2020/04/18 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にビデラ・フォーランハルトさんが現れました。
ビデラ・フォーランハルト > 今日もまた、聖堂前にて、布教と相談を行う優しげな姿。

「そうですか。それは悲しい…、是非、この薬をお持ちください」

にこやかに微笑みながら、小さな小さな革袋を手渡す。
信仰をより強く感じられ、幸せになれる粉薬…という触れ込みで…初回に限っては無償で配布している薬だが。
その中身は、ゾハル聖堂騎士団が資金源としている麻薬だ。

これを広めることで中毒者を増やし。
依存症によって、2度目からは金を得ることで…ゾハル聖堂騎士団が強くなる。
そうすることで更に神の御名を広める手助けができる。

それは、彼にとってとても良い行いだ。
自分が、信仰の役に立っていると実感できる誇りある仕事。
悩みを聞き、それが精神的なものであれば、薬を渡して。
布教に参加した人にも渡していく。
そんな、よくよく見てみれば酷く背徳的な光景を街中で広げていて。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にフィリさんが現れました。
フィリ > 「――それでは…ぉしぇて、ぃただけませんか…?」

或いは一人。救われたのだと涙を流し。
また違う一人は、更なる信心を約束して頭を垂れ。
そうやって信徒の作った行列が一人、また一人順繰りに進み…そろそろ終わろうかという辺りで。
ぽつんと一つの小さな人影が、彼へと向いて目を伏せながら。問い掛けようとしていた。
そっと両の手を、腿の前で重ね合わせて握り込み。其処に微かな力を籠めるまま。

「――ぁなたがたの、かみさま…が。わたしたちを、ぉつくりになった、のでしたら。
……そぅだとぃぅなら。きかせてぃただきたぃ、の。 …です」

ビデラ・フォーランハルト > さて、大分列も捌けてきたし、次の仕事の事を考えなければ。
そんなことを考えていたところに。
小さな影が、彼の言葉を求めてきた。

「ええ、もちろんです。
我らが主は全ての生命を創造し、見守ってくださっています。
私も、未だ位階の低い身。啓示は受けられませんが…
貴女に神が我等にわかりやすく残してくださった言葉を伝えることは出来ます。さあ、何を聞きたいのでしょう?」

す、と頭を下げて。その小さな姿にも礼儀を示し。
顔を上げれば、優し気な顔で聴きたいことを言いやすいように促そう

フィリ > 瞳が揺れる。右に、左に。おどおどとした眼差しは、その優しい声音を聴いてからも。更に暫し、去就に戸惑っていただろうか。
…それでも。一呼吸、二呼吸程の間を置き。顔を上げ、彼の人を見つめてみせた。
緊張にか、微かに濡れた眼差しと。知らない人物へと声を掛ける羞恥に、その目元に朱を刷いた面差しで。

「――かみさま、が。ぉつくりになられた…のなら。
その せぃめぃ 、に。…ぃきることに、ぃたみをともなぅ……のは。
かみさまの。ぃかなる、ごぃし――なの、ですか…?」

救いを求めている。そう、取っても良い。
それとも小さな少女の言葉は。肯定を求めているのかもしれない。
苦悩であれ、苦痛であれ。それには意味が有るのだと。
きっと、例えそれが、本当の神託ではなかろうと…彼自身の言葉だけでも構わない。
そんな、縋るような思考を代弁して。一歩。一歩。足取りは彼へと寄る。
直ぐにも触れられる程へと近付いて。真っ直ぐに、見上げる瞳。

ビデラ・フォーランハルト > 気の短い人間であれば、いら立ちを覚えそうなおどおどとした様子にも。
しっかりと、少女自身の言葉が出てくるまで、青年は待っている。
視線が少しでも合えば、安心させるように微笑みを深めて。

「…なるほど。貴女は今、痛みを覚えているのでしょうか。
…主は、確かに我らを見てくださっています。
けれど…我等を甘やかそうとしているわけではないのです。
まるで、子を強く育てようとする親のように…時に試練を、痛みを与えて我らの成長を促しているのです」

少女の言葉を飲み込んでから、少し間を置いて、答えを。
これは、確かに彼が受けた信託などではない。
ノーシス主教の教えの一部を、彼の言葉で伝えているに過ぎない。

「だから、貴女がもし痛みを抱えているのなら…それは、主が与えたもうた、貴女が成長するための試練なのです。
ただ…主は当然、人ではありません。矮小な我らの身では耐えられないこともあるでしょう。
そういった時には…私たち、ゾハル聖堂騎士団が、悩みや痛みを共に分かち合いますよ」

