2019/10/08 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にリリアンさんが現れました。
リリアン > 普段、ろくに外出を許されない王家の姫にも、遠出が許される機会はある。
たとえば、神聖都市の一角、王家の息のかかった豪奢な大聖堂を擁する教会施設へ、
礼拝を目的として訪ねる時、などである。

しかし、年若い王女にとって、礼拝だの高僧との面会だのは二の次、三の次。
見上げる尖塔の高さにぽかんと口をあけ、聖堂内部のフレスコ画に感嘆し、
美しい彫刻を施された扉を見つけては、そっと開けて中を覗き込む。
――――そうこうするうちにすっかり、お付きの者たちと逸れてしまった。

今、己が居るのは何処かの扉を潜り抜け、薄暗い階段を下った先にあった、
じめじめとした細い通路である。
恐らくは隠されていたのだろう扉を偶然見つけ、猫のように旺盛な好奇心でもって、
其の先に伸びていた階段を降り、迷路のように広がる通路を辿るうち、
完全な迷子になってしまっていた。

「此処……何に、使ってらっしゃるんでしょう……」

通路にぽつぽつと明かりは灯っているけれど、何処か仄暗く感じられる場所。
己がもう少し世間を知っていれば、もしや此処は巷で噂の売春施設なのでは、
と思い至ったかも知れないが――――己は精々、お化けでも出てきそう、などと考えるのみ。
少し歩いては立ち止まり、後ろを振り返っては溜め息を吐く。
ばあや、と小声で呼んでみたが、応えがある筈も無かった。

リリアン > そうしてたっぷり数十分、疲れ果てて一歩も歩けなくなるまで。
迷い歩いた其の果てに、ばあやに見つけて貰って叱られるか、
あるいは―――――。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からリリアンさんが去りました。