2020/04/19 のログ
ビデラ・フォーランハルト > 音が被るならば、少し言葉を遅らせたり、彼も何とか会話を滑らかにしようとするけれど。
それでも被ってしまっても。彼から怒りは感じられない。
会話が長くなっても、その全てをしっかりと聞いている。

「もしも…。…ええ、わかりました。
ただ、その辺りも決まりがありまして。詳しくは中で纏めて説明しましょう」

明らかに、魚などの鱗ではない、強靭な鱗。
それを持っているということは…可能性としては、その『混ざったモノ』が暴れ出す、などだろうか。
そうなれば、対抗するためには…寄進を絡ませなければならない。
聖女のために、主のために…私情を挟みすぎるわけにもいかない。

聖堂の扉を開け、少女を招き入れれば。
礼拝堂を通り越し、騎士団が使う談話室へと。
上等、とまではいかないものの、ゆったりとした大きな椅子と。
火の精霊の力を借りた丁度良く暖かい暖炉が設置されており。
温風が優しく少女の身体を撫でるだろう。
ふわふわとしたその椅子に座るように少女に示し

「まずは…この塩粒ですね。これは、もちろん料理などに使う塩ではありません。
思い悩む者、どうしても前を向けない者たちの気持ちを明るくするための…薬だと思ってもらえれば、わかりやすいかと」

少女の知識の段階がどの程度かわからないため、できるだけ丁寧に話していく。

「後は…貴女の悩みの話です。…もちろん、分かち合うことはできます。
けれど、もし…それが暴れ出す、ということであれば。我等も寄進をいただかないといけません
内容にもよりますが…用意できますか?」

金銭はあるのだろうか。あるいは他に支払えるものがあるのか…
あるいは、悩みの内容が見当違いなのかもしれない。
そういった事をより聞き出すため、ゆっくりと。
安心させるように穏やかな声音で…また被ってしまおうとも会話を続けていく。

フィリ > 時間を掛けて。丹念に。怒る事なく呆れる事なく。そういう風に接してくれる相手だからこそ。
どうにかこうにか、言葉は。会話は。続ける事が出来た。
それもまた。少女が彼を信頼し、その彼が属する騎士団を信用し。聖堂の中へ、着いていく理由となったのだろう。

通された部屋は、既に暖炉が灯されており。寒空の下で冷え切っていた身体が、急速に温もっていく。
示された椅子は大きく。細く小さな少女の身体が、すっぽりと収まっても尚剰る程。
床まで届く事のない足先を、無意識に極僅かだけ揺らしつつ。彼の方へと向きながら、両手は再び腿の上。
…その頃には。傷と呼べない傷痕も。其処から覗く人外の証も。逆回しのような在り方を見せて、消えつつあるだろうか。
これなら、万一この室内に、他の団員などが追加で入って来たとしても。余計な勘ぐりをされずには済む…と、思いたい。

「――つまり。…こころに、きく、ぉくすり……なのですね……はぃ。りかぃ、できま――す。
たびで、ぃくさで、きずつぃたかたがた…なども。こぅぃったぉくすりを、ときどき…」

まだ。善し悪しまでを知る事は出来なかった。
ただそれでも。傷付いた冒険者が、悪夢となって襲い来る過去の苦悩を、振り払う為のような。そういう薬の類だと認識するのは。
身内に絡んで、冒険や討伐を生業とする者達を。知っているには知っているからだろうか。

次いで。有る意味では当然であろう、彼の言葉の続きに対し。
一度、ことんと側方へ首を傾がせたかと思いきや。直ぐにそれを真っ直ぐに戻し。
自身と彼と。どちらへ納得させる為の物なのか。二度、三度と肯いてみせ。

「――さきだつものが、なければ。…ひとのよは、なりたちません――ものね。
もちろん。ぞんじて、ぃます――ぃますぐ、は。できるものと、できなぃものが、ぁりますが…」

(少なくとも、王都から神聖都市に来るのに、困らないような。そういう範囲の金子は有る。
足りないならば足りないで。後日にでも、どうにかしてみせるだろう。
…寧ろ言われて困る物が有るとすれば、きっと、金銭以外の物だ。
それこそ、共に迷える者や貧しい者に、施しと笑顔とを授けるのだ等と言われてしまったら。正直、少女にとっては拷問だろう。

――更に、それ以外。何が有るのか、少女自身には、思い付けなかったから。素直に、彼が何を求めるのか。その言葉を待った。

ビデラ・フォーランハルト > なるほど、言葉はたどたどしいが…知識も、知能とも言うべきものも高いことがわかっていく。
この談話室でなくとも、応接するための部屋はあるにはあるが。
そちらは少し堅苦しい雰囲気であり。少女のような相手ならばこちらの方が良いだろうと判断した結果だ。
少女が椅子に座れば、その対面に青年も座り。

