2016/01/11 のログ
ご案内:「とある教会の謹慎部屋」にツァリエルさんが現れました。
ご案内:「とある教会の謹慎部屋」にヴァイルさんが現れました。
■ツァリエル > 薄暗く湿っぽいレンガ造りの粗末な部屋。
木造りのぎいぎい軋むベッドの上、粗末な麻の寝間着を肌蹴て床に臥せるツァリエル。
薄い布団をかぶり、必死に何かに耐える様子で打ち震える。
その股の間には性器と後孔を守るようにぎっちりとした黒皮の貞操帯が巻かれていた。
体内に巣食った触手の魔物からのいやらしい衝動に打ち勝つために施されたものである。
そしてこの場にいるのはツァリエルの存在が他の修道士たちによくない影響を与えるため。
謹慎と称した拘束で罪を償い、再び淫らな誘惑を退けるための心を養うものというのが司教たちの言い分であった。
内側から遅いくる自慰をしたいという衝動に体をきつく抱いて自分を戒めるが
ツァリエルの頬は熱く桃色に染まり、唇からは悩ましげな嬌声が零れ、夜も眠れず火照りを覚ますことも出来ず体をくねらせるのみである。
■ヴァイル > 煉瓦の隙間から、ちょろちょろと茶褐色の毛皮を持つ鼠が這い出てきた。
臥せるツァリエルの周囲をせわしなくうろつきまわって、薄暗闇のなか紅く光る眼がそれを観察する。
やがて満足したのかツァリエルの顔の近く、ぴたりと一箇所に脚を止める。
「修道院の連中は随分といい趣味をしているものだな。見習いたい」
鼠が口を利いた。覚えのある、面白がるような声であった。
■ツァリエル > うろつきまわる鼠をベッドの上から力なく眺めていたがそれが口を利いたとなると
思わず跳ね起きてもそもそとベッドから降りる。
そっと両掌を鼠に向けて差し出した。はたして乗ってくれるだろうか。
はぁと熱っぽい視線が鼠に向けられると震える唇が名前を呼んだ。
「ヴァイルさん……来て下さったの……?」
一人こんな場所に閉じ込められてひどく弱っていても、見知った来訪者には心底嬉しそうに笑みを浮かべる。
■ヴァイル > 「なんだ、思ったよりは元気そうだな。
もう少し弱ってから来てやったほうが、恩を着せられたかな」
相変わらずの調子で軽口を叩く。
両手が差し伸べられればそれに乗り、その上で偉そうにふんぞり返って鼻を鳴らした。
「さて、きさまがこの《夜歩く者》に何を期待しているかは知らんが。
話相手ぐらいにはなってやってもいいぞ」
■ツァリエル > ふんぞり返る鼠の様子に妙な可愛らしさを覚えて鼻先にそっとキスをする。
顔の傍まで鼠を持ち上げると、そっと小さな声で囁くように話しかけた。
「来てくださって嬉しいです。一人きりでとても寂しかったから……。
あのね、少し前にマグメールの王家の人が沢山の家来をお連れになって教会を訪れたのです。
なんだか僕を身請けしたいというお話で……司祭様がそのように仰っていました。
だけど僕、こんなにいやらしく淫らになってしまって……とてもじゃないけれど貴族の人のところへなど貰われても仕方ないから、
これをきちんと治さないといけなくて……だからここにいるのだけど……」
ヴァイルの眼にはツァリエルの体内、性器や胸、尻穴を淫らに開発し尽くす寄生した魔物が見えるだろうか。
とにかくこんなところで我慢して戒めていても治る見込みがないのは確実だ。
話している最中もツァリエルの体はもじもじと揺れ、物欲しそうな溜息が零れる。
■ヴァイル > キスを受ければ、鼠は掌の上でひっくり返って腹を見せてくつろぐ。
そうしてツァリエルの囁き声にものも言わずに耳を傾けた。
「ほう、身請け、ね」
顔を短い肢でごしごしと掻くと、ひょいとツァリエルの手から降りる。
その数瞬後には鼠の姿は消え、代わりにツァリエルの傍に座り込む
口元に静かな笑みをたたえたいつもどおりの白皙の少年の姿があった。
「それはずいぶんと急な話だな。
……修道院に未練はないのか?」
