2023/04/09 のログ
ティスル > 自然と、きゅっと身体が緊張に強張る。
首を傾げたままの角度で、目の前の男性を見上げていたが──

「────……ぁ。 はい。 あの…この制服、ご覧になってわかるとおり…学生、ですので。」

こっくり、と首が肯定の縦に揺れた。
暇さえあれば本を読んでいる、いわゆる本の虫たる少女は、学院の図書館といえば天国のような場所。
一度、読み始めるとついつい耽ってしまい、周囲のことに疎かになる。
学院の職員の誰かだったのだろうか──そのことを思い出せないほどに、没頭していた自分を思い出し、少し恥ずかしそうに視線を逸らして、もごもごと。

「…あの。 …家の、というかお店の商品の…届けを…頼まれて。
 お使いのような、ものです。

 ────…え?」

この街に足を踏み入れた理由に、後ろ暗いところはない。ゆえに、特に淀みもなく応えるも──
言われるままに、周囲を見回そうとして、少しぎこちなくなる。
注意されて、ようやく気付く、身にまとわりつく視線。
ねばっこいようなその感覚に、一瞬身体を小さく震わせてから、ぎこちなく小さく頷いた。

「………わかり、ました。」

向かうのは、王都までの街道を結ぶ乗合馬車の、乗り場──男性の歩幅に合わせ、少し、脚が早まるのは致し方ないところ。

ヴァン > 「あぁ、やっぱり。それで見覚えがあったんだな。
俺は神殿図書館の職員でね。時々学院図書館に行くんだ。受付カウンターの前にコーナーがあるだろう?」

眼鏡が印象的で記憶に残っていたのかな、と呟いた。
おしゃれに気を使う者ならばあまり使わなさそうな品。
小柄なのに女性らしさを主張する体つきとのアンバランスさから、眼鏡は己の魅力を隠すためなのかもと思っていたことは黙っておく。
学院図書館に出入りできなければ知らないような話をしつつ、笑いかける。

「あぁ、お使いかぁ。一人で君をここに向かわせるってことは、信用されてるんだね。
王都の貧民地区よりもここは治安が悪いというか……無法地帯だから、ここは」

自衛できるだけの力や賢さはあると見込まれているのだろう。
少女が周囲に気を配った後、微かに震えたことで眉を顰めた。
少女を送り出した人間は――親か何かだろうが、本当に実力を見込んで送りだしたのだろうか?
向かう方向から、乗合馬車の停留所だとわかったようだ。

「俺も仕事が終わって、これから王都に戻るところなんだ。一緒に戻ろうか」

やや大きな声で言ってから、立ち止まると周囲を睥睨した。顔と視線を複数箇所に向ける。
後ろ髪をひかれるような表情をさせつつ、視線の先の者達の気配が消えていく。

ティスル > 「……職員の方の、顔も…碌に覚えずに、本に夢中になっていたので……ちょっと、恥ずかしい、です」

白い頬が、僅かに紅を浮かべる。
野暮ったい黒縁の眼鏡は、視線を伏せれば、何処を見ているのかややわかりにくい。
ついつい人と毛色の違う瞳──視線を合わせるのが苦手な、他人との透明な壁ではあるのだが。

「信用…といいますか。 ──…うーん。お得意様、だったから、かも…です。
…治安、よくないのは…わかっていたつもりなんですけれど…。
今日は、ちょっと…怖かった、です」

訥々とした言葉を紡ぎつつ、ぎこちなく、誤魔化すように笑った。
店の主人である育て親が、自身の身をも商売道具のように扱っているのは薄々察している。
それなら、怪我をしないように最低限気遣ってほしいところだが──それを面と向かっていえるような性格ならば、学院内での立場ももうちょっと過ごしやすいものだっただろう。
何だか探るように見られている気がして、困ったような緩い笑みで、やっぱり誤魔化してしまうのだ。

「──ぁ。 …いいん、ですか? そう、していただけると、うれし、です」

ふぁ、と今度は表情を誤魔化すのではなく、思わずといった笑みがこぼれた。

「乗合場所とはいえ……一人だと、少し、不安でした、から。
 ……よろしく、お願いします」

周囲から気配が消えていくこと、肌にまとわりつくような視線が解けて行ったことに、胸を撫でおろす。
無意識に、そぅ、と彼の袖を指でつまむ。

ヴァン > 「俺は出入りの業者だから覚える必要はないけど、司書さんは困った時に助けてくれるからね。
仲良くなっておくといいと思うよ」

恥ずかしそうにする姿は笑って流す。直視しない方が少女も話しやすかろうと、隣を歩きながら思う。

「何かあったらそこに逃げ込めれば大丈夫だから、か。
君が立ち止まった後に俺が呼び止めた格好になったから周囲の気をひいてしまったのかもしれない」

せかせかと歩いていれば、周囲の奴隷商人たちも少女に目をとめることはなかっただろう。
すまないな、と呟いた。袖を摘ままれると、手を動かして摘まんできた方の手を握ろうとする。
追いかける者がいなくなったことを確認すると歩みは少し遅く、少女に歩調を合わせるように変わった。