淀みなく、見上げる瞳を細目で迎え入れて。
緩やかに伸ばした手甲の柔らかい部分で、近づいてきた少女の頭を撫でようと。

フィリ > 「――しゅの、しれん。…それはつねづね。ぅかがってぃます。
たしかに、そぅなのだ…と。かんがぇることが、できるのなら。すくわれるのかも…しれません。

――はぃ。のりこぇることが、できると。しんじられる…そんなつよさが。なぃ…のです。わたしは。
きしさま。ぁなたがたは。…ぅまれの、くるしみを。しょぅがぃつきまとぅものを。
せぉってくださる――のでしょぅか…?」

頭の上に置かれた手。その大きさと。温かさに。ふにゃりと眦を下げつつも。
きっと、考え込みながら喋っているのだろう――どこまで開示すべきか悩みつつなのだろう、その言葉は。途切れ途切れながらに続く。

…やがて。意を決してだろうか。
ずっと握り込んでいた手を解けば、片方の掌を差し出した。
何処かで擦ったのか。薄汚れ、皮めくれたその掌は。紅く血濡れた肉ではない、碧々と煌めく、竜鱗を覗かせて。

「ぉなじく。ひとではなぃ、のでしたら。
かみさまも――ぉんじょぅを。くだされば、よぃのです――が」

ビデラ・フォーランハルト > 実際のところ、この文言でそうですか、と帰る信者は少ない。
いくら、信仰を積んでいたとしても…不安はより深く付きまとうものだ。
自分からすれば、それは神を貶める行為だけれど。
直接表に出さないのならば、『罰』を与えるまでもない。
ならば言葉をつぎ足して、相手の本当の不安に寄り添えば、自然と信仰を深めさせることができると、彼は考えていて。

「ふむ…?それはどういったものでしょう」

強さが無いというのは、見れば大体想像は付く。
我等が聖女のように少女の姿のまま強大な力を持つ存在もいるけれど、それはあくまで、例外だろうと。
ただ…産まれの苦しみ、とだけ告げられても委細がわからなければ言葉を発することもできない。
だからこそ、優しく頭を撫でて更に先を促し…

「ほう……、…これは……」

頭を撫でていた手を下ろし、そのまま青年は両手で優しく…その竜鱗が覗く手を青年の両手で包み込む。
少し手甲によって硬いだろうが、人の温もりをじんわりと感じさせる手で。

「…酷く、苦労されたことでしょう。しかし、主は平等です。
混ざっていようとも、純粋であろうとも…痛みも、幸福も与えるでしょう。
…先程の質問に応えましょう。直接、その痛みを取り除くことは、私にはできません。
ただ…これを、水に溶かして少し、飲むといいでしょう。…主が与えたもうた尊き『塩粒』です。きっと貴女の助けとなります。
それと…時間はありますか?、立ったままでは貴女の身体が更に痛みを訴えてしまうでしょう。
…よければ、聖堂の中で共に語らいながら休みましょう」

痛みを堪えるような…まるで少女の痛みを受け取っているかのような顔をしてから。
小さな…民に配っていた革袋を手渡して。そうして…優しい笑みで、落ち着いた場所で話そうと提案する。
どちらにしても、既に信仰を求める人は居らず。
仕事も、自分でなくていいものばかりだ。
それならば…この興味深い相手の事を知れば、更に騎士団の助けになるかもしれない。
そう考え、ゆったりと少女の返答を待つ。

フィリ > じわりとした革越しの温もりは。それでも、充分過ぎる物であるらしい。
本当は、この聖堂の前。行列が出来始めた時間から、ずっと様子を窺い立ちんぼでいた為に。
すっかり冷えて悴んだ両手が、人の体温に包み込まれている実感は。充分に心地良いのだろう。
だから。緊張に強張ってばかりいた両肩が。少しずつ力を抜いて。

「――そぅ、です。じかに、のぞぃてぃただけるとは――ぉもぇません。
せぃのくのぅ…でぁるのなら。とりのぞくのは、ぃきることじたぃも…きぇて、しまぃそぅ、で」

こくり。こくり、と。
彼の文言一つ一つに対し。逐一肯く。辿々しくだが、言葉を返す。
お陰で少々…度々発声のタイミングを被らせ。朗々とした声音に掻き消され、を繰り返し。
その都度言い直す為に、ますます時間の掛かってしまう会話。
もう、他者と会話する事それ自体に。慣れていないという事が…ありありと。

「――ですから、きしさま。ぁなたがたに、わたしは、きっと。
…もしものときを。ぉねがぃ、したぃの――です。じぶんだけでは。どうにもならなぃ、ときを。
そぅ、さきほど。わかちぁぅと、ぃってくださぃましたから…  ……?

――それ、は? …どぅぃった………」

ふと。目の前へと差し出される、「塩粒」に。瞳を瞬かせる。
どういった物なのか。まるで見当がつかない…本当に、単なる塩化ナトリウムの類なのだとも思えずに。
ただ。触れてくれるその掌が、鱗越しにすら温かかったから――それだけで。信じてしまうのだ。

こくんと小さく肯いてみせれば。手を引かれるに任せ、彼に連れられる侭。
聖堂へと足を踏み入れていく事となる――