そっと、先程まで鼠の自分を持っていたツァリエルの手を、温度のない手で取る。
眼は唇のようには笑っておらず、どこか冷ややかに魔物に侵された身体を見下ろしていた。
■ツァリエル > とられた手の冷たさも今はもう慣れたものだ。
ヴァイルとは対照的に高熱にうなされたかのような熱い手と指を相手の手に絡める。
「未練がないわけではないけど……」
すこしだけ悲しそうに顔を伏せる。
「教会だってそれほど裕福ではないし、身寄りのない子供が一人自立すれば
それだけ他の子が助かる可能性があるのです。
それにこのままここにいても……神様の教えを守るどころか
貞淑な他の人たちを惑わす、悪人になってしまいそうですし……」
とつとつと語っていた口が不意につぐみ、ぐっとこらえるようなしぐさでかみしめられるがその瞳から涙がぽろぽろと零れ落ちた。
「あ、あなたの言う通り、僕、ぼく、なんだか自分の知らないことがたくさんあって……
ぼくだけが知らないのに……周りの人だけが知っていてそれで、いいようにされて……
知らない人が次々目の前に現れてなんだか周囲だけが目まぐるしく変わっていくし、
僕の体も身分も、知らない間に変わって行っているし……
こわいです……こわい……」
うっ、と押し殺した声で俯くとそのまましくしくと床に涙を落とす。
■ヴァイル > ツァリエルの悲しげな様を目の当たりにしても、
ヴァイルの相貌に哀れみが浮かぶことはなかった。
「それは自立ではない。供犠と呼ぶのだ。
他の誰でもない……きさま自身の欲望を舌に乗せよ、ツァリエル」
貴族に引き取られる孤児が、いったいどのような末路を辿るというのか?
呆れたようにかぶりを振ると、涙を流すツァリエルに身を寄り添わせる。
指を伸ばして涙を拭う。
「怯える必要などない。
おれは変わらずここにいる」
それだけを言うと肩を抱いて、そっと唇を重ねた。乱暴さはなかった。
■ツァリエル > ヴァイルの口づけにそっと瞼を伏せて受け入れる。
熱のない彼の肌に自分の熱を分け与えるようなしぐさ。
次に顔を離したとき、口元がわなないてじっとヴァイルを見つめた。
縋るような視線とともに、それを口にしたらきっと戻れないというような悟り。
「……ぼく、僕……は――
ヴァイルさんのものになりたい。
いつかこの身を捧げるのなら神様でもなく他の誰でもなくあなたがいいです……」
己が口にした内なる願いにツァリエル自身が打ちのめされたような顔をしたが
やがて初心な乙女のように恥じ入るように目を伏せ再度ヴァイルに口づけする。
欲情したものではなくあくまで親愛の証、聖人が誰かを祝福するときにするような口づけであった。
■ヴァイル > 静かにツァリエルからの唇を受ける。
彼の告白をまるで予見していたかのように、
屍人めいた相貌は揺らぎを見せることはなかった。
「ツァーリ。
《夜歩く者》は破壊を是とする種。
そのおれと共にあろうとするということが、
どういうことかを理解しているのか。
その手を血に塗れさせてでも、至宝を得る覚悟はあるのか」
それは石のように乾いた忠告だった。
彼を抱く手がはだけた衣服の内側に忍び寄り、指先が黒皮の拘束をさぐる。
■ツァリエル > 「……あなたの探しているものがどんな宝か、それは僕のあずかり知るところではないです……。
それに、僕は宝など欲しくはないのです……。全部あなたに譲ります。
僕は……お傍に置いてくださるだけでいいのです……。
あなたの手が血に塗れたのなら僕が洗い清めます。
もしかしたらいつか、遠い未来に人も≪夜歩く者≫もその存在が変質して
破壊だけに寄らず、共存する道もあるかもしれません……。
――その道を僕が探します……」
ヴァイルの手から自分の手を離すと、その冷たく白い頬を両の手で包む。
彼の手が自分の内側に潜り込むとああ、と待ち望んだような溜息をもらした。
