2019/01/09 のログ
■アンジェラ > 丁寧で慎重な所作は好感が持てる。
一方で、やはり高貴な気配がすればするほどこの修道院には縁がないように見える。
神に礼をする男性の姿を見る眼差しは、やはりどこか怪訝なものが拭いきれなかった。
「……ありがとうございます」
彼がこちらに向き直ると、向けていた視線を柔らかなものへと変え、微笑みも作る。
だがその微笑みは、続く言葉に少し薄くなった。
案の定―― 敵とは言わないが、またなにか小言を言われるのだろうといった具合で。
思い当たる人物はいくらでもいる。
その誰もが地上よりも地下での権力に固執する者だったが。
「わたくしはこの都市を良くしようと思っているだけです。
争いの絶えない世の中ですから、せめて神を祀るここくらいは本当に神聖であるべきでしょう?
もしなにか……どなたかに頼まれたのだとしたら、無駄です。と、お伝え下さい」
心の内は少々うんざりした心境であったが、貌にそれは表さず俯きがちに言葉を預ける。
毎回己にできるのはこうした押し問答くらいだ。
■コルガナ > 男は自分の指先を撫でながら、うんうんと頷いて彼女の意思表明を聞いていた。
決して怪訝な表情はせず、それこそ一意見を聞いている冷静な対応である。
「成る程…連中が晩餐の席まで愚痴を垂れているのが納得できますな…」
男は胸元から小瓶を取り出すとソレを一滴小指に垂らし、彼女に口の中を見せないよう
静かに口元を隠してソレを舐めたようだった。
「…私も反骨精神というのは好きでしてね、それで私もココまで来た身ですから」
「無礼だと言われればまぁそうでしょう、しかし面白そうだと思ってこうして単身来てみたという事ですな」
「しかしからかいに来たというのであればソレもまた少し違います。先ほどの一礼、アレが用事の一つです。」
「私はあまり神を信じないが…御下で生きているなら顏ぐらい出すのが最低限の礼儀という物でしょう。」
腕を後ろに組みながら、再び中の様子をぼんやりと見ている。
「その様子だとさぞ使いが押し掛けるのでしょうな。」
■アンジェラ > 一時警戒したが、彼は説得を試みるでもなく、脅迫するでもなく。
そうなると第1印象の通り、不思議な男性だというイメージに戻る。
無為な押し問答をしなくて済むのは助かる。
彼女の雰囲気から、張り詰めたものがゆるりと和らいでいく。
「そうでしょうか。そう思われる方は、信心深いと思います。
なにぶんいろいろな物を片付けてしまった後で……申し訳ありません。
少しお時間を戴ければ、温かいお茶くらいはご用意いたします」
観察している様子からして、時間があるのだと判断した。
それならば躰を温める物くらい出そうかと思ったのだが、彼が何気なく言った言葉に眉を下げ。
「近頃では論議する場を戴いております。
定期的にあの……地下街に赴きまして、話し合いをしておりますが……」
己の意思が固ければ、相手の欲望も根深いため、なかなか解決へ進まないのが現状である。
言葉を濁し、ふと気付いた。まだ名乗っていないことに。
「申し遅れました。わたくしはアンジェラ・カラガノヴァと申します」
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート マクレラン修道院」にアンジェラさんが現れました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート マクレラン修道院」にアンジェラさんが現れました。
■コルガナ > 「人に向ける程度の礼儀ですよ、シスター。貴方達のように使途になる事は出来ない」
言い方を変えれば礼節のある者に対して、敬意を払うとも言えるが。男はやや自嘲気味にそう答えた。
「頂きましょう。」
茶を勧めてくれる相手に目を細めながら静かに頷いた。表情が変わる所でふと彼女の顔立ちを見ると
どうやらエルフの血が混ざっているようだった。自分と同じだ、何処か思う所があるように
常人よりもやや長い自分の耳を撫でていた。
「まぁ、そうでしょうなぁ…………しかし話し合いにおいて欲を制するとはなかなか難しい……」
