2020/05/12 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にアントワーヌさんが現れました。
■アントワーヌ > 父の葬儀の際、世話になった司祭の許を訪ね、数刻を過ごした後。
今宵は此処に御泊りなさい、せめて夕食を一緒に、という誘いを固辞し、
執拗なまでに伸ばされる手を何とか振り切って建物を出れば、辺りは既に暗く、
待っている筈の馬車も、近習たる男の姿も、何故だか見当たらなかった。
何処か離れた所で待っているのか、其れとも何かあったのか――――
通りの左右へ視線を巡らせる表情には、珍しく疲労の色が濃かった。
祖父の代から持ちつ持たれつの間柄であり、此度も相当の金子を包んで謝礼とした相手だが、
あの司祭も、背にした教会の面々も、個人的にはあまり好かない。
貴族同士の付き合いよりも、余程細心の注意を払わねばならない為、
正直、一刻も早く宿に入って休みたい、と考えていた。
定宿にしている宿屋は、確か、歩いて行けぬ事も無い距離の筈だが――――
「……ロベールと、行き違いになるのも嫌だな」
其れに、やはり、一人での夜歩きは不用心であろうと思う。
幾ら男の格好をしているとは言え、慣れ親しんだ王都とは違うのだし、と。
■アントワーヌ > 暫く待っていると、向かって左方の曲がり角から、規則的な蹄の音が聞こえてくる。
御者席に座り、手綱を操る男の姿が見えて、無意識にほっと息を吐いた。
「何処に行ったのかと思っていた、……良かった、何事も無くて。
早く宿に向かおう、……流石に、御腹が鳴りそうだよ」
眼前で停まった馬車から、御者席に居る男に視線を流し、
早くも寛いだ口調でそう声を掛けた。
ステッキを小脇に挟み、身軽に飛び乗った青年貴族を乗せて、
馬車は再び動き出す。
向かう先は近習の男が手配を済ませた、安全である筈の宿であり――――――。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からアントワーヌさんが去りました。