きつく戒められた黒皮の拘束具に指が触れれば、おねがいと懇願して相手が外しやすいように体を開いた。
■ヴァイル > 目を伏せる。
「そうではないのだ。
おれは安寧も愛も望まない。
かつて一人だけいた、親愛と忠義を捧げるべき方も、失われた。
ゆえに……おれは誰と共に在ることもできない」
そう告げる言葉は、ただ、淡々と事実を述べるのみであり、
悲壮さの欠片もなかった。
ツァリエルの身体を縛る革に一つ一つ触れていけば、
彼の身体を傷つけることもなく、まるで紐でも解くかのように簡単にほどけていく。
そうして珠の素肌が露わとなるだろう。
彼の白金の髪を梳くようにして撫でながら、
身をかがめて胸元や首筋にに何度かくちづけを落とす。
■ツァリエル > ヴァイルの淡々とした物言いにかつて親愛と忠義を捧げた人の話をするひとが
こんなに平坦でよいのだろうかと思うと逆にツァリエルのほうが悲しく気の毒になってしまった。
「その、最後の誰かのことを伺ってもいいでしょうか……?」
魔法のように脱がされた貞操帯をベッドの端にどけると
ヴァイルの柔らかな愛撫を受け入れ、同じように相手の茶色の髪をかき抱いてそっと相手を撫でる。
はたから見れば少年たちの倒錯した恋人ごっこのようにも見えただろう。
ツァリエルもまた相手の真似をしてその温度のない肌に少しずつ口づけてゆく。
心地よさそうに目を細めながら愛おしそうに相手の体に触れた。
■ヴァイル > 「それは誰よりも冷酷で驕慢で、愛に満ちた方。
おれに命を吹き込んだ父にして主――
グリム・グロット」
その名前を口にしたときだけ、人形めいた顔に微かな哀痛が滲むのがわかるだろう。
ヴァイルも自らの纏う衣服をはだけ、
白い幽鬼のような肌を晒していく。
やがてツァリエルと同様に、薄暗がりのもと一糸まとわない姿となった。
女の流麗さに男の骨組みの通った、均整のとれた肉体。
「この愛のない妖魔をそれでも求めるというのなら――」
肌の滑らかさを教えるようにしてふれあいながら、ツァリエルのそばに寝そべる。
そうして竪琴に触れるような慎重さで、五指が彼の身体のふちをなぞっていく。
「このおれを支配してみせるがいい」
■ツァリエル > 「グリム・グロット……ヴァイルさんのお父様……」
口にして父という存在に哀悼の意を浮かべるヴァイルを見る。
ツァリエル自身は父も母も知らぬ身なのでそこに具体的な何かを思い描けはしなかったが
彼の様子を見るにただの近しい親だったというわけでもないのだろう。
「今は、誰とも共に在ることが出来なくとも良いのです……。
いつか、もしその可能性が少しでもあるのなら、その時まで僕は待ちます。
あなたの心がお父様に占められていても良いのです……」
ゆるゆると首を振って穏やかな笑みを浮かべると、裸体のヴァイルの上に自身の体を重ねて乗せる。
ゆっくりと滑るように彼の下半身へと顔を下ろすと、ヴァイルの性器に細い指で壊れ物を扱うように触れて持ち上げ
ちゅっちゅっと先から根元にかけてキスをする。
やがて軽く触れるだけの愛撫がしっかりとしたものに変わり、自ら口の中にヴァイル自身を含んで舐めはじめる。
とても美味しそうに、まるで菓子を頬張る子供のように。
だが決して娼婦たちのように手慣れた仕草ではなく、たどたどしいものだった。
■ヴァイル > ツァリエルの指が自分のものに絡み、その唇と舌が慰めても、
息を荒げることもしなかったが、彼に向けられる眼差しは少しばかり柔らかいものへと変わった。
「おれの永く生きるうちに、
きさまの肉が腐り、骨が粉となって風に運ばれてもか。
気長な話だな」
ツァリエルの言葉を丹念に拒む声は静かだった。
咥内で血の通った陰茎がぐんと膨れて、頬の裏を突く。
そっと労るように、石英のようなヴァイルの手がツァリエルの額や髪を撫でた。
それ以上に自分から何かを求めることもなしに、ただツァリエルの熱を楽しむ。