「平和的解決とは時間がかかる。いや、神がどう思うか…暴力の有用性に先に気付いた方が勝利を収める」
「そういう悲しい世の中という事です…特にこの国はね」
そう話をするウチ、先に名乗ってくれる相手に静かに頷くと
「マグメール議会議員、大公位、アルバ・コルガナ・セラスです。」
■アンジェラ > 「ここには配られるお菓子を目的に来る子供も大勢います。
……その程度でも構わないのです。信ずるものは違って当然ですから」
神を信じずとも心の拠り所であれば構わないと話す口調は、心成しか砕ける。
ふふ、とかすかな笑い声を滲ませて。
「――――まぁ。議員の方は初めてお目にかかります。
王都からいらっしゃったのでしょう? 随分……ご足労を」
てっきり近くに居を構える貴族だと思っていただけに、改めてその姿に目を瞠る。
思わず「やはり信心深くていらっしゃるのでは」と言いそうになったが、再び否定させる手間を考え、やめておいた。
その後、アンジェラは茶を用意するために一旦引っ込む。
ほどなくしてまた姿を現わせば、シンプルなティーカップから湯気を立たせた紅茶を運んできた。
ショウガと蜂蜜が入っており、独特の香りがする。
宜しければ会衆席にでも、と勧めながら一緒に持ってきた簡易テーブルの上に、カップをのせて彼へと寄せ。
「先ほどのお話ですけれど―――、わたくしは自分が生きている間にこの国が鎮まるとは思っていないのです。
薄情ではありますが。 ただ、この都市だけならどうにか……間に合うのではないかと。
わたくしが目標とするのは、あの地下街に存在する売春施設の廃業です。
それだけでここはきっともっと良くなります。きっと影が薄らぎ、明るくなると思うのです」
どう思われますか?と加えるアンジェラの顔は、少々悪戯めいてもいる。
マジメな議論を期待しているという訳ではなく、彼の立場で、考えで、どう感じるのか知りたかった。
加えて。
「そういえば……お気付きになられたのでしょう? わたくしにエルフの血が混じっていることに」
先ほどの所作が示すことに、確認を重ねる。
数代前の血であり、今まで誰かに指摘されたことはなかったが、同族となると特徴があるのだろう。
「わたくしは早くに親を亡くしまして、自分のルーツの様なものは知らずに生きてきたのですが……
エルフは独特の文化があるとうかがいます。 この国の中枢で生活するのは、不自由もありますでしょうね」
■コルガナ > 「いえ、人を使います。彼らを見る機会があれば彼らをねぎらって頂きたい」
暖房があれどそれなりの寒さである、紅茶から昇る湯気は大きい。
失礼して、と男が静かに腰かけると紅茶の甘い芳香を感じて、僅かに目を細めた。
「ジンジャーですな、確かにこの季節に飲むべきだ……」
そう頷くと男は両手で持つティーカップに口を付け、静かにソレを啜った。
長い黒髪は全く乱れず、立ち上る湯気が生気の無い頬に当たると、じんわりと桃色になる。
「………………………」
「志す物を見ずとも、未来が望むままであればいいと申されるのですかな?シスターは」
「………貴方は随分と先の未来を見られるようだ。貴族連中が言うほど頑なであるとは思えない程。
広い視野をお持ちになっている…」
「地下街の廃業は難しい。既に王都での政界進出の資金には高度に組織化した売春業者が賄うまでに至っているのです」
「それは王国管理下での不明額26億ゴルドのおよそ7割…既に麻薬取引の年間売り上げを上回っている」
ふと思い立ち、一つ咳払いをすると再び紅茶を啜る。
「自分のいない未来までも見据えるのであればあるいは不可能ではないでしょう。しかし遠い道のりだ」
「時には自らの躰が酷く汚れねばならない事もあるでしょう…いや、恐らくそうなるハズ」
「……………失礼、こんな時に言う事ではありませんな…」
再び紅茶を啜り
「…例えとはいえ下賎な例えをしてしまった、非礼を許していただきたい。」
だが尋ねられる言葉に少し目を丸くするようにして彼女の容姿を簡単に眺めた
「えぇ…ハイエルフ、私は数代人間がいるだけで…その血は大分濃い物ですが」
