2023/07/10 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にジーゴさんが現れました。
ジーゴ > 「んん…」

奴隷市場の片隅。
外に並べられた小さな檻のうちの一つで、横たわったままの少年が小さく声を漏らした。
地面に伸びた手足は力無く、軽く曲がったままの指先、爪には土が入りこみ、血も混じっている。どうやら暴れた後のようだ。
ピクリと狼の耳が動いて徐々に意識を取り戻していく。

「ぎぁ!」
意識を取り戻した瞬間、大きな叫び声をあげて暴れ始めるも、
拘束具をつけられた両足は思うように動かず、起き上がることも簡単ではない。
拘束具は檻に取り付けられており、鎖が檻に当たる音がまだ夜も始まったばかりの市場にひどく響いた。

『うるさくするなよ?』
その音を聞きつけてやってきたのは奴隷商だ。
近づいてきた奴隷商の足音を聞いただけで少年は震え始める。
手首のところで一括りにされた手では、耳を塞ぐことも体を守ることもできない。

「あ…あっ…」
恐怖からこぼれ落ちる声を両手で止めようとするのが限界だ。
悲鳴を必死に止めて、震える体をなんとか整えようと、深呼吸をくりかえす。
このまま、パニックになってしまったらきっともっと酷いことになる。

「はぁ…ッ…はッ…んん…あ…」
ここはどこなのか、なぜここにいるのか、はわからないけれど、
静かにしていないと酷い目に遭うことだけは幼い頃からの経験でわかる。

ジーゴ > 「はぁ…はぁ…」
過呼吸寸前の荒い呼吸をなんとか落ち着けると
少しずつ思考も落ち着いてくる。
四肢はちゃんと動くし、手を伸ばすと獣の耳もあった。
目も見えているし、耳も聞こえている。
だいじょうぶ、だいじょぶ。自分に言い聞かせる。

ここどこ…
どこかはきっとわかっている。奴隷市場だ。
でも、自分が知っている奴隷市場ではないようだし、
ミレーの鋭いはずの感覚でもここがどこかわからない。
知らない場所かもしれない。

なんでここにいるの…?
自分にはちゃんとご主人様がいて、なんだかんだ楽しく暮らしていたはずだったのに。どれだけ記憶を辿ろうとしても思い出せない。
何があったんだろうか。

奴隷商の気配が近くにないことを確かめてから
鎖を鳴らさないように細心の注意を払いながら、ゆっくりと上体をを起こす。
檻のサイズは小さいがギリギリ頭は打たないだろう。

「おか…いどく?」
周囲の様子を伺うも、同じ様な小さな檻に種族も年齢もさまざまな者たちが閉じ込められているだけだ。
読み上げた札は値引きを示すもの。
状況の悪さに小さくため息をついた。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」にコルボさんが現れました。
コルボ > 「ようやっと見つけたぞテメエ」

 最悪な状況の中、声が聞こえる。
 見れば、王都で知る顔が檻にもたれかかりながら苦虫を噛み潰したような顔で見下ろしてた。

「普段はあれだけガンガン噛み付く癖に下手売ってんじゃあねーよ。
 おめーは奴隷でも旦那持ちだろうがよ」

 王都で機嫌が悪ければ噛み付いてくるジーゴにちょっかいをかけてはのらりくらりとかわして嗤うチンピラ。
 たまに話し相手が欲しいから付き合えよと無理矢理襟首掴んできたチンピラ。

 それが奴隷都市に顔を出して、檻に背中を預けながら腕組みをしつつ

「夏だから飯もろくに食えなかったか? 俺にあんだけキャンキャン吼えてたてめーがよ。
 お前の旦那じゃここまで助けにこれねーだろ。もうちょっと考えろ馬鹿」

 見れば、奴隷商人同士が、その部下達がお互いに掴み合い抗争を繰り広げて、
 それが徐々にこちらにも広がってきていて。

 奴隷商人にもルールはある。
 買い手の決まった奴隷を再び捕まえるのはアウトではないがグレーでもある。

 それを、とびきりの黒に変えて、ジーゴを捕まえた商人の弱みとして、
 他の商人をけしかけて。

「腹減ってるか? 助けてやったんだから飯付き合えよ」

 などと、檻の中で疲弊したジーゴに、チンピラはいつものように気に入らない顔つきで笑って。

ジーゴ > ここがどこかわからなかったし、通り過ぎる人たちも見知らぬ顔ばか…り…?

