2020/02/11 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にサフィリアさんが現れました。
サフィリア > 神聖都市と呼ばれる此の街に、数え切れない程存在する修道院の中でも、
良家の令嬢、かつての貴婦人たちが多く身を寄せるという女子修道院の廊下を、
修道士姿の小柄な『少年』が歩いていた。

此処とは別の修道院に身を隠している己が、供も連れず一人で訪ねる先は、
母の従姉妹だという此処の院長の部屋。
実家から預かってきた土産の品を届けに来たのだった。

本来であれば『男』が入れる筈は無い、修道女たちの私的な領域。
事情を知る修道女に許可を得て、奥まった其の部屋の扉前に辿り着き、
ノックしようと手を伸ばしたところで、びくりと身を強張らせた。

『――――――、――――――!!』

金切り声が聞こえ、何かが倒れ、砕ける音がする。
何を言っているのか判らなかったが、女の悲鳴と、男の怒号めいたもの。
そして今度ははっきりと、女の声が――――逃げて、と、叫んだ気がした。

「な、………何、――――」

何が起こっているのか。
どうして女院長の部屋から、男の声がするのか。
判らないながら、危険であるとは知れて――――木靴を履いた足が、一歩後退る。

サフィリア > ――――どさり、抱えてきた包みが、足許へ転がり落ちる。

途端、静まり返った空間に、必死で悲鳴を呑み込んだけれど。
どかどかと響く靴音が扉に近づいてくるのが聞こえ、慌てて踵を返した。

背後で乱暴に扉が開き、何事か喚く声も聞こえたが、
もう、振り返らずに走り続ける。
何が起こっていたのか判らないが、はっきりしているのは、
己が女院長を、ある意味見殺しにした、ということ。
逃げ帰った修道院の自室で、深い後悔に苛まれるであろうことは、
想像に難くなかった――――。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からサフィリアさんが去りました。