2022/11/06 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にアストラさんが現れました。
■アストラ > 奴隷市場都市として栄える場所については、決して一人ではいかない方がいいと言う忠告もあり今まで足を運ぶ機会はそうそうなかった。
しかし今回の依頼主はバフートにて依頼品の受け渡しを要求してきたので、致し方なく馬車に揺られて足を運び、その都市の独特の雰囲気に興味を抱いた。
依頼主との待ち合わせ場所は奴隷市場付近の広場なので、依頼主が訪れるまではあまり見る機会のない奴隷市場の売買を客として見学することにする。
「こうしてみると、ミレー族が多いのねぇ……」
商品として売買される多くはミレー族らしい。
そもそもアストラは彼らの種族やこの国における立場についてはあまり詳しくない。
中には人間や力を封じられた魔族もいるようだが、商品の多さは王都と比較しても多いように感じられた。
売り手に買い手、そして商品。
労働力と性奴隷、それぞれの用途を説明する奴隷商人の声を流し聞きしながら、アストラは商品である奴隷たちを眺めていた。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にボルフライさんが現れました。
■ボルフライ > 「貴様が運び屋か」
唐突に低い声が背後から響く。
その瞬間、勘の良い者であればその声の主の存在感に畏怖を感じるだろう。
実際広場にいた幾人かがその存在に気づいてわかりやすく恐れたり、息を飲んだりしているのだ。
彼女に声を掛けた存在、諸国に悪行を轟かせる巨躯の悪漢であるボルフライは、己が依頼を掛けた品を持ってきた運び屋が彼女であると事前情報から把握していたため、改めて確かめるために不意に声を掛けたのだ。
彼女からすれば、振り向けば見上げるような体躯の大男が鋭い目つきと恐ろしいオーラ、そして膨大な魔力を隠すことなく佇んでいる状況。
悲鳴を上げてもおかしくはないし、その程度で眉すら顰めることもしない。
ただ一言発してから彼女の返答を待つのみ。
荷物もしっかりと持ってきているだろうか。
依頼した品は小さなケースに収められた数本の小瓶。
その中に収められた正体不明の薬品は運び屋の彼女も説明されていないはずだ。
■アストラ > 不意に背後からかけられた威圧感のある重低音の声に振り向けば、それはまあ見上げるほどに巨躯の男性がいた。
冒険者として数多の人を見てきたが、こうも屈強な男性は珍しくアストラは数度目を瞬かせた。
一瞬グリズリーでも街中に出たのかと思ったが、相手は言葉を話す人間だ。
それにしても、魔術師であるアストラですら膨大だと感じ取れる魔力の多さに、流石に驚いてしまう。
人間──ではないかもしれない。このような都市なので、魔族や人外種がいても不思議ではないけれど。
それ以上は深入りになってしまうかと思い直し、アストラは受取人であると彼へと胸に手を当てて一礼した。
「ええ、依頼で品を王都から運んできた冒険者です」
荷物の中身は小瓶に入った薬液のようなものだったが、それが何に用いられるか、その性能などはアストラも知らない。
冒険者ギルドで破格の依頼だったので、単純にお金欲しさに請けただけである。
魔法収納袋の中から目的のケースを取り出せば、それを彼に手渡して受領のサインを貰おうと。
それが済めばあとは立ち去るだけ。
彼の強い魔力を向けられたり、充てられ続けたら危険だと言う警鐘が鳴らされている。
じわりと滲む冷や汗をつばの広い帽子に隠しながら、きわめて穏便に依頼を達成しようとして見せる。
■ボルフライ > 男はふんと小さく声を漏らしながら、彼女の取り出したケースを手に取る。
珍しい代物ではあるが、所詮この男には玩具に過ぎず単なる悪戯のために仕入れただけだ。
そのための手間と時間を考えれば割には合わないと考えていたのだが。
「品を検めるのが先だろう」
今回の運び屋が中々の良い女なのは予想していなかった。
だからこそ容易く彼女を帰すはずもなく。
何より価格だけのこんな怪しい仕事を請け負ったのだ、簡単に終わる仕事と思われるのもよくないだろうと。
「何をしている、来い」
品が無事かどうか確かめると言い、受領をしようとしない男は拒否をすることすら許さぬと言わんばかりの雰囲気で広場から薄暗い裏路地へと彼女を引きずり込もうとする。
こんな人ごみの中で検品などするはずがないと、それらしい言い分を添えて。
彼女が感じている不穏な感覚も焦りも、手に取るように把握している男は、己の芳醇な魔力を彼女の身体に絡ませて逃げられないようにすらしてくるのだ。
■アストラ > 「……あぁ、そうですよねぇ」
品を改めると言われれば割れやすい薬液なので、万が一のことがあってはいけないのだが。
そこは信用して貰えないかしらと焦燥感に駆られつつ、しかし言い出せない。
外見からして凶悪さがにじみ出て、ましてや強い魔力を纏って存在感と威圧感を纏ってるような相手に強気で不遜な態度なんてとれるはずもない。いくらアストラとて命は惜しい。
「えっ、あっ……ちょっと待っ──」
有無を言わさずに人目のつかないところへ引きずり込もうとする男に慌てるが、当然力で敵うはずもなく。
それらしい理由を突きつけられれば依頼を投げ出して逃げ出すことも出来ず。
魔力を向けて絡ませてくるのだから、ただで帰して貰える気もしない。
何より受領のサインを貰わないと達成扱いにならないのだから、アストラの選べる道は一つしかなかった。
ろくな抵抗も出来ず、彼に引きずり込まれた裏路地へと入り、二人の姿は広場から見えなくなった。
固唾をのんでみていた周囲の人々もやがては奴隷を売買する、日常の風景へと戻っていっただろう──。
■アストラ > 【移動します】
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からアストラさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からボルフライさんが去りました。