「あ゛?」
さっきまでくにゃりと倒れていた狼の耳が大きくたった。
予想外の声がかけられて、思わず出たのは機嫌の悪そうな声だ。
全裸は免れているけれど、両手足が拘束された上に下着のみの酷い格好だ。
知り合いに見られたと思うだけで、腹がたつ。

「うっさい…」
自分でもなぜここにいるのかはわからないのに、バカだとか言われて腹が立った。
相手を見上げる瞳はいつもより力はないが、それでもなんとか睨みつける。

「…おまえ、何したの?」
さっきまでこちらに注意を払っていたはずの奴隷商が何やら揉めている。
治安の悪い奴隷市場でもそうそう起こらない取っ組み合いだ。
もっとも、ここがどこかはわからないから、治安は知らないけれど。

「メシ…つか、ちゃんとたすけてから言えよ」
空腹も忘れていたとはいえ、願ってもない話だが、
両手両足、まだ枷がつけられたままの状態。
それらを檻の外に向けて差し出した。
両手足の自由が効かなくて、しかもパンツ一丁でどうやって飯に行くんだとばかりに、
助けてもらうための低姿勢などはなく、相手の態度にただ、苛立っただけの少年。

「オレ、金ないから、たすけた代とか払わねぇからな」
この男が、ここで見捨てることはないとわかっているからか
恥ずかしさからか、感謝の言葉ばかりか、奴隷の口から出るにはあまりに横柄な言葉ばかりが続く。

コルボ > 睨みつけられて、腐れ縁の男はそれだけ確認して嗤う。
こいつはこういう奴だ。奴隷だからと媚びない。
学がない? 品性がない? 気遣いがない? だからどうしたと思わせてくれる。

主に飼われて”可愛がられて”も剥き出しの闘争心は消えない。
飼い慣らされることは決してない。
いつだって誰かに噛み付く意志を忘れない。

「さっきまでのしょぼくれた面はどーしたよ?
 よっぽど俺のことが嫌いなんだなー? あんだけ飯奢ってやったのになー?」

 その瞳に臆するどころか煽るように嗤って、質問されれば今気づいたかのように振り向いて。

「あ? 何したかってより、お前のこと好きにできるって舐めた顔してた奴等が
 あんな必死に掴み合ってるの笑ってみるほうが大事じゃねーか?」

 お互いがお互いの利益を奪い合うように商人とその手下達が血で血を洗う構想を繰り広げる様を眺めていれば、
 男が煽った側であろう商人の手下が鍵束を放り投げればそれを受け止めて。

「知ってるか? お前と違って俺みたいなイイ男は成功しない仕事はしねーし、
 そもそも仕事は成功するように持ってくんだよ。

 ……ダチ助けんのに助けるっつったら助けるに決まってんだろボケ。

 あとどーする? お前捕まえた奴刺したいなら手伝うけど、そんな元気ねーだろ?」

 檻の鍵を開けながら昼下がりの雑談のように言葉をやり取りして、
 扉を開ければ他の奴隷を煽って抗争にけしかけて。
 貴方と二人になれば、そちらを見ないままに乱雑に鍵束を放り投げ、それからズボンとシャツ、靴が入った包みを放り投げるだろう。
 伝わるかどうか分からずとも、この状況に陥った無念さと尊厳を傷つけられたことへ、訳知り顔で踏み込むこともなく、視線も向けず。

「お前から助けたお礼なんて考え方があるって聞けただけでも充分だよ。
 そもテメー俺に奢られてばっかで金出したことねーだろ。
 今更金がどうとか言ってんじゃねーよ。」

 言いながら、貴方に背を向けて檻にもたれかかったまま、
 男の手が得物にかかったまま、貴方に降りかかる火の粉があれば例外なく引き裂く意志が垣間見えて。

「ビシソワーズって知ってるか? 冷たいジャガイモのスープなんだけどよ。
 このクソ暑い中で檻に閉じ込められた後に食ったらきっと滅茶苦茶旨いぜ?