数分の後、停留所までたどりついた。出発時刻までまだ間があるからか、他に乗客の姿は見えない。
乗合馬車は客室の上に御者が座るタイプで、8人は乗れるだろうか。風雨を凌ぐ屋根や壁がある。
男は少女に客室に先に乗るように手で促してから、御者へと話をしに行った。料金を払いにいったのだろう。

やがて男は客室に戻ると、少女の隣に座った。鞭を打つ音の後、馬車がゆっくりと動き出す。
出発時間にはまだ早いように思えるが――。

「さて。これでひとまずは安心だな」

にこり、隣で笑いかける。どこか含むものがありそうな――目だ。先程までと違い、目が笑っていない。

ティスル > 「……そぅ、ですね。 少し、気を付けておくことに、します。
貸し出しの時の担当の方のお顔は、覚えているんですけれど…」

それも、ややおぼろげだったけれど。
余り、人の顔を真正面から見ないようにしてしまう癖は、自分でわかっていても抜けないモノだ。

「いえ、あの通りは、いつも歩くのがちょっと苦手で…──ちょっと、迂闊に歩いてしまったので。
集めた注目を、散らしてくださって、ありがと、ございます」

ちょこ、と小さく頭を下げる。
勝手に袖を摘まんでしまったが、手を取られれば、少しばかり焦ったように手を引きかけて、まごまごとしてしまう。
聊かコミュニケーション能力の低さを微妙に露呈しつつ。
緩めてもらった歩調に、ついていこうと歩を進める。

停留所までたどり着けば、ホッと胸を撫でおろす。
あとは、馬車に揺られて王都に戻るだけなのだから、何も心配することはない。そんな気持ち。
仕草で先に乗ることを促されれば、少し迷って、馬車へと乗り込んだ。
自身の運賃は、降りるときに御者に渡せばいいだろう。そういうときもあるし。
そんなことを考えながら、席へと腰を落ち付けた。
隣に、座る男性の気配にも、特に気にしたり嫌がる様子なく。

「………あれ?」

ほどなく動き出す馬車の振動。普段なら、もう少しお客もいると思うのだが──それに、出発が少し早い?
淡い疑問に首を傾げつつ。

「──……はぃ。 もう誰も、追いかけてきていませんし。 でも…出発時間までは、まだ…あるはず、じゃ」

ヴァン > 朧気でも覚えている分、上出来だろう。
世の中には店員など接客をする人達を装置としか見ていない者もいる。

「そう頻繁に行くのでなければ、次行く時は皆君のことを覚えてないだろう」

手を引かれかけたので逡巡するが、しっかりと繋ぐ。背丈の割には大きな手。
停留所で安心した少女の姿を見ると思わず微笑んだ。

「あぁ、君の料金は――同じ王都だからね。一緒に払っておいたよ。俺にくれればいい。
さて。俺は奴隷商人やもっと酷い連中から君を守った。この点に異議はあるかな?
なければ、その見返りをもらいたい。あぁ……手と口を使って君に触るだけさ。それ以上はしない」

ゆっくりとした口調で伝える。その間にも馬車は停留所から離れていく。
視線を逸らそうとするならば、男は逃さないとばかりにあわせようとしてくる。

がたごとと街道の路面の悪さを座席に伝えながら、馬車は走る。
馬車は徒歩よりも少し早い程度の速度で、やろうと思えば簡単に飛び降りられる。運が悪くても膝を擦りむく程度だ。
男から逃げ、先程の停留所で次の便まで待つこともできるだろう――それまで奴隷商人が彼女を見つけなければ。
あるいは声をあげて、御者に異常を知らせるのもいい――他に乗客がいない中出発させた。男が何か握らせたのかも。
唇の端の笑みは嗜虐的なもの。これまで少女は何度か、同じようなものを見てきたことがあるかもしれない。

「君も知っていると思うが、乗合馬車は定員になったら定刻を待たずに出発する。で、定員に『なった』から出発した。変かい?
さっきの話、異論がなければ、俺の膝の上――そう、このへんに載ってもらおうかな。
もちろん、嫌なら断ってくれて構わない。次に同じことがあっても俺は君を助けないってだけだ。
とはいえ急に言われても困るよな。しばらく考えて、それから決めるといい」

