2018/04/03 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にサヤさんが現れました。
サヤ > ヤルダバオートに存在する孤児院の二階。
金属で補強された分厚い木製の扉の横で簡素な椅子に座り。
復活した愛刀が入った鞘を抱きしめるように持ちながら、特に感情の籠らない表情で佇み。

今回の依頼は警備であった。
それ自体は珍しいものではなかったが、その内容は孤児院で行われる売春部屋に不審な人物が入ってこないか。
また、商品となる孤児たちが脱走しないか見張るといったものだ。

いくら仕事に善悪は問わないといえ、子供を預かる施設で行われる悪徳に対しては、かつての自分なら受けることはなかっただろう。

「まったく惨めなものだ」

小さくうつむき気味につぶやく。
父親が生きていればなんと言うだろうか。
とはいえ、今の自分にとってこういった施設はなくてはならないものだった。
剣術しか能のない自分にとって、子供を持ちながら生きていくなど、生半可な覚悟でできるものではない。
普通の人間なれば一人二人なら何とかなるだろうが、自分は呪いのせいで普通の基準では収まらないのだから。

「地獄に堕ちるだろうか。それも定めだろうが」

ドアの向こうからかすかに聞こえる少年少女たちの嬌声を聞きながら、まるで懺悔のようにささやき。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にヴィクトールさんが現れました。
ヴィクトール > 仕事というのは、感情を抑え、作業の如くやらねばならないときがある。
特に掃き溜めのドブさらいは、その汚臭に顔をしかめる事も良しとしない。
しかし、実際に彼がやって来たのは溝掃除ではなく、国に掬う無能の屑を捉えるための作業だった。
王国軍第零師団の傘下に収められた民間軍事組合、規律に守られていそうな中でも、野良犬と呼ばれる遊撃部隊は、汚濁に涼しげに足を踏み入れ、孤児院の入り口を開いた。
引き連れた男達も皆、悪党ヅラをした輩ばかりであり、二階の客だろうと気にするむのもいない。
そのまま二階へと上がっていけば、黒尽くめの戦装束と黒い短髪、そしてギラついた金の獣じみた瞳が見えてくるだろう。
足音を響かせながら仲間を数名連れ、少女の前へと向かっていくと乱雑に彼女へ蝋封をされた書類を投げ渡した。

「わりぃな、稼ぎゼロになるが牢屋にはぶっこまれたくねぇだろ?」

蝋封をされた羊皮紙の筒を広げれば分かることだが、中にいる孤児院を取り仕切る男共に捕縛命令が下っている内容だ。
罪状は王国への裏切り、国税を引っ張った挙げ句、私利私欲を満たす売春行為を孤児に行わせ、間違った金の使い方をした罪である。
特に止める事もなければ、部下達が声を荒げながらドアを蹴破り、男達の確保と孤児の保護に向かうだろう。

「……ぉ、刀じゃねぇか。兄貴以外で持ってる奴、初めて見たぜ」

当の本人は彼女が抱えていた打刀へ目を引かれ、意外そうに口を小さく開き、呟いた。
そのまましゃがみ込むように身を低くし、それをまじまじと確かめると、今度は彼女の方へと顔を上げて、ニヤっとした笑みを見せつける。

サヤ > ドア向こうから聞こえる嬌声以外、音のない静かな環境を打ち破るように教会のドアが開かれれば階下へ目を配せ。
迷いなく上に上がってくる明らかに客ではなさそうな武装した集団を見れば小さくため息をつき。
鞘でドアをたたいて合図を送り。

すぐに姿を現せた明らかにガラの悪そうな兵士を引き連れた指揮官風の男に投げ渡された書類に目を走らせて。
いやそうに眉を寄せ。

「そうね……でも、この仕事は信用だけが大事だから」

再び小さくため息をつけばドアを開けようとした数人の兵士を一瞬で切り倒す。
このような仕事をする以上中の人間も逃げることに関しては一流だ。
少しばかり時間を稼げばすぐに逃げ切るだろう。

