2019/03/14 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 賭博の淫祠」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 神聖都市の路地裏、その中の一つには、骨のサイコロを神体とする祠がある。
通称、『賭博の淫祠』。
淫祠とは、本義には性的な意味ではなく、単に『如何わしい』という意味である。
異国にて運命を司るものだったこの神は、長き時を経て歪み、今では賭博の神となった。
しかし、風紀を乱すものとして邪教とされ、その信者たちは流れ流れて――

「ヤルダバオートまで来た……と」

晴天の昼下がりに、青い闘牛士はその祠の前にある椅子に座っていた。
かなりしっかりとした作りの椅子であり、リラックスして体重を預けられるように、背もたれに微妙に丸みがある。
机の方も、安物ではない――宗教的な意匠が足に掘られていて、天板はベロアの付いた布がかけられている。

勿論、これは休憩用ではない。
賭博用の物だ。

「賭博そのものがお供え物になるってのも、変わってるよねえ」

元々、男の職業も賭博に親しい物。
風のうわさで存在を知ったこの神に、お参りしようと此処に来たのだが、そこでこの祠の由来を書いた看板を読んだのだ。
曰く、『この神は賭博の内容を好み、賭博そのものを供物とする。しかし、用心せよ、捧げられた賭けは神の名において絶対であり、何人も翻すことは出来ぬ』――らしい。

「まあ、そうは言っても脅し文句だろうけどね……」

とはいえ、折角の機会だ。
此処は是非、この神流のお参りをしたい。
男は、他に人が通りかからないか、試しに待ってみることにした。

クレス・ローベルク > 「しかし、意外と人が来ないな」

路地裏という事もあるだろう。
或いは、この神はそこまで知られていないのか。
だが、どちらにしても、このままでは何時まで経っても来そうにない。

「まあ、来なかったらしょうがないって気もするけど」

それはそれで、何か悔しい。
頬杖をつきつつ、どうしようか悩んでいる。

クレス・ローベルク > 手持ち無沙汰になったので、祠横にあった石碑を読んでみる。
どうやら、最近作られたものらしく、平易な文章でどういう神なのか説明されている。
曰く、この神は幾つか姿が変わっているが、一貫して人の姿を持ったことはないらしい。
占盤、北斗七星、時には風などの形のないものが御神体になった事もあるとか。
だが、共通しているのは――

「……運命を司るもの、か」

今の御神体がサイコロなのも、この流れ。
こんな曖昧で良く信仰を保っていられるなと思うが、曰くこの神は人格より、寧ろその教えに重きを置いている神なのだそうで。
生贄や供物はあまり求めず、ただ自らの教えに忠実であれば良しとする。
そして、その教えとは――運命に逆らわず、しかし屈しないこと。

「随分とまあ……」

人を過大評価した教えだな、と男は思う。
生まれた場所から逃げ出した男は、思う。

「まあ、俺みたいのが居るからこそ、こうして説教臭い教えが生まれたんだろうけどね……」

あーあ、辛気臭くなっちゃったなと思い、首を横に振る。
早く遊び相手が現れればいいけど、とそんな事を思いながら、再び椅子に座った。

クレス・ローベルク > 「ううん、やっぱ人来ないかあ」

椅子から立ち上がり、周囲を見渡すも、やはり人っ子一人いない。
やはり、場所が悪いのだろう。
こんな人目につかない場所で、相手を待っていても来るわけがないのだ。

「まあ、来ないものは仕方ない。
それこそ、ギャンブルには引き際も肝心だ。今日の所は、引き上げるとしよう」


そう言うと、男は表通りへと歩きだした……

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 賭博の淫祠」からクレス・ローベルクさんが去りました。