 今から食いにいかねーか?」

ジーゴ > 「うっさい!たしかにメシはうまかったけど…」
さっきまでの自分がどんな顔をしてたかなんてわからないけれど、
きっと知ってる人に見せたことがない様な顔をしていただろう。
気恥ずかしさで言葉は荒くなる。

「たしかにそ、だな」
口ではそういったものの、奴隷商は本当に怖い。
一瞥もせずに、また体が震えそうになるのをなんとか抑えた。

鍵が外され、檻の扉が開くと拘束された両足でようやく檻から出てきて、
地面に座り込んだまま、投げられた鍵の束と衣服の包みをなんとか受け取ると。
しばらくゴソゴトと、まずは足首の拘束を外し、手首の拘束を外すのには少し時間がかかったけれど、拘束が外れてしまってからは身軽に身なりを整えて
次にコルボがこちらを向いたときには、ほぼ普段通りの少年だ。

「はい、はい。イイ男。すごいすごい。タダでたすけるなんて、えらいえらい」
着替えている間、彼がこっちを向かなかったのは救いだった。
幼少期から、尊厳を守る様な扱いは受けたことの方が少ないし、
今だって、頭の先からつま先まで舐めるような視線を送られることだって多い。
そういうことをしない相手は信じられる。
だからこそ、口からこぼれ出るのは感謝ではなくて、軽口だ。

「な、メシいこ。おまえがうまいっていうやつはいっつもうまいから。びじそわーず、ってのはしらないけど。」
歩き出そうと促して、並べられる肩。身長が大きく違うのはいつも通り。
普段とは違って、手がまるですがるように伸ばされる。
相手が嫌がらなければ、まるで子供が求めるように手を繋ごうとする。
少し体温が高くて、土まみれの手。

「な、おまえどうやってオレが、ここにいるってわかったの?てか、ここどこ?」
バフートにいることさえ気がついていない少年は、相手を質問攻めにする。

コルボ > 「お前たまにそうやって急に素直になるよな」

 根っこは良い奴なのだと分かってしまう、本当に性根がひねくれていれば
 奢られた飯をまずいだなんだと言ってしまうというのに。

「……もっと胸張れ馬鹿野郎が」

 震えを抑えようとしていることを知ってか知らずか、男にしてはやや不機嫌な口ぶりで吐き捨てて。

「お前はヴェル姫の奴隷だ。もう売られる側じゃあねーんだよ。
 奴隷なら奴隷で、飼われてて幸せならそれを胸張って言いやがれ。
 よくもヴェル姫から引き離したなってブチギレてぶっ殺せ。

 お前はそうしていーんだよ。姫以外に舐められたらテメーは俺にだって噛み付いていーんだよ。馬鹿野郎が」

 錠前を外す間も、服を着る間も、決して手を貸さない。同情もしない。
 それは普段から遠慮なく言い合える間柄になっているからこそ、
 鍵も荷物も渡せば後はなんだってできると分かっているからこそ、

 友人を勝手に売り飛ばそうとした奴隷商人を殺すつもりの視線で睨みつけていて。

「おまっ、どこで覚えたそんな煽り方」

 忌憚も何もない、非難するような目線と共に、着替えてからようやく視線を向けて。
 そこに憐憫も同情もない、本人は隠しているつもりでも、
 友達がようやく軽口をたたく様にどこか安堵した表情を浮かべて。

