2023/04/08 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にティスルさんが現れました。
■ティスル > 依頼された品物を、この街のとある娼館へと届けるお使いを終えたのはつい先ほどのこと。
娼婦の見張り用のアイテムか、それとも様々な商売用のアイテムか。
中身は興味がなかったので尋ねなかったが、受領のサインを受け取り、ようやくホッと一息ついた。
小柄な少女が、ふわふわと一つに編んだ髪を揺らしながら、賑わう街の通りを一人歩く。
あちこちから聞こえる悲鳴や嬌声、それに紛れる売り込みの声がひっきりなしに響いていた。
すぐに戻るつもりで、王都の学院の制服のままで来てしまったゆえに、やや人目を引くかもしれない。
人の流れは、知っている街並みよりもやや粗野に思えて、肩が何度も人波にぶつかり、そのたびに小さく頭を下げる。
「────……この街、やっぱり、ちょっと…苦手、かも」
小さく吐息をもらし、歩きづらい街角を宿に向けて足を速めるも──高らかな、奴隷の売買の声音に立ちすくんでしまった。
売られる少年少女が、自身とあまり変わらぬ年頃に見えたせいだろう。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にヴァンさんが現れました。
■ヴァン > 街周辺に出没する山賊を狩り、商人に奴隷として引き渡す。
ただ魔物を殺せばいい退治の仕事とは違い、無力化するのは技量が求められる。腕試しにはもってこいだ。
倒した中に懸賞首でもいたのか、男はそれなりの収益を得て上機嫌で街を歩んでいた。
悪意や害意には敏感になるが、一方で害意のないものの突然の動きは見落としがちになる。
「おっと……すまない」
目の前で突然立ち止まった少女にぶつかったことを謝りつつも、右手は懐に向かう。すられたのではないかという確認。
自分からぶつかったのでそれはないな、と思いつつもその仕草をしてしまう。
少女は学院の制服を着ている。この街にはあまり似つかわしくない。不思議そうに首を傾げた。
どこかで見覚えがあるのか、目を細めて顔を近づける。首からさげられた聖印が男の所属を伝えるだろうか。
■ティスル > 退廃的な賑わいに満ちた街角、その光景は少女にとっては少しばかり刺激が強い。
視線を背けようとして、また、どんと体に軽い衝撃が走った。
ぶつかったのだということはすぐに理解し、ウェイトの軽さから数歩よろけるよう蹈鞴を踏み、浅く振り返って、頭を下げた。
「………いえ、大丈夫、ですので。 お気になさらず…」
小さな囁き声にも近い応え。
思いがけず近づいてきた顔──視線に、一瞬びくっと身体を縮こまらせたのは、半ば習性のようなもの。
ぱちぱち、と何度か瞬きをして、目の前に揺れる聖印に一瞬、困ったように眉を下げた。
全部が全部、そういう認識ではないにせよ、この国と戦争状態である魔族はあまり好まれない──というよりも、神殿の一角はやはり過激な者も多い。少なくとも、少女の認識では。
それとも、ただ王都の店のお客の一人かも、知れない。
「………あ、あの。 ……何か…?」
──ついつい、探るような上目遣いにて、かく、と首を傾げた。
■ヴァン > 記憶の中にはいくつか心当たりがある。
「君、王都にある学院の図書館によく来てない?よく座っている席は、確か――」
記憶の中で似たような少女が定位置にしていた場所を伝える。別人かもしれないが。
視線や仕草で怖がらせてしまったか、と思って害意がない旨を示すために両手を肩のあたりまであげてみせ、笑いかける。
「学生さんが、なんでまたこんな所まで……?学院のバイト、ってわけじゃなさそうだが。
――周囲を見て。あぁ、顔はあまり動かさないで」
軽い口調だったがの、急に低く抑えた声で伝える。
この街に不慣れな余所者が一人でいることに気付いたか、複数の周囲の人間が文字通り値踏みするような視線を向けている。
隣で少女に話しかけている男には忌々し気なものに変わる。男がいなくなれば、我先にと少女に向かいそうな者達だ。
引き続き低い、少女にだけ聞こえる声で話す。
「彼等の餌食になりたくなければ、一緒に歩くんだ。ひとまず、君が向かう場所までは送ろう」