2018/11/14 のログ
ルシアン > 「わっ…!?」

ドン、という衝撃。あまり速く歩いていたわけではないから、そこまで大きなものでは無いのだけれど。
それでも、不注意からか不意に受ければ一瞬、目を白黒させて。

「っ…す、すまない……!」

体格の差はあるにしても、そのまま倒れ込むような事も無く。それでも、相手へ身体を一瞬、預けるような姿勢。
慌ててその相手から離れる。そのまま、ぺこんと頭を下げて。

「い、いや…悪いのはこっちだ。其方が謝るような事は。…此方の不注意だ。本当に申し訳ない」

丁寧な礼に加えて詫びまで入れられれば、慌てて首を横に振る。
改めてその相手を見るに、少女であると分かればなおさら気まずそうに。
――そこでふと、こんな事も訪ねてみよう―などと、口を突いて言葉が出たのは、藁にも縋る気持ち、と言うのもあったためかも知れない。

「…ええ、と。失礼ついで、というか……君は、この辺りの人、だろうか?
 この近くに、宿があったと思うんだけど…場所を知らないだろうか。どうも、道に迷ったみたいなんだ…」

もし話を聞いてもらえるのであれば、その宿の名前と建物の特徴なんかを尋ねてみる。
…たまたま、それが少女の宿の傍にあったりするかもしれない。そうではないかも、知れないが。

デメトリア > 自分以上に慌て畏まった様子の男性に対し、薄く微笑みかけて「いいえ」と。
大きなトラブルでもないし、本来ならそこで自然と別れるシチュエーションだったが、思いもよらず質問を受けて立ち止まったままに。

「道に?生憎とわたしもここの出身じゃなくて……。」

何がどこにあるかなんてさっぱり分からないから、多分役には立てないだろう。
そう思ったが、彼の口から出た名前だけは知っていた。

「ああ!ちょうどわたしも今夜はそこに宿泊しているの。ここから見えるけど……あの緑の看板の。」

観光客用の区画として店が建ち並ぶ、少し離れた場所。
だがまだそこから出て間もないため、目視出来る距離にあったので振り返り指し示す。
設備は質素だが店主の人柄は親切で、悪くない宿だった。

ルシアン > 失礼を重ねる様な質問。それが、訪ねた相手がこの土地の住人では無いと分かるとなおさら気まずい。
今日はどうにも、星の巡りが良くない…内心でそんな諦観をしそうになった、のだけれど。

「え?君も…って、あ、あれ?ああ、本当だ!あの看板!」

振り返った少女が指さした先へ視線を向ける。其処には、確かに見覚えのある看板の姿。
慌てたり不安になったりしていたせいか、完全に見落としてしまっていたようで。
探していた場所の近くまで来ていたことも気が付いていなかった様子。ぱっと表情が明るくなり。

「良かった…いや、僕もこの街は馴染みがなくて。これで見つからなかったらどうしようかと…。
 まさか街の中で野宿するわけにもいかないし。本当に助かったよ」

何とも情けない話だが、正直な感想を困ったように笑いながら。
そして改めて、ぺこんと礼を一つ。

「僕はルシアン…ルシアン・エヴァリーフと言う。その…何というか、情けない所を見せちゃったね。
 …もしかして、何処かに出かけたりする邪魔をしてしまったんだろうか。だとしたら、重ねてお詫びする」

やっと少し落ち着いてきたのか、穏やかな調子の声で名乗ってみて。

デメトリア > 安心した様子には思わずこちらも笑顔になる反応で、見目よりどこか幼い印象を受ける男性に見える。
驚きはしたが、ここで宿を知る自分と相手が出会えて良かっただなんて他人事にも感じるような喜ばしい空気。

「でも野宿してたらシスターの誰かが修道院に連れていってくれそうな雰囲気はあるんだよね。
 不穏な噂もあると言えばあるけど、結構良い土地だなって思うの。」

合わない人にはとことん合わなさそうな地方都市だが、少女の肌には合うようで。
のんびりと言葉を交わしながら更なる謝罪をされれば、首を横に振り。

「もうこんな時間だから、少しお散歩をと思っただけで。
 わたしはデメトリア。デメトリア・グリッフィ。
 そろそろ寒くなってきたし、わたしも部屋に戻ろうかな?」

一泊といえど同じ宿に泊まる同胞として自己紹介を交え、くるりと行先を変える。
もともと短時間のつもりであり、こうして立って話していると冬の訪れを感じる風が骨身に染みる。
宿まではそんなに距離がなく、深入りするような話をする時間はないが
それでも挨拶以上の雑談をする時間くらいにはなるだろう。
こうして、思わぬところで出会った人と共に宿に戻り、再び部屋で眠りにつくのではないかと。

ルシアン > 「デメトリア、だね…ありがとう。会えて嬉しい。
 この辺りは散歩するにも良いかもしれない。あっちには景色のいい場所もあったし、機会があれば明るい時にでも行ってみると良いかもね」

少女に浮かんだ笑顔に、嬉しそうにしつつ。
不注意でぶつかってしまった事だけど、それも災い転じて…という奴だろうか、なんて事も考えてしまって。
散々迷って辺りを歩いたせいか、それなりに印象に残った風景なんかもあったらしく。
そんな事も、のんびりした調子で伝えてみたり。

「最近はどんどん冷えてきたからね…戻るなら、ご一緒させてもらえると嬉しい。
 …本当に助かったよ。野宿しなくてよくなったお礼、いずれしなくちゃいけないかな…?」

偶然の幸運に感謝しつつ、少女の後ろについていくよう、一緒に宿へと戻っていく。
短い時間でもかわす会話はのんびりと、楽しいものになったはずで。
別れ際、もう一度礼を言って部屋へと戻っていく事に…そこからはまた、別のお話。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からデメトリアさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からルシアンさんが去りました。