2019/04/12 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にクレマンスさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「……そう心配する事もない。こんな表情を早々他者に晒す事も無い。陰謀と策謀が蜘蛛の巣の様に張り巡らされた王城で、そんな顔を浮かべる余裕も無いしな」

嫉妬する、と告げた聖女に小さく苦笑いを浮かべて彼女の杞憂を一蹴する。とはいえ、その否定の理由は微妙に彼女の想いとは違ったものなのかもしれない。思慕の機微に乏しい己では、その食い違いに気付くことは無いのだろうが。

そして、独白の様に吐き出された言葉を静かに受け止めた聖女の顔を、曖昧な笑みから僅かに不安の色を滲ませた瞳で伺う。
らしくない事を。常に強者であり、支配者である事を求められていた己には相応しくない言葉だったかと、己の表情は次第に曇っていく。
そして、その弱さを打ち消そうと再度己の言葉を取り消す言葉を紡ごうとした時、彼女からの答えにその口を閉じる。
嫋やかに微笑んで己を見返す彼女に向けるのは、きょとんとした、宛ら己の弱さを受け止められた事が理解出来ないといった表情で――

「……む…。お前より疎い、と言うのは些か反論したいところだが……何も言い返せないな。その通りなのだろう。俺が得意なのは、所詮金と利潤が絡む政の事だけなのだろう。

―――フン。それでは、俺の抱えるスケジュールを把握するところから始めて貰わなくてはならないな。過密な日程になる事もあるが、泣き言は聞かんぞ。俺に付き従うとは、そういう事なのだからな」

そして、共にいようと告げた彼女に浮かべるのは、ふわりと花が咲く様な柔らかな笑み。
言葉そのものは使い慣れた横柄なものであっても、その口調と色合いは穏やかで、情愛の灯るものだろう。
そんな言葉を返しながら、彼女の温もりに埋まる様に、己の身体を預けた。

クレマンス > 「ギュンター様はお顔を鏡でご覧になったほうが良いかと思います。
その様に愛らしい表情をされては、何方も夢中になって陰謀どころではなくなりますわ」

どことなく理解していない様な応えに、ふふ、と笑い声を混じらせながら。
やはり己が言った通り、疎いのだ。それは悪いことではなく、こんなにも“愛らしい”。
そしてよくよく考えれば、少年の容姿は大人と二分するのなら、まだ子供。
己の我が儘と甘えをすべて受け入れようとしてくれたのは嬉しいが、本来ならすべて受け入れる年齢ではない。
今後共に学ぶのだろうと思えば、何もかもが愛しかった。

そしてやはり疎い少年が、おそらく王城では隠しきっているのだろう内心を隠しきれない表情の変化にも、聖女は愛おしさを感じてしまう。
横柄な言葉を久々に聞いた気がして、それに合わせてわざとらしく困った顔を作り。

「まぁ。それでは私は家令か側近の様ですね。
 そういったお仕事は慣れておりませんから、きっと使い物にならないとギュンター様に叱られてしまいますわ」

話す内容とは裏腹に柔らかな表情を見せる少年に対抗し、
冗談めかして言葉を返しながら、己の素肌に重なる彼の髪を撫で、慈しんで。
その内面の繊細さや臆病さを慮る。時折見せる不安定さが危なっかしい。

「……あなたをとても大切に思っております。ですから、どうかご無理はなさらないで。
 こうして肌を重ねられる日は重ねたいと……思っておりますが、それが難しい日は手を繋いでキスをして、共に眠りましょう。
 それだけできっとその1日は幸福だったと思えますわ。少なくとも私は」

そしてそうでなければ己が彼の傍にいる意味がない。
少しずつ愛が何かを理解して、受け止めて、成長していくには
言葉で伝えきれないものを、触れ合いで補わなければならない場合もあるはず。
そのくらいのことは稚龍にも想像できた。彼が想像させてくれた、といった表現のほうが正しいのだが。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「…其処まで己の容姿に絶対の自信を持ったことは無いな。というよりも、それはお前の贔屓目が入ったものだろう。俺の様な不愛想な貴族よりも、お前の方が余程愛らしく、可愛らしいというものだ」

笑い声を含ませる彼女に応える様に、含み笑いと共に言葉を返す。冗談交じりであれば、気恥ずかしい言葉も言える様になったものだと我ながら己の成長に少しばかり驚いていたり。
それは彼女が思う様に、ある意味では年相応。下手をすれば年頃の少年にも劣るやも知れない感情の成長ではあったが、己にとっては確かな、そして大きな一歩であった。

「ふむ。そうだな、慣れて貰わねば困る。元より自分で管理していた事ではあるが…預けるのなら、他人ではなくお前に預けたい。全て任せるとまでは言わぬ。出来る事からで良い。
……あ、いや。別に強制するつもりはないから、不慣れであったり気が乗らぬというのであれば無理強いはせぬ。俺についてきた先で、やりたいこともあるだろうしな。先程も言ったが、日程の管理くらいは俺だけでも出来る故心配するな」

冗談交じりの言葉に返すのは、幾分真面目な表情と言葉。
少しずつ受け入れてきたとはいえ、未だ情愛の理解に乏しい己にとっては、寧ろ彼女が言う様な家令や側近の方が、共に行動する者としてのイメージが掴みやすい。だからこそ、それを彼女に求めてしまう。己と共に歩む者に、己の重責の末端を預けようとしてしまう。
尤も、それは彼女が求める関係では無いか、と遅まきながら気付けば、少し慌てた様にふるふると首を振るのだろう。

そんなやり取りの中。己の髪を撫でる彼女の手を心地良さそうに瞳を細めて受け入れながら、紡がれる言葉を静かに耳にして――

「…そうだな。お前が幸福であれば、それは俺の幸福だ。
そして、それが俺と共に過ごし、肌を重ね、触れ合う事であるというのなら、喜んでそうしよう。そうして少しずつ、お前から思慕と情愛というものを学んでいければ、とも思う。
……尤も、そう頻繁に肌を重ねていると、お前の身がもたないような気もするがな。クレマンス?」

他者と肌を重ねる事に、情欲以外の心地良さを覚えたのは初めてであった。
だからこそ、彼女に言葉に静かに頷くと手を伸ばして彼女の頬をそっと撫でるのだろう。
最後に告げた言葉は、悪戯っ子の様な含み笑いを零しながら、ではあったが。