薬に関しては、その認識で間違いない事を示すように頷くも。
その粉の本質は飲んでしまえば多幸感が溢れ、更に中毒を起こす可能性が非常に高い麻薬。
ただ、彼からしてみれば嘘をついているわけではなく。
間違いなく、主の御業を感じさせることのできる薬だ。

理解が早い相手にまたこく、と頷きを彼からも返し。

「その通り。…そうですね。詳しい話をしていきましょう。
まず…金貨としてはこの程度。
後は…対価となり得るのは我らの手伝い、でしょうか」

指で値段を示す青年。
少女の中身が…彼の想像通りであるのなら、という想定の元。
団員をどれだけ集めるべきか、それらの費用を考えると。
平民ならば数日は生活できるであろう、結構な額を示すことになる。

そこで、続けてもう一つ示すのは金貨以外の方法。

「簡単に言えば、貴女の身体を使ったものです。
戦いや日常において…精霊を行使する我らとしては、その精霊に反旗を翻されないよう、自我を強く保たねばなりません
そのために最も有効なのが、肌を重ね合わせることなのです。これも寄進として、一定の期間、我らに従ってもらえれば金貨は支払わなくても問題ありません。」

もっともらしい…用意された理由を告げて。
相変わらずゆっくりと、優し気な口調だ。

「我らとしてはどちらでも対価として成り立ちます。
ですので…貴女にとって都合の良い方を選んでいただければ。
もちろん、こういった相談ならば寄進は特に必要ありません。何度でも、その悩みは聞いて、分かち合いましょう」

そこで一息、間を入れて…急かすことなく、少女が思考を巡らせるのを待つ。

フィリ > もちろん、どんな物であれ。向精神的な薬には、大小問わず、様々な副作用が付き纏いがち。
市販されている、睡眠を促す為の薬品ですら。使い方を誤れば、良からぬ結果を招く事が有る。
きっと。この『塩粒』も、そういった代物なのだろうと。判断する。
だから今は、教えられた言葉に、頷きつつも。未だ、直ぐに口へと運ぶ事はせず。丁寧に仕舞い込んでおき。

「――しゅぅきょぅと、ぉかねの、かんけぃは、昔から……ぃぇ。ぉぃて、ぉきま――しょぅ。
ぉかね、は。……そぅ。そのくらぃ――ですか。 ………となると…」

示された金額に。少しだけ、眉を寄せる。
払えるか払えないかで言えば。幸い、少女は払えるだろう――自分自身の生まれに難儀していても。家庭環境、生育環境は。寧ろ恵まれている、筈。
今の手持ちだけでは足りないが。一旦、王都へと使いでも出す事が許されるなら。数日後には、支払えるだけの金子が、父母いずれかの実家から届くだろう。
先ずはその辺りの都合を。具体的な数字と合わせ、答えておいて。

…それから先。もう一つ示された、彼等の提案に。ぱちくりと瞳を瞬かせ。
また少しの空白を置いたかと思えば。…直ぐに。赤い、赤い色合いが。頬に、顔全体に拡がっていく。
胸の前へと引き上げた手が、指を絡め絡め、人差し指を突き合わせ。
兎角落ち着かない様子で、一旦視線を伏せてしまい。――其処から先。声はますます小さく、ぽそぽそと。

「――…ひとつ。ざんげ、させて――くださぃ。
…ちゃんと、ぃみもぉしぇて…くださってぃるのに。それをきかされて、わたしは。
ぃ…ぃやらしぃ、ことだと。…まっさきに、かんがぇてしまぃ、ました。
そのぅぇ……すこし。 ほんのすこし、ですよ? けれども、そぅぞぅして……わたしは…」

放っておくと、羞恥に耐えかねて、両掌で顔を覆ってしまいそうな程。熱気を肌に帯びるまま。
俯いたまま。同時に、引き付けるように、椅子の上で僅かばかり強張る両の腿。
そこにはきっと。自分自身でも制御を知らない、熱病のような感覚を、抱かされているに違いない。
熱に浮かされたような。少しだけ、夢を見ているかのような響きを、続く言葉に滲ませて。

「…もぅ、ぃちど。……ぉはなし、しにきて。ぃぃですか…?もっと。きぃて、ぃただけますか…?
………そしたら。…そのときから、わたし――――」

(きっと。後者を選んで、尽くすから。)

