2019/01/28 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 裏通り」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 表通りと違い、整備されていない狭い道を、闘牛士服を着た男が駆けている。
その後ろには、5人のフルプレートアーマーが全力疾走を掛けている。
その鎧たちは皆一様に緑色のサーコートを掛けており、それには白い剣が交差した文様が描かれていた。
宗教に詳しいものが見れば、それがとある決闘神の信徒であることを表す文様であることが解るだろう。
鎧たちは、一斉に叫ぶ。

『決闘せよ!』『決闘せよ!』『決闘せよ!』

闘牛士服の男は、既に息絶え絶えながらも、その言葉にはどうしても反論せざるを得なかったのか、顔だけ後ろを向き、

「うるせえ!何が決闘だ、五対一の決闘なんてあって堪るか!」

『馬鹿め!決闘には助太刀が付き物!我の他は全員助太刀に来た義有る者よ!』

「聖職者が法の抜け穴探しみたいな事してんじゃねー!?」

強敵と戦う試合が近々あり、その願掛けの為に此処に来たのだが。
そこをフルプレートアーマーを着た男に(最初は一人だった)『この決闘を汚す剣闘士め!決闘せよ!我が勝てばその卑しい職を捨てよ、我が勝てば全財産を貴様にやろう!』と言われたのが最初だった。
最初は断っていたが、しつこく食い下がってきたので、つい「解ったよ!受けてやるよ!」と言ってしまったのが最大の間違い。

受けた途端に四人のフルプレートが何処からともなくやってきて、こうして襲いかかってきて、今に至る。

「くそぉ!恨むぜ神様ァ……!」

クレス・ローベルク > 「っていうか、何でお前らフルプレートで全力疾走できるんだよ、体力どうなってんの!?」

『ふはは、我らは決闘神の加護を受けている。"これが決闘である限り、全力を出し続けられる"という加護をな!貴様から同意を得た時点で、疲労は全力を妨げるものとして、禊されておるわ!』

「こ、この野郎!俺が試合でどんだけ体力管理に気を使っていると!うらやま……卑怯者!」

ガシャンガシャンと音を立てて走るフルプレート五人組は、たとえ裏通りであっても目立つはずなのだが、誰も助けに来る事はない。
どう考えても厄介な連中なので、かかわり合いになりたくないというのは、当然の心理なのだろうが。

「クソ、せめて二人なら何とか戦えるんだが……」

一人では一人か二人の鎧と戦っている間に、後ろを取られて終わるだけだ。
此処は道幅が狭いので、二人並べばまず抜けられないし、仮に表通りを経由して裏に回るとしても時間がかかる。

「こうなったら誰でも良いから助けてくれ……!」

悲痛な叫びは天に、或いは人に届くのかどうか。

クレス・ローベルク > 残念ながら、祈りは天に届かなかった。
段々と足が重くなっていき、息切れもし始めている。
このまま追いかけっこをしていれば、やがて追いつかれるのは明らかだった。

「くそ……こうなりゃ、やるしかないか……!」

更に細い裏路地に入り、道の中程で待ち受ける。
最早、どう頑張っても横に並ぶことはできないほどの狭さだ。

「良いよ!やってやるよ、決闘って奴を!
その代わり、場所は此処だ。文句はないだろう!?」

すると、フルプレートの男の内一人――最初にクレスに話しかけてきた者――は、がははと笑い

「ふん、貴様もようやく潔く戦いを受ける気になったか。良かろう、ならば此処で決闘としよう。
……おい、お前は路地の反対側に回り込め」

そう言って、じりじりと近づいてくるフルプレートの男。
いよいよ、この仁義もモラルもない決闘が、始まろうとしていた。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 裏通り」にアリゼさんが現れました。
アリゼ > 「決闘……この国では一対一ではないのだな。
 では、私も参加させてもらうとしよう」

路地の反対側から現れたのは、黒一色の甲冑に身を包んだ女。
鎧と同じく得物である大剣もまた黒く、重さなど感じさせないように軽々と振り回す。
彼女の足元に倒れ伏すのは重甲冑を着た男。
息はしているものの意識はなく、昏倒しているようだ。

「とはいえ、こんな場所では決闘と呼べまい。
 決闘神に身を捧げる者ならば、堂々と大通りでやるべきだろう」

そう言って路地の外側を指させば、そこには円形の広場がある。
中央に色付きタイルで模様が描かれた広場は、一種の舞台であった。

「……クレス、だったか?
 なぜ追われているのかは知らないが……過去は今忘れるとしよう。
 多数で一人を追い回すなど、戦士の恥だ!」

クレス・ローベルク > 男が覚悟を決めて、拳を構えた途端、後ろから重い足跡がやってきた。
まさか、もう回り込んできたのか、と後ろを見ると、そこには倒れ伏した鉄甲冑と――それに対比するかのような、黒い甲冑。
見覚えのあるその黒い甲冑は、やはり聞き覚えのある声で、

「アリゼ!どうしてこんな所に……いや、何にせよ有り難い。
……へい、そこの甲冑、どうする?此処で俺をぶちのめしても、そこの娘からお前さん方の"戦士の恥"が、世に出回ることになりそうだぜ?」

仲間ができて強気になったのか、一転挑発するように挑発する男。
甲冑達も、まさかこんな事になるとは思わなかったのだろう。困惑したように顔を見合わせている。
だが、一番前の甲冑は、一つ頷くと、

『……良かろう。
神罰を与えるためとは言え、確かに先走ったのは事実。
此処は、お前たちに合わせて、二対二で決闘としようではないか』

そう言うと、甲冑はクレスの腕を持ち、半ば引きずるように引っ張っていく。
ギリギリと無駄に力強く握ってくるのが非常に痛いが、此処で逆上されても困るので必死に我慢。
そして、到達した広場で、男の腕は解放される。
先程引っ張ったフルプレートの他、もう一人のフルプレートが、既に準備している。

『これでお前達と我々で二対二だ。
文句はあるまい』

一人は長剣、もう一人はごつい鉄球がついたモーニングスターを構えている。

『貴様らの準備ができ次第、開始としよう。
不幸な行き違いはあれど、こうなった以上、正々堂々と決闘といこうではないか』

どうやら、あくまでもあの事は『信仰心故の先走り』という事で片付けたいらしい。
見た目の割に、どうやら結構な小心者のようだった。