「おーっ、ようやく俺が舌が肥えてること認めたな?
 いやマジで旨いよ? 何なら今ジーゴが食ったらどんな飯より旨い。
 マジで。」

 手を伸ばされればごく自然に手を掴んで。

「ヴェル姫以外に甘えていいのかー? えー? ジーゴくーん?」

 などとニヤニヤ笑いながら手を離さないとばかりに嗤っていて。

「あ? 知らねえのか? カラスは友達の犬がいるところはどこだって分かんだよ。
 常識だ常識。ヴェル姫が知らなかったら教えてやれ。褒めてくれるから。

 あ、ここ王都じゃなくてバフートな。魚がうめーの。
 ビシソワーズ食って物足りなかったら魚も食うか?」

 などと言いながら喧騒の中をゆったりとした足取りで手を繋いで歩きながら。
 この時だけは、何の暴力も非難もあざけりも何もない。

 血で血を洗う惨状の中で、貴方が歩む道に何の脅威も威圧も届くことなく。

「つか、帰ったらヴェル姫にいなくなってごめんなさいって言えよちゃんと」

 それだけ、貴方が通すべき筋だけは伝えて。
 

ジーゴ > 「はー、素直じゃねーし」
なんて、ぶつぶつ言っていたのが、「ヴェルひめ!!!」
思いがけない言葉に吹き出す。
やっとニカニカ笑って、獣の歯が剥き出しになる。

「ご主人様、ひめじゃねーし。おっさんだよ、アイツ?」
いい年をした隻腕の飼い主のことを姫と言われるとどうしたって面白い。
それでも、彼にとって大切な大切なご主人様だ。
一瞬、もう二度と会えないかと不安に思ってしまったご主人様にまた会えると思うと、
それだけで内心ウキウキになる。

自分が着替えている間に、カラスが奴隷商人に向けていた視線の鋭さには気がついていない。主人のない奴隷として生きてきた期間が長かった少年にはそもそも、目の前の青年が怒っている理由も、もし説明されたとしてもわからないだろう。

「甘えてねーし」
手を握って、甘えたことがバレると小さな声で誤魔化そうとした。
それでも、手はぎゅっと握りしめたまま。高めの体温と安堵が伝わっていくだろうか。

「はああ?おまえ!犬じゃねぇ、って何回言ったら覚えんの???オレ、オオカミ!!!」
今回一番の大声が、相手の言葉を遮る。
自慢の狼耳も最大限上に尖って怒りを露わにする。
生まれも奴隷のミレーだ。本当に狼かはわからないが、本人は犬と言われるとひどく怒る。

「え、バフートとかきたことなんだけど。あー、もう、おまえ、犬って言ったから、オレびしそわーずだけじゃなくて、魚もいっぱい食うからな!えっと…なんだけっけ、えっと…アクアパッツァな?」
かろうじて知っている魚料理の名前だ。食べたことはない。

彼が自然体で接することができる少ない相手。
サイズも違うその手を握りしめて、さっきまでの恐怖はどこへやら。
たくさんの冗談と、お腹いっぱいのご飯が彼らを待っているだろう。

「え?なんで?」
なんで謝らないといけないのか
せっかくコルボが伝えてくれた大切なことなのに、
少年には意図さえ伝わっておらず、思わず自分の頭よりも随分上にある相手の顔を見上げた。

コルボ > 「あー? ヴェル姫歌声綺麗じゃねーか。
 姫のおかげでどんだけ田舎から出てきた女が夢諦めたと思ってんだ。
 お前のご主人様はそんだけすげーんだよ。だから姫でいーんだよ。」

 笑っている貴方とは対照的に男は淡々と賞賛を並べて姫と呼ぶことを曲げることなく。
 それだけ”すげーご主人様”のところに帰れるのだとケラケラ笑って見せて。

 友達が自分の視線に気づかなければ、否、己も自身の殺意に自覚なく、
 いざこざの中心が離れていけば得物から手が離れて。

 それから、帰路につきつつぶっきらぼうに言われればそれ以上は追求せずにニヤニヤ笑う。
 それでも、繋ぐことを求めた友達の手は離さずに、泥まみれでも何一つ嫌な顔をせずに。

「あー? あんだけヴェル姫に甘えてんのに犬じゃねーとかはー?
 オオカミが飼い慣らされて犬になったの知らねーのか―?

