2022/05/02 のログ
ご案内:「バフート中央部:奴隷市場」に348番さんが現れました。
348番 >  
今日も今日とて奴隷売買で賑わう市場。
中でも目を惹くのは、ミレー族を中心とした愛玩奴隷たち。
品質重視と謳われた彼らは幼少から奴隷として教育を受けてきた、奴隷になるために生まれてきたような存在である。
皆、一様に着飾り、人形市のような様相を呈している。

「………………」

白髪の少女もまたその一人。
一度は買い手が付いたものの、仮契約という形であったため再びここに戻ってきた。
ぼんやりとした表情で集まった客を眺めている。

ご案内:「バフート中央部:奴隷市場」にセルウィさんが現れました。
セルウィ > 少女が其処に立ち寄ったのは些細な偶然だった。
在る依頼…所謂郵送に近しい依頼で普段活動している王都を出てここに来た。
正直な所、何もなければ足を運びたくもない地であるが…
しかして生き抜くための金銭には代えられない。

だから、その市場をふと覗いたのも単なる偶然だった。
本当にたまたま、依頼を終えて軽い興味で、其処を覗いたのだ。

348番 >  
お立ち台のような場所に並んで立つのはあなたと同年代かもっと幼い子供たち。
それが欲にまみれた男たちの値踏みする視線に晒され、一人また一人と買われている。
異様かつ醜悪な光景だが、これこそがバフート奴隷市での日常であった。

「…………?」

そんな中、白髪の少女の目線があなたを視界に認めた。
不思議なものを見たかのように目を丸くしている。
場違いと言えば場違いな容姿を思えば無理もないことだろう。

セルウィ >  
「ぁ……」

視線が合った。紅の淡くも煌めく瞳がゆらりと揺れる。
視線の先の金の瞳が、此方を不思議そうに覗き込んでいる。

それは普通に考えれば致し方のないことだ。
自分のような幼い容姿の、小奇麗な少女がいるのはあまりに場違いだ。
むしろ、それこそ視線の先のミレー族の少女の様に商品であると言われた方が、恐らくは納得されてしまうような、そんな場違いさだ。

だから、とっさに今は視線をそらした。
何でもないと言い訳して、つい、興味を持ってしまった心を内へと治める。
……こんなところにいるのではなく、自分は早く帰らねばならない。
このような場所に何時までも居座っていれば、己の身の方が危ういのだから。

酔った男 >  
───しかし、その判断は少し遅かった。

「あぁ〜? なんだってガキがこんなとこにいんだぁ?」

見るからに酒気を帯びた赤ら顔の大柄な男に行く手を塞がれる。
迂回しようにも、他の客は競りに夢中で動いてくれそうにない。
かと言って強引に退かそうとすれば余計な騒ぎになってしまいそうだ。

「もしかして逃げた奴隷かぁ〜?
 まさかチビの、それも女が奴隷を買いに来たなんてこたぁねーよなぁ?」

ここで売られているのはミレー族ばかり。
冷静に考えれば違うことは歴然なのだが……泥酔した男は冷静な判断力を失っていた。

セルウィ >  
「……違う。」

ああ、面倒なことになってしまった。

このまま逃げようにも帰路は今、酔った男が塞いだ場所しかない。
周囲の人塵を割って入っていくには、この体格は少々不便だ。
何より無理に押し通ろうにも騒ぎとなれば…どうなるかはわからない。
この場で、この容姿でそんなことを起こせば、それこそ奴隷の仲間入りになる可能性だって0ではない。

「私は…買いに来た。
……何か、問題でも?」

故に、思考を巡らせた末に出てきた言葉はそうしたモノだった。
殆どそれは口八丁…本当は、買うつもりなどありはしなかった。
けれども……その背に感じる視線に、思う事があるのもまた、否定はできなかった。

酔った男 >  
「あンだってぇ?
 だったら見せてもらおうじゃねえか、証拠をよぉ。
 もしウソこいたんだったら……分かるよなぁ〜?」

苦し紛れを見抜いているのか、はたまた単なる見下しか。
男はどうやら実際に買うところを見るまで信じないようだ。
そこへ会話を聞き付けた奴隷商が揉み手をしながら寄ってくる。