刀を振って血を払いながら立ち上がり。
軽く首を回せば相手を見据え。

「悪いけど、下手に死傷者出したくなかったら、あきらめてくれる?
 ちょっと時間くれたら、中にあるものはもっていっていいって聞いてるから」

ヴィクトール > 刀だと珍しげにそれを眺めていれば、その様子に部下も油断したのだろう。
彼女の一閃に反応がおくれ、バックステップして下がった部下たちも深い裂傷を負う。
床を転がるようにして距離を取ると、各々武器を手にしようとする。

「ったく、何油断してんだお前等。信号弾上げろ、走れる奴は壁ぶち破ってでも追いかけろ。取り逃したらお駄賃減るぜ?」

傷を押して部下達は散らばっていく。
一人は魔術混じりの一撃で強引に壁をぶち破って別室から向かい、身軽な部下は窓の外に飛び出して壁や木々を蹴って回り込む。
深手を負った部下は急いで外へ移動し、傷口を押さえながら信号弾を上げに向かう。
それぞれが一芸に秀でた輩ばかりであり、統率性の無い実力。
そして残った彼は立ち上がると、背中に背負った相棒と呼ぶ剣を引き抜いた。
真っ黒な刀身は長く、細いクレイモアの様な形状をしているが、刃から滲み出る魔力は魔族を思わせる瘴気を纏う。

「その言葉、そっくりアンタに返すぜ。加減してやるけど、死んでも文句言うんじゃね……ぞっ!」

孤児だけでは仕事は終わらない、腐りきった輩も全て捕らえて終了だ。
部下が捕まえるまでの間、自分が相手を務めるということである。
切っ先を下に向け、斜めに刀身を傾けた構えを取ると逆手で剣を斜めに振るう。
見た目によらず、一瞬の脱力から刃を振り抜く瞬間、大気の爆ぜる音を響かせた。
音速となった刀身からは鋭い刃が飛び道具となって放たれ、ドア前の通路の大半を範囲に収めた飛刃が斬撃と共に放たれる。

サヤ > 「はぁ、だから警備の仕事は嫌なんだ」

何かを守りながら戦うのは楽ではない。
壁を破壊し数人が中へと突入する音と、中で警備していた傭兵たちと激突する音が聞こる。
彼らとて、ただ金を腐らせているわけではないようだ。
警備に呼ばれるのは口が堅く仕事に善悪と私情を挟まない手練れたちだ。
そう簡単に崩れることもないだろう。
それよりも目の前にいる相手のほうがよっぽど危険性が高いと判断し、援護に向かうことはあきらめて相手と向かい合い。

相手がゆがんだ気配とともに刃をふるうとともに飛び出すナイフのような多数の刃。
それを見れば目をつむり小さく息を吐き出して。

「ふぅ…………ぜぇあ!」

相手の刃が自身の範囲に入るとともに目を開き。
気合ととともに刀を振るえば自分の体にあたる範囲の刃をすべて切り落とし。
直後に背後の石造りの壁に残った刃が激突する音が響き。

ヴィクトール > 「ならうちに来いよ? 屑の尻拭わなくて済むぜ?」

彼女から感じる気配、視線と言ったものからは金に糸目をつけぬ荒くれ者といった印象を感じなかった。
どちらかと言えば、武芸の修練者といったところか。
戦いで金を欲するのであればと、今は敵である彼女に気にすることなく誘いかけていく。
そこらで鍔迫り合いが始まる中、こちらの一閃を同じく一閃で切り捨ててきた。
分断された刃は壁に散弾のように散っていく中、既に次の動作に入ったこちらは、横薙ぎの構えのままステップで距離を詰め、再度刃を振るう。

「まだ終わってねぇぜっ!!」

飛び道具の破壊力は抜群だが、本来は音速に達する刃を相手に直接叩きつける攻撃。
意識を集中させ、体のバネが爆ぜるタイミングを意識しながら連続して振り抜き、疾くも重たい斬撃の乱舞で畳み掛ける。
だが、それ自体も囮。
刃を振るう中、不意打ちに手を伸ばして彼女の胸倉をつかもうとする。
届いたなら、彼女を地面へ引きずり倒して叩きつける投げへと繋げるだろう。
後頭部を石の床に激突させれば、流石の彼女も脳震盪で戦闘不能に出来るはずと。

