2020/04/23 のログ
ティルヴィン > 掬いあげるように帽子をひっくり返した状態でひっくり返った姿を覗き込む。
――化かされていたとか幻覚だったとか、泥まみれだったとかではないらしい。少なくとも実体はあるしこうして慌ててくれるようだ。
その小さな姿がもんどり打つ姿は、なんとも。

「ぷふふ、可愛いねェ~~。ねぇねぇいっちょ前に羽虫のくせに人真似をして悪戯してやろ~~~~って思ったのに、悪戯した人間に取っ捕まっちゃってどんな気分なの?
 ほらさっきまで見たいに復唱してよ、『妖精さん惨めじゃありませんか~~?』って言ってみてよぉ」

残念ながら帽子の口は固定されているので閉じて潰したり逃げ場を失わせることは出来ない。覗き込んだ少女の顔を叩く勢いで突っ込めば何とかなるだろう。
きゃらきゃらとした笑顔と共に笑い声を浮かばせながらどんな気持ちとご感想があるかを問うている。
別に答えても良いし答えなくても良い。

レザン > 「ウワワっと」

帽子から出ようと出口を向いた妖精は視界いっぱいを占領する少女の笑顔に再び慌てる──
が、ニヤリと笑みを作り直す。

「えっへへ、面白いね! これで捕まえたつもりなんですかぁ?」

服の中に忍ばせていた小さな砂利を、風の魔法で弾丸のように顔めがけて飛ばす。
目にでも当たらない限りは肌に当たっても少しチクッとするぐらいだ。
それで怯んでくれるなら、そのスキに帽子から飛び出そうという算段である。

ティルヴィン > 「うぷ……ぶぇ」

ちりちりと米神に当たる小さな感触。たかが砂利、されど砂利。ラスボスのように顔だけの姿をさらして声高々に捕まえて意気揚々としていたものつかの間。
痛みの逃げ場も無く思わず顔を離して妖精を解放する糸口をつかませてしまう。
たかが妖精一人に何を遊び惚けるか。
時に、少女は帽子に顔を突っ込んで独り言を喋るという中々にコミカルな状態だったわけで、この立ち振る舞いや言動すべてはその身の丈にふさわしい子供のようだった。
誰もいなくて本当に良かったと思う。

「負けてないからセーフですぅ~」

はたしてこれは勝ち負けを決める何かだっただろうか。

レザン > 「いい勝負だったね……好敵手(ライバル)と認めてあげよう。
 まあおれの勝ちなんですけど」

追撃も来ず無事に逃げおおせれば、近くの椅子の背もたれに飛び乗って腕を組み、勝利宣言。

「なぜならおれは仕事サボってたの大声で言いふらすことができるから……。
 きみがどこの誰なのかは知らんけど。
 そうされたくなかったらこうべを垂れてこのレザンさまに許しの言葉を乞いなさ~い」

勝ち誇りながら視線をあっちこっちに飛ばしているのは、都合よく開いている窓か隙間がないかを探しているのだ。
種明かしをすると、この妖精は少女が入ってくるのにくっついてこっそり忍び込んだのだ。
自分の力ではこの妖精、聖堂の重い扉を開けないのである。
さっさとここから逃げようとしないのはつまりそういうことであった。

ティルヴィン > 「はぁ~~負けてないんですけど? この程度で勝ち誇って可愛いですねー」

 にんまり、にまにま。
 笑顔を張り付けながら楽しそうに語調を綻ばせる。

「レザンお兄様ぁ。どうかこのどこの馬の骨とも知らぬティルヴィンをお許しください~。
 好敵手と認められたのならその寛大なるお兄様の慈悲を以って何卒~何卒~。
 
 ……って言ってももうバレてるんだけど。反省としてここに置いてかれたし」

 そこはかとなく心がこもっていない許しを請う言葉を棒読みで語りながら悪戯めいて舌を出しながら、うろうろする妖精を一瞥する。

「……あー、羽虫のレザンお兄様のせいで砂利で埃っぽぉ~い。
 室内も汚れるしせっかくだから換気しよ~、あーしったらなんて健気!」

 窓辺に近づき、そのうちの一つを解放する。意図するところは語らずとも、暇つぶしに付き合ってくれた礼くらいはしないといけない。
 少女なりの気遣いである。

レザン > 「な~んだそういうことだったのか~。先手を打たれたなぁ。
 っておや、別に窓を開けてなんて頼んでいないんですけど?
 これで勝ったと思うなよ……妹よ」

好敵手なのか妹なのか。
何も言わずとも望みを察されて窓を開けられ、かえってムムムと悔しそうな顔になる。
いたずらを仕掛けた相手に施されるようではかたなしであった。
ぴょい、と窓枠に飛び移る。

「まあいい。今回はこんなところで許してあげよう。
 次に来るときはスミレの砂糖漬けでも用意しておくように」

好き勝手なことを言ってぴょいと窓から飛び去って行ってしまうだろう。

ティルヴィン > 「清廉で謙虚なあーしはぁ、好敵手が困った時には黙って手を貸してやれるオトコギある紳士で淑女ですから」

トップハットをまた被り直し、装束を正しながら礼をする。男なのか女なのかはっきりしない。女だが。
さて、本来ならここでギロチンの如く窓を閉じて潰してみても良かったのだけど。少女が癇癪を起さず気まぐれで見過ごすことにした。
彼の言葉を脳内に留めておきながら、次また戦(や)りあう時に酌み交わす酒代わりに嗚呼容易でもしておこうかと適当に考えるのは後々の事。
今は窓から飛び去って行く彼を見送るために、紳士的に礼節を重んじて立ち去るのを見送っていた。
その後はすぐに窓を閉め、また懺悔という名の一人反省会が開かれることだろう。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からレザンさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からティルヴィンさんが去りました。