2017/08/18 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 大聖堂」にルクレツィアさんが現れました。
ルクレツィア > 貴族ばかりで無く、王族の中にも訪れる者の多い、瀟洒な大聖堂。
ステンドグラスの殊更に美しい礼拝堂の片隅、目立たぬように設えられた扉の向こうは、
聖職に就く御方と、直接、対話を願い出た王侯貴族の為に用意された小部屋だった。

向かい合って置かれた立派な一人掛けの肘掛け椅子ふたつ、
傍らには燭台を置いた小さなテーブル。
ふかふかと足音を吸う絨毯の上を進み、其の椅子の片方へ腰を降ろせば、
向かいの席へ腰掛けた壮年の僧侶が、燭台の灯火を全て吹き消した。
―――明るい中では話し難いこともあろう、との、配慮であるらしく。

黒いドレスにたっぷりとしたヴェールを被る己は、両手を膝の上で揃え、
俯いてそっと息を吐く。
幾度も躊躇っては口を開き、また閉ざし、した後に、とうとう震える声で呟く。

「……わ、たくし……夫を、裏切ってしまった、のです……。」

夫はもう亡い、けれど、其れでも己は。
身を慎むべき寡婦の身でありながら、淫らな欲に流され、
溺れそうになっている、と語り始める。

其れ、を詳らかに語るだけで、胎の中がじゅん、と濡れてくるのを感じながら。
暗がりの中、向かい側に居るのは、最も神聖なところに住まうひと。
其のひとに何もかも打ち明けることで、少しでも清めて欲しいと願っての行動だが、
―――果たして今も、向かい側に座っているのは僧侶だろうか。
或いは誰か別の―――己を貶める、罠を仕掛ける者である可能性は無い、だろうか。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 大聖堂」にエズラさんが現れました。
エズラ > 神聖都市とは名ばかりの、腐敗の都――それがこのヤルダバオートの真の姿であるということは、表向きには知られていない。
街の地下に設けられた、正真正銘の修道女を抱けると噂の売春施設に興味をそそられ、魔物退治のついでに立ち寄ったのである。
この大聖堂の地下にも「それ」はあり、「情欲に溺れる前に祈りを捧げなければならない」という、上辺ばかりの決まりごとを済ませ、何とはなしに大聖堂の中を見て回っていたのだが――

懺悔部屋、というものを初めて目の当たりにし、自分には無縁なものと思いつつも忍び込んで物珍しそうに室内をうろついていたが――

「……!」

人の気配。
慌ててカーテンの影に身を潜めた後、入室者の気配――程なくして明かりが落ち、始まる罪の告白。
その声、その罪――男はカーテンの影でほくそ笑む。
これはまた、とんでもない場所に行き会ってしまった――

そして、気配を殺したまま僧侶の腰かける椅子の背後へ這い進み、その足首にそっと指を触れさせ、なにごとか呟く。
すぐに僧侶の意識は断たれ、深い眠りの世界へと落ちていく。
かつて身につけた幻惑の魔術の、何とも子供じみた悪用――

流石にそろそろ女も気付くであろう――自分と、僧侶と――もう一人。
この場所に居てはならない第三者の気配に。

ルクレツィア > かつて、夫であったひとも此の街の何処かで、修道女を買って楽しんでいた。
つまり、此の街の何もかもが美しく、清らかである、とは限らないことぐらいは知っている。
だが、然し―――

「……司祭様、―――――司祭、様……?」

低く、微かに聞こえていた短い相槌の声が、不意に聞こえなくなった。
何故―――初めに疑ったのは、其のひとが急病か何かで、意識を失ってしまった可能性。
けれど直ぐ、そう広くも無い部屋の中で、もうひとつ、別の気配が潜んでいることに気づいた。

「―――――だ、誰っ……!?」

貴婦人らしからぬ慌てた仕草で立ち上がり、暗がりの中へ声を投げかける。
一体誰なのか、否、誰であったとしても、今の告白を聞かれたのなら―――

咄嗟に傍らのテーブルへ手を伸ばし、先刻、火が消されたばかりの燭台を掴み寄せようと。
もう一方の手は同時に、火をつける為の道具を手探りで見つけ出そうとする。
兎に角、灯りをつけて―――三人目の人物の正体を、見極めなければ、と。

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 大聖堂」からエズラさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート 大聖堂」からルクレツィアさんが去りました。