サヤ > 「そのほうがもっと嫌だよ」

軍属となれば今のような自由な生活は望めないだろう。
いろいろ面倒はあるが、自分にはこの生き方はあっていると考えていた。
振るわれる刃を刀で受け止めれば鋭い金属音が響き。

矢継ぎ早に繰り出される斬撃に対し、こちらは構えた刀を最小限の動きでいなし、受け止め、払いのけていく。

「っ…!せ!」

防御の隙にねじ込むように腕が伸び、胸倉をつかまれ。
そのまま押し倒されそうになるが咄嗟に地面に手を突き。
バク転の要領で体を半回転させながら奇襲のように相手の顔にけりを放ち。
そのまま、腕の力で体を跳ねさせて掴まれた服が破れ胸元があらわになる事も気にせず無理やり相手と距離をとる。
かつての自分であれば困難だったろうが、呪いが体になじむにつれ、少々人間離れしつつあるからこそできた芸当だろう。

ヴィクトール > 「そうか、うちの馬鹿共に一泡吹かせる奴ぁそんなにいねぇからよ」

残念だと苦笑いを浮かべながら刃がぶつかり合う。
破壊力と速度の両立が成された斬撃を、上手く受け流され、払われていく中の不意打ち。
地面へ引き倒す確かな手応えを感じるも、彼女はとっさに受け身をとっていく。
それどころかこちらに蹴りを見舞ってくれば、ぎょっとした顔をとっさに横へ反らし、頬を靴底がかすめていった。

「っぶねぇ!? こいつぁ手強いな」

切り合いだけでは埒が明かない。
恐らく双剣や戦斧を出しても、同様だろう。
槍は意味がない上に、黒曜石粒子も射程とスキを考えれば賭けに近い。
深呼吸を一つすると、魔族の血を循環させるように息を吐き出し、全身に黒い魔力を纏っていく。
全身に満ちる力が人間の領域を突破させていくが、限界を超えれば理性を失う。

(「あんなもん、目の前にぶら下げられりゃ、我を失いそうだけどな」)

小振りながら形良い乳房が視野に飛び込むと、思わずニヤッとしたあくどい笑みが溢れる。
どうせだ、ぶっ倒して連れ帰ってしまいたい等と、戯けた事を思い浮かべつつ、再び横薙ぎの構えを取った。

「ところでよぉ、綺麗なおっぱい、見えてんぞ?」

わざと乳房のことを意識させるように告げた後、地面を蹴った。
今までの速度よりも疾く、何より鋭い動きで眼前へ迫るようにして一足飛びを見せるが、横薙ぎは放たない。
彼女ぐらいなら反射的にカウンターか防御を取るだろうと思えば、そのまま側面に回り込むように鋭角なターンを減速なく行っていく。
地面を統べるような人外の挙動を見せると、一回転するようにして薙ぎ払う。
更に旋風の如く回転して勢いを載せた突きを放ち、上へ切り上げるように飛び上がり、反転。
天井を蹴って袈裟斬りで切りかかって地面を滑り、彼女へ向き直る。
それぞれの動作が瞬きする合間といった速度で放たれ、全力で彼女に襲いかかっていく。

サヤ > 「それがどうしたの、よ!」

今まで幾人もの男たちに抱かれた身。
今更胸を見られたところで何も動じることなどなく。
相手の下種な笑みと声を聴けばより冷静に相手の動きに集中し。

次々と人外な動きから振るわれる攻撃に対して、薙ぎ払いは身をそらしてかわし。
突きに対しては半身を切って肌と服を切り裂かれつつもかわし。
最後にとびかかりからの袈裟斬りは刀で受け止め、火花を散らしながら刃で受け流す。
相手の動きはどれも自分に対応できるものではなかったが、限界まであふれるアドレナリンと本能的な闘争心から一撃を逃れ。