「左様ですか、それは大変な道のりがあったのですな…」
「私は…数代にわたって殆どを人間の政治に関わってきましたから…私もさほど…文化の違いは」
■アンジェラ > 彼から聞く売春施設の資金実体には表情を曇らせるが、すぐに穏やかなものに戻る。
現実として突き付けられただけで、そうだろうと思える規模だ。
それよりも彼が鼻で笑うことなく正面から受け止め、考えてくれたことがありがたかった。
「……いいえ。 アルバ様はわたくしよりずっとこの国をご存知です。
ですから、忌憚のないご意見をうかがいたかったのです。
わたくしは神を信じておりますが、世界を変えるのは神ではないと思っているのも事実です。
―――ふふ。これはみんなには言えませんけれど。
ですから……えぇ、そうですね。
わたくしの躰は残念ながら、女として生まれました。
躰の構造からしても、腕力からしても、……抑圧する方法はいくらでもあるでしょう。
留意いたします。 穢れぬよう」
女の己を気遣う様子に微笑みを返す。
地下街には何度も訪れており、そこで壊れた様な修道女を何人も見ている。
躰だけでなく、心が穢れた彼女たちのなんと哀れなことか。
己があの地まで堕ちれば、未来への展望は失われるだろう。
それではこれまでの苦労が水の泡になる。
故に、肉体だけでなく精神の汚濁に最も気を遣う日々であった。
「そうなのですか? わたくしが無知なものですから、正直に申しますとエルフの方と接する機会があまりないのです。
つとにこの国の中枢で生きる方がいらっしゃったとは……心強いことです」
己は同族と言えないほど血が薄まってしまっているが、エルフは清らかな種族だというイメージが強い。
その様な者が政治の一端を担っているのだとしたら、アンジェラには喜ばしいこと。
互いに言葉を交わしていると、扉の向こうの雪が強まってきたのが見えた。
夜も更け、人の気配は外にない。
「随分雪が強くなってきたようです。宜しければお部屋をご用意いたします」
馬車はどこで待機しているのかわからないが、御者の部屋も用意できる。
申し出ておき、彼が肯けば一晩不自由なく明かせる場所を案内するつもり。
それでも帰ると言われれば、心配そうに馬車を見送ることになるのだろう。
いずれにしても、もう少し彼と言葉を交わし――雪の夜は、有意義に過ぎていくはずで。
■コルガナ > 「…………………」
自らも低俗によらない強い国の構築を目指して動いている。
しかし男の場合は、其処に話し合いを持たない。芯まで腐り切った連中がどうあるべきなのか
話し合いなど待たず、先手を打って血祭りに上げる。志す物は似ていても、その手段の違いは明白だった。
見るのもうんざりするような腐った肉塊達を視界にも入れられない程凄惨に殺す事は確かに
男にとっては女を犯すよりも強い快楽を伴うが、そういった穢れた連中が消え去った後
だからといってその時の快感に未練がある訳ではなかった。
自分とは違った軸で物を見ている修道女、完全に羨ましいという訳ではないが
微笑む彼女に向かって何処か羨望に似た目を一瞬だけ向けた。
「そう………あると良いものですな」
自分らがエルフの躰を持っていても、精神には闇を秘めている事は目の前の彼女には知らない。
その普段の自分らと彼女の想像の違いに男はココで初めて言葉を詰まらせた。
そう話す間に紅茶はすっかり飲みきり、続く言葉に目を丸くする。
人に部屋を融通してもらうなど初めてだった。
「…………では朝一まで、少しお願いする事にしましょう。」
その後やってきた馬車、話を聞けば兵士や軍服の男達は目を丸くするばかりだったという。
男からも話を聞いたとはいえ、何処か借りてきた猫のようにしきりに中をキョロキョロしながら
男はその夜にもう少しだけ修道女と話していたという……
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート マクレラン修道院」からアンジェラさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート マクレラン修道院」からコルガナさんが去りました。