2015/12/06 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/教会」にヴァイルさんが現れました。
ヴァイル > 黄昏時。
神聖都市ヤルダバオートの片隅にある教会、その礼拝堂。
神聖なはずであるその場所では、淀んだ空気の中、一般信者や尼僧、神官が
だらしなく服をはだけ、胡乱な表情で互いの肉体を求め合っている。
今や、売春窟もかくやといった退廃とした空間と化していた。

白皙の魔族ヴァイル・グロットは、礼拝室の中央の祭壇に腰掛けて、
ぐったりとした尼僧の身体を抱え、首筋に噛み付いて無表情に血を啜っていた。

この異様な空間は、ヴァイルの持つ邪視によって
教会に集っていた人々が心を狂わされた結果できたものであった。

ヴァイル > 尼僧の首の傷口から溢れ、肌を汚す朱も余さず舌を出して舐めとる。
舐める度に尼僧はびくりと身体を震わせた。

この暗黒の世において、修道院や教会施設というのは
売春の温床となっているのがある種当たり前とすらなっている。
それに比すればここはまだ良心的な施設とは言えたのだが、
現在はこの有様である。

「おれを易易と招き入れるようではな」

嘲弄しているようでもあり、失望しているようでもある独り言。
この尼僧はヴァイルの見る限り一番の上玉であったが、
見た目ほど清純な娘ではなかった。
誰も彼も、多かれ少なかれ世俗に汚れずには生きていけないのだ。

ヴァイル > じゅるる。
下品に音を一際立てて血を吸い上げると、
興味を失ったように尼僧の身体を手放す。
床に転がったそれには一瞥もくれず、礼拝堂を我が物顔で闊歩する。
正気を失い、礼拝堂の絨毯の上で睦言に興じる聖職者を軽く足蹴にした。
それにも構わずに彼らはまぐわいあっている。
実に簡単に人間どもは尊厳を失ってしまう。

「大した味じゃあなかったが、腹は膨れたな」

平民地区で繰り広げた愚かな交戦。
あれを交戦と言ってしまっていいのかはわからないが。
ともあれあの一件で枯渇した魔力をどうにか取り戻すことはできた。
けれど少々物足りないものを感じるのも確かであった。

ヴァイル > 不意に、《夜歩く者》の聴覚が、
礼拝堂の扉の外に響く足音をとらえた。
金属の鳴る音。……鎧を着込んでいる。
にぃと牙を剥いて笑う。

「食ったばかりだというのに。やれやれ」

言葉とは裏腹に実に活き活きとした表情を浮かべる。
そうだ。闘争。それが足りない。
もっと奪ったり、奪われたりしたいのだ。

跳ねるように門扉へと近づき、蹴り破って表に――

ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/教会」からヴァイルさんが去りました。