「はぁ、はぁ……やっぱり、王国騎士は強いわね」

肩で呼吸を整えつつ床に切り裂かれた胸元から流れる血を滴らせながら距離をとった相手を見据え。
その時、撤退完了の合図となる教会の鐘が鳴り響き。

「……どうやら、私の仕事は終わったみたいね。
後は殺すなり逮捕するなり隙にすればいいよ」

つぶやくように言えば刀を鞘に納めて両手を上げ。

ヴィクトール > 「そんないいもん見せられると、ヤりたくなるだろっ!」

動じないなら、あとは力と技でねじ伏せるのみと襲いかかる。
一連の連続した動きは、完全に血に秘められた人外の力を開放しきっていないと言えど、並大抵の者が抑え込める力ではない。
しかし、その攻撃はすべて致命傷を避けられていき、僅かな裂傷を与えただけ。
地面を滑りながら、思わず感嘆の口笛を吹かして驚き、これは手間がかかりそうだと大剣を構え直す。

「ぁ゛? 王国騎士? んなんじゃねぇよ、俺ぁ傭兵みたいなもんだ。所属してる組合が、国と取引して仕事してるだけだ。大層な御身分じゃねぇよ」

息絶え絶えといった彼女の呟きに、思わずガラの悪い声がこぼれ、首を傾げてしまう。
何をどう見れば、こんなチンピラ崩れみたいな男を騎士様と見間違うのか。
礼状のせいかとは思うも、可笑しそうにクツクツと笑いながら降伏する彼女に、小さく溜息を零しつつ刃を収めた。

「アイツ等…頭ぐらいは抑えてなかったら承知しねぇぞ。でだ、俺ぁ悪党に操られてた可愛い剣士とやりあって、正気に戻ったアンタからお礼に一晩貰った……ってシナリオでどうだ?」

ブンと刃を一振るいすると、背中の鞘に収めながら彼女へ近づいていく。
ニヤッとした笑みは相変わらず下種なところもあるが、問答無用には抱こうとしない。
腰に下げたポーチから小さな瓶を取り出すと、コルク栓を引き抜いた。
薬草の香りが広がる薄緑色の軟膏を指で掬い出すと、それを彼女の胸元の傷へ塗り込もうとする。

「わりぃな、なるべく裂傷はつけねぇようにとは思ったんだけどよ。アンタ強いから加減の余裕なかったわ」

胸元やそれ以外にも傷がないかと一通り確かめるように視線を向けながらも、薬が塗り込まれれば染みる痛みはあるが直ぐに痛みもなくなるだろう。
逮捕されるか、それともこちらの口車に乗って一晩を過ごすか。
どうするよ? と改めて囁きながら、相変わらずニヤッと笑っていた。

サヤ > 「はぁ、分かったわ。
 逮捕されればいろいろ面倒だし。あなたのシナリオに合わせて上げる」

ここまでのやり取りから圧倒的な実力差を感じ、相手から逃げるのはあきらめているおり。
難航を手に近づく相手から離れることもなく。
傷口に軟膏を濡れればしみる痛みに眉を寄せ。

「誉め言葉として受け取っておくわ」

相手がなんと言おうと、自分からしてみれば、攻撃を防ぐだけで精一杯だったのだ。
とはいえ、無事仕事を成し遂げたと言う意味では鉾手もいいだろう。
刀を納め、同じように抵抗をやめた傭兵たちとともに相手に連れられて行くだろう。
その後、彼の提案に則り、一晩を過ごすことになるが、それは別の話となるだろう。

ヴィクトール > 「んじゃそういう事にすっか、そう嫌な思いはさせねぇよ。させると俺が兄貴にどやされる」

冗談めかした言葉を重ねながら薬を塗り終えると、瓶をポーチへ収めていく。
謙遜した言葉に、カラカラと笑いつつも鞘の肩紐を外すと、何故か黒い上着を脱いでいった。
紺色のシャツ一枚の上半身で再び剣を背負うと、上着を彼女の胸元を隠すようにかぶせ、小さな手を無骨な大きな掌で優しく握り込む。

「後はアイツらがやるから任せとけ、じゃ、俺等は楽しむとしようぜ?」

そう告げて、彼女を伴いながら行きつけの宿へと彼女を誘っていく。
二人だけが知る、一夜の物語を紡ぐために。