■ツァリエル > 大きく膨らんだヴァイルのそれを感嘆した様子でやわやわと扱く。
はぁと鼻先を近づけて相手の匂いを吸い込み、どこか魅了されたように目を潤ませた。
「できれば……その、早くがいいですけど……
でも、僕は……あなたが僕のことを少しでも覚えていてくれるだけでも嬉しいから……」
頭を撫でるヴァイルの手に心地よさそうに自らこすり付け
再び、ヴァイルのものを口に含み喉の奥までためらうことなく飲み込んだ。
ん、ん、と押し殺した吐息が漏れながら稚拙に舌を肉棒に絡め吸い上げる。
やがて十分に唾液がまぶされたと判断するとそっと名残惜しそうに口から性器を離した。
ベッドの上で起き上がると、ヴァイルの上にまたがる。
すでにできあがていたツァリエルの体は胸からたらたらと甘い香りのする乳を垂れ流し、陰茎もすっかり上を向いていた。
「……お、お情けをください、ヴァイルさん……。
ツァリエルの、はしたない穴に……どうかお許しを……」
荒い息を吐きながら自ら尻たぶを両手で割開き、すっかり女の物と相違なくなった穴へと自ら指を突き入れてかき回す。
勃起したヴァイルの性器を自らの穴へと導いてゆらゆらと腰を揺らした。
■ヴァイル > 「健気だな」
まるで他人事のような言葉。
常ならば嘲弄に忙しい舌は今日ばかりは必要以上には回らない。
身を起こし、向かい合う形でツァリエルの背に腕を回すと胸先から垂れる甘い蜜に
顔を寄せて舌を這わせ、味と香りを楽しむ。
「力を抜いて……腰を降ろせ」
耳元に口を寄せて囁き――乳に濡らした唇で、耳朶を甘く食む。
屹立し、先走りを垂らす男性器の先端が、ツァリエルの揺れる尻の肉に
待ちきれないとでも言うようにつんつんと触れる。
■ツァリエル > 言われた通りに素直に体をヴァイルに預け力を抜く。
胸に零した蜜を彼の口で吸われると甘ったるく鼻にかかるような喘ぎが漏れた。
女の乳と変わらぬ味と香りがするだろう。
息を吸って、大きく吐きながらゆっくりと腰をおろし自らの中に猛ったヴァイルを飲み込んだ。
「んぅうっ……!」
ぐんと内側から裂かれるような痛みと、それを覆い隠してしまうほどの快感がツァリエルを襲う。
すでに何度も他の男にいいように弄ばれたところだが、ヴァイルのものが入ればこれまで感じたことがないほどの充足感に満たされた。
ずるずると一気に根元まで腰を下ろしぴったりと尻と相手の腰を密着させる。
腹の中に固く熱いどくどくと脈打つものを感じてぶるりと背筋を震わせた。
「ああっ……入ったぁ……うれしぃ……」
上向いて蕩けたようにそう呟く。充足感からすっかり女のように感じすでにオーガズムを得た様に震えた。
■ヴァイル > 「ツァーリの恥ずかしい姿が、よく見えるぞ」
目を細めて結合した場所を眺め、ようやく小さく笑う。
細い腕同士を絡ませると、腰の動きだけでツァリエルの中にぐいぐいと突き上げる。
「おれは。マグメールを訪れてから、ずっと《至宝》を探していた……」
ぽつぽつと自らについて語り出す。
「それを我が手に取り戻さないことには、ずっとおれは
墓の下の土のようにしか過ごせないんだ……。
しかし、それは、同時に、決して手にできないことも、わかっていた……」
腸壁に自らのものを舐められて、かすかに息が荒げはじめる。
それをこらえようとするかのように、あるいはよりツァリエルの熱を得ようとするように、彼の薄い身体をかき抱いてより強く密着させる。
滑る舌が耳の内側に這わされ、吐息とともに熱い湿りで濡らしていく。
同時にツァリエルの腹の中を、ヴァイルのもうひとつの舌が、天井を探すように蠢く。
■ツァリエル > ヴァイルのまなざしにいくらか恥じ入るように頬を赤らめ、体をよじった。
彼の腕の中に自らの体をおさめ、しなやかな背中に腕を回す。突き上げられるたびに女のように啼いて随喜の涙を流す。
「んっ、ふぅ、≪至宝≫……、
それを……ぼくも、探すのにっ……あっ、あん!