少なくとも8人分の座席代を払ったことを話す。御者は男側にいると考えていいだろう。
男は隣に座り直して、にっと笑っている。ご丁寧にも、降り口からは奥の方に座る。

ティスル > 「あ。 はい……そぅいうこと、ですね。 わかりました」

乗合馬車の中。揺れを感じながら、ポケットの中に入れていた小さな財布を取り出して、貨幣の枚数を数えて手渡そうとする。──のだが、続いて告げられる言葉に、動揺を浮かべ、一枚二枚、硬貨が落ちてしまった。

「──……ぇ、あ…それは、その……異論は、ない、です…。

 けど…── ぇ…さわ、る?」

確かに護ってもらった。助けられたのは、確かなこと。それに異論を差しはさむ余地はなく。
けれど、それへの見返りとして求められる行為に、一瞬身体が強張った。
視線を重ねられて、呑まれてしまいそうな気後れを味わうことになる。

ゴトゴトと、響く揺れる音がひどく耳についた気がした。
二人だけの車中。ようやく遅ればせながら、男性の意図をおぼろげに察することになる。
馬車から飛び降りるのは可能かもしれないが、あの街から続く街道は治安は決して良くないし、夜中ずっと徒歩で王都に無事到着できるかと己に問えば、無理が8割──と、冷静にはじき出す。
御者も、一枚かんでいるというか、便宜を図られている側だろう。
向けられる笑みの色合いは、微妙に身体を竦ませる性質のもので、きゅう、と小さな拳を握りしめた。

当然、二つ返事で了承できる事柄ではなく。
余裕たっぷりに猶予を与えられても、ぐるぐると思索を巡らせるのが精いっぱいで。
口唇を一度、きゅ、と噛み締め。
散々逡巡した様子を浮かべつつも、言いにくそうに──

「………さ、触る、だけ……ですね?」

眼鏡越しの上目遣いに、見上げて恐る恐ると確認する。
いじめられっ子の少女にとっては、それで不興を買わずにいられるなら──という気持ちも芽生え。

「触るだけ、なら──」

いい、と口唇を震わせて、頬を赤く染め上げながら、おずおずと席を一度立ち、迷いがちに男の腿あたりに一度触れて、ぎこちなく、横座りになろうとした。

ヴァン > 取り落とした硬貨を拾い、少女に握らせる。
悩んでいる姿を男はどこか楽しそうに眺めていた。

「あの場所で、君が立ち止まって。周囲がそれに気付いて毒牙にかけようとしたら……どうなってたかな?」

わざと音節を区切ることでより悪い状況を想像させ、それよりはましと思わせる。悪党の手口。
もっとも、この手法は想像力を働かせることができる、ある程度賢い相手にしか使えない。
学院の制服と本が好きそう、そして短時間だが話した感触で試みてみたが、はたして正解だったようだ。

「あぁ。家のお使いってことは君は商人志望なのかな?なら、覚えておくといい。
悪党ってのは元来正直なんだ。契約書だのなんだの、表に出て争えないからね。
君が望まない限り、口と手以外で君に触れない――あぁ、座ってる所が触れるのは勘弁してくれよ?」

真面目な顔で告げると、最後に冗談めかして笑う。少女が座るのを邪魔せず、馬車が揺れても転ばないよう手で支える。
頭一つ分の身長差、腰の上に座られるとちょうど横顔が男の目の前に来る。
編まれた髪を手にとり、まじまじとみると感嘆の声をあげた。

「丁寧に手入れしているね。綺麗な髪だ。肌も俺みたいなオジサンとは違ってすべすべだ。
……ただ弄られるだけってのも退屈だろう。何か聞きたいことがあったら答えるぜ?あるいは話したいこととか」

うなじや耳朶に掠るように唇で触れる。細く長い指が肩から腕、腰から太腿を堪能するように撫で、少女の反応を確かめた。
肌の色はそれをコンプレックスに思う人もいる。美しいと思っても口には出さない。
少女がこういったことに慣れているかどうかまではわからず、顔色を窺いながら指を這わせる。
手を顔に伸ばすと、頬を指先で擽るように撫でる。

ティスル > 想像を促されて、一瞬で、首を強く横に振りその想像を頭の中から追い払う。
あまり清廉潔白な生い立ちとは言えなくとも、それでも、遭遇したくない状況の欠片が刺さる。
自身を守る術に乏しい少女にとっては、より、まだましな状況を選ぶのが精々でしかない。

「──……商いはしていますけど、商人に…とはあまり考えてない、です。
…そんな、聖印を下げられてる、のに… ──悪党、なんて… 」

ややぼやくような口調になってしまうのは致し方なく。
それでも、不承不承と小柄な躰は、居心地悪げに男の膝に腰を下ろすことになった。
横顔は羞恥を隠すような仏頂面。
その姿勢からでは、髪の隙間から、先端の尖った耳朶が垣間見えるか。