ビデラ・フォーランハルト > 大なり、小なり…あるいは竜が混じっているが故に薬効が無となるか。
それはわからないが、少女にすら、そういった麻薬を渡すことに躊躇いもないほど、彼は…言ってしまえば壊れてしまっていて。

少女からの返答――、数日後には支払えるという言葉には深く頷いて。
具体的な数字まで出してくれるならこちらとしても勘定がしやすい。
結果として聖堂騎士団に力が着けば、それで構わないのだ。
金子が支払われる時期は特に問題ではない。
もしもこの約束を破るようなら、実力行使もやむを得ないが、そんな嘘をついている様子もない。

少女には、金貨で支払うのなら多少遅れても問題ない事はしっかりと伝え。

次の…もう一つの方法に対する反応には、少しだけくすりと笑う。
賢いからこそ、それがどういった意味なのか…酷く深く想像してしまっているのかと。
そんな愛らしい様子に口元を緩ませつつ、言葉を待つ。

そうして、羞恥を抱えた少女から出た言葉に…彼は立ち上がり、膝をついて。
椅子に座る少女を下から見上げよう。

「ええ、もちろん。ゾハル聖堂騎士団の門はいつでもあなたに開かれています。
………それと、その想像は、間違っていませんよ」

懺悔、悩み、恨み…それらを聞いて寄り添い、布教するのが彼の役目だ。
それに対して拒否をするわけなどない。
そして、勘違いを起こさないためにもはっきりと…間違っていないのだと告げてから。

「さて。私からは以上です。…それほど良いものではありませんが、備品の外套をお貸ししましょう。
外はまだ冷えますからね。入口までお送りします」

優しく微笑んでから…先ほどと同じように竜鱗に包まれた少女の手を取り。
共にゆっくりと立ち上がって。
まるで貴族がエスコートをするように、少女の帰り道を補助するだろう。
その表情は、見送った少女の後ろ姿が見えなくなるまで変わらず暖かいものだった。

フィリ > 恐らくそれは。実際に摂取してみなければ分からない。半不死の肉体が、毒と見なすか薬と取るか。
…ただ。次にこの場を訪れるまでには、試す事となる筈だから。結果が出るのは、そう遠い事ではない筈で。

数字、取り分け金額やそれに纏わる事象については。出来るだけきちんと向き合い、答える。
それは大切な事なのだから。きっちりと、親族からの薫陶を得ているのだろう。
勿論金子が絡まないのだとしても。交わした約束事というだけで。守らなければならない、そう思うから。第二の案件に関しても、きちんと最後まで聞き覚えた。
例え、言われた事を。ひょっとすればそれ以上を。頭の中に思い浮かべてしまい、羞恥に悶えそうになろうとも。
…同時に。隠し様のない、ともすれば背徳的な行為への、期待を。跪いた低い位置から覗き込まれる、茫洋とした眼差しに。浮かべてしまっても。

「………っ、 …!
は、はぃ、ぁ――りがとぅ…ござぃ、ます。…きしさま。
まちがってぃなぃ………それでしたら、そのときは…きしさまとが。ぃぃ、です…」

すっかり薄桃色をたゆたわせてしまう、早めの思春期真っ盛りな心の内まで。見透かされている…そんな気がして。
それでも。笑うでも蔑むでもなく、在るが侭の事実としての受け答え。
時に世間の男性ならば。今直ぐ此の場で、無理矢理にでも。その想像を実践してしまうであろう者も多いのに。
今日はどこまでも優しく。文字通りに騎士の道に則った態度を貫く、彼の人物。
そんな異性との『そういう事』を。どれだけ、思い浮かべてしまった事か。
ますます俯き、赤く色付いた面持ちのまま。手を繋いで立ち上がり……それから。
歩き出した二人の足取りが、部屋の外へと出た辺りで。ふと、答えを返してみせた。
世間知らずと人間知らず、疑いなど抱く筈もないからこその、少女の願いが。叶うのかは――恐らくは、彼次第。

「――それ、では。ぁりがとぅござぃ…ました。 きしさま。
……ちゃんと、ちかぃぅち。…かぇしに、まぃり……ます――――」

着せて貰った外套が暖かいのは。物理的な意味でだけではないだろう。
きっとその温もりは。少女自身の内側からも浮かぶもの。
ぺこりと頭を下げた小さな人影は。直に、街路の向こうへと消えていく。…途上、幾度も幾度も、振り返っては頭を下げながら。
次に再び、この地を訪れる、その時まで。宿った温もりを慈しみ、信じながら――

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からフィリさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からビデラ・フォーランハルトさんが去りました。