お手伝い……できたらいいのにっ……!んひ、っは」
きゅうきゅうと喰いしめる様にヴァイルの物を内側で締め上げ
薄く瞼を閉じながらヴァイルの舌を受け入れ震える。
大きく内臓を下から押し上げられても、苦しみよりも快感が上回る。
すでに十分に男を知った排泄孔は悩ましくうねり、とろとろと腸液を溢れかえらせる。
ああ、ヴァイル……とツァリエルの甘く囁くような声が感じていることを相手に伝えた。
■ヴァイル > 小さく首を振る。
ヴァイルが《至宝》と呼ぶものは、ツァリエルの想像するものとは
おそらく趣を異とするものだったからだ。
「多くの命と尊厳を捧げなければならない呪われた宝だ。
ツァーリ、きさまに近づいたのは……きさまが鍵となる可能性に期待したからだった」
ぴたりと身が重なると互いの胸と腹がこすれあい、垂れる乳がヴァイルを濡らす。
腹の間ではツァリエルのはちきれそうなものが挟まれる。
ざらついた肉の滑りに絞め上げられて、ヴァイルの炎にはますます強い薪がくべられ、
ツァリエルの媚肉をすべて燃やしつくさんとばかりに猛った。
水音の立つペースは速くなる。
縋るように首筋に顔を埋め、歯を立てる。
「……っ、出す、ぞ……ツァーリ!」
その宣言の少し後、彼の道具が律動すると灼熱を吐き出し、
奥へ奥へと染み込ませていく……
■ツァリエル > 激しい交わりにやがて受け入れるツァリエルが根負けし、ヴァイルに体を預けてその動きに身を任せる。
がくがくと頭が揺れて涙と共に白金の巻き毛が宙に乱れる。
呪われた至宝がいかなるものか、物を知らないツァリエルには全く分からないが
ただそれを手にできないことがヴァイル自身わかっているのなら
至宝とやらは本当に呪われた誰もが手にすべきではないものなのかもしれない。
あるいはヴァイル自身、それを欲していながら実は手にしたことによって
彼自身の滅びや変化を受け入れなければならないことを薄らわかっているから
それを手にしてはならないと思っているのかもしれない。
いずれにせよ、その真実は目の前の冷淡な魔族の胸の中にしかないことだ。
そして、自分の価値が鍵となる可能性しかないことに気づかされると
もしその可能性が失われた時、ヴァイルは自分から離れて行ってしまうのではという一抹の不安も沸いてきた。
だがやがて全身をお互いの体に摺合せ、交合し、摩擦と刺激にツァリエルの嗜好も鈍り
ただ快楽を得るためだけの動きになる。
「ああっ!ヴァイルっ……!出してぇっ……おなか、いっぱいにぃ……!