「────………あ、りがと…ございま、す。
……。…っ、……別に、退屈、とかは…ない、ですけど……」

聞きたいこと──そう問われて、しばし視線が中空を彷徨った。
名前を聞こうかと思ったが、こんな状況になっている以上、もう知らない相手に…と割り切るほうがマシだろうか。
学院関係者だとはわかっているが、ちいさな意地を張りたい気持ちにもなってしまう。

「……っ」

思わず、息をつめた。
うなじや耳朶。敏感な肌が、触れられるたびに白が淡い紅を孕む。
声を出すまいとするのは、やはり少しは御者という第三者を気にしてか。
身体の稜線をなぞるような手のひらの動きに、ぞわりと肌が泡立つ。
性的ないじめを受けることも珍しくはないせいか、隠そうとしていても反応は如実。

「…や、ぅ」

頬に触れられ、指が這うたびに身体が小さく波打ち、思わず自身の手で口元を抑えた。

ヴァン > 「あぁ、そうなのか?実家を継がずに……女の子だと嫁ぐってのもあるか。あとは、もっとなりたい仕事があるとか。
聖印を持っていてもろくでもないのはいるさ。むしろ、権力を振りかざす手合いが多い」

仏頂面さえも男には魅力的にみえるのか、終始口許に笑みをたたえている。
仕事に関して実家を継ぐことを考えていなさそうなのは、何か夢でもあるのだろうかと考える。
質問を待つように軽く首を傾げてみせたが、その意図がなさそうなので愛撫へと戻った。

しばらくの間、男は本当に指先と唇で身体を触るだけだった。
ほとんどが服越しで、敏感な場所はあえて避けているようでもある。
窓の外を見て景色に覚えがあれば、バフートを出てからもう行程の半分は過ぎているとわかっただろう。
悩んでいた時間を差し引いて考えても、時間をかけている。

「どうした……? ここには俺と君しかいない。御者は車輪の音と周囲に賊がいないかの確認で、客室の音はわからないんだ。
だから、何かある時は座っているとこ、あのあたりかな。どんどんって拳で叩きながら叫ばないと気付かれないよ」

耳元でゆっくりと囁く。唇を触れさせ、時折ちろりと舐める。舌先の動きから、尖っているとわかっているようだ。
ふ、と息をふきかけた後に、音を立てながら耳元にキスをする。
すっと掌が片方の乳房を包む。先端を探るように親指が動きながら、他の指は横乳の付近を擽るように撫ぜる。
服の上からだが手の動きは弱く、壊れ物を扱うかのように繊細だ。

「意外と、こういうことに経験があるのかな?反応がいいね。……楽しみだ」

ティスル > 「……ど、ちらか…というと。 ──やりたい仕事がある…というほう、です…けど。
……確かに。 こ、こんなこと… 要求、される…くらいですし」

ささやかすぎる皮肉を口にして、時折息を呑み、口唇を噛み締めて、身体に及ぶ感覚に耐える。
服越しであっても、異性に触れられる感覚はどうしても肌を敏感にする。
感じまい、醜態を晒すまいと意地を張りながら、吐息がじんわりと熱を孕むのを自覚する。
馬車の揺れ、さほど乗り慣れていない乗合馬車の中──様々な非日常に、羞恥がいつも以上に高まるようで。

「……で、でもっ、だからと言って、安心、できないですし…っ
…貴方、にだって…聞かれたく、ないです、もの…」

ささやかに頬を膨らませて、ふい、と視線をさらに逸らそうとする。そうすれば、さらに首は捻じれて、後頭部を向けることになるだろうけれど。
耳朶に触れる口唇の感覚に、ぞわ、と背筋に甘い悪寒が走るようで、びくびくと小さく何度も身体が跳ねてしまった。

「──……っ、ひ、ぁ…ッ」

懸命に殺した小さな喘ぎ。
微かに熱を帯び、そのことを自覚して、頬が熱くなる。反応など見せたくないのに。
制服越しに、膨らみに触れる手の動き、さすがに意識して、耳の先まで真っ赤になった。
柔らかな膨らみはわずかに硬さを残しつつ、衣服越しでも十分な弾力を伝える。
敏感な先端を探るような親指の動きに、時折布地を擦られ、身体が大きくびくついた。

「…きゃ、……ぅ、… ッ、……ふ、ぁ…。

ち、ちが……反応とか、して、なぃ… ── ぁ、ん」

触れ方のせいか、つい、神経を尖らせてしまい、刺激をさらに拾い上げてしまう。
小さな身体が戦慄き、呼吸を少しずつ乱し始めるだろうか。

ご案内:「奴隷市場都市バフート」からティスルさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からヴァンさんが去りました。