2019/01/08 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート マクレラン修道院」にアンジェラさんが現れました。
■アンジェラ > 雪がちらつく夜。
マクレラン修道院の扉はまだ開いていた。
信者だけでなく、神の物語を聞きにくる子供、子供を修道院内の託児室に預けて
悩みを打ち明ける母親、寝食に困った者など、ここにはさまざまな人が訪れる。
彼らがいつ来ても良いように、扉は夜遅くまで開けられているものだ。
導師という立場に就くアンジェラは、木製の会衆席を布巾で拭いて掃除をしていた。
就寝前の日課で、修道女たちには先に休んでもらっている。
外の空気が直接入ってくる聖堂は寒く、吐いた息はほのかに白く浮かんだ。
「日に日に寒くなっていくみたい。温かいものを振る舞ったら、みなさん喜んで下さるかしら」
あまり敷居の高い場所にしたくないので、住民とは親しくしていたい。
その分王侯貴族との付き合いは希薄で、設置された寄付箱は常に寂しいことになっているのだが。
権力が傍にあればあるほど人は腐ることを十分承知しており、それで良いのかもしれないとも思う。
赤くなった指先を温める様に、息を吹きかける。
考えることはたくさんあるが、住民のことを考えている時が最も楽しい。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート マクレラン修道院」にコルガナさんが現れました。
■コルガナ > 雪が降るヤルダバオート、未だに各地の修道院では明かりが消えないこの都市に
1台何処にでもあるような目立たない馬車が通過する。決して豪奢ではないが入念に整備された
機能性を重視している馬車。
修道院の一つに馬車が止まる。修道院は素朴で、ココ最近の権力争いの結果生まれている
煌びやかな物とは違う田舎の教会のような物であった。
『ココです』
馬車に乗っている軍服の男が対で腰かけている黒い政治家風の衣服を纏った男に言い放つ
「では、後でまた来るように」
『頃合いを見て再びこちらに向かいます』
そうして男が馬車を降りると、遠のいていく馬車を見送りながら修道院に向かって歩き出した。
入口の前でふと足を止めると、上を見れば照明によって光る雪の粒を目に留めながら
管理の行き届いている教会を静かに見上げている。
■アンジェラ > この時間では讃美歌が響くことも、説教による声もなく、静かなもの。
そのためアンジェラの耳には馬車の音が届いた。
雪が音を吸収し、ここに限らず、本当に静かな夜だった。
「……?」
この時間に馬車での来訪は珍しい。
布巾を聖堂の隅にあるバケツにかけ、ドレスの裾と袖を手で払うと静かな歩調で扉まで。
開けたままの扉に近付けば近付くほど外と変わらぬ冷たい空気に触れ、ふるりと背筋が痺れるようで。
来訪者の視線に現れる女の姿。
室内の明かりを背後から受け影となり、目鼻立ちなど詳しい容姿まではわからないかもしれない。
だが、女は明らかにそちらを見下ろす様にしており、住民を迎える時とも違う、不思議そうな口許であった。
「いかがされました?」
こちらからは、屋内の明かりが差すことで貴族然とした出で立ちの男性がよく見える。
質素な修道院であるここを訪れるタイプには見えず、女の眼差しはじっくりと彼に注がれる。
■コルガナ > ふっと自分に問いかけるらしき声が聞こえると、パッと目の前の女性に目線を向ける。
男の衣服は真っ黒で丁度影の差す箇所では周りの暗がりに輪郭が消える程だった
出で立ちや衣服から、貴族の中でも政治家に分類されるであろう姿をしている。
上等な衣服を纏ってはいるが、よく見たかもしれない貴族のように大掛かりな装飾は一切付けず
男本人の立ち居振る舞いと、仕立てた衣服の技術のみで貴族らしさを醸し出している。
男は僅かに目に飛び込んだ雪の粒をサッと手の甲で払いながら
目は笑っていないものの僅かに微笑み会釈した。
「あぁ、馬車の音がやはり聞こえたのだろうか…夜分にご容赦頂きたい」
「こちらがマクレランの修道院…?」
男はコートこそ着ている者のそのシルエットは細く、着こんでいるようには見えない。
なにより男からは白い息が出ていなかった。
「丁度この時期です。新年の挨拶だと思って頂きたい」
■アンジェラ > 不思議でスマートな男性である。
垢抜けない修道院には似付かわしくなく、初めて訪れたことを示す様な言葉からも、訪問のきっかけが窺い知れない。
だがアンジェラは表情を和らげ、会釈を返すと「どうぞ」と躰を屋内に傾ける様にして促す。
雪の降る外は寒いだろうと思ったからだ。彼が寒がるそぶりを一切見せていないにしても。
「ご丁寧に痛み入ります。 ……奥へ。寒くて申し訳ありません」
扉付近ではなく、神を祀る彫像が鎮座する奥を勧めるのは、言葉通りに寒さから逃れるためと――
この時間、初めて訪れる高貴な者と思われる存在に、本題があるのではと思ったから。
なにせ己は王侯貴族に嫌われており、圧力をかけられることが多い。
彼も誰かに頼まれたのではと思う反面、善良な者であっても奥でゆっくりと過ごすべきだろう。
彼がついてくるか否かにかかわらず、先導する様に屋内へ姿を消し、絨毯の上を静かに歩く。
■コルガナ > 「いや、急な参詣ですからな…普段、暖房が燃え盛っていては油代も馬鹿にはならない」
男は女性に招かれるままに奥へと向かう前に、屋根に入った所を差し掛かると
肩の雪を払い、コートの脇腹部分を軽く引けば綺麗に雪が落ちる。最後に革靴を胸元に収めていたチーフで
拭きとる。非常に手馴れているようで数秒もかからない仕草だった。雪の水気を持ち込まず奥へと
招かれるままに入っていく。
雪がちらつく外にいたにも関わらず絨毯は殆ど土やほこりが付く事は無く、足元が悪い中
何の苦も無くカッチリとした振舞で歩いていた男は、中にたどり着くと
胸に手を置き、眉間を撫でるようにすれば彫像の前で一礼し、彼女の方へと向いた
「金をかけないという条件下では最上級に手入れが施されているようですな」
皮手袋から覗く僅かに筋ばった手の甲を撫でながら。
「恐らくシスター…予想した通り、私も王城で政に関わっている者でしてね、」
「付き合い柄、こちらの事をよく耳にするのですよ…シスターご本人が良く存じているとは思うが」