んぁ、あっ、あっあぁっ!!」
やがて訪れる絶頂にきつくヴァイルの背に爪を立てて華奢な体を抱きしめる。
ぐっと腹の中で膨れた陰茎がどっと内側で爆ぜ、内臓の隅々にまでいきわたらせるように精を吐き出した。
ぐっと身体を反り返らせぶるぶると絶頂の快感に打ち震える。
みれば二人の体の間でツァリエル自身も精をもらし、ぴゅうぴゅうと乳を噴いていた。
白濁が互いの体をしとどに濡らし汚す。
■ヴァイル > ツァリエルの身体を抱きしめたまま力を失い、
ぐったりと布団の上に倒れこむ。
身体を汚す精と乳の交じり合ったものを指ですくい取ると口に含んでみせた。
そのまま少し経てば、ツァリエルの全身の内側を何かが駆け巡る。
それに少し遅れて――ツァリエルに巣食っていた魔物はすべて死滅する。
ヴァイルの分身たる精が腸から遡るようにして入り込み、ひとつひとつを灼いて回ったのだ。
「すっかりと淫らな男になったな」
子供を甘やかすような声。
寝そべり、未だ挿入したままに両脚を絡め、慈しむように
ツァリエルの唇に唇を合わせ、舌で舐める。
「……この時間が永遠であればよかった」
傍にいるツァリエルに囁く。
その言葉は少年の抱くような素朴な甘い願いにも聞こえ、
しかし逆にそんな甘ったるい永遠などはないと言っているようでもあった。
■ツァリエル > ひくんと倒れ込んだツァリエルの体が震える。
巣食った魔物を退治されるたびにかすかな反動に喘ぎやがてすっかり魔物が形も残さないと
じわじわと邪な快楽に浸されていた感覚が正常なものへと戻ってゆく。
だがすっかりと開発されてしまった体は魔物を焼いたところでもう戻りはしなかった。
ヴァイルに自分の淫蕩さを指摘されれば汗と涙に濡れた目元を朱色に染める。
だが嫌だという感覚はない。恋人がするようにお互いの体を抱きしめあい
ヴァイルの口づけを自ら受け入れ舌を深く絡めた。
発情を促す唾液の味と共に自身の母乳と精液の苦い味がした。
「……いってしまうのですか……」
ひどく残念そうな、悲しそうな顔をしてヴァイルに問いかける。
言葉に反して態度はいかないでほしいというようにきつくヴァイルの体に絡み付いている。
「……もし、僕が夜に潜む魔物の一匹であったなら、
……永遠を過ごしたり、あるいは連れて行ってくれた……?」
子供ながら真剣なまなざしをヴァイルに注ぐ。
■ヴァイル > 「……あるいはそうかもしれないな。
きさまは人の間でもがいて生きるほうが美しい」
ツァリエルの汗ばんだ額に張り付いた髪を指で払う。
魔物を退治されて正気を取り戻してなお、自分を慕う様子の彼に、
ようやく本領を思い出した――といった調子で、薄く笑む。
人の悪い感情を煽り立てる意図のある、剣呑な瞳の輝き。
「……だが。
きさまの欲望が本物であるというのなら。
なってみるか? ――魔物に」
《夜歩く者》――吸血鬼と呼ばれる類の魔族は、吸血を行うことで
それと認めた人間を同族に作り変えてしまう。
よく知られた事実である。
ツァリエルの眼差しを受け止め――微笑む唇の奥に、とがる牙が覗いた。
■ツァリエル > ヴァイルの剣呑な笑みに一度長い睫がぱちりと瞬きをして
まじまじとその端正な顔を見つめた。
吸血鬼の鋭いその牙をちらりと見せるその様子に少しだけ考えて
「ううん……。やめておく……。
あなたが美しいって言ってくれた僕は人間で
もし魔物になってしまったら僕、あなたのように美しくなれるかどうか
自信がないから……」
無垢な子供のような仕草で可愛らしくふるふると首を横に振る。
ヴァイルの肩に自身の頭をもたれさせながらそっと相手の胸に手を当てた。
「……ひと時しか共にいられなくても、僕のこと、忘れないで……ヴァイル」
祈るような言葉を口にして瞳を閉じた。
■ヴァイル > 「は、フられたか。残念だ」
眼を無害に細め、冗談めかしてそう返す。
ツァリエルが瞼を閉じたのを見て、
ゆっくりと彼から自分自身を引き抜く。
この命定められた人間の辿るであろう苦難を想像し、
自分が略奪と破壊しか行なえず何も与えることのできないことを思い出した。
「…………」
結合は解かれたものの、暫くの間、
ツァリエルから離れることはできないでいた。
離れがたかったのは――この魔族とて、同じであった。
質素な謹慎部屋の天井を仰ぐ。
「グリム」
笑うことも忘れ、飢え渇いた瞳で呼ぶそれは
彼のかつての支配者であり、父であり、信仰であり――
求めてやまない、失われた《至宝》の名だった。
ご案内:「とある教会の謹慎部屋」からヴァイルさんが去りました。
ご案内:「とある教会の謹慎部屋」からツァリエルさんが去りました。