奴隷商 >  
「これはこれは、お買い上げですか?
 女性のお客様も大歓迎でございますよ、ええ」

図らずも前後を囲まれるような形。
いよいよ吐いた言葉を引っ込められなくなってきた。

セルウィ >  
「………はい、これ。」

たっぷり数秒、思案して決断するのにかかった時間。
これは致し方がない、無事にここを抜け出す必要経費だ、と。
そう己に言い訳をしながら、たっぷりとした重みのある金貨袋を奴隷商へと差し出す。

「証拠、これでいい?」

……これで、この街に来た依頼分の報酬はパーだ。
我ながら馬鹿なことをしてしまったなと自嘲しながら、息を吐く。

奴隷商 >  
「ええ、確かに。
 それでは、あちらからお好きな奴隷をお選びください。
 早い者勝ちでございますよ」

現在も競りが行われているブースと、最初に見たお立ち台のようなブースは別らしい。
後者の方に案内され、再び白髪の少女と目が合うかもしれない。

「そうそう……もし奴隷にご満足いただけなかった場合、
 期日内であれば条件付きで返品も承っております、はい」

その条件とは「見た目を損なわないこと」「首輪を外さないこと」の二つだという。
少し間を置いて返品すれば浪費は防げそうだ。

348番 >  
「………!」

一度は離れていった少女が戻ってくるのを見て、
白髪の少女は興味深そうにそちらを見た。
もしかしたら……という、若干の期待が篭もった目だ。

セルウィ >  
「……お好きな奴隷、ね。」

奴隷商に促され、その先へと踵を返す。
紅の視線はまた、白髪の少女のそれと淡く重なる。

……期待の視線、それがそういったモノだと悟るのは、容易いものだ。
己も何度も、ああいう視線をしていたことがないかと言えば、嘘になる。

「…じゃあ、あの子で。」

そして、そうまでされて…致し方のない結果だとしても、断れる少女ではない。
指をさした先は、348のタグを吊り下げた、白髪の少女。

…期日内なら、返品だってできる。
またあとで落ち着いた頃に、返しにくればいい。
そう己に言い訳をして、紅の瞳を真っすぐに彼女に向ける。

奴隷商 >  
「これはこれは……お目が高い。
 大人しいので特に女性のお客様に人気でして、ええ」

選ばれた奴隷を見て笑みを深める。
おいで、と呼びかけて彼女を台から降りさせるだろう。

348番 >  
呼ばれた少女はゆっくりとこちらへ歩いてくる。
少し垂れ気味の耳、頼りなく揺れる尻尾……表情からも気弱さが見て取れるだろう。
琥珀色の瞳が、おずおずとあなたに向けられた。

「わ、わたしを買っていただけるんですか……?」

鈴を転がしたような声で問いかける。
近くで見るとますます華奢で可憐な少女は、首輪が無ければ良いところの令嬢と言われても信じてしまいそうなほどだ。

セルウィ >  
「え、ああ……うん……買うよ」

台から降り、歩み寄る白の少女に、困惑交じりに言葉を返す。
揺れる尻尾が、琥珀色の瞳が、そのどれもが可憐だと、少女は感じた。

「……とりあえず、外、行こうか。」

……後で返品する。
そうするつもりで在りはしても、こうも嬉しそうにされてしまうと、やりにくい。
具体的には、その表情を歪ませないことが。

だから、それをどこか誤魔化すようにその手を差し出し、外へと促す。
元より外に出ることが目的だったのだから。あまりここに、長居もしたくはない。

348番 >  
「わぁっ……あ、ありがとうございます。
 よろしくお願いしますね、ご主人様っ」

まさか方便のために買われたとも露知らず、奴隷の少女は尻尾を振ってはにかんだ。
奴隷商に一礼して、とてとてとあなたの傍に寄る。
これから買われていく奴隷にしては明るすぎるほどだ。

「はい、ご主人様」

差し出された手を遠慮がちに握り、あなたに続いて市場を後にする。

セルウィ >  
「……ご主人様、かぁ。」


誰にでもなく、白髪の少女にも聞こえぬであろう程に小さく、少女は呟く。
手を引いて市場を跡にし、この街の外れへと…
比較的安全な、元より帰路の途中で休むつもりだった宿へと歩を向けた。

ご案内:「バフート中央部:奴隷市場」からセルウィさんが去りました。
ご案内:「バフート中央部:奴隷市場」から348番さんが去りました。