2017/09/09 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/小さな寺院」にリュシーさんが現れました。
■リュシー > (―――それはもちろん、ただの噂、デマである可能性も高かった。
けれど、ヤルダバオートの某所に解呪を得意としている僧が居る、と聞けば、
一度は訪ねてみずにいられなかった。
この姿がどうしても嫌だ、というのではない。
それでも―――)
………戻れないなら戻れないで、はっきり、させたいもんなぁ。
(ぽつり、呟いた声が存外大きく、狭い空間に反響する。
目当ての僧が居るという小さな寺院には聖堂すらなく、僧が待つという奥の間と、
己同様、噂を聞きつけて訪れた者が順番待ちをする小さな部屋、程度しかないような。
いま、壁に添って数個の椅子が置かれた小部屋には、己ひとり。
ひとりの女性が奥の間から出てきて、入れ替わりに己の前に待っていた女性が、
奥の間へ入ってから、数十分、といったところか。
なぜか客人がみな女性であることとか、出てきた女性たちが一様に、
ぼんやりと焦点の合わない目つきであることとかが、気にならないわけではなかったが―――)
ま、……ここまで来たら、一度会ってみなきゃだよね。
(憑き物が落ちたからこそ、ぼうっとしていたのかもしれないし。
―――などと言い訳をしてみるが、実のところ、たぶん好奇心が勝っているだけのことだった。)
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/小さな寺院」にルヴィエラさんが現れました。
■ルヴィエラ > (果たして、聖堂と言う物はどの様な役割を果たすべき物なのだろう
人を救い、人を導き、或いは嗜め、其の行いを正す
そう言った在り方が、恐らくは一般的な理想像なのではないだろうか
けれど、もしそれが本来在るべき聖堂の姿なのだとしたら――此処は如何だろうか
もう暫く、時が過ぎてから。 先に入って行った女が奥の間から出て来る。
其の女もまた、他の者と同様に、何処か焦点の合わぬ瞳ながら聖堂を出て行き
そして、列に待つのは最後に並んでいた一人だけと為る、か。
静まり返る聖堂内、特に招く声も掛からなければ、踏み入るのは自らの意志
もし、其処で踵を返せば、今宵は何事も無く、ただ無為に夜が過ぎるやも知れぬ
けれど、もし、其の足を踏み出して、部屋の中へと入るのならば
其処には、噎せ返るような香の匂いと、薄幕で仕切られた其の向こうに
明かりで照らされた人影がひとつ、映し出されているだろうか)。
■リュシー > (もう少し己が賢かったなら、そもそも噂などを頼りにして、
こんなところまで来たあげく、おとなしく順番待ちなどしなかっただろう。
ふらふらと奥の間から出てくる女性たちの身体から、ほのかに漂う香りだとか、
その表情だとか、ここへ来てからでも、いくらでも判断材料はあったのだし。
しかし、猫も尻尾を巻いて逃げ出すほどの好奇心をあらわに、
己は出て行った女性の背を見送り、跳ねるような勢いで立ちあがる。
なんの躊躇いもなく、奥の間に続く扉に手をかけて)
えっと、……失礼、しまー……す?
(名のある僧、とやらに、どんな呼称を使うべきかわからない。
だから礼儀だとか手順だとかをとっぱらって、ぎぃ、と扉を押し開く。
一応声はかけたけれど、行儀が良い、とはあまり言えなさそうである。)
――――― え、あ……?
(部屋へ入った途端、噎せ返るような香気が襲い来る。
鼻腔へ、というより、頭や身体の奥まで燻されてしまいそうだ。
視界がなんとなく煙っているのも、焚かれた香の煙だろうか。
とにかくも、人は居るようだ。
その人がどんな姿かたちであるか、それすらはっきりと見えなかったけれど、
更に一歩、二歩と奥へ進み出る。
―――背後で、己の潜った扉が閉ざされる音が、やけに大きく響いた。)
■ルヴィエラ > (部屋の中は、決して豪奢とは言い難い。
けれど、使い古された、其れで居て決して質は悪くなかっただろう絨毯や
彼女と、僧であるらしき人影とを分かつ薄幕の柔らかさ
そして、割合手入れの行き届いた室内全体の雰囲気を、感じられるだろう
閉まる扉、薄幕と人影の其の直ぐ前に、座席なのだろう椅子が置かれている
そして、僅かに人影が彼女の前で揺れる様を見せたなら、刹那、響く声。)
――――……望みを、聞こうじゃないか。
(――僧、と言うには、何処か中性的ですらある、囀るような声音。
彼女へと向けて、この部屋へと訪れた、其の理由を問いかけるのは
数多の苦しみや悩みを受け止める役目として、恐らくは、至極当然の事だろう。
けれど、敢えて其処に問題を差し挟むのであれば。
――或いは、其の声音に、何処かで覚えが在るやも知れぬ。
彼女が、この場所へと訪れる事に成り果てた其の元凶たる――
けれど或いは、思い出せぬのであれば、其れまでの事だろう。
続く声音が、座りなさい、と促して――きっと、其の頃には
一層香の匂いが強まり、少しづつ、意識を酩酊に誘おうとするだろう
何処まで気を確かにしていられるかは、きっと彼女の自我の強さ次第、で)。
■リュシー > (そもそも、もとの己といえば、聖職者とはある意味、真逆の位置に居た。
僧侶の住まい、というものには馴染みがないし、部屋の家具調度にしても、
踏み締めた絨毯の柔らかさについても、こんなものか、と思う程度。
進み出た先に、さも座って良し、と言わんばかりに椅子が置かれているのを見て、
そっと、その背凭れに手を伸ばしかけた瞬間、だった。)
っ、――――― あ、え、っと……は、い……?
(正直に言えば、その声には少なからず驚いた。
てっきりしわがれ声のお爺さんとか、そういう手合いを想像していたのだ。
なのにこんな、男性とも、女性ともつかないような声で―――
ああ、でも。
なにか、もっとほかに、頭の片隅をかりりと刺激されたような感覚がある。
なんだろう、なんだったろう―――ひそかに首を傾げながらも、
声に促されたので、ひとまず、目の前にある椅子へそっと腰を下ろす。
それから、―――それから、なんだったか。
身体を椅子に預けたせいか、急速に四肢へ脱力感が広がり、
頭がぐらぐらと揺れているような―――まるで、強い酒精をあおった時のような。
とろりと瞼が落ちようとする、その直前に。
既にぼんやりと、うわごとのような声で―――ひとつだけ。)
あの、……どこ、かで……お会い、した……こと、―――――
(ありませんか、と―――尋ねることは、できなかった。
からだが熱い―――ひどく、重くて。)