2016/07/14 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/裏通り」にアシュレイさんが現れました。
アシュレイ > 神聖都市と言えども他の街とそれほど変わりはない。
ちょっと表通りから道を外れれば如何わしい店は山ほどあるし、更に裏通りへと進むと相手の力量も弁えずかかってくる強盗が出る始末で。

「なんか、期待してるのとちょっと違うわね。」
娘は足元で転がっている強盗の死体を眺めつつ溜息をつく。

ここに来れば多少は神様について興味を持てるだろうかと思っていたが、そうでもなかった。

協会で聴かされる説法は王都と大差なく、そういった箇所から目をそらすと転がっているのはどこにでもあるような光景。

「結局、神様って居ないか、居てもこのへんには出てこないってことよね。」

アシュレイ > 「そもそも、ご加護があるのなら私がこんな奴に会うこともなかったわけだし、こいつも私と会わない筈よね。」
視線の先の死体を先程からずっと見つめている。

死体の手には、血で染められたナイフが。 胸部には何度も突き刺した跡があった。 
娘が強盗に魔法をかけ、自分で自分の胸を滅多刺しにさせたのだ。

それはつまり、強盗にあってしまった娘にも、娘に殺されてしまった強盗にも神のご加護はなかったのだと娘は結論づけて。

「結局、先立つものは力かしらね。 魔王以上に強くなったら見える景色も変わるかしら。」

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/裏通り」にファルコさんが現れました。
ファルコ > どこかで殴り合うような音が聞こえ、通りの向こう側を数人の男たちが駆けてゆく。
数秒おいて、路地の角から、のそりと人影が現れる。
手には杖が握られていて、闇を照らす松明代わりだろうか、淡い光を放っている。

「くっ、逃がしたか。やはり夜間の能力制限はきついな。
とはいえ後ろめたい者は大抵闇に潜む物だ、何とかしてある程度動けるようにしたほうがいいだろうが。
さて、今夜はどうしたものかな」

フードを被っているその顔が、松明に照らされて一瞬だけ見えるだろう。
浅黒い顔の鼻から上を覆う白い仮面。赤と青に分かれた眼が宝石のようにきらりと光る。
と、その視界がごろつきらしき亡骸に、次いでその先に立つミレー族のような外見の少女に向けられた。

「おっと、邪魔だったか。吾輩には関係ない事だし、見なかったことにしておこう。
だが娘よ、先ほど加護がどうとか言っていたようだが?」

アシュレイ > 向こう側を逃げるように走り抜ける男達を見送っていると、遅れてやってきた杖を持った男。
松明代わりに宿している光から、魔道士の類かと推察する娘。

オッドアイを思わせる仮面を付けた上にフードまで被っている男。
怪しい人か可笑しな人の類だろうかと娘の中で想像が進む。
とはいえ、何やら強い魔力を持っている感じはしてきて、娘は僅かにだが目を輝かせる。

「別に見られて困ることは何もないわ。 頭の悪い強盗が勝手に襲ってきて勝手に自殺したのよ。 薬でもやってたのかしらね。」
足元に転がっている死体から目をそらし、仮面の男と視線を合わせる。
口元には怪しい笑みが浮かんでいた。

「そうね、貴方は神の加護って信じる方かしら?」
娘は黒い耳を忙しく動かしながら首を傾げた。
初対面で聴く様な内容でもないのだが、何故か口が動いてしまった。

ファルコ > 白仮面はふん、と鼻を鳴らす。

「そうだな。盗人の一人二人減ったところで誰も困らん。
しかしこの辺りは特に暗いな……」

夜目が効かないのだろうか、壁伝いを手探りで歩み。
明かりの先に見える少女の顔を確認すると、何かを思い出したようにアッと声を上げた。

「む、その顔は。たしか最近勢いのあるシンビジューム商会の。
このようなところで奇遇だな。護衛が見当たらないが……一人か?」

この裏通りで、供もつけないのは不用心ではなかろうか。
そう不審に思ったが、ミレー族のような姿をしているのに、治安のよくないだろう場所でぴんぴんしているのは何かしら理由があるのだろう。それが魔術によるものか、武術によるものかまでは判別できない。何しろ暗いのだから。