 あ、いいなアクアパッツァ。いいな、ジーゴナイス。確かに今喰うのありだわ。
 いやそれは奢るわ。でも喰えるか今。腹きつくないか?」

 犬と呼んだことを否定もしなければ、奢ることになんの躊躇もなく、
 今日食べて楽しむ為に提案をすれば率直に感嘆の声さえあげて。

「ん? ん-、今ジーゴさ、ヴェル姫に遭えなくて、帰れないかと思ってきつくないか?
 逆も同じ。ヴェル姫も同じ。
 あれよ、謝るってクソみてえな奴には死んでもしちゃいけねえが、
 家族や仲間には自分から行った方がアリなこともあんだよ。

 騙されたと思ってやってみな。案外悪くねえなってなるからよ」

 いまいち理屈を言わなくても、というより、下手に理屈を語っても伝わらず、
 何が良いか、アリかだけ伝えて。
 見上げれば、屈託のない笑顔を向けてくるのだから、騙されたと思ってやってみるのもいいかと、思ってくれるだろうか。

ジーゴ > 「おっさんのひめ!」
ジーゴはケラケラと笑う。
確かに歌は上手いし、主人をすごいと言われると悪い気はしない。
というかとても嬉しい。
なんだかんだ、少年はご主人様のことが大好きである。

「は?このツヤツヤの毛、かっこいい目、大きな耳!狼に決まってんだろ!」
確かに髪に当たる部分は、狼の毛のように艶々で外側の毛は硬く、内側の毛は柔らかい。目も獣の特徴を大きく残した瞳で、耳は言うまでもなく獣のもの。
ただ、それが狼なのか犬なのかは誰にもわからない。
それでも、自分が虐げられる原因でもある、獣の特徴を彼自身は気に入っているから、かっこいい狼だと主張している。

「アクアパッツアとデザートな。あと、びしそわーず。食える食える」
初めて食べる冷製スープに不思議な顔はするけれど、体のタフさだけは確かだから、美味しくたくさん食べることだろう。

「ごしゅじんさま、会えなかったらヤだ、帰れなかったらヤだ」
ぎゅっと、握りしめた手。
視線が急に合わなくなったのは、涙が溢れそうになったからだ。
グスンと鼻を鳴らして。

「わかった…」ここまでは小さな声だったけれど、続く言葉は大きい。
「だから、まずメシな!」
手をぎゅっと握りしめたまま、はやく、はやくとばかりに少年の歩くスピードは早まる。
早くご飯を食べたいし、早くご主人様に抱きつきたい。

コルボ > 嬉しそうになんだかんだ笑う、主のことが好きなのだと貴方を見ながら苦笑して。

「さっきまで尻尾あったら丸めてそうなやつがよー。
 いいぜー? オオカミってんなら狩りできんだろー?
 今度冒険者ギルドの仕事付き合えよ。先輩の俺が後見人ついたら、
 奴隷だろうがなんだろうがギルドの報酬満額もらえっからな。

 その代わりちゃんと仕事しろよオオカミさんよー」

 主張するなら牙と爪で語れと言わんばかりに煽って。
 友人が最近冒険者として一歩踏み出しているからこそ、男は先達としてその道を示して。

「デザートかー。ジーゴアイス食ったことあるっけか? んでもゼリーのほうが今は旨いかもなー」

 食えるなら問題ないと言わんばかりにデザートもむしろ何を食べるかという有様で。

「素直ー、正直ー、いいやつぅー。
 だったらちゃんとただいまって全部伝える為に言っちまいな」

 視線を合わせなくなったジーゴにからかい半分空いた手をわざわざ伸ばして撫でながら。

「ちゃんと食える分だけ注文しろよー」

 などと、食える分は全部出すと言わんばかりに嗤いながら、
 血で血を洗う闘争をしり目に犬と烏は帰路について。

ジーゴ > 「うっさい!」
頭を撫でられると恥ずかしくなって、
そのまま、相手の背中に頭突きをした。肩までは届かない。

「アイス!」
何回も頭突きをしながら、市場を抜けていく。
さっきまでの恐怖はまるでなかったかのように、
助け出された犬と友人のカラスの楽しい食卓になるだろう。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からコルボさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からジーゴさんが去りました。