声で、其れらしき文言を切れ切れに紡いでいるのだし。

「―――――、…………」

此の小旅行が、実は現実逃避であることなど。
きっと近しい者たちにだって、悟られてはいない筈だと信じたい。

アントワーヌ > ――――ふと、背筋が寒くなるような心地がした。
ぎくりと肩を震わせ、表情を強張らせながら振り返るも、其処に人影は無く。

――――――暫し息を詰めて暗がりを凝視していたが、何かが動く気配も感じられず、
溜め息を吐いて首を振りながら立ち上がる。

膝を掌で軽く払い、黒衣の襟元を正して歩き出す先は、聖堂の出入り口扉。
重く軋む扉を押し開き、夜の静寂の中へ身を滑らせて―――――。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からアントワーヌさんが去りました。