「神の加護、か。
この神聖都市と謳われる地でこのような話をするのもなんだが、
あるんじゃないか? それが果たして望むほどの効果かどうかはさておき、だ」

杖を壁に立てかけ、その横に寄り掛かる。

「何か困りごとでもあるのかね?」

アシュレイ > 「貴方、暗い所は見えないの? なら、宿に戻るまでは送ってあげるわ。 また物騒な人に会っても困るでしょう?」
先程逃げた連中が何をしたのかはわからないが、見えにくそうに壁伝いで近づいてくる相手をまじまじと見つめている。

「私の事知ってるの。 嬉しいわね。
護衛何て本当は私にはいらないのよ。 何せ、こう見えて結構強いんだから。」
己の事を知ってもらっているのは心地よく、口ぶりこそ落ち着いているが、猫耳はピンと張り、尻尾もパタパタと動いている。
暗い相手がよく見えるようにと、また己の力を少しばかり故事しようと、娘は指をパチンと鳴らすと男と娘の間に人の顔程ある火の玉が浮かび上がる。
灯りにするには少し眩しい程の光が辺りを照らし出す。

「本当にあると思う? あるのなら、貴方はさっきの連中に会わずに済むわけだし、この死体も今日ここで死なずにすんだと思わない?
仮に加護があってこの状況なら、それはもう居ないと同じように思えるんだけど。」
一瞬だけ、足元の死体に視線を向けてから再度男に視線を向け直して。

「困りごとはいくらでもあるわ。 世に悩みは尽きまじって奴ね。 とりあえずは今は力が欲しいわね。 どんな奴が相手でも跳ね除けれるだけの力が。貴方の方はどうなのよ。」

ファルコ > 申し出には、軽く手を振って断る。

「いいや、気持ちだけ受け取っておこう。この辺りに宿は取っていない。少し離れた、明るい通りにあるのでね。
とはいえ手元が暗いのは不便だが……ん?」

少女が指を鳴らせば、二人の間を火球が赤々と照らし出す。
それは急に現れたので一瞬目をくらませるが、次第に男の眼も慣れてきた。

「ああ、これならば明るいな。物に火をともすのではなく、燃焼体を宙に出現させるか。安定した魔力の状態で長時間維持できなければ難しいだろう術だ。
気軽に出せるということは、よほど実力に自信があるのだな。……少し失礼」

頷き、黒い杖をかざして火球をつつくと、眩しい炎が目に優しい色の光球に変わってゆく。

「だが我彼の力量差を理解できぬ連中も多い。多少面倒でも、供の者を傍に付けておいた方が、誰の目にもわかりやすいだろうと考えるがね。
…まあ、吾輩の事は、自分から向かった面倒事だから置いておくとして。
神の加護が存在するというが実感できない。
それについて、いくつか考えられることはある。例えば──」

指を折り、数えるように話す。その手は一見普通のように見えるが、爪先がまるで猛禽類のようにとがっているように見える……。

「信仰心の不足。流石に神とて、誰彼かまわずタダで加護をくれるわけでもあるまい。
そこで寝ている屑も、神の敬虔な僕であれば死なずに済んだかもしれんし。
あるいは、そもそも神に信徒を護れるほど力がない場合もある。
ヤルダバオート以外の神、弱い神を信仰していた場合にあり得ることだが」

ふたたび視線を向けられたのに気づくと、フードを目深にかぶり、ただでさえ仮面でわからぬ表情がさらにおぼろげになる。

「力が欲しい、か。ありふれた悩みだな。商会のトップが考えるには少々、穏やかでない気もするが。
吾輩の欲するものか。それなら知識だな。
生涯かけてもすべてを知り得ることはできないだろうが、だからこそ